ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第10節名古屋グランパスvsFC東京@豊スタ20160827

2016-08-29 23:25:06 | FC東京

優柔不断な台風がウロチョロしてるせいか、8月のおわりは天候不順な東京です。子どもたちは宿題ができるから良いのかしら。

雨の東京を抜け出して、名古屋です。

名古屋はサッカー観るだけと思っていたのですけど、ドラゴンズvsカープのチケットがまだ売ってたので、日曜日にハシゴしました。

名古屋に事件です。もはや東京戦前の監督交代は恒例行事ですから事件というほどでもないかも。小倉監督が解任されました。今節からコーチのジュロヴスキーさんが指揮を取られます。新生ジュロヴスキー名古屋の様変わりを観る楽しみが加わりました。小倉名古屋は吹スタオープニングマッチ以来見ていないので問題点を把握していませんけど、チーム内のイザコザは聞こえてこなかったので、選手の責任感と闘いかたの工夫にポイントがあると思いました。本日のYou'll Never Walk Alone♪

名古屋が徐々に気迫と集中を高まらせて築いた堅城に手を焼きましたけど、翔哉の起死回生のゴラッソで勝ち点を分け合いました。

東京は前節と同じ現時点のベストメンバーです。シフトは4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは室屋と徳永。ボランチは秀人と草民。WGは右に広貴左にムリキちゃん。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

注目の名古屋は、布陣はそれほどドラスティックな変更はありません。シフトは最近4-4-2だったようですけど、シモビッチが離脱したこともあって、今日は4-1-4-1です。GKは楢崎。今日のCBは竹内と酒井。SBは右に今日は磯村左はミチ。アンカーはイ・スンヒ。IHは右に佳純左に田口。WGは右に堅碁左に永井。今日の1トップは龍之介です。

前述の通り、小倉名古屋をまったくフォローしてなかったのでギャップはわかりません。なのでジュロヴスキーさんのサッカーの特長を探ってみます。といっても、スクランブルな試合ですから、本来のジュロヴスキーさんのサッカーを見られるとは限りませんけど。ただ、なんとなくテイストのようなものはわかりました。名古屋は今日の試合のなかで、一気に成熟した感があります。約束事の確認はトレーニングのなかでやってきたのでしょうけど、実戦はまた別。まず、実戦の場で名古屋がコンペティティブなレベルまで今日のプランを成立させたことが素晴らしいと思います。

精神論は嫌いなのですけど、今日の名古屋には責任感を強く感じました。誰にはばかるのかわからないけど、体制を変えることになった要因の一端は確実に選手にありますから、その決定を今度こそ実のあるものにすべきという意欲でしょう。メディアは今ごろ小倉体制を批判していますけど、少なくとも現場はそんなことにはおかないなく、目の前の試合を全力で勝つことしか考えてなかったと信じます。それほどのオーラを名古屋の選手全員から感じました。

ジュロヴスキーさんはピクシー体制で守備を担当されていたとのことですので、てっきりゾーンを固め易いシフトを取るのかなと思ったら、そうではなかったですね。いうなれば、攻守のモードを切り替え易いかたちといいますか。新生名古屋の目指すサッカーにはそんなビジョンが内在すると思います。シフトはともかく、名古屋はやっぱり超守備重視です。ひとつには極端な低重心です。もうひとつは5人並ぶ中盤の分厚さです。最大の特長は、中盤だと思います。

名古屋が引きますので、試合の様相は自ずと東京が攻め名古屋が守るかたちになります。つまり、東京が名古屋の守備網を時間内に攻略できるか否かが勝敗を分けると言ってもいいでしょう。守備的なチームに往々にしてあることですけど、序盤の名古屋は、中盤のコンタクトがそれほどタイトではなく、東京がアタッキングサードを良いかたちで使えていました。結果的には、序盤のカオスを乗り切った名古屋が徐々にイニシアチブを握っていきます。

象徴化すると、ジュロヴスキー名古屋はIHの位置で攻守のモード切り替えをします。守備の第一防波堤は中盤のサイドです。3センターですから相手にもっとも狙われ易い場所でもあります。守備を重視する場合の名古屋は、アンカーの脇のバイタルエリアで、アンカー、IH、WGの三人が網を絞るようにして相手の進撃を阻むとともに、トランジションポイントとしているのだと思います。ただし、守りかたは選手の距離感とタイミングが整う必要があります。序盤の名古屋の中盤がむしろルーズに見えたのは、守備のバランスが整ってなかった故だと思います。

東京は、名古屋の堅城を崩すためにあの手この手を繰り出します。まず狙ったのは、名古屋のウィークポイントの一つ、SBです。とくに、今日スターターに入ったばかりの磯村をターゲットにします。ムリキちゃんをサイドにはらせます。中盤でチャンスメークしてムリキちゃんと磯村の1on1状態を作り出す意図だと思います。何度かペナルティエリアに迫りますけど、最終局面での名古屋の守備網が堅く、なかなかそこから先に効果的に入ることができません。

なので前節と同じアジャストを試みます。ムリキちゃんと慶悟を入れ替えます。これで中央で基点ができるようになりますけど、前節と違って名古屋がリトリートしますので、縦への推進力が生まれません。せっかく基点ができてもスペースがないので、結局核心部に入れないことには変わりありません。

そこで次は右を使います。広貴が中央の組み立てに絡み、空いたスペースを室屋に狙わせます。室屋を高くはらせ、いつでもアタッキングサードに飛び込ませる準備をします。ただし室屋に預けるというよりかは、可能な限り効果的なかたちで室屋に渡せる状態を作ろうとします。なので東京は、左を伺いながらこのタイミングをはかります。でもこの辺りですでに名古屋の守備のコンビネーションが整いはじめていました。東京のあの手この手が良いスパーリングになったのかもしれません。結局室屋も活かすことができません。そうして東京の攻撃は名古屋に見切られる範囲におさまっていきます。

ジュロヴスキーさんの作戦はここまでだと思っていました。実際、守備のリズムをつかむまでの名古屋は、ロングボールを左右に散らして堅碁と永井を走らせるくらいしかできていませんでしたから。それでも堅碁と永井には一発がありますので、十分な脅威になり得ると思いました。

でもジュロヴスキーさんは先を見据えた作戦を練っていました。名古屋は単調なロングカウンターのチームではありません。ポイントは、ですからIHです。名古屋のストロングポイントが堅碁と永井、つまり類い稀なスプリンターであることは周知です。龍之介を使ったのも同様の理由だと思いますから、一面にはその通りだったのだと思います。ただ室屋と徳永の落ち着いた対処を見ていると、もはや名古屋の高速アタックの対策は方法論ができているんじゃないかと思います。何度か堅碁と永井のポジションを入れ替えても効果がなかったのがなかば証明している気がします。

そこで、もしかしたらジュロヴスキーさんは、自らチームの最大の特長をブラフとしたのかもしれません。最初にロングボールを多用したのは、東京の最終ラインに名古屋のスピードをすり込む意図もあったのではないかと思います。今日の真の作戦は、佳純と田口でしょう。攻撃に入ると名古屋は変態します。ビルドアップの起点では、スンヒが下がり酒井と竹内が開く3バックのかたちになります。SBを押し上げてポゼッションを高める意図です。前線では、堅碁と永井が内に絞り、SBのためにスペースを空けます。東京はコンパクトな守備網を維持しますので、磯村とミチは比較的容易に高く位置取れます。ここで、堅碁と永井がサイドに開く動きをします。東京は速いサイドアタックをすり込まれていますから、サイドに展開するものと、モリゲとまるがフォローします。こうして佳純と田口の前がぽっかり空く状況が生まれます。

とくに田口のサイドが効果的でした。やはり名古屋のエースは田口ということなのでしょう。もちろん流れのなかのことですからそう頻繁に起こることではないのですけど、田口サイドでは少なくとも三回は田口がシュートするかたちに持ち込めていました。そして、そのうちの一本が結果を見せます。

45分。楢崎のFKから。名古屋は自陣でパスをゆったりと回します。酒井から磯村に入り、攻撃スイッチが押されます。 磯村はなかにしぼった永井にパス。永井は草民の寄せを見て後方の佳純に戻します。この時、秀人も永井の近くにいます。さらに中央に移動してきた田口に広貴がついていきます。なので左サイドには広大なスペースがあります。佳純はそこにフリーでいたミチにサイドチェンジを送ります。ミチはドリブルイン。アタッキングサードに入ります。ミチには室屋がつきます。さらに広貴もボールを見ています。ただ田口だけがジリジリ下がって広貴と距離をあけます。これを感じたミチはフェイクで室屋と広貴をおびき寄せ、やおら田口にパス。田口は、ペナルティエリア外からでしたけど、勢いをつけて右足ダイレクトでシュート。これは秋元がはじきますけど、こぼれ球が龍之介の前に転がりました。龍之介は左足で流し込みました。名古屋1-0東京。

前半はほぼ、名古屋が描いた通りのシナリオで進行しました。選手には手ごたえがあったと思いますけど、ジュロヴスキーさん自身がチームのクオリティに一番びっくりしたんじゃないでしょうか。名古屋リードのまま前半終了。

前半でコミットされた名古屋のイニシアチブは後半になっても揺るがないかと思いました。でもさにあらずです。サッカーは実に繊細なスポーツです。攻撃のかたちが機能した名古屋は、過信したのではないでしょうけど、いくぶん攻撃過重になります。そのリスクが中盤に表れます。佳純と田口の位置が徐々に高くなり、スンヒとの距離が開きはじめます。そもそも3CHの距離感で守備の安定を保つ前提を、名古屋は自ら崩すことになります。

これを見た篠田さんが動きます。広貴に代えて翔哉を左WGに投入します。慶悟が右に回ります。ムリキちゃんがトップ下に入ります。当然スンヒの脇のバイタルエリアを狙う意図です。ムリキちゃんと翔哉にボールを集め、ドリブルでゴリゴリと裸になった名古屋守備陣を攻め立てます。

これに対するジュロヴスキーさんのアジャストは、まず攻撃でした。堅碁に代えて貴章を同じく右WGに投入します。左に比べて堅碁のサイドで有効な攻撃がありません。堅碁と永井を入れ替えても状況は変わらず、堅碁はフラストレーションをためていきます。そこでシンプルなスプリンターを投入して、左右をシンメトリーにしようという意図だと思います。さらに翔哉の背後にフレッシュなアタッカーを入れることで、翔哉のフォロワーである徳永の攻撃参加を阻む意図も含んでいたと思います。その上で、あらためて守備を本来のかたちに戻します。リードしていることもあって、必要以上の前がかりは回避します。

そこで篠田さんが動きます。遼一に代えてインスを右WGに投入します。ムリキちゃんがトップ、慶悟がトップ下に回ります。左だけでなく右にも独力ドリブラーを入れ、名古屋の守備のクリッピングポイントを分散させる意図だと思います。

でも名古屋は十分に対応します。貴章投入でカウンター体制を整えて、次は守備のバランスを回復します。佳純と田口をスンヒに近づけて、バイタルエリアの囲い込みを復元させます。これで翔哉とインスは止まります。

さらにジュロヴスキーさんの策が続きます。篠田さんのインス投入と同タイミングで、龍之介に代えて和泉を右WGに投入します。貴章がトップに回ります。中央と左にロングスプリンターを置き、右にはテイストが少し異なるドリブラーを置きます。カウンターだけでなく、最終盤になった時にポゼッションを高める意図も含んでいたと思います。

ほぼ完璧なシナリオで進行する名古屋にアクシデントが起きます。酒井がコンタクトで痛めて下がります。代わって大武が同じくCBに入ります。結果に影響したとは思えませんけど、同点ゴールが大武サイドでの磯村の対応ミスですから、なにがしかバランスに狂いがあったかもしれません。

このタイミングで篠田さんが動きます。秀人に代えて梶山を同じくボランチに投入します。起死回生を狙います。

この作戦は、名古屋がリトリート気味になったので、ポゼッションが高まることを前提としています。さらに梶山のある程度のパスミスは織り込み済みで、カウンターの脅威はありつつも、梶山独特のリズムで名古屋の守備バランスを崩し、さらに梶山自身の一撃必殺パスによるチャンスメークに期待したのでしょう。そしてギリギリの最終盤で、篠田さんの願いは成就します。

後半アディショナルタイム+1分。秋元のモリゲへのパスから。東京は左サイドの梶山、モリゲ、室屋の大きな三角形でボールを回します。これは田口とスンヒをおびき寄せる罠です。梶山がちらちらとチャンスを伺って、ようやく田口とスンヒがちょっと前に出たとき、細かくスペースメイクしていた慶悟がフリーになります。梶山は機を逃さず慶悟に縦パス。攻撃スイッチが押されます。難なくターンした慶悟は、梶山の縦パスと同時にライン際を上がる室屋にスルー。室屋は寄せてきたミチをかわすために右足でトラップをしますけど、これが大きく流れます。ここからの室屋がすごいです。ミスに動じずすぐに反応。竹内とスンヒより先にボールに絡みます。そこにムリキちゃんがフォローして、慶悟に収めます。ボールをかき出した慶悟は左に流れながら前方ペナルティエリア内の翔哉にパス。さあ翔哉の翔タイムが始まります。慶悟のパスを右足で受けた翔哉は、このトラップ一発で磯村を振り切り、ボールを軸にして回転しながらクルッと右足を振ります。シュートは楢崎の指先を越え、右上隅に決まりました。ゴラッソ。名古屋1-1東京。

梶山と慶悟と翔哉の技術と室屋の執念が呼び込んだアクシデントが生んだゴラッソです。梶山が名古屋のバランスを崩し、室屋が竹内とスンヒとミチを消し、慶悟がキープで大武の意識を引きつけた結果、翔哉と磯村のマッチアップになりました。結果的に室屋のトラップミスが名古屋の堅城にほころびをもたらしますから、つくづくサッカーはミスのスポーツだなと思います。

終盤は、お互いの勝利への欲求というか、情念が選手ひとり一人の背中から煙立つのが見えるかのような気持ちのこもった好試合になりました。新体制で結果を残したい名古屋はもとより、名古屋の事情に関係なくどうしても勝ちたいんだという闘う姿を見せてくれた東京が誇らしく思えます。一試合ずつ絶対勝つという姿勢で臨めば、たぶんきっと、近い未来に最上の結果が待っていてくれると思います。ぼくらも些末事にこだわらず、ゆっくりと見守れたらいいなと思います。

執念も時がなく、このまま試合終了。名古屋1-1東京。

名古屋が思い描いた通りの試合に持ち込んだので、正直負けたと思いました。それを追いついたのですから、勝ちに等しい結果だと思います。なによりも、ままよどうにかなりまっしゃろなゴールではなく、篠田さんのベンチワークが奏功したものであり、かつ選手たちがひとり一人の成すべき使命に応えた結果でもありますから、確実に次につながる試合だったと思います。

名古屋は、残留争いするチームにありがちななりふり構わないガテン系サッカーで臨まなかったことが好感です。そもそも名古屋にはガテン系が似合いませんし、そういう選手もいません。とくに守備の部分であと一歩のコンセンサスが足りないような気がします。闘莉王が戻ってきたことで、現場レベルでの守備の微調整ができるのなら、しっかりと今日のサッカーを組み立てさえすれば来年もJ1の舞台で会えると思います。

とうとう8月もおわり。8月最後の日は、改名したリーグカップ、ルヴァンカップベスト8の1stレグです。今日の執念を年内に最上の結果につなげる絶好の機会ですから、まずは先勝したいですね。


2016J1リーグ2ndステージ第9節FC東京vs横浜F・マリノス@味スタ20160820

2016-08-21 16:30:07 | FC東京

8月は駆け足でときが経ちますね。ゆく夏を想うサウダージ。

と思ったら、はやくも初秋の訪れか、台風が一気に三つも来ています。皆さま週明けはくれぐれもご注意ください。

夏休み最後のホームゲームは子どもたちでいっぱいでしたね。良い想い出になるといいのだけど。本日の相手は、お隣横浜からマリノスです。本日のYou'll Never Walk Alone♪

マリノス戦といえば地味試合で、今日もやっぱりスミイチでしたけど、案外面白かったです。なにより勝利は楽しいですよね。

東京はリオ組が戻ってきました。シフトは今日も4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは室屋と徳永。ボランチは秀人と草民。WGは右に広貴左にムリキ。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

マリノスはキー坊がサスペンションで不在。俊輔はまだ復帰できません。シフトは4-2-3-1。GKは哲也。CBはボンバーとファビオ。SBは右にパンゾー左に金井。ボランチは中町とパク・ジョンス。WGは右にマルティノス左にまなぶ。トップ下はあまじゅん。1トップはカイケです。

試合は主導権争いではじまります。と言っても、東京もマリノスもアダルトなポゼッションスタイルですから、静かなバトルです。これを先に征したのはマリノスでした。

地味試合の由縁は、双方の闘いかたにあります。東京もマリノスも、堅実な守備を基調としている上、ボールを持つことで能動的に試合をコントロールすることを志向しています。互いにリスクを取らないので、必然的にボールを持ち合うかたちになりますから、シュート数がとても少なくなります。エンターテイメントとしては相当面白味にかける対戦です。ただし、当然打開策を取っていますから、策をかけ合う局面の攻防は、とても面白いです。玄人ウケする試合の是非を問う向きは一部の典型的なマーケティング好きの方面からあるのでしょうけど、これもサッカーです。

マリノスが主導権を握るきっかけは、やっぱり守備です。衆知のとおりですけど、マリノスの守備は4+4の守備網を維持することを優先するゾーンです。東京が中盤で組み立てする仕掛けを網にかける守りかたです。なので、マリノスの守備が良いというよりかは、東京の攻撃にクオリティが足りなかったと言ったほうが良いかもしれません。

序盤の東京は、オーソドックスな攻撃プランで臨みました。篠田さんは、就任当初のスペシャルプランから、試合ごとに少しずつ本来のスタイルを作っているような気がします。これまではムリキに中盤を任せて基点として、周囲が縦に連動するスタイルをとっていましたけど、今日は中央の遼一と慶悟に当てて全体を押し上げるプランです。でもこれが機能しません。ボンバーとファビオの城壁が堅固で、なかなか良いかたちでボールが収まりません。マリノスの守備網がコンパクトで、重心が高いこともあって、高い位置で基点が作れないため、東京はアタッキングサードにすら入ることができません。

さらにマリノスは、東京の中盤を経由するパス回しを狙います。とくに狙われたのは草民です。室屋あるいはモリゲから草民への安易なパスに対し、タイミングを計ってまなぶ、中町がチェックします。結果的には草民がこの仕掛けによく耐え、パスを素早くさばくことで難を逃れることに成功しますけど、混乱していたら守備のほころびになる可能性もありました。

こうして中盤でトランジションできたマリノスは、ゆったりと攻撃を開始します。マリノスの攻撃パターンはとても綺麗です。基本的には左右シンメトリーですけど、まなぶだけアクセントマンになっています。マリノスは基点をバイタルエリアに置きます。攻撃時のマリノス独特の中盤のスタイルですけど、扇のようなかたちを取ります。要の位置はジョンス。バイタルエリアに中央はあまじゅん、右はマルティノス、左は中町が入ります。三人が交互に入れ替わってスペースメイクすることで、後方からのパスを引き出し基点を作ります。ですので、最近はサイドで基点を作ることがトレンドになっていますけど、マリノスは中央を使います。ただし、攻撃は基本的にサイド基調です。中央に基点を作るのは、サイドアタックを効果的にするためだと思います。バイタルエリアで時間を作っている間に、パンゾーと金井が攻撃参加します。SBにボールが渡ったときは、アタッカー4、5人が中央で待ち構える状態になります。

シュートまでのアプローチは単純なクロスではありません。ここでもやっぱり中央突破が基本です。クロスに対する中央での競り合いに優れたアタッカーがいないせいもあるのだと思いますけど、やっぱりエリクさんの好みなのでしょう。サイドからの攻撃パターンは、ビルドアップとは違って左右で異なります。技術の高いマルティノス、あまじゅん、パンゾーが絡む右サイドは、細かいパスのコンビネーションで崩すことを目指します。とくにスキルフルなパンゾーは、1on1を仕掛けてドリブルでペナルティエリアに入ることもできます。中央の選手と絡んでスライドして、守備網を揺さぶりながら、スルーを送ることもできます。

これに対し左サイドは、まなぶと金井の個性を重視した攻撃です。まなぶはもちろんドリブル。金井はクロスです。まなぶの位置で、どちらのパターンを使うかがわかります。中盤に下がっている場合は、タメを作って金井を上げる意図です。逆に前目にいる場合は、ボールを持って仕掛けることを狙います。便宜上左右で表現しましたけど、サイドアタックのキーマンであるマルティノスとまなぶが試合中に数回ポジションを入れ替えますので、マルティノスサイドがコンビネーションによる崩し、まなぶサイドが独力アタックと言ったほうが正しいと思います。

と、ここまでのところでなんとなくお分かりだと思うのですけど、マリノスの攻撃方法は当たり前、なんです。普通。奇が無いというか、特長がない。エリクマリノスがやりたいサッカー、おそらくスキルフルなコンビネーションサッカーを具現化するタレントをちゃんと揃えていて、なおかつそれをディシプリンただしく実行しているのですけど、威力がないのです。チームとしてのプレーがあまりにも綺麗過ぎます。サッカーにアーティスティック・インプレッションがあったら、マリノスはかなり上位に来るでしょう。それほど良く考えられた整ったチームです。でも、味が薄い。

1stで観たマリノスは、俊輔大作戦に沿った風合いがありました。マルティノスに中盤の広範囲を浮遊させ、ボールを集めることで基点としていました。今日はマルティノスへの比重がそれほど高くなく、ビルドアップの基点というよりかはフィニッシュに絡む仕事のほうが多かったと思います。どうしても色眼鏡で見てしまうのですけど、やっぱりマリノスは俊輔が居てこそコンペティティブになるということなのでしょうね。それに、俊輔の構成力は俊輔にしかできないことなのでしょう。俊輔不在でも、マリノスは今日のような高いクオリティを見せられますから、近年小所帯になっているとは言え、チームの実力は依然高いレベルにあるのだと思います。でも、やっぱり俊輔がいない今のマリノスは、正直物足りないです。

というわけで、東京の攻撃を散発化した守備の安定をベースとして、ポゼッションの高いマリノスがイニシアチブを握ります。これに対し東京は、オーソドックスに長いボールを左右に送ってアタッカーを走らせる打開策を見ますけど、これもパンゾーと金井に対応されて、効果がありません。そこで20分過ぎに東京が作戦を変えます。慶悟とムリキのポジションを入れ替えます。慶悟のヒーローインタビューによると、慶悟自身のアイデアだったんですね。凄いです。もちろん試合中に選手の判断でポジションを入れ替えることはよくあることなのでしょうけど、それが試合の結果を左右するほど機能するとは。慶悟はもしかして監督の素質がある??。

結果的に今日はゴールを決めた、てかシュートを枠に飛ばしましたし、作戦面の慧眼を含めると、今日の慶悟はなかに別人が入っていたのかもしれませんね。ポジションチェンジのアイデアはホントに秀逸でした。さらに、シフトを4-4-2に近いかたちにします。まず守備をアジャストします。マリノスにいいように使われていたバイタルエリアを逆にトランジションのポイントとします。前述のとおりマリノスは非論理的なリスクテイクを極端に嫌いますから、攻撃ルートが無い場合はボールを回して再チャレンジの機会を伺います。とくに東京陣に入ってサイドに展開した場合、縦のルートを切られている場合は、中央にボールを持っていく傾向にあります。東京の守備のアジャストの狙いはここです。マリノスがサイドに展開した際ゾーンでプレッシャーをかけ、マリノスを外から内に追い立てます。これでマリノスが中央にボールを持っていき易い状態を作ります。そこに草民と秀人が襲いかかります。こうして、マリノスに攻めさせつつトランジションの流れを作る、非常に高度な作戦が成立します。

トランジションしたボールはムリキに集めます。慶悟の狙いはここだったのでしょう。今日もムリキは、左サイドで安定的にボールを持てていました。今日の篠田さんの基本プランが中央の高い位置で基点を作ることだったのだとしたら、自分よりもムリキのほうが実効力があると慶悟は見たのでしょう。その通りになります。ムリキのポストの安定感と、その後のさばきの上手さはもう解説不要でしょう。ぼくらも中盤でムリキにボールが入ると安心して観ていられます。

慶悟はもうひとつ、左サイドの守備のアジャストも考慮していたと思います。攻撃の基点としてのムリキは大絶賛なのですけど、左サイドの守備人としては、少々ポジショニングがルーズになる部分があります。神戸戦でもそこを狙われました。今日は左サイドが対峙するのがコンビネーションサッカーでしたので、余計にゾーンの堅実さが求められます。そこで慶悟は、自分が左に入ることで、中盤のラインを安定させようとしたのだと思います。

この慶悟のアイデアは一石二鳥の効果をもたらし、東京がイニシアチブを奪い取ります。高い位置で基点ができるので、広貴と慶悟がサイドでフリーでボールを持てるようになります。これにより、SBも攻撃参加できるようになり、篠田東京本来のかたちであるサイドアタックが機能しはじめます。試合の様相は、序盤のマリノスのワンサイドマッチから、ポゼッションスタイルどうしの試合らしく互いに攻め合う展開に移っていきます。1stのときのように、試合が動くのは終盤戦かなと思っていた矢先、先制ゴールが生まれます。

42分。マリノスの自陣でのパス回しから。哲也のパントキックをハーフウェイ右寄りで秀人がフリック。ライン際の室屋に渡します。室屋はドリブルで中央に寄せ、サイドチェンジ。左寄りの慶悟に渡します。アタッキングサードに入ります。慶悟はターン。この時ゴール前は、ニアにムリキ、ファアに遼一がいて、それぞれボンバーと金井がついています。慶悟のマークはパンゾー。バイタルエリアにはマリノスが四枚。マリノスの守備網にほころびはありません。ここでラインについていたムリキが下がります。ボンバーが反応します。ここがポイントでした。慶悟はムリキにパスして、そのまま上がります。パンゾーの反応が遅れます。これで局面はムリキ+慶悟vsボンバーの2on1に移ります。ボンバーを引き付けたムリキはタベーラ。慶悟に落とします。慶悟はボンバーの背後に入ってワントラップ。パンゾーが寄せますけどもはや時遅し。なんと!。ペナルティエリア外からでしたけど、あの東慶悟が枠に飛ばしました(*´▽`*)。東京1-0マリノス。

やっぱり今日の慶悟は神がやどっていたのかもしれません。前半は良いかたちで終了。

後半に入ると、東京のポゼッションがぐんぐん上がっていきます。追いかける立場になったマリノスに、マルティノスとまなぶのポジションチェンジ以外はとくにアジャストは見られなかったのですけど、リードを許したとはいえ、試合展開はイーブンと見たのかもしれません。そうだとしたら読みが甘かったです。後半頭から20分間くらいの東京は、今年取り組んできたサッカーを最大限に表現できていました。今年最高のクオリティです。試合はこびにとても安定感があります。それは守備の堅さによってもたらされるのではなく、ポゼッションによる主体的な圧倒です。まずほぼ全員がマリノス陣内で仕事するハーフコートマッチの状態に持ち込みます。その上で、攻撃はパスを回してチャンスを伺うのではなく、必ず積極的な仕掛けで終わります。こうすることでマリノスの重心を下げさせます。さらに、仮に攻撃が守備網にかかったとしても、マリノスに反撃の余裕をあたえず、クリアをホスピタルなものに留めます。ですから東京は、イーブンボールを拾うことができます。こうして、東京が永遠に攻め続けるかのような錯覚を覚えるほど、ポゼッションが高まります。

これが、2016リニューアル東京スタイルの目指すかたちだったのでしょう。残念ながらリーグでは遅きに失しましたけど、ルヴァンカップと天皇杯がまだ残ります。今更過去は振り返らないけど、7月の事件以降、どんなアプローチでここまでこぎつけたのか、興味深いです。外から客観的に分かる変化はいろいろあるけど、それはまたいつか語るとして、今は一歩一歩、ひとつの試合ひとつの勝利にこだわって応援していきたいと思います。試合を観ていてチームからもそんな覚悟を感じました。

覚悟を最も表現しているのは秀人でしょう。神変慶悟の派手さに隠れて目立たなかったけど、今日の秀人もまた神でした。神戸戦では、後半に中盤中央のスペースを使われたことが敗戦の主因だと思います。秀人は東京からそれを感じていたのでしょう。神戸とはテイストが違うけど、同様に中盤中央のスペースを使うマリノスに対し、鬼神の如きパフォーマンスでした。とくにマルティノス、カイケ、あまじゅんに対するタックルのスピードと圧力は、シュパッという音が見えるかのように、日本刀のような鋭さの切れ味でした。中盤で対処してくれると、今日の最終ラインはずいぶん楽だったでしょうね。秀人は不思議な選手ですね。毎年のように不遇をかこう時期があるけど、必ず成長して復活します。どれほどメンタルが強いのか、先が見えなくて上手くいかないことはぼくら一般の人にもあることだけど、秀人のように時間があるときに自らを考え、課題を見つけ、粛々と実行して、なおかつチャンスで成果を出すって、そうそうできることではありません。ホントに頭が下がります。

イニシアチブを握られ、エリクさんが対応します。金井に代えて渓太を同じく左SBに投入します。同ポジションの入れ替えというところにエリクさんらしさがあると思います。東京もそうですけど試合中に状況に応じた作戦変更をするチームが多いなか、エリクマリノスはよほどのことがない限り基本プランを変えません。選手の個性でテイストが変わることを願ったのだと思います。渓太はスピードがあって、長い距離を走れますので、左サイドに躍動感をもたらす、独力突破を期待したのでしょう。

エリクさんの期待に反し、ここから10分あまりの時間が今日の試合の結果を左右したような気がします。東京の完璧なオーガナイズの時間になります。おおげさに言うとポゼッションが100:0に思えるほどに高まります。すべてのイーブンボールを東京が拾い、マリノスを自陣に押し込め続けます。終盤はマリノスの攻撃を受ける作戦を取りますけど、このオーガナイズによって耐える時間を10分間短くできたことが勝利をもたらしたと言っていいと思います。

篠田さんが動きます。広貴に代えて羽生を同じく右WGに投入します。広貴のコンディションを考慮したのだと思います。加えて中盤の安定感を意図したのでしょう。篠田さんのしたたかさというか、勝負を見る目を感じます。このあたりから、1-0での逃げ切りを視野にしていたと思います。

エリクさんが動きます。あまじゅんに代えて翔をトップに投入します。カイケがトップ下に下がります。これまた同ポジションの入れ替えです。ただこの作戦は効果があります。カイケにボールを集めることで、バイタルエリアで基点が作れるようになります。これで自陣に押し込められる状況を打開できました。試合はふたたび攻め合いのモードに移行します。

それでもマリノスは攻め切れません。シュートを打っても精度も威力もなく、およそゴールの匂いがしません。そこでエリクさんが動きます。中町に代えて兵藤を同じくボランチに投入します。三度同ポジションの入れ替えです。中町とジョンスの組み合わせは幾分中町が攻撃加重ですけど、それほど役割に違いはありません。兵藤はほぼ攻撃を担うことを課されたと思います。中町よりも活動範囲が広く運動量がある兵藤を入れて、カイケを軸としたビルドアップのアクセントにしようとしたのだと思います。この作戦で、マリノスの攻撃が活性化します。東京が守勢に回るモードになってきました。

そこで篠田さんが動きます。草民に代えて宏太を右WGに投入します。羽生がボランチに回ります。守備を意識しつつ交代は攻撃系の選手です。まだ十分な時間があったので、守備意識にはやく入り過ぎることを嫌ったのでしょう。右サイドを活性化するとともに、躍動感があってコミュニケーション能力も高い宏太を入れることで、ウェットな言い方をすれば、攻守に気合いを入れ直したのでしょう。マルチロールな羽生投入も、試合展開に柔軟に対応できるからこそだったのだと思います。

とは言え、マリノスに押し込まれる時間が続きます。攻められつつも、ムリキと遼一を前線に残してロングカウンターを伺う体勢を準備します。このかたちが機能して、幾度かチャンスを作れますけど、ムリキがガス欠になってシュートにつながらなくなります。それを見た篠田さんは、カズとインスを用意していました。そのまましばらく試合展開を見ていました。完全な守備モードに入るか、それとも今の状態でロングカウンターの可能性を高めるか。

篠田さんの選択は、全消しでした。ムリキに代えてカズを投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。カズはリベロに入ります。エリクさんのスタンスとは真逆で、その対照性が際立った試合になりました。

篠田さんのカケは吉と出ます。このまま試合終了。東京1-0マリノス。眠らない街♪慶悟のシュワッチ

先制ゴールが入るまでは、やっぱりいつものマリノス戦らしく地味でまったりした試合でしたけど、後半はお互いにやりたいサッカーができて攻め合う面白い展開になりました。なおかつ攻撃にモタモタ感がなくて、とってもわかり易かったので、夏休み最後のホームゲームを楽しみに来た子ども達も楽しめたんじゃないかと思います。それに、選手のプレーだけじゃなく、両チームのゴール裏が生み出すお祭りのような特別感は、ワクワクしますものね。そしてやっぱり勝利が一番(*´▽`*)。

ようやく東京が目指してきた闘いかたを目に見えるかたちで表現できたと思います。それは手応えにつながりますし、チーム内のコンセンサスも取りやすくなります。連敗を回避できたのも大きいです。ヨネの8か月の長期離脱は可愛そうでならないし、チームにとっても痛いけど、ヨネがリハビリを頑張り、来シーズンまた笑顔で帰ってこられるように、もっともっと良いチームに仕上げていってほしいと思います。そのためには、ひと試合一試合をしっかりと積み重ねていくことが大事です。ぼくらも一歩ずつ見届けたいですね。

なんだか、長年夢に描いていたことが現実になるのはそう遠い未来ではないような気がします。なんとなく。


「夢に向かってともに歩もうチャリティーマッチ」いわきFCvsFC東京@いわきグリーンフィールド20160814

2016-08-20 01:22:25 | FC東京

あの日から5年半。

今年、東松島で街そのものを移転する予定地を見ました。津波の物理的な被害にあった地域は少しずつ復興に進んでいるところもあるようです。福島浜通りも南相馬市で、一部を除き避難指示区域が解除されました。まだまだ長い道のりだけど、着実に前に進んでいってほしいと思います。

浜通りに来たのは、Jビレッジの様子を見に行った2013年の9月以来、3年ぶりです。自分に浜通りを目指す理由を与えてくれたいわきFCとFC東京に感謝です。本日は「夢に向かってともに歩もうチャリティーマッチ」に参加します。少額な入場料だけど、福島の被災した子どもたちへの義援金になるとのことです。大好きなサッカーと東京を通じて、少しでも被災地支援ができるという機会は素晴らしい企画だと思いますし、参加できてとても嬉しいです。

いわきFCと東京の日程と、帰省時期で浜通りに人が集まっていることを考慮してお盆になったのだと思います。個人的にはお盆を外してくれたら、浜通りに泊まって車でいろいろ巡りたかったのですけど。帰路の電車でハワイアンリゾート帰りの東京サポをお見かけして、その手があったかとあとで後悔しました(^^;;。

試合会場最寄の湯本駅は、最近駅舎を新装して、ハワイアンリゾートの玄関らしく綺麗になりました。

駅舎内です。

ホームに足湯があります。自分はアトピーで肌が弱く温泉に縁がないので泉質に詳しくないのですけど、とっても熱くてピリピリしました。

湯本駅前もハワイアンに装ってて綺麗です。

駅正面のとおりにアートが並んでいます。アートもハワイアン(^_^)/。

女将さんもハワイアンw。

本日の会場は、いわきグリーンフィールドです。いわきFCのホームスタジアムなのだと思います。今日のアクセス運営は、年間の試合開催数が限られますし、基本的に車社会で公共交通機関を利用するかたは好きないと思いますので、手探りだったでしょう。今日はいわきFCが、湯本駅と近隣駐車場往復のシャトルバスを出してくれました。湯本駅に試合の告知もシャトルバスの案内もなかったので迷いました。自分が着いたときは係りのかたもいなかったのでドキドキしました。まだ先のことですけど、Jリーグに上がる場合はスタジアムのハード面だけでなくソフト面の工夫が必要になります。経営母体がジャイアンツやアルディージャをサポートしてる会社ですから心配ないと思います。それに福島ユナイテッドFCが先達でいてくれますから、情報交換されるのだと思います。

家族に乾杯に出演された、おかめさんでお昼をいただきました。

鶴瓶師匠とQちゃんのサインがありました。てか、古くて趣のあるコの字型の店内には、サインやポスターがいっぱいです。駅前で探したのだけどなかなか見つからなかったフラガールのポスターをこちらで見つけることができました!。

アクセスについて。いわき市清水市長のスピーチで、Jリーグ基準の新スタジアム作ります宣言があったので、昇格した場合にいわきグリーンフィールドが使われるかわかりません。なので参考までに。湯本駅からグリーンフィールドは、シャトルバスで10分弱。徒歩でも2、30分です。思ったよりも遠くないです。徒歩は、往路はひたすら登りなのでしんどいと思います。帰路は逆にずっと下りで、試しに歩いてみたら20分かかりませんでした。夕暮れときのいわきの山のなかをぶらぶら歩くのも気持ちよかったです。

いわきグリーンフィールドの外観。

今日のチャリティーマッチは、サッカーの試合をメインにした、いわきFCのプロモーションを兼ねた複合イベントです。

グリーンフィールド横のイベント会場。

なんと!。ハワイアンフラ教室の先生と生徒さんがフラを披露してくれました。まさか見られるとはと思っていなかった生フラを見られて嬉しかったです(*^^*)。

いわきFCはアンダーアーマーの国内代理店をしているドームさんが経営されています。

正直言うと、お客さんが集まるか心配でした。湯本駅にもサッカー観戦っぽい人をあんまり見かけなかったし。試合開始ギリギリにスタジアムに入ったら、なんとメインスタンドは超満員o(^▽^)o。めっちゃ嬉しかったです。

しかも、いわきFCのアンダーアーマーの赤いTシャツを着てるサポーターがめっちゃ多く、失礼ながら驚きました。人数は東京より多くて、しっかりホームチームです。これも嬉しかったです。なんとなく着こなしを見ると、みなさん今日のために買って着てる感がなく、何度か着てる雰囲気を感じました。クラブ自体がすでに福島県二部リーグのチームではなく、十分にJリーグにいてもおかしくない地域サポの基盤があると感じました。今回はいわき駅には行かなかったのですけど、もしかしたらいわき市中心部は、いわきFCの露出が多いのかもしれません。

ゴール裏の雰囲気もしっかりできています。今日は識別できなかったのだけど、オリジナルチャントもちゃんとあるようです。

偶然なのか福島ならではの理由があるのか、いわきFCも福島ユナイテッドFCもともに赤がチームカラーです。スタジアムに入る前に福島ユナイテッドFCサポさんを見かけました。来てるんだとびっくりしました。そしたら、試合前にいわきFCのゴール裏に近寄って行かれて、言葉を交わされていたようです。応援自体は遠慮されたのかちょっと離れたところにいましたけど、ONE福島の想いが伝わるようで、ちょっとほっこりしました。もっともいわきFCと福島ユナイテッドFCは来る8月21日(日)の天皇杯県決勝で激突しますので、今日だけ、なのでしょうけど。試合はあいず陸上競技場で14時キックオフです。

いわきと会津は磐越自動車道で一本なんだけど、遠い(^^;。同一県内のJクラブの例は静岡と長野です。福島の規模で2クラブ持つのは大丈夫なのかと少し心配です。でも、地政学的にも経済圏的にも、中通り、会津と浜通りは分離されていると言っていいと思いますので、むしろ自然なことなのかもしれません。そのあたりは、歴史的な複雑性を持つ長野の特殊事情を除くと、静岡に近いのかもしれませんね。いずれ、昇格してからのこと。今はまず、清水市長が仰っていたように、合併で拡大したいわき市がオールいわきで一体になる媒体として、いわきFCが活躍することが第一義だろうと思います。

今年いわきFCは、すべての大会を通じて全勝です。しかも圧倒的に。かつてJに昇格したクラブで駆け足で登ってきた例があります。山雅と金沢と讃岐。なんとなく、現地に来るとあの熱さを感じます。サッカーの内容もいいので、ひょっとしたらひょっとするかもしれません。案外勢いが大事なことなので、熱があるうちにいわき市も真剣にJ昇格のバックアップを考えたほうが良いと思います。ベンチマークには苦労しません。なにしろモデルケースはたっぷりありますから。

チャリティーマッチなので試合結果は不問ですけど、せっかくなのでちょっとだけ試合を振り返ります。いわきFC、東京とも本気で闘ってくれたので、思いのほか見応えのある試合でした。東京がピンポイントでプロの違いを見せつけ、勝利です。

東京のシフトは4-4-2。GKは達也。CBは蓮川と坂口。SBは柳と生地。ボランチは秀人と喜丈。メイヤは右にたすく左に半谷。2トップは容平と内田です。

いわきのシフトは4-2-3-1。GKはアンドレ・クルル。CBは高野と古山。SBは右に佐藤左に新田。ボランチは久永と山崎。WGは右に宮崎左に吉田。トップ下は新井。1トップは平岡です。

本音のところは、いわきとサポーターのみなさんにJ1のレギュラークラスのプレーをいっぱい見て欲しかったです。選手はもしかしたら、トレーニングマッチでベガルタ仙台や鹿島アントラーズと対戦する機会があるかもしれないけど、サポにとっては、最終目標のJ1のサッカーがどんなものか肌感覚で感じられるめったにない機会ですから。残念ながら東京は現在怪我人が多くてただでさえメンバーに苦労してます。さらに前日がアウェイ神戸で、サブメンバーもチャリティーマッチに参加できません。東京サポも、普段同クラスで闘っているとわからないけど、すごい選手を身近に感じられる、どれだけ恵まれた環境にあるか、再認識する機会になったと思うので、かえす返す残念です。

とはいえ、実質U-23未満U-18以上で臨んだ東京にとっては、いわきがガチで闘ってくれたので、Jリーグ昇格を本気で目指す大人たちの熱気を肌で感じられる、とても良い機会になったと思います。結果的に、互いのレベルがほぼ合ったことが今日の試合を面白くしたと思います。

いわきの最大の特長は守備のやり方にあります。Jではあまり見かけないフルマンマークです。守備網はとてもコンパクトです。試合を通じてこのコンパクトな陣形を保っていましたので、真夏でも思考と運動量を維持できるベース・コンディションがしっかりしているのだなと思いました。働きながらのトレーニングだと思うので大変だろうと思います。潤沢なスタッフはいないけど、トレーニングコーチはアンダーアーマーのバックアップがしっかりしているのかもしれませんね。

それから、コレクティブな守備を90分維持するには、ディシプリンがよほどしっかりしていないといけません。コンディションよりもそちらのほうに驚きます。トレーニングから選手が揃ってないといけないですし、ビジョンに一貫性がないとできることではありません。シーズン全勝という好調さが影響するところもあるのでしょう。

フルマンマークによるフォアチェック主体の守備ですから、攻撃はショートカウンター基調なのかと思っていたら、さにあらず。いわきのトランジションのクリッピングポイントは、けして高くはありません。これは、守備の選手も高い技術のある東京との対戦という、相対的な理由かもしれません。ただ、最終ラインでのトランジションがあまりにも自然なので、やっぱりいわきの基本プランなのでしょうね。とくに容平と半谷に対する両CBのプレッシングは重厚感がありました。容平は思いのほかポストに苦労していましたので、プロレベルでも相当なプレッシャーを感じたのでしょう。

というわけで、いわきの攻撃はビルドアップスタイルです。ただしトップに当てるポストスタイルではなく、サイドで基点を作るサイドアタック基調です。このあたりは、クラシカルな守備と違ってトレンドを取り入れています。いわきのストロングポイントは、宮崎と吉田の両WGに置いているようです。この二人にアタッキングサードで良いかたちでボールを持たせることを、シュートから逆算した最適な攻撃ルートとしているのだと思います。

ですので、中盤サイドで時間とスペースを作ることが作戦の基本です。この命題に対し、いわきはサイドに人数をかけるアプローチです。SBが積極的に高い位置を取り、ビルドアップに絡みます。攻撃時はボランチは攻守で役割を変え、久永が中盤高めの位置に入ります。さらに平岡がスペースメイクをし続けます。これらの連携により中盤サイドのスモールゾーンにトライアングルを作り、そこを一次基点にして縦を狙うというのが基本的な作戦なのだと思います。

この作戦は実に良く機能します。成し得ているのは、運動量はさることながら、パワーと足元の技術です。いわきの選手は全員体型がガッチリしています。見た目だけでなくコンタクトで当たり勝つ体幹があるようです。前述しましたけど、よほどしっかり計画されたトレーニングを日頃しているのでしょう。それから、大げさに言うとチームの方向性に対するクラブのビジョンにブレがないことも感じます。この点だけでも、クラブとして骨太な重量感を感じます。

新井がとても良いアクセントになっていますね。ガテン系が揃う、いい方を変えると似たような選手ばかりのいわきのなかで、とても異質なテクニシャンです。新井のマルセイユ・ルーレットには、いわきサポも東京サポもトキメキました。テクニシャンにありがちな自己本位なプレーは皆無です。いわきらしく体幹も強そうです。守備に関しては、前半秀人に張り付いていました。ポジション的に自然にマッチアップになるのですけど、なんとなく新井自身とハウストラ監督の意志を感じました。

チームカラー通りの情熱を感じるいわきに対し、東京はとてもクールでした。冷たいとかかっこいいという意味ではなく、力強く、安定していて、しっかりといわきを受け止めていました。U-23未満というかほぼU-18と言っていい布陣にもかかわらず、実力の上下はわからないけれど、見た目にも筋量が違ってみえる大人に対し、真っ向から受けて立って凌ぎ切る粘りと安定感は、さすがにクラブユース選手権の覇者です。チームに自身が漲っているのを感じます。

日ごろ対戦する同世代のなかで、フルマンマークの守備をしてくるチームがあるのか分かりませんけど、技術の高さを見せて、パスを左右に散らしてマークのターゲットを分散します。地味ですけど、相手の攻撃を受け止める作戦は、よほどチーム作戦が高度でかつコンセンサスが取れていないと実効性がありません。それに、コレクティブな守備は個の積み重ねと連鎖の上に成り立っていますから、結局は個人の力量が問われます。以前観たときよりも中央四人の1on1の粘り強さがパワーアップしてる気がします。

攻撃は、基本的に受け基調だったこともあって、サイドに支点を置いたカウンターが主武器です。手数をかけず一気に攻め込むなかで、ボランチや逆サイドも攻撃参加しますから、厚みがあります。それをわずかな攻撃時間の間で成すのですから、もちろんチームの決めごとでもあるのでしょうけど、個人の状況察知能力とタイミングの感性の高さ故の成果だと思います。容平の幻のゴールが決まっていたら、理想的な試合展開でした。

とはいえ、やっぱりトッププロはひと味違いますね。時間が経つに従って目立っていたのは容平とたすくです。容平にボールが渡ったときの会場の空気感や、たすくの単純だけど超高速スプリントは、彼らにしかない個性です。トッププロはエンターテイメントであることが大前提ですから、個性はとても大切です。今日はいわきがトッププロに胸を借りることが趣旨のエンターテイメントですので、興行として容平とたすくに負う部分は大きかったと思います。

結果は、29分に生地のクロスを容平がフリックして、ファアサイドに長躯上がっていた喜丈が決めて東京が先制。後半アディショナルタイム+1分にも、容平が単独で抜け出して落ち着いて決めます。トータルいわき0-2東京。試合終了後はノーサイドで、両チームがタイトルバナーを持ってイベントを締めくくりました。

ぼくら東京サポにとっては、平松大志さんとの嬉しい再会の日でもあります。試合前にお見掛けしたのですけど、スタッフとしてお忙しそうだったので遠目に見ていました。試合後に一瞬後片付けの待ち時間がありそうだったので、エア乾杯ポーズで「がんばってくださいね」とお声がけしたら、あの懐かしい人懐っこい笑顔を見せてくれました。

多くのお客さんに来ていただいたし、夏らしい青空のもと、とても良いチャリティーイベントになったと思います。このように、大好きなサッカーと東京を通じて被災地に貢献できることはとても幸せなことです。また機会があったら、ぜひ参加したいと思います。


2016J1リーグ2ndステージ第8節ヴィッセル神戸vsFC東京@ノエスタ20160813

2016-08-17 18:48:16 | FC東京

お盆ですね。自分は山の日を挟んで四連休です。

神戸に行くのを楽しみにしていたのですけど、日曜日にいわきで開催される復興支援チャリティマッチに参加したくて断念しました。というわけで、テレビ観戦記で失礼します。

密閉構造のノエスタの暑気とネルシーニョさんの慧眼にうっちゃられました。

東京は秀人がサスペンションで不在です。いわきFC戦のスコッドを予想してたら、中盤と最終ラインの人手不足はかなり深刻ですね。シーズンインからは予想外です。シフトは今日も4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは徳永と諒也。今日のボランチは草民とヒデです。WGは右に広貴左にムリキ。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

神戸は岩波がリオオリンピックで不在。ペドロ・ジュニオールとニウトンが戻ってきました。シフトはオリジナルは4-4-2のようですけど、今日は4-1-4-1です。GKはキム・スンギュ。CBは伊野波と北本。SBは右に峻希左に2ndから新加入のわたる。アンカーはニウトン。IHは右に三原左に英雄。WGは右にマックス左にペドロ。1トップはエースレアンドロです。

神戸が3CH+WGのサイド加重で臨んだ作戦がさっそく奏功します。神戸はライン際にはるペドロにボールを集めます。ペドロの周りに峻希と三原を集め、右サイドでのポゼッションを高めます。その間にマックスがやや内に絞り、変わりにわたるが高く位置取ります。神戸は右で作って左に仕掛けるサイドアタックを志向します。ボールを持ててかつ前を向いて仕掛けられるペドロにボールを預けることで、いわばオープニングブローを決めようとしたのでしょう。これで必然的に東京は守勢に回らざるを得ません。神戸は最終ラインを高く保ち、東京を包囲します。

右で作って左で仕掛けるかたちですからサイドチェンジがポイントになるのですけど、神戸のそれはわざわざ手数をかけます。中盤でニウトンを要とし、バイタルエリアの右に三原左にマックスを置く逆三角形を作ります。この縦配列でパスを交換しながら、じわじわとサイドを変えます。中盤でアクセントになるのが、フリーマンの英雄です。英雄はどちらかというと左サイドの守備でのハンターが主任務だと思います。でも神戸がイニシアチブを握った序盤は、比較的律儀に職場を守る神戸の中盤のなかでは唯一スペースメイクが許されていますから、英雄が作るべきスペースに神戸のチャンスコースが生まれると言っていいと思います。つまり今日の神戸はフリーマンの出来次第。

神戸は美しいパス回しで東京を圧倒します。でも5分を過ぎるとバタッと止まります。理由は結局よくわかりませんでした。神戸サイドで考えると、真夏のノエスタでのプレーを知っていますので、オープニングブローで結果が出なかった場合は、コンディション維持のため、サッサと省エネモードに入る約束事なのかもしれません。それから、神戸が止まる直前に東京がカウンターブローを一発かましましたから、その威力を見て、とくにムリキのコンディションを確認して、セーフティモードに切り替えたのかもしれません。

今日のムリキはキレがありました。やっぱりオリンピックでこころ沸き立つものがあるのでしょうね。それに暑さが苦にならないのかもしれません。篠田体制になってからの東京はムリキ大作戦に偏っていますから、責任感とやってやる感に満ちているのでしょう。ムリキは左サイドで基点になるだけでなく、狭いエリアでのスペースメイクでシュートオポチュニティを自ら作っていました。ただムリキは、レンジ内で、傍目にはコースもタイミングも有りそうに見えるときにパスを選択する傾向にありますね。ムリキの本質はチャンスメーカーなのかもしれません。そうなるとやはり、絶対的なシューターが不可欠になってきます。

神戸が止まったので、やおら東京がイニシアチブを握ります。ここから前半終了までの闘いかたは見事でした。守備面では、おもしろいように流れていた神戸のパス回しを寸断します。神戸の重心が下がったせいもあるのですけど、中盤とペドロ、マックスとの距離が開くため、神戸の縦パスがホスピタルになります。草民とヒデはそこを狙います。中盤を支配できるようになったので、篠田東京本来の攻撃プランを繰り出すことができます。

もはや3試合目ですから確認できた通り、篠田東京の基本プランはサイドアタックです。特長は、サイドに人数をかけること。ライン際の基点で時間を作っている間にアタッキングサードのサイド奥にフリーマンを走りこませるパターンです。

神戸の守備は、中盤がやや前加重です。IHはフォアチェックをかけるではなく、持ち場の守備エリアをケアします。なので、東京が中盤でボールを回すと、おのずと三原も英雄も前に出てきます。この場合、バイタルエリアのケアをニウトンひとりが担うことになります。なのでニウトンは、横スライドでボールサイドに寄せる傾向があります。バイタルエリアの横幅いっぱいがニウトンの職場になりますけど、さすがに広過ぎますね。ですから、東京が攻撃時で最も安定させたいサイドの基点がきっちり作れます。

さらに東京は、全体の重心を高めることで、アタッキングサードで基点を作れるようになります。徳永のスルーに慶悟が抜け出したビッグチャンスは残念ながらシュートに至りませんでしたけど、これを合図にしたように東京のサイドアタックが機能しはじめます。そして、攻め続けた東京が結果を見せます。

40分。スンギュのパントをセンターサークル付近でモリゲがフリック。前方の草民に渡します。草民は右の広貴にパス。広貴は慶悟とのタベーラで、神戸の中盤ラインに沿って横移動し、ヒデにパス。ヒデも左にスライドしながら諒也に渡します。ここから東京は加速します。まず諒也が前方ライン際のムリキにパスして攻撃スイッチを押します。諒也に渡すと同時にヒデがスプリントを開始。ムリキはタメを作って峻希を引き付け、ライン際を縦に走らせるスルーを送ります。ヒデは峻希の後方のスペースをゲット。三原がマークしますけど、スプリント開始の反応に遅れてヒデを捉えられません。アタッキングサードに入って追いついたヒデは余裕を持ってゴール前をルックアップ。ゴール前は東京が三枚に対し神戸は五枚の3on5の数的不利です。ヒデは一度切り替えして三原をはがす念の入れようでキープし、峻希を置いてけぼりにしてオーバーラップしてくるムリキにお返しのスルー。ペナルティエリアに入ったムリキは、寄せてきた北本を縦のトラップ一発で振り切ってマイナスのクロスを送ります。ボールをウォッチャーになっていた伊野波の背後をとった慶悟がニア入りますけど、シュートフェイントでスルー。その後ろに遼一がフリーでした。遼一は右足ダイレクトで流し込みました。神戸0-1東京。

すべて神戸の先手をとった、思考がスッキリした素晴らしいゴールでした。完璧なオーガナイズで試合をコントロールした上、前半のうちに先制までしましたので、今日の守備の安定感を見ると、このまま逃げ切れるかもなどと考えていました。前半はリードして終了。

後半頭からネルシーニョさんが動きます。英雄に代えて中坂を投入します。同時にシフトをオリジナルの4-4-2に変更します。レアンドロが右、ペドロが左の2トップ。三原がボランチ。マックスが左メイヤに回ります。中坂は右メイヤに入ります。このネルシーニョさんが切ったたった一枚のカードで、試合の様相が180度変わります。

神戸は中坂にボールを集めます。中坂のポジショニングが秀逸です。東京の左サイドは、ムリキがノリノリだった故か、ムリキと諒也の間が開き加減です。なのでヒデの脇のエリアにスペースができます。中坂はそこに固定されます。この楔がいやらしく機能します。中坂はボールを持つとバイタルエリアを左サイド側にスライドします。前半同様右で作って左で仕掛ける作戦を中坂なりに表現したのかもしれません。でもこのプレーそのものに威力はありません。中盤の守備ラインに沿ってただ横滑りしてるだけですから。でも、中坂を表に出し、かつ奇妙な仕掛けを見せることで、東京守備網に中坂の残像がインプットされる効果はあったかもしれません。そう!。もしかするとネルシーニョ神戸の真の狙いは、中坂を使った囮漁だったかもしれません。そしてその作戦が姿を現したファーストアタックが決まります。

56分。峻希のアタッキングサード付近のスローインから。峻希は、直前のプレーで攻撃参加していた流れのまま、前線に走る北本を走らせます。キープした北本は諒也を引き付け、フリーにした峻希に戻します。峻希はルックアップ。ペナルティエリアにはニアにレアンドロ、ファアにペドロ。東京は三枚揃っています。峻希はシュート直結を諦め、可能性を広げるべく、ペドロの背後に柔らかいクロスを送ります。このアイデアが秀逸でした。ペドロは徳永を背負ってキープ。これに草民と広貴もつられます。ペドロは丁寧にレアンドロにパス。これに東京守備陣は全員つられます。この間、ずーっとマックスがどフリーです。さすがに東京はちょっとお粗末なマーキングでしたね。レアンドロは丁寧にマックスに渡します。マックスは右足ダイレクトでたたき込みました。神戸1-1東京。

定石であれば、神戸の右サイドのケアを何とかしたいところです。たとえばムリキの位置を少し下げて4-4-2にするコンサバ作戦もあったでしょう。監督の志向性が分かれる局面かもしれません。篠田さんのチョイスは攻撃でした。慶悟に代えてインスを同じくボランチに投入します。長めのカウンターを用意したと言って良いかもしれません。前線でボールを収めるのではなく、神戸のラインの裏に脅威を作ることで、神戸の重心を下げる意図でしょう。

でもこれは機能しません。そもそも裏を狙ったパスを出す余裕が東京から無くなります。同点になって神戸のポゼッションの圧が高まり、東京守備陣は守備に奔走されます。この圧の強度とタイミングのコントロールが今日の神戸は絶妙でした。やはり暑いノエスタを知っているアドバンテージでしょう。そして流れは変わらず、逆転を許します。

64分。峻希のやや右寄りの長めのFK。このクロスはヒデがはね返して左に流れます。大外にいたわたるが拾ってルックアップ。ゴール前はFK崩れで、ちょうど左右に揺さぶられたかたちになって、ちょっとマークにズレがあります。ニアのペドロは草民、ファアのレアンドロは徳永がマークしていますけど、中央のニウトンは、マークのヒデがクリアで前に出ていたためどフリーです。わたるはこれを見逃がしません。ピンポイントのクロスをニウトンが豪快に頭でたたき込みました。神戸2-1東京。

このあたりから、まるの様子に異変が出てきます。らしくないミスが目立ちます。マークする相手にもついていけません。まるはすでにこのあたりから熱中症の症状があったのかもしれません。だとしたらとても危険ですから、まる自身の体のために、チームを含め再発しないようなケアをして欲しいと思います。ヒデも同様に熱中症で動きが鈍くなります。なにかあってからでは手遅れですから、試合中のケアは本人、周りの選手、レフリー、チームスタッフがしっかり注意して欲しいです。とにかくまるとヒデに大事がなくて安心しました。

熱中症はともかく、前半の神戸はいわゆる三味線だったのかもしれませんね。東京に攻めさせてコンディションを奪う意図もあったとしたら高度な作戦です。ネルシーニョさんならやりかねないと思えるところがすごいです。そして、手負いの東京に猛牛が襲いかかります。

65分。伊野波のクリアを自陣深くで処理しようとしたまるをペドロがチェイス。まるはかろうじて諒也に渡します。背後に中坂が迫った諒也は中央のヒデにホスピタル。ヒデも戻ってくるムリキに渡して局面をサイドに移そうとしますけど、パスが弱く中坂がカットします。この時前線はニアにペドロファアにレアンドロ。それぞれまるとモリゲがついています。右サイドに峻希が上がっています。諒也は中坂と峻希を見ないといけない難しい1on2の局面です。諒也を引き付けた中坂がやはり峻希にパス。これを諒也がよく戻ってきてカット、前方のムリキに渡します。でもすぐにムリキにニウトンが迫ってターンオーバー。こぼれを戻ってきた中坂が拾ってサイドチェンジ。局面が左に移ります。中坂からパスを受けた中央の三原からわたるへ。わたるは左ライン際に流れてきたペドロに縦パス。ふたたびアタッキングサードに入ります。ペドロはルックアップ。この時ゴール前は、実質レアンドロとまるのガチ1on1です。たぶんペドロは、レアンドロの雰囲気で意図を察知したのでしょう。レアンドロはアウトステップでまるの背後を取ります。ペドロはまるの頭を越えるクロスをファアに送ります。そこにいたのはレアンドロだけでした。神戸3-1東京。

まだ2点差ですから、立て直す手立てを考ずる価値はあったと思います。ロジカスに考えることを好む人は、まずは問題点に対処することを望むでしょう。今日の問題点は明確でしたし。一方でサッカーはひとつの打ち手で形勢を一気に逆転できるスポーツでもあります。実際ネルシーニョさんがそうでしたし。ぼくらファンもサッカーの嗜好を持っていて、ひとり一人違います。今日はもしかしたら、受け取りかたがサポーターによって全然違う試合だったかもしれませんね。篠田さんが取った作戦はここでもアグレッシブでした。広貴に代えて相太を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。インスが右メイヤに回ります。前線にターゲットマンを置いて攻撃の方向をわかりやすくすることを意図したのでしょう。相太のボール保持力で、チームの重心を押し上げる期待もあったと思います。でも、そもそも重心が低い原因は中盤ですから、やっぱり相太だけでは状況を変えられません。

リードしたことを受け、ネルシーニョさんが動きます。4+4の守備網をしっかり作って、ゾーンを堅固にします。チームを落ち着かせる作戦だと思います。

これに篠田さんが続きます。遼一に代えて羽生を投入します。同時にシフトを4-2-3-1に戻します。羽生は右WGに入ります。ようやく中盤にメスを入れますけど、どちらかというと問題対処というよりかは、広貴のコンディションの考慮の意味のほうが強かったと思います。守ってカウンターという図式でコンセンサスが出来た神戸は、勢いをそのままに着実に点を重ねます。

74分。センターサークル付近で東京の攻撃を止めた神戸がトランジション。中坂に渡して右に展開します。中坂はキープしてターン。サイドを変えます。三原に渡して、わたるに展開。わたるは寄ってきたマックスに渡します。マックスがペドロに渡そうとした縦パスは東京守備網にかかります。ヒデが持ち出してムリキサイドに展開しようとドリブルしますけど、これを中央付近でニウトンがカット。ニウトンは、前方でスペースに向けてスプリントを開始したペドロを見て帖著なくロングスルー。ペドロが抜け出します。ペドロは、寄せてきたまると秋元を丁寧にかわして流し込みます。神戸4-1東京。

サッカーには、何もかも上手くいく日もあるんですね。長く見ていても、逆の状況はよく経験するけど、やる事成すこと上手く行ってる試合の記憶はあまりありません。ネルシーニョさんが〆にかかります。マックスに代えて石津を同じく左メイヤに投入します。マックスのコンディションを考慮しつつ、オラオラ系ドリブラーを入れて、攻める東京の背後に脅威を植え付けようという意図でしょう。

最終盤にアクシデントが起きます。コンタクトで北本が負傷して下がります。代わりに祥平が同じくCBに入ります。ひとつくらいは計算外を入れとくか、くらいのサッカーの神様のノリでしょう。結局、東京のあがきも流れを変えられず、このまま試合終了。神戸4-1東京。

ホントのところは、ネルシーニョさんの作戦がすごいのか、東京のコンディション不良のせいかはわかりません。おそらく両方でしょう。それでもやっぱり、ネルシーニョさんと篠田さんの采配の結果が綺麗に明暗を分けましたので、素直にネルシーニョさんに賛辞を贈りたいと思います。

あくまでも結果論ですから、篠田さんの采配が良くないというわけではありません。仮に中盤の問題が見えていたとしても、もちろん見えていたのでしょうけど、対処しようにも選手がおらず作戦の選択肢が無かったことも事実です。編成は如何ともし難いので、今日は今日で、甘んじて受け入れるのが妥当かもしれません。

一番心配なのは、繰り返しますけどコンディションです。まだまだ暑い危険な時期が続きますので、くれぐれもケアしてほしいと思います。


2016J2リーグ第28節横浜FCvs北海道コンサドーレ札幌@三ツ沢20160811

2016-08-13 13:59:23 | サッカー

毎日暑いですね。みなさん体調にはくれぐれも注意してください。

暑いだけでなく、リオオリンピックの連日のメダルラッシュでヒートアップして熱いです。

今日からお盆前の四連休。肝心の東京トップチームが神戸に行っちゃって観られないし加賀さんも名古屋なので、お留守番の間に浮気します。

山の日ということで、横浜三ツ沢に登山です。本日はフリエvs札幌。絶好調なシーズンを送っている札幌をずっと観たかったのですけど、なにしろホームが遠く札幌ですから、なかなか観られず真夏のこの時期になりました。フリエも中田監督に変わって調子を上げていますから、楽しみな対戦です。

互いに好調の片鱗を見せるも消耗戦となり、フリエがセットプレーからのジャンボの値千金を守り抜きました。

フリエは5戦無敗中。四月以来の連勝で上昇気流に乗ってます。当然ベストメンバーです。シフトは4-4-2。GKは雄太。CBは西河と大崎。SBは右に藤井左に田所。ボランチは謙介と中里。メイヤは右に野崎左に野村。2トップはイバとジャンボです。

札幌はもっと好調です。10戦無敗。四連勝中の現在首位。四方田札幌の布陣の特長は日替わりオーダーです。連勝とはいえ失点が続いているので、また今日も布陣を変えてきました。シフトは最近なかなか見ないクラシックな3-4-1-2。GKは金山。3CBは右から櫛引、増川、福森。ボランチは深井と堀米。WBは右にマセード左に石井。トップ下は宮澤。2トップは荒野とエース都倉です。

プレーオフ導入以来のJ2は、昇格という結果にこだわった、理念も個性も感じられないサッカーが席巻していました。湘南のように、J1で苦労をしながらも割り切りサッカーから脱皮して、オリジナルモデルに進化させた稀有な例はありますけど、ほとんどのチームが、エレベーターはおろか、J2でも浮上するきっかけに苦しんでいます。なかには大分のように、クラブそのもののリビルドを強いられる例もあって、チームと地域に実力が伴わないJ1参戦の是非が問われても良いのではないかと思います。

ところが今年は、様相がガラッと変わっています。昇格後の過ごしかたのモデルとして、甲府や湘南が良いケーススタディになっているのかもしれません。今年好調な山雅、セレッソ、ファジはいずれもしっかりとパスをつないでくる、試合を支配することを目的としたサッカーです。今年観戦できたJ2は山雅、セレッソ、熊本、北九州だけですけど、震災にあった熊本はともかく、最下位にいる北九州すらアクティブなサッカーを志向しています。そこには、もちろんJ1を目指す目標は変わらずとも、チームをしっかりと地域に根ざすために、サッカー文化そのものを作ろうという高い志があるような気がします。Jリーグのマネジメントの成果なのかはわからないけど、クラブ自身が地域であがくなかで、生き残るために自然に湧き出たもののような気がします。

ということもあって、首位札幌がどんなサッカーをするのか、とても興味がありました。結論を言うと、やはり期待に違わず、コレクティブなサッカーを志向しています。さらに札幌だけでなくフリエのサッカーもとても近代的な綺麗なサッカーで、ちょっとびっくりしました。やっぱりJ2は変わってきているのでしょう。良い傾向だと思います。

札幌は中盤でスモールゾーンを形成することを基本プランとします。WBを基点として、ボランチに加えて宮澤もしくは荒野が絡むトライアングルを作ります。このことでフリエの4+4のオーソドックスな守備網のバランスを崩して、バイタルエリアもしくはSBの背後にスペースを作るという意図です。そこに右は宮澤、マセード、左は荒野、石井が入ります。さらに堀米が運動量豊富に動いて、前線のやや下の位置に入ってハブを担います。バイタルエリアが取れた場合は、中央に構える都倉を基点とした中央突破を狙います。サイドを抜け出した場合はもちろんクロスです。

札幌が支配を前提としている作戦の表れは、サイドでスモールゾーンを作ること自体にあります。札幌はある意味でコンサバティブとも言えます。スモールゾーンを作るのは相手守備網を崩す意図が主ですけど、ボールを奪われる可能性を回避することも含みます。ですからフリエの守備網にほころびができないと見るや札幌は無理せず、最終ラインを経由して攻撃サイドを変えます。札幌はこの左右の揺さぶりを基調とすることで、ポゼッションを保持しながらチャンスを伺います。この闘いかたである限り、爆発的なパッショナルな試合にはならなずとも、成績は高いレベルで安定するでしょう。実際、今年の札幌は強いです。

ただポゼッションするだけだと、良くあるパスは回るけどシュート打てないチームになってしまいます。札幌はパスを回しつつ常に縦を狙っています。札幌の強さのヒミツはここなんじゃないかと思います。もちろん中盤のボールホルダーが縦を狙うのは当たり前のことです。それが難しいのはパスコースに受け手が必要なこと。札幌はそれほど運動量をかけているようには見えないのですけど、前線の選手が的確にスペースメイクするのでどんどんアタッキングサードに入っていけるのでしょう。

もうひとつのヒミツは、チャンス時にゴール前にかける人数が多いことです。たとえばクロスが入ってくる場面では、逆サイドのWBはもちろんのこと、ボランチもペナルティエリアに入ってきます。

ただ札幌の攻撃に色気を与えているのは、やっぱり都倉でしょう。都倉が前を向いてボールを持ったときは空気が一変します。今年の札幌の魅力は、コレクティブでロジカルな組み立てと魅力的なタレントが上手くミクスチャーできているところにあるような気がします。

それでも、守備が少しルーズに感じるのは、今年の終盤戦と昇格後を考えるとちょっと気になります。今日の試合は激しい中盤の主導権争いで幕を開けます。先にこれを征したのは、前述しましたように中盤でボールを持てる札幌です。でもほどなくフリエにイニシアチブが移ります。

はじめこそ札幌のコレクティブな攻撃への対応に苦労していたように見えたフリエですけど、札幌のアタッカーが狙うスペースメイクのパターンになれると、本来の4+4のゾーンで十分対応できる算段ができたのでしょう。中盤と最終ラインでトランジションできるようになります。

フリエの攻撃は、とてもシンプルです。中盤で組み立てをする札幌と対照的に、フリエは縦に急ぎます。特長はターゲットにあります。フリエは前線にデカい二人を置いていますけど、イバにしろジャンボにしろ、ポストの預け先にはなりません。ターゲットは左右のメイヤです。野崎と野村は、攻撃時にやや絞り加減なポジションを取ります。狙いはボランチの横のバイタルエリアです。

おそらくそこが札幌のウィークポイントなのではないかと思います。札幌は攻撃時にWBを上げ、さらに堀米も積極的に攻撃に絡みますから、必然的に中盤にリスクが生まれます。フリエは手数をかけず中盤を省略してダイレクトにメイヤにつけることで、札幌の守備の手薄をつく作戦だったと思います。

それを為すに十分な攻撃性が野崎と野村にはあります。野崎にしろ野村にしろ、パスを受けるだけでなく自ら前を向いて仕掛けられます。なので、フリエに縦への推進力と躍動感が生まれます。

札幌同様、いまのフリエには前線の基点に対する信頼感が生まれているのだと思います。好調の要因はまさにそこにあるのでしょう。野崎と野村にパスが入ると、藤井と田所が一気に攻撃参加に走ります。とくに野村と田所のコンビネーションが確立されていて、フリエのストロングポイントになっている印象です。田所は1on1で縦に仕掛けて相手を置き去りにできるスピードを持っていますから、ピッチ上の選手だけでなく、フリエサポにも田所がボールを持ったときのストーリーが出来上がっているようです。

さらにフリエは、機を見て謙介が積極的に攻撃参加します。こうして、中央の二枚だけでなく、セカンドアタッカーをペナルティエリアに揃えることができます。けしてフリエが守ってカウンターという単純なサッカーではないことがここでも伺えます。

フリエの攻撃は、メイヤを基点とした高速アタックだけではありません。大崎と西河からのロングフィードを直接イバとジャンボにつけるパターンもあります。長短の攻撃を織り交ぜることで札幌の守備陣に後方を意識させ、主武器である高速つなぎアタックを有効にしているのだと思います。

ただフリエの攻撃は、ペナルティエリアまでは順調に進めるのですけど、野崎にしろ野村にしろ、あるいはSBのアタックを使った場合でも、ペナルティエリアに仕掛ける技がまだありません。せっかく中央にツインタワーを持っているのですから、比較的単純なクロスでも十分威力があると思うのですけど、肝心のクロスが精度をかきます。ゴール前に人数をかけることができていますので、ハイテンションのまま一気にゴール前に放り込むかたちでも、ニア、中央、ファアそれぞれにチャンスを作れそうな気がします。このあたりがフリエの課題かもしれません。いずれ、この高速アタックははまると威力を持つでしょう。前半は互いに攻撃の特長をしっかり出せた緊張感のある攻防でした。スコアレスのまま終了。

後半に入ると、試合の様相がガラッと変わります。今日は風が通って涼しいとはいえ真夏であることに変わりはありません。選手に前半のようなアジリティを感じられなくなります。必然的に、フリエの場合は縦の仕掛け、札幌の場合はスペースメイクができなくなります。こうして試合は、前半の流れからフリエがイニシアチブを持ちつつも、真夏らしい消耗戦に入っていきます。

先に四方田さんが動きます。石井に代えて内村を同じく左WBに投入します。まずはサイドアタッカーをフレッシュにする意図だと思います。内村はドリブルで独力の仕掛けができますから、消耗戦のなか、少なくともアタッキングサードに運ぶまでは、綺麗なサッカーにこだわらないということだろうと思います。

札幌がイニシアチブを握り返すことができるか注目していると、これまた真夏らしくセットプレー一発で試合が動きます。

70分。野村の左CK。フリエはオーソドックスな構えです。ゴールエリアにイバ、西河がいる三枚を置きます。主力はペナルティエリア内に単横陣で四枚です。札幌はマンマークとゾーンのハイブリッド。ストーンはゴールエリアに二枚。後はそれぞれマークに付きます。野村のキックモーションと同時に、主力がファアサイドに飛び込みます。近めに大崎、その奥にジャンボ。野村の狙いは大崎でした。これは金山が弾きますけど、こぼれたボールがジャンボに向かいます。ジャンボは倒れながら左足ダイレクトでたたき込みました。フリエ1-0札幌。

時間はまだ十分にあるのですけど、中田さんは勝負に徹した考えだったと思います。常套ではあるのですけど、逃げ切りも少し意図したでしょう。フリエは4+4の守備網を維持し、守備を重視した作戦に切り替えます。

先制された四方田さんが動きます。堀米に代えて伸二をトップ下に投入します。宮澤がボランチに回ります。宮澤は運動量もある、比較的プレーエリアを広くとるスタイルです。これによって札幌のコレクティブな攻撃の源泉であるスペースメイクの一助になっていることは間違いないでしょう。伸二は中央に構えるスタイルですので、しっかりと攻撃ルートを意識させてシンプルな攻撃を仕掛けようという意図だと思います。

試合の流れを見ていた中田さんがここで動きます。野崎に代えて永田を同じく右メイヤに投入します。野崎のコンディションを考慮した作戦だろうと思います。フリエは引き気味になっていますので、トランジションの位置も必然的に低くなります。攻撃は長めのボールを直接アタッカーにつけるカウンター主体になります。でも、イバもジャンボも野村も活動量が落ちていて、ミスが目立つようになります。永田を入れることで少し攻撃に時間をかけ、守備を落ち着かせる意図だろうと思います。

伸二を入れても守備網を堅く閉ざすフリエをなかなかこじ開けることができません。そこで四方田さんが動きます。櫛引に代えて上原をそのまま右CBに投入します。伸二のセットプレーが増えてきたので、高さの優位性を作ろうという意図だと思います。

これに見た中田さんが対応します。二枚同時代えです。田所に代えて楠本、野村に代えてウッチーを投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。3CBは右から大崎、西河、楠本。ウッチーは右メイヤに入ります。ジャンボが左に回ります。

ここに来てのシフト変更にはびっくりしました。リスクを伴いますから。もしかしたらフリエの逃げ切りを意図するときのパターンなのかもしれません。いずれ、中央に山脈を築くことで、高さへの対応をはかったと思います。さらに、ウッチ―を前目に置くことで、トランジションした場合にボールを落ち着かせようという意図だと思います。

札幌が猛攻を仕掛けますけど、セットプレーを含めキレがなく、決め手に欠きました。結局最後までフリエの堅城を攻略することはできませんでした。このまま試合終了。フリエ1-0札幌。

正直、大変失礼ながらフリエの完成度の高さにはちょっとびっくりしました。カズさんのユニフォーム姿を観られなかったのは残念だったけど、十分に楽しめるコレクティブなプレーを見せてくれました。それだけでなく、スミイチを守り切る粘りと強かさがあります。これで10位。後半戦は上位に顔を出してくるかもしれません。編成次第では、もしかすると来年は面白い活躍を見せてくれるかもしれませんね。

札幌の強さを結果で確認することはできなかったけど、かたちを観ることはできたような気がします。しっかり考えてボールと人を動かすコレクティブなサッカーは、札幌の志の高さを表現しているような気がします。とは言え、縦にはやい仕掛けをされたときにバイタルエリアがルーズになる癖は、来年のことを考えてもしっかりアジャストしたほうが良いと思います。

まだ札幌でコンサドーレの試合を観たことがありません。ぜひ、来年はアウェイ戦で札幌に遠征したいです。なかなか上昇気流に乗れない3位セレッソとも案外それほど勝ち点差を付けられてなく、まだ8月ということもあって予断を許さない状況です。ちょっと失点が増えてきているのも気になります。まずは次節、連敗しないことでしょう。真夏は札幌と本土との気温差が大変だと思いますけど、しっかり乗り切って頑張ってほしいです。