ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2017J1リーグ第24節横浜F・マリノスvsFC東京@日スタ20170826

2017-08-27 20:59:26 | FC東京

真夏が真夏らしくなかった東京ですから、残暑というのはちょっと寂しいのですけど、ひさしぶりに晴れ間が見えたと思ったら残暑が厳しい日々がやってきました。

開催期末ギリギリでトーハクのタイ展に行ってまいりました。微笑みのくにの微笑みの仏像に癒されました。ウォーキングブッダの演出が素敵でした。

上野から一本で行けるようになった横浜。本日はJリーグ屈指の伝統の地味対決、マリノス戦です。

今年も例年にもれず判で押したような地味試合は、これまた判で押したような終盤の交代選手の値千金で、どんよりした敗戦です。

東京は室屋が怪我で離脱。さらに翔哉がラストマッチ。代わってやっちがJ1デビューです。シフトは3-3-3-1。GKは彰洋が復帰。3CBは右から徳永、ヒョンス、まる。WBは右にやっち左に今日は諒也。アンカーはサムライブルー選出の洋次郎。IHは拳人とヨネ。トップ下は嘉人。1トップは遼一です。

マリノスはほぼ前節のオーダーを継続します。シフトは4-2-3-1。GKは飯倉。CBはボンバーとミロシュ・デゲネク。SBは右にマツケン左に山中。ボランチは喜田とタカ。WGは右にマルティノス左にまな。トップ下はあまじゅん。今日の1トップは敬真です。

チームには、人と同じように、能動的な性格と受動的な性格の二極のキャラクターがあると思います。東京を想うにつけ、試合ごとに表現が異なることを考えると、東京は少なくとも近年は受動的なチームなのだろうなと思います。川崎と対戦すると川崎の試合らしく、ガンバと対戦するとガンバの試合らしく、札幌と対戦すると札幌の試合らしくなるように見えるのはこの性格ゆえでしょう。ジンクスが多いチームカラーで、毎年中位を定位置とするのは、もしかするとこのような性格の現れかもしれません。さて、数多あるJリーグのクラブのなかで、ひと際能動的なチームは、8月に入って四試合連続無失点中のマリノスでしょう。

サポーターと、スポンサーに対してビジネスとして向き合うクラブにとって、サッカーには永遠のジレンマがあります。面白いチームを作るか勝てるチームを作るか。もちろん川崎やセレッソのように両立することもできますし、目標としては、鹿島のような例外を除くと両立を目指すチームが大勢だろうなと思います。例外のもうひとつが、伝統のマリノス。面白いチームというのは主観的なとてもあいまいなものです。たとえば鹿島のサポは、おそらく鹿島の試合をおもしろいと感じていることでしょう。それはワクワクするエッセンスがあるから。客観的にも鹿島のサッカーにワクワクを感じる場面がとても多くあります。一方で、マリノスは如何。

現在のマリノスは、ワクワクを封じられている印象があります。マリノスは十分にワクワクの要素を内在するチームです。象徴がまなとマルティノス。まなのドリブルフォームと、マルティノスの躍動するスピード感は、ゴールへの道筋を示す羅津になります。でも今は、このマリノスの誇る両矢を封じられていますから、コンサバティブな闘いからを選択せざるをえない状況なのでしょう。

今年のマリノスには、強いマリノスのDNAを受け継ぐ選手が少なくなりました。それでもなお、チームとして勝ちにこだわる闘いかたを実行し、かつ13戦無敗という結果を残しているのですから、DNAは選手ではなくチームに宿っているのではないかと思えます。タカやマツケン、山中、デゲネクのプレーを見ていると、アルゼンチン志向だった草創期のマリノスのすがたを彷彿とさせる上手さと強度を感じます。

今年のJリーグには、個人的におどろきを感じる復活がいくつかあります。以前お話ししたように、山村や健勇、浩之です。そのなかのひとりにタカがいます。くしくも大阪に関わる選手が並んでいますけど、これはたぶん偶然。タカは様々なチームを流れた結果マリノスに辿りついた漂流者です。ようやくマリノスで地位を得たのは、マリノスケというブラザーがいた縁もあると思いますけど、マリノスが伝統的に持つスタンダードを受け入れたことが、遅咲きの花をようやく開花させた理由なのだろうなと思います。

タカを含む喜田とあまじゅんで構成する中盤の三角形は、ちょうど洋次郎、拳人、ヨネの逆三角形と相四つで組むことになります。それゆえ、中盤の攻防が試合の趨勢を握るクリッピングポイントになります。マリノスの守備の堅さは、まずは中盤のコンセントレーションにあると思います。中町が入っても同じですけど、マリノスの中盤は、各選手の守備範囲が広く、かつコンタクトが強いのが特長です。それでいて粗さのようなものはなく、全般的に守備が上手い印象があります。これがマリノスの試合を観ていて、当たりが激しいのだけどけして危険ではなく、安心して観ていられる理由だろうなと思います。

マリノスは特別な守りかたをしているわけではありません。むしろ、Jのなかでも突出してオーソドックスです。前線からのフォアチェックを基点とした追い込み型の守備プランですから、守備網全体の位置はけして低くはありません。極端にラインの維持にこだわることもありません。なので中盤は、相四つという組み合わせもあって、マンマークに近いかたちをとっていたようです。全体的な印象でも、守備の堅いチームに見られるスペシャルな強度や圧倒的な美しさはほとんど感じません。むしろ13戦無敗、四試合連続無失点が信じられないほど、東京は攻めることができていました。

これはつまり、よく分からないけれど、ようするにボンバーとデゲネクの最終的な両巨頭が凄いとした言いようがないのだろうと思います。それでも、ボンバーとデゲネクを抜いたシーンは、前半に洋次郎が単独突破したビッグチャンスがありました。たった一回のことだけれど、少なくとも100%両CBに封じられたわけでもありませんから、飯倉を含めた守備力なのだろうなと思うとともに、直近13試合のなかにはラックも少なからずあったのだろうなと思います。でも、間違いなく、運も実力のうち、です。

マリノスの攻撃はサイドアタックに偏重しています。攻撃もこれまたオーソドックスかつシンプル。目指すテーマは、いかにサイドで良いかたちを作るか。最終的なクロスの供給はマツケンか山中が担うことが多いです。つまりマルティノスとまながアタッキングサードで時間を作り、SBに渡すタイミングで一気に攻撃をスピードアップすることがマリノスの信条です。クロスはGKとラインの間を通す、高速低空系に威力があり、逆サイドのサイドプレイヤーが飛び込みます。今日はあんまり見られなかったけれど、SBのクロスにSBが合わすようなプレーもあるのだろうと思います。これもマリノスの伝統的なシュートパターン。

まなもマルティノスも、縦への独力突破が今日はほとんどありませんでした。まなに至っては有効なドリブルができたのは後半の数回だけ。おそらくマリノスのは、すでにマルティノスとまなを状況打破の主武器にするプランから、二人を基点、つまり囮にする作戦にアジャストしているのだと思います。俊輔というコンダクターがいなくなりましたから、いっそう基点を上手く使ったシンプルなコンビネーションが重要になっているのでしょう。そこで楽しみにしていたのが、現在のキープレイヤーであるあまじゅん。あまじゅんのトップ下のスタイルは、最近には珍しいいかにもトップ下然としていて、懐かしさとともに新鮮さも感じます。俊輔が広範囲に動くスタイルだったこともあって、対比の妙味があります。あまじゅんは基本的に中央にはります。これはおそらく、左右のアタッカーがほっといても動くので、上手くかつ柔軟に絡めるように中央にどっかりと存在するのでしょう。それから、今年の味スタでの初ゴールできっかけをつかんだのか、ミドルショットも持っています。今日は最終的な仕事を見せる場面がほとんどなかったけど、新生マリノスの方向性を作る、重要なプレイヤーであることは間違いないと思います。

東京は、模索を繰り返してきた新システムの定着期に入っているのかなと思いました。相手によって攻撃的あるいは守備的にモードを可変してきましたけど、浦和戦といい今日のマリノス戦といい、攻守両面具有するスクエアな闘いかたで臨んでいます。ただ、ミッドウィークにルヴァンカップベスト8を控えていることもあり、マリノス戦がタイトなロースコア勝負になることが目に見えていたことも受け、今日はいくぶんコンサバティブでした。IHの位置はスクエアでしたけど、WBが今日は下がり基調です。このため、当然徳永とまるの攻撃参加も限られていました。

J1リーグデビューのやっちはともかく、諒也は攻撃モードと守備モードが分かり易い選手です。ヨネとのイメージ共有がズレている場面の何度かあったので、かならずしもチームとして守備的に闘おうとしていたわけではないのかもしれません。ただ、マリノス対策の基本としてマルティノスのケアに比重をおいていたことは間違いないと思います。

やっちは前半はJ1のクオリティに馴染む時間に費やしていたようです。後半になって、積極的な攻撃参加を見せていました。攻撃におけるやっちのストロングポイントはまだ見せられていなかったと思いますけど、アーリークロスが多かった諒也に比べると、サイド深くをえぐるプレーを好むようです。サイドアタッカーの評価点のひとつは、攻撃参加のタイミングです。攻撃の流れのなかでノッキングを起こさないことが、サイドアタックを機能させる重要なファクターです。今日のやっちは観ていて違和感を感じることがありませんでした。タイミングもさることながら、ポジショニングの良さも持っているのかもしれませんね。

守備的なチームが勝つには、単純だけど一撃必殺の攻撃力が必要です。それは、結局は個の能力に帰結します。マリノスは、まなが封じられている現状では絶対的なエースは存在しません。愚直なるも、最大の武器である高速サイドアタックを繰り返すことで、それでもJ1上位水準を維持するタレントのだれかが決めた1点が試合の結果を導くという闘いかたです。ところで、東京。東京の絶対エースは嘉人です。新システムが機能をしていく過程のなかで気になるのは、嘉人のシュートアテンプトです。トップ下というポジションによるものなのか、完全復帰してまだ間もないコンディションの問題かわからないけど、嘉人のシュート数が減っているのは気になります。逆に嘉人のチャンスメークは増えていて、嘉人のシュート数は遼一や拳人、洋次郎など他の選手のシュート数とトレードオフのようなかたちになっています。相対的に見てそのほうが結果が出る可能性が高いのであれば良いのだけれど、今日の再三のシュートミスを見ると、また編成の悩みに入らないといいなとちょっと心配です。

過去のマリノス戦の流れを考えると、洋次郎のシュートが決まっていたら、勝てないまでも負けはしなかったろうなと思います。前半は例によって押し問答を繰り返すような地味な内容で、スコアレスのまま終了。

後半からちょっと様相が変わります。マルティノスとまなが縦への仕掛けを見せるようになります。これにより、マリノスの攻撃が活性化します。一方、東京もサイドのケアで自重気味だったやっちと諒也が積極的な攻撃参加を見せるようになります。これにより、攻守の切り替えがはやまり、少しだけ試合が躍動してきます。

そこでエリクさんが動きます。敬真に代えてウーゴ・ヴィエイラを同じく1トップに投入します。敬真は攻守とも運動量が豊富で、ポストも安定していたのですけど、肝心の最終局面でシュートに絡むプレーがあまりありませんでした。チームとして縦への仕掛けができるようになったので、シューターを中央に置く意図だと思います。

ところが、これで逆に試合がふたたび落ち着きます。前半と同じように、中盤の攻防を中心にした押し問答がはじまります。そこで篠田さんが動きます。遼一に代えて永井を同じく1トップに投入します。縦に長いボールを入れて、より高い位置で基点を作る意図だと思います。

篠田さんが続けます。ヨネに代えて翔哉を投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。翔哉はトップ下に入ります。嘉人を一枚上げることでシューターを増やす、新システムのアジャストの常套です。ヨネにはまだ出場時間制限があるのだろうと思います。来月以降を考えて慶悟の選択肢もあるなかの翔哉ですから、翔哉を送り出すセレブレーションの意味も、多少なりともあったと思います。

直後にエリクさんが動きます。あまじゅんに代えて直輝を同じくトップ下に投入します。ドリブラーアタッカーを三枚横並びに配すことで、局面打開の可能性を広げる意図だと思います。

両チームの攻撃カードの切り合いによって、あらためて攻守の切り替えがはやい、少しばかりオープンな展開になりました。そして攻め処の探り合いのなか、先制を許します。

83分。洋次郎の縦パスをタカがカットしてそのままウーゴにロングスルーを送ります。これはヒョンスがカット。ヒョンスはセーフティに長いボールをマリノス陣に送ります。これをマツケンが拾って中央のタカに渡します。長めのパスの応酬で東京は守備網のリビルド中。タカはサイドを変えて山中に渡します。山中はドリブルで東京陣に入り、左ライン際のまなに渡します。アタッキングサードに入ります。まなはゆったりしたドリブルでカットインしながら時間を作ります。これを利用してタカが長駆上がります。まなはタカにパス。攻撃スイッチが押され、一気にスピードが上がります。この時ゴール前はウーゴとマルティノスに対し3CBは揃っていて3on2の数的優位。ケアについたやっちと並走したタカは、やっちより先に追いつき、ダイレクトで折り返します。東京最終ラインはタカのスピードアップで下がり基調になっていました。この時、ファアにいたマルティノスがダイアゴナルにゴール前に入ってきて、東京のラインの注意を引き付けます。それに対しウーゴはステイします。結果ウーゴはどフリー。タカのクロスはウーゴにピタリと合いました。マリノス1-0東京。

地味なジャブの打ち合いは一撃で勝敗が決まることが多いマリノス戦ですけど、今年も二戦とも同じような展開になりました。状況を変えたい篠田さんがリスクテイクします。拳人に代えてウタカを投入します。同時にシフトを3-3-2-2に変更します。ウタカは永井と並んでトップ。嘉人と翔哉がシャドウ。1ボランチに洋次郎です。比較的コンサバティブな選択が多い篠田さんにして珍しいリスクテイクです。前線にタレントが並び過ぎて、どういう組み立てをするのか良く見えませんでした。結果的には翔哉を真ん中に置いて前の三人をコントロールするかたちになったけど、むしろリスクが顕在化しなくてよかったと思いました。やっちを下げてウタカないし慶悟という選択が通常でしょうから、スクランブルです。結果的にやっちが経験を積む時間を増やすことができたのは良かったと思います。ただ、来月以降のチーム作りも視野にしてほしかったなと思いました。

攻撃に人数をかける東京に対し、マリノスは受けに回ります。リトリートしてからの安定感がマリノスの真骨頂でしょう。翔哉、嘉人、ウタカが狭いスペースで絡もうとしますけど、一定ライン以上の進出を許しません。そしてエリクさんが〆にかかります。マルティノスに代えて勇蔵を投入します。同時にシフトを3-4-2-1に変更します。勇蔵はリベロ。直輝とまながシャドウに入ります。翔哉、嘉人、ウタカのマッチアップを明確にするとともに、永井のスペースもケアする意図だと思います。

結局、マリノスの壁を越えることなく、最後まで攻め手が見つからないまま試合終了。マリノス1-0東京。

福西、相太、兵藤、慶悟、敬真、あまじゅんなどのスミイチ系譜を継いだのは、ウーゴでした。勝てば内容に関係なくスッキリなのですけど、負けると過行く夏のけだるさが重く、ちょっとサウダージでした。

サウダージといえば、今年は見送ることが多い年ですね。ナオの引退表明から、広貴、そして翔哉。ここ数年、東京を通過点と捉えている選手が編成に加わる機会が増えて、翔哉のような例もそのうちあるだろうなと思っていましたから、特段寂しさは感じません。がんばって活躍してほしいと思います。それよりも、よっちがいたころの、ただ上をのみ見ていたチームを構成していたメンバーが少しずつ、でも確実にチームを去っていくようになって、とっくに向かえているターニングポイントからなかなか抜け出せないことがもどかしいです。今はとにかく嘉人と洋二郎に頼るしかないですから、少しずつでも良いので、選手たちが新しい夢を追えるチームを作っていってほしいと思います。

今年のテーマは、笑顔でナオを送ること。ルヴァンカップは是が非でも欲しいタイトル。晩夏のコンディションが厳しい時期の連戦になりますけど、勝ち抜いてほしいです。


2017J1リーグ第23節浦和レッズvsFC東京@埼スタ20170819

2017-08-20 18:53:55 | FC東京

お盆からスッキリしない天気が続きます。

今日は夕方から暗雲がたちこめて、激しい雷雨となりました。試合開催は難しいかなと思っていたら、1時間のディレイで、雷が過ぎたところでキックオフです。

本日は浦和。ポポさんとミシャの確執にはじまった物語も、両監督ともいなくなって一区切りつきました。You'll Never Walk Alone♪

お互いに自らを見つめる内向的な試合は、後半の作戦変更に失敗して、モワッとした雰囲気のままの敗戦です。

東京はほぼ前節を踏襲します。シフトは3-3-3-1。GKは今日も拓生。3CBは右から徳永、ヒョンス、まる。アンカーは洋次郎。WBは室屋と宏介。IHは右に拳人左に今日はヨネ。トップ下は嘉人。1トップは遼一です。

浦和はモリが直前に怪我で離脱です。新加入のマウリシオがJリーグデビュー。シフトはおなじみ、ミシャモデルを継続する3-4-2-1。GKは周作。3CBは右から航、マウリシオ、槙野。ボランチは陽介と勇樹。WBは右に駒井左に大介。シャドウは右に忠成左にムトゥ。1トップは慎三です。

浦和戦は激闘譜を刻んできました。東京は浦和に七連敗中。2014年から9戦勝ちがありません。もちろん流れを止めたいという気持ちを常に持っています。一方、浦和のほうは東京戦をどう捉えているかわからないけれど、ここ数年の対戦を観るかぎり、鹿島や大宮のような特別な感情はないにしろ、成績ほどの与し易さを感じている印象はありません。なので、いつもどの対戦も、観ていて疲れるけどワクワクできました。

それでも、Jリーグが避けることのできない雄大な時間の流れのなかにある以上、お互いにバイオリズムが下がっている状態で対戦する機会も必ずあります。今日は、そんな試合でした。東京はチームをリビルドしている最中です。浦和はもっとセンシティブで、ミシャが去った直後。

浦和戦の楽しさは、試合がタイトになるということはもちろんなのですけど、ミシャのサッカーと向き合うことも理由の一つです。ミシャ浦和の特長は普遍性。ベースとなるスタイルを継続することを信念とします。その上で毎年必ずチャレンジがあり、アジャストのテーマをかかげます。なので、浦和を観る場合、通常の対戦相手には感じることがないデジャブがあります。これは、誤解を恐れずに言えば、自軍を観るときの印象に近いものがあります。基本的なプレーの志向は既知ですから、試合の観戦ポイントは、キックオフから今日の作戦に集中することができます。なので、浦和戦はより濃く試合を楽しむことができるのです。

ミシャ浦和終焉の理由を考える権利は他サポには無いと思いますので、あくまでも堀浦和を観ていきたいと思います。ただ、堀さんのサッカーは、堀さん自身のホントの好みは想像しようがないけれど、現在の状況を考えると少なくともミシャサッカーの延長の上で、必要なアジャストを施すのだろうなと思っていました。その意味では、ミシャを評価する意図はさらさらないのだけれど、どうしてもミシャサッカーの課題に目を向けざるを得ません。

 

堀浦和は、原点に回帰している印象を受けます。俯瞰的に言うと、ポゼッションを優先する、スモールゾーンのスペースメイクを基調とするサッカーです。これぞミシャオリジナルのサッカー。アジャストの最大のポイントは守備の安定を取り戻すことです。今年は、ゴレアーダが二試合ありながら失点も多く、成績に対する直接的な影響は守備です。なので、浦和は、ここ数年取り組んでいた中盤のプレッシングをやめ、5+4の守備網を維持することを優先します。これが試合の印象に強く影響します。絶頂期のミシャ浦和は、サイドの圧力を高めた超攻撃的なスタイルでした。当然守備スペースが広くなるのですが、有能なCBの個のカバーリング能力で補完していました。今後はどうするのか分からないけれど、原点回帰の優先として、現時点ではコンサバティブなアジャストを選択したのだと思います。

攻撃についても、ミシャサッカーの教本を忠実に守っています。今更ではありますけど、攻撃ルートは中央とサイドの二つ。中央は、3トップの繊細なスペースメイクの連動でショートパスを縦につないでペナルティエリア内でシュートアテンプトを作ります。サイドはWBの個の力で、深くえぐってからの低空クロスを主武器とします。リトリート&ポゼッションスタイルである以上、トランジションポイントは低めです。ゆったりとボールを回しながら、攻撃ルートを探ります。でも攻撃スイッチが押されてからのアタックは超高速で、このチェンジオブペースの妙味が相手守備網を混乱させます。

今日の東京は、攻撃的でもなく守備的でもなく、スクエアな入りかたをします。浦和がリトリートスタイルなので守備的な選択をする必要がなく、さりとて攻撃モードで臨むリスクを回避したいという選択の結果だろうと思います。このため、攻守の行方を決めるクリッピングポイントは中盤になります。序盤は東京が中盤を征します。このため、東京がはやばやとリズムをつかみます。

守備は、なのでフォアチェック基調ではなく、中盤で網にかける作戦です。ターゲットは陽介であり、中盤に下がるシャドウです。前半は狙いどころが整理されている印象で、浦和が攻撃スイッチを押す目を抑えることができていました。中盤でトランジションできていたので、高い位置で攻撃をはじめることもできていました。

前半の東京は、まるで攻撃ルートの線が見えるようでした。東京の試合を長く観てきて、東京の攻撃パターンを確認することはできても、シュートに至るルートを予感できた経験はありません。個人的に衝撃を感じていました。それをもたらしたのは嘉人です。嘉人を特に意識して注視しているわけではないのですけど、攻撃のなかで嘉人が視界に入ってくることが多いのです。そして、そのときに嘉人がいるポジションこそ、攻撃ルートの基点なのです。加えて、嘉人がボールを持ったときの意思疎通が、どうやら今日のスターターセットには確立されつつあるのだろうと思います。遼一が嘉人の反対サイドに流れてフィニッシュに備えます。WBが攻撃参加します。IH、とくに拳人が最前線に顔を出します。ヨネが嘉人に絡んでサポートします。洋次郎と3CBがバックアップします。これで、嘉人の選択肢が揃います。チャンスメーカーとしての嘉人は、ここから先のプレーの精度が高く、そのことも攻撃が最終的にシュートで終わる予感を得られる理由なのだろうと思います。

嘉人が、マークされているにも関わらずバイタルエリアのスペースを使える技術に驚きます。観ていると、チェンジオブペースがとても巧みです。ぶらぶら浮遊しながら、スペースを感じると一瞬ですっと入りこみます。嘉人の感性もさることながら、バイタルエリアにスペースを作るような動きをまわりのアタッカーが繰り返している成果なんだろうなと思います。まだまだ嘉人の感覚にシンクロできないシーンも多いのですけど、少なくとも前半のセットでは、嘉人の要求が以前よりも具体的になってきているように見えました。以前は、チームの攻撃への意欲の不足に対しフラストレーションを表現していました。今日の前半は、ボールホルダーが嘉人を選択しなかった場合にアピールをしていました。この差は劇的です。チームが、嘉人を攻撃の軸に据えるために着手すべき具体的な課題を意識できるようになったということを表わしています。コンセンサスがとれるようになり、もっと複雑で意外性のあるコンビネーションプレーができるようなったら、この新スタイルは強力な結果を見せてくれるような気がします。

東京がリトリートする浦和に対してもスペースを上手に使えていたので、今日はイニシアチブを握れそうだなと思った矢先、浦和の、実に浦和らしいワンアタックで先制を許します。

17分。例によってゆったりと最終ラインでボールを回してチャンスを伺う浦和は、航が右ライン際で駒井に縦パスを入れることで攻撃スイッチが押されます。駒井は下がってきた忠成とタベーラで裏を狙います。これで、駒井と宏介のよーいドンの状況になります。駒井の初速が宏介に勝ります。先にボールに追いついた駒井は、宏介が追いつく前に中央に折り返します。このクロスがムトゥに合います。これで勝負あり。東京は突然の攻撃にふいをつかれ、下がり基調でマークができていません。少しパスがズレたムトゥは右足を伸ばします。これでポストが浮きます。そこにちょうど入り込んでいたのは慎三でした。慎三は右足ダイレクトボレーで流し込みました。浦和1-0東京。

失点はしましたけど、なんとなく大丈夫な雰囲気がありました。時間帯がはやかったですし、浦和にイニシアチブを握られた状態ではなかったからです。そして、きっちりと追いつきます。

22分。浦和のおかぶを奪うかのようにゆったりと最終ラインでボールを回してチャンスを伺う東京。ヒョンスから中央のヨネに縦パスが出ます。このとき、一瞬バイタルエリア中央にぽっかりと穴ができます。そこを嘉人が見逃しません。ヨネは嘉人にパス。アタッキングサードに入ります。嘉人は寄せてきた航を引きつけながら時間を作ります。このとき右サイドを室屋が上がっていました。これを見た嘉人は最終ラインに入っていた大介の裏に落ちるロブを送ります。このパスで浦和のラインはボールウォッチャーになっていました。このとき、ヨネと嘉人がチャンスメークする流れのなかで、拳人がダイアゴナルな動きで前線に上がっていました。これを見た室屋は、嘉人のクロスをダイレクトで丁寧に折り返します。フリーの拳人も丁寧に左足ダイレクトで流し込みました。ラブリー。浦和1-1東京。

失点しても、チャンスである5分以内に取り返すことができるのですから、やはりこうすれば点を取れるというかたちのようなものができつつあるのかなと思います。攻撃力の自力が上がっている気がします。ところが、またも絵に描いたようなザ・浦和なアタックで追加点をあびました。

30分。そして例によってゆったりと最終ラインでボールを回してチャンスを伺う浦和。一度前線に上がった陽介が下がってきます。このときバイタルエリアにはぽっかりと穴ができてました。ボールを持っていたマウリシオは陽介にパス。どフリーの陽介はチャンスを感じたのでしょう。完全にターンする前に、前方の慎三に、タベーラのイメージでパス。慎三はイメージ通りに陽介に戻します。浦和に縦への推進力が生まれます。東京は下がり基調のためゾーンが後手に回ります。これを浦和につかれます。陽介から忠成、ムトゥと繋がれるショートパスに追随できません。背後を上がる慎三を感じたムトゥのヒールを、慎三が右足で流し込みました。浦和2-1東京。

結局、この13分間の動静がそのまま最終的な結果となりました。試合を通じて浦和が浦和らしい攻撃を見せたのはこの二回だけでした。リードしてから、とくに後半の終盤はカウンタースタイルに移行したこともありましたけど、東京は、総じて言えば対応できていたと思います。ここ数回の対戦は、とくに後半になるにつれジワジワとプレッシャーを感じ、あらがいようにない実力差を意識させられていましたから、なんとなく苦手意識のようなものは無くなっているのではないかと思います。前半はビハインドで終了。

さて、後半頭から篠田さんが動きます。遼一に代えてウタカを同じくトップに投入します。結果的にこの作戦が裏目に出ます。遼一に問題があったようには見えませんでした。ビハインドになったので、浦和が完全に守備モードに入る前に、はやめに追いつきたかったのかもしれません。それからマウリシオとのマッチアップはパワー勝負になっていて、傍目よりも遼一にダメージがあったのかもしれません。

どうも、なんとなくですけど、ウタカは嘉人に合わせきれていないような気がします。攻撃のときに所在なげに浮遊していることがあります。遼一のスペースメイクの動きと対照的ですから、余計に目立ちます。ウタカを中央にはらせて囮にする意図なのかもしれませんけど、そうであったとしても機能はしていませんでした。ウタカは、翔哉と組んでロングカウンターを担うときに輝きを見せてくれるので、繊細なスペースメイクの連携よりも、ダイナミックな攻撃のほうを好むのかもしれません。というわけで、前半とうってかわって、攻撃が停滞します。アタッカーの意図が合わず、パスミスを連発します。後半は自滅の印象です。

さらに東京にネガティブな事件が起こります。室屋が右足を痛めて下がります。代わって永井が同じく右WBに入ります。筋肉系の怪我のような様子でしたので心配です。長引く怪我でないことを祈ります。永井投入自体は想定していたと思いますので、タイミングがはやかったにしろ、後半の東京が失いかけていた攻撃ルートの再構築に最適だと思いました。実際、永井を走らせる長いパスが増えていきます。

そして篠田さんがはやくも三枚目のカードを切ります。ヨネに代えて翔哉を投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。翔哉はトップ下です。嘉人を一枚上げてフィニッシャーにして、シュートアテンプトを増やす意図だと思います。前半に見たとおり、トップ下の嘉人はチームにチャンスをもたらします。一方でシュートを打つ頻度はやっぱり下がります。チャンスを作れないと意味がないので、現状では必然の選択ですけど、悩ましいところですね。

さて、静かだった堀さんがようやく動きます。陽介に代えてカピを同じくボランチに投入します。試合をクローズするシナリオを発動する、セットアッパーの役です。

続いて堀さんが動きます。慎三に代えてラファを同じくトップに投入します。慎三のコンディションを考慮したのだと思います。と同時に、広いスペースを使えて、かつ独力で局面を作れるラファによって、モードをカウンタースタイルに変えます。

さらに堀さんが一気に仕上げます。ムトゥに代えて矢島を同じく左シャドウに投入します。これで、攻撃はラファ、忠成、矢島の三人を基本として、これに長い距離を走ることができる駒井と大介が絡む、カウンタースタイルを完成させます。ラファと矢島が抜け出した大ピンチもありました。

翔哉が高い位置で基点になって左サイドが活性化します。浦和がリトリートしたこともあって東京が攻撃権を持つ回数が増えます。それでも中盤のパスミスは依然続き、浦和の中盤の守備でのターゲットとなってしまいます。なので攻撃を多重化することができません。洋次郎と翔哉の惜しいシュートがありましたけど、いずれもミドルショットです。フィニッシャーとしての嘉人を使え切れずにいる印象を受けました。

最終盤の攻勢は、セットプレーを狙いにいって取れていたので、期待がありました。でも今日は、宏介の日ではなかったようですね。ヒョンスのスクリーンプレーや拳人のダイアゴナルな飛び込みなど、工夫を見せますけど、結局不発。このまま試合終了。浦和2-1東京。

お互いに手探り感のある内容で、双方とも受け基調だったこともあり、過去の激闘に比べるとずいぶん静かな試合でした。作戦だったことももちろんあるのだけど、激しい雷雨の直後という影響も少なからずあったかなと思いました。それにしても、手探りでありつつも、戻ることができる原点があることは、チームのコンセンサスを取るにあたって有効なんだなとあらためて思いました。今の浦和には、長年継続してきた、昭和的な言い方をすると勤続疲労のようなものがあるのかなと思いましたけど、むしろぐるっと一周まわって、あらためてミシャサッカーのスタート時点が今有効になっているのかもしれませんね。輪廻転生。

嘉人を軸にした攻撃に光明が見えている気がします。ロングカウンターはもちろん武器なのだけれども、ロジカルに攻めるアプローチも武器に加えてほしいなと思います。嘉人が生み出す攻撃ルートによって、旧スタイルとはまた違ったかたちで、主導権を握る闘いかたを作ることができるのではないかと願います。

次は八月最後の試合です。できれば夏らしい暑いけど熱い試合が観られたらなと思います。


2017J1リーグ第22節FC東京vsヴィッセル神戸@味スタ20170813

2017-08-15 00:05:45 | FC東京

お盆に入って静かな東京でございます。

来日しているシャペコエンセに贈る寄せ書きユニフォームの贈呈式がありました。

三連休は晴れ間が少なく、ちょっと涼しめでした。三連休の〆は、世間的にはポドルスキですけど、ぼくら東京サポにとっては秀人との再会マッチです。FC東京U-18日本クラブユースサッカー選手権優勝報告会You'll Never Walk Alone♪

ドラマチックなサヨナラゴールで、四ヶ月ぶりの味スタでの勝利になりました。

東京は彰洋が怪我で直前に離脱のスクランブルです。シフトは3-3-3-1。GKは拓生がJ1リーグ戦デビュー。3CBは右から徳永、ヒョンス、まる。WBは室屋と宏介。アンカーは洋次郎。IHは右に拳人左に慶悟。トップ下は嘉人。1トップは遼一です。

神戸は今日も日替わりオーダーです。シフトは3-4-1-2。GKはキム・スンギュ。3CBは右から岩波、秀人、博文。ボランチは藤田と英雄。WBは右に藤谷左にわたる。トップ下はマックス。2トップは慶次朗とポドルスキ。

東京はとてもコンサバティブな入りかたを選択します。終わってみて思うのは、神戸の過剰なポゼッション傾向に対するスペシャルプランだったのではないかということです。東京は5+3の2ラインを維持することを優先します。WBの位置が東京のモードをはかるバロメーターということは、ぼくらサポには既知のとおり。ちょっと誇らしく思えたのは、少なくともホムセンでは、前半の我慢の展開にサポがいらだつ様子がなく、わりと鷹揚に受け入れていたことです。ぼくらは今夜の東京の特別な雰囲気を感じていたのかもしれません。

もともとネルシーニョさんのサッカーは、リアリスティックな守備に下支えされたロマンチックなパスサッカーだと思っていました。柏でのビトーリアの成功がそのイメージを強調しています。今の神戸は、ショートパスを連携する基本的なテイストはあって、それによって主体的に試合を動かすことはできています。でも、チームとしての強度を感じません。同じくパスサッカーを信条とするチームですと、たとえば良い時の川崎のような圧倒的な完成度を前にした絶望感のような濃い存在感はありません。

それは二つの要因があると思います。ひとつはパスミスの多さ。もうひとつは中盤のボール保持力の低さです。神戸の攻撃の特長は、前線の選手が、トップを含め流動性が高いことです。慶次朗のみ、最前線を左右に浮遊してボールを引き出す動きを続けます。その他のアタッカーは、ポドルスキも千真も積極的に中盤に下がって組み立てに参加します。逆に藤田と英雄も前線に出しますから、ポドルスキや千真と縦に入れ替わるかたちにとても頻繁になります。

といっても運動量そのものは多くはありません。むしろスプリントはほとんど見られません。つまり、前後の選手の入れ替えだけでスペースメイクすることと、ボールを保持することで受動的なスプリントを回避する、最小限のエネルギー消費で試合を乗り切る志向の作戦です。

言い換えると、神戸は守備に関しては消極的で、フォアチェックをはじめとしたハードなプレスをほとんど見せません。むしろコンタクトをいなすことのほうを優先します。ここに違和感の根源があります。ネルシーニョさんのビトーリアを支えたのは強固な中盤の守備力だったからです。気候や試合間隔を考慮した作戦だったのかもしれません。もしそうなら、ベストな神戸と闘えなかった残念さを感じます。

そうは言いつつ、東京も省エネプランです。ここまでの三試合で、新システムは攻守相反するふたつのプランを持っていることがわかりました。今日は超守備モードです。神戸がチャレンジをしてきませんので、最終ラインを固めるだけでリスクマネジメントになります。中央もサイドもスペースを消しますから、神戸はセーフティなパス選択を繰り返します。

いちおう、東京守備網を左右に揺さぶることでギャップを作る仕掛けをしていました。でも実際にギャップを生み出すほどの威力はありません。ひとつにはサイドの選手の位置が低く、長いパス一発で攻撃状況を作り出すような、強い頃の広島のような闘いかたではなかったことが理由です。もうひとつの理由は、パスを引き出す慶次朗と後方のタイミングが合わず、慶次朗の複雑なチャンスメークが機能していなかったためです。

というわけで、試合は一見すると圧倒的に神戸が攻め東京が耐えるワンサイドマッチの様相をていします。でも、この展開はぼくら東京サポにとっては悪しきデジャブです。かつてボールを回すだけでチャレンジがなくいらだちを覚えた試合を何度経験したことか。ただ漫然とセーフティにボールを回す神戸に、形容しがたい安心感のようなものを感じたかたも多かったと思います。

さて、少し様子が変わります。25分頃になって、ようやく東京がはじめて攻撃を仕掛けます。この嘉人が基点になったカウンターは、拳人から室屋へのパスが逸れて未遂に終わります。でも、東京がモードを変える、たからかなる宣言のように見えました。

これを機に、東京の攻撃がはじまります。まず第一段階のアジャストは嘉人でした。中盤中央の高い位置にはります。ここでボールを受け基点になります。当然ボランチと千真の間ですから人口密集地帯。嘉人はトランジションのターゲットにされますけどこれをはねのけます。逆に言うと、嘉人が突破すると神戸の最終ラインがまる裸になるビッグチャンス。しかもコンタクトの間に時間を作っていますから、室屋と宏介が前線に顔を出せていますし、拳人と慶悟もアタッキングサードに進出できます。

東京と神戸の作戦は、中盤のコンタクトにおいて対照的でした。その主力を担ったのが、一方は嘉人であり他方はポドルスキだったことを慮ると、文学的に捉えると、嘉人の静かで熱い心意気を篠田さんが感じたことに起因するガチな作戦だったように思えます。そしてこの作戦は、起案者と具現者双方で東京に軍配が上がります。

ここから、東京のイニシアチブがいよいよ顕在化します。相変わらず守備網の維持を基本として、神戸のボール回しを外へ外へ、後ろへ後ろへと追いやります。神戸の前進の意欲は時間を追うごとにそがれます。そして肝心のパスもミスを連発するようになります。このあたりからポドルスキがいらだちを表現することが目立つようになりました。ネルシーニョさんのサッカーを消化したうえで、それを表現する最高のパフォーマンスをイメージできているのだと思います。嘉人のアクションに共通することですから、案外、プレイヤーのクオリティの違いは想像力にあるのかもしれないなと思いました。

ただポドルスキはコンディションがまだまだ万全ではなかったのでしょう。そもそもポドルスキのプレーを見たことがないのですけど、コンタクトで負けるシーンやスプリントの少なさを見るにつけ、一見しただけでも良くないことは感じました。作戦であったにせよ、ポドルスキ自身が中盤で試合を組み立てる役を担うことは、肝心の最前線から脅威を神戸自らが削ぐことになるわけですから、東京はちょっと助けられた感はあります。コンディションはともかくポドルスキのシュートアテンプトの潔さ、モーションのはやさ、そしてはなたれるシュートスピードの迫力はやっぱりJで感じたことのないものでしたから。

前半は東京が思惑通りイニシアチブを握ることに成功しながらも、スコアレスのまま終了。

後半頭からネルシーニョさんが動きます。慶次朗に代えてマイクを同じくトップに投入します。さすがにネルシーニョさんもチャレンジの無さを懸念したのでしょう。最前線に明確なターゲットマンを置いて後方からのパスを引き出そうという意図です。でもマイクは孤立します。ポドルスキと千真が相変わらず低い位置に下がって組み立てに参加していたことと、これまた変わらずWBの位置が低かったためです。

マイクを封じることに成功した東京は、攻撃モードのシフトを一段上げます。前半は言うなれば嘉人のがんばりで攻撃をかたち作っていました。後半は今度は中盤が試合を作ります。3センターが積極的なプレスを見せるようになります。中盤にスペースができますからリスクを伴いますけど、神戸のリズムを断ち切った感触があったのだと思います。この作戦が奏功します。嘉人も攻撃に加わりますのでより重層的な攻撃ができます。おまけに前半とは180度変わって神戸を押し込みますから、神戸のクリアを拾って多重攻撃も展開できるようになります。

そこで篠田さんが動きます。慶悟に代えてヨネを同じく左IHに投入します。中盤の構成をよりアグレッシブにすることでトランジションの確度を高める意図だと思います。慶悟とヨネのチェンジは、どちらがスターターであっても有効に感じました。テイストが異なる際立った個性を持つふたりですから、中盤からチームのチェンジオブペースを果たせます。

中盤を支配したところで篠田さんが動きます。遼一に代えてウタカを同じくトップに投入します。これはあきらかな予定調和。ウタカの任務は明確。

ネルシーニョさんがようやく動きます。千真に代えて成豪を同じくトップ下に投入します。攻撃にダイナミックな味付けを加える意図だと思います。

ネルシーニョさんが続けます。英雄に代えてニウトンを同じくボランチに投入します。今度は中盤にパワーと展開力を持ち込む意図です。この作戦変更で、ようやく神戸攻撃陣の重い腰が上がります。中盤のトランジション力に信頼感が生まれることで、アタッカーが積極的に前を狙うようになります。今のところポドルスキはニウトンとは感覚があっているようです。今日唯一の裏への抜け出しは、ニウトンのパスを引き出したものでした。あれを前半からやられていたら、今日の内容はまったく違ったかたちになっていたかもしれませんね。やっぱりエースは最前線に置かない威力を発揮できないと思います。

やや神戸にリズムができてきて、攻撃が機能しはじめます。この辺りから東京ゴールに迫られるピンチが出てくるようになります。そして、J1リーグ戦初出場のあの男がチームを救います。マイクの必殺ヘッドの絶体絶命も、拓生は落ち着いてさばきました。彰洋の状態はわからないけど、拓生のプレーを観て不安は一気に吹き飛びました。今日のMOMは間違いなく拓生です。

これをうけ、篠田さんが動きます。拳人に代えて翔哉を投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。翔哉はトップ下に入ります。守備のバランスを維持しつつ、攻撃の人数をかける意図です。

嘉人の位置が上がりますから、フィニッシュシーンの関与が期待できるようになります。そしてこの作戦がいきなり奏功します。

88分。拓生のGKから。ウタカのフリックで最終ラインまで戻ったボールは一度宏介に渡りますけど、宏介はサイドを変えて徳永に渡します。徳永は自陣からドリブルで上がり、神戸陣に入ります。この時神戸は、プレスしていた中盤に対し最終ラインは上がりきれていません。なのでバイタルエリアに広大なスペースがあります。そこに嘉人が入ります。徳永は嘉人にパス。アタッキングサードにかかった辺りの右寄りでボールを受けた嘉人はターン。この時右ライン際から室屋がわたるの背後を狙います。この呼び込みに嘉人が反応します。室屋にスルー。このパス一発で神戸のラインは下がり基調を強いられます。この直前に、秀人がバイタルエリアのスペースを埋めるべくラインを上げようとしていて、最終ラインにギャップができていました。ウタカを岩波がケアしておらず、ゴール正面でフリーにしてました。これを見た室屋は、ダイレクトでウタカに折り返します。ウタカは流し込むだけ。東京1-0神戸。

ネルシーニョさんにして、もはや反撃の手持ちカードは無く。このまま試合終了。東京1-0神戸。

秀人は元気そうで安心しました。守備を統率する役割をしっかり果たしていました。プレッシャーをうけるとちょっとパスが乱れるあたり、ひさしぶりの秀人らしい姿を見られてほっこりしました。でもちょっと物足りなかったです。秀人の本分はなんといってもクールなハードコンタクトです。今日はリベロだったのでコンタクトシーンがほとんどありませんでした。ぼくらは秀人のコンタクトに何度も助けられましたから、敵に回した時の嫌さを実感したかったのです。それこそが秀人を失ったことに対するサウダージと秀人への感謝を表すことだと思っていますから。また来年にキャリーオーバーです。秀人が挨拶に来てくれました

じっくり相手を観察しつつ流れを引き寄せ、確実に我が手するという、とてもアダルトな作戦をチーム一丸となって遂行しました。しかも勝ち点3という最高の結果を伴って。結果はもとより、結果が伴わなかったことで陽の目があたらなかった新システムの完成度と可能性も、ようやく認知されるようになるのではないかと期待しています。眠らない街♪WE ARE TOKYO♪拓生のシュワッチウタカのシュワッチ

ただ、東京はあくまでもチャレンジャーです。次から九月にかけて、浦和、マリノス、川崎、セレッソ、仙台、磐田と難敵が続きます。一歩一歩、目の前の試合、目の前のタスクをこなすことに専心して乗り切って欲しいと思います。


ひよっこロケ地の旅 ―20170812 赤坂・葛飾・大門―

2017-08-12 21:24:07 | 連続テレビ小説ひよっこ

もうすぐお盆。

実さんが奥茨城に帰ってきましたね。谷田部家が新しい時間を作っていくのか、それとも実さんの記憶が戻るのか、これからの展開が楽しみです。

というわけで、今回は東京のロケ地をめぐります。ひよっこは地元の東京ロケが多く嬉しいのですけど、なかなか時間が取れず、ようやくめぐれます。

それではひよっこロケ地めぐりの旅東京編をはじめます。「この人、覚えていますか? 綿引正義さん」。実さんの消息の情報を得た綿引さんが、みね子に報告するために高萩から上京して走っていた神社の境内。

「元警察官で、みね子の父・実さんの行方を捜してくれていた人ですね」。

「家の事情で、茨城の実家に帰っていたはず」。

「それがまたなぜ? 何があったんでしょう」。

赤坂氷川神社です。

続いては、葛飾区の京成立石駅に来ました。立石駅前の呑んべ横丁です。

左手の北1出口に向かいます。

線路沿いをまっすぐ進みます。

呑んべ横丁はπ字型になっています。πの足の部分はアーケードです。駅から遠い方のアーケードの入り口を目指します。

「ちょっと! 何すんですか!」。お金をかかえた実さんが追剥に襲われた路地。

「それは、大切な金なんです! やめて下さい!」。

「返して下さい! 返して下さい! お願いします!」。

「離せよ! 離せって!」「その金を待ってるんです、家族が! 家族のために働いてつくった金なんです! お願いします! お願いします!」「離せ!」「お願いします!」「離せよ!」「大切な金なんです! 家族が待ってるんです! 家族が待ってるんですよ! お願いします! お願いします。返して下さい! お願いします。お願いします!」。

「離せ~!」。

みね子と美代子さんが実さんと再会した世津子さんのマンションは、実際に使われているマンションでした。私有地なので見学は控えます。

続いては、もうすでにちょっと懐かしい、みね子と純一郎の恋を振り返ります。大門駅のA6を出ます。すぐ山門が見えます。

増上寺です。

「うれしいなぁ」「そんなに来たかったんだ? 東京タワー」。

増上寺の安国殿の門前です。

「はい。赤坂からも、時々見えるじゃないですか?」「うん」「何かかっこいいなぁ。いつか行ってみだいなって思ってたんです」「そっか」。

「島谷さんは来たこどありますか?」「ううん、ない」「本当ですか? いがった」。

「すごいですねぇ」「うん、すごいねぇ。じゃ、行きますか」「はい」。

「大丈夫ですか?」「ハハハ…うん、大丈夫」「苦手ですか? 高いとご」「あ~うん…はい」「だったら言ってくれればいいのに。無理してそんな」「いや~だってさ」「だって?」。

「だってさ、「どこ行きたい?」って、「みね子ちゃんの行きたい所、どこでもいいよ」って言ったの俺だし。そう言ってさ、「いや、東京タワーはちょっと」、とは言えないでしょう、男としては」「そういうもんですか?」「そうだよ。最初の…デートなわけだし」。

「どうぞ、座って。好きみたいだね、みね子ちゃんは。怖くないんだ?」。

「はい、楽しかったですよ。生まれて初めてでしたけど、あんな高いとご、何かウキウキしちゃって。好きみたいです、私」「そう」。

「はい。すごいですねぇ、東京。驚ぎました。どこまででも街があって、すんごい数の人がいんだなぁって。赤坂も見えましたよ。向島はあんましよぐわがんなかったけど…。でも隅田川は分かりました。海も見えましたよ、海!」「へぇ、海かぁ」。

「はい。おなが減りましたね。あれ、食べませんか?」「いいね」「あっ、私に買わせて下さい」「いや…」「だって、入場券とが、エレベーターのお金とが出してもらって。あまりに高いから私、階段で行こうかと思いましたよ」「フフフ!」「無理ですよね、いくら何でも。ちょっと買ってきます」。

「いらっしゃい」「すみません、これを2つ下さい」「はい、16円になります」。

「うん、うまい!」「うん! フフフ…。あの…」「ん?」。

「私、もう一つ行ってみたいとこがあんですけど」「後楽園のジェットコースターは、無理だよ」「違いますよぉ。う~ん、まぁでも、遠いのがな」。

もうそろそろひよっこもクランクアップですね。10ヶ月あまりの長丁場、おつかれさまでした。放送も2ヶ月を切りました。カウントダウンはさみしいけど、最後まで先の読めない展開を楽しみにしたいと思います。


2017J1リーグ第21節大宮アルディージャvsFC東京@NACK520170809

2017-08-10 15:13:09 | FC東京

暑というよりも熱と言ってよい日中も、陽が陰ると風も通り過ごしやすくなりました。

お盆前に酷暑のなかでの三連戦は、移動がまだ楽な大宮でございます。You'll Never Walk Alone♪

大宮の作戦変更に、前半とは真逆の展開となりながらも、両エースの揃い踏みで第14節清水戦以来の二ヶ月ぶりの勝利です。

東京は連戦ということもあり、ベストマッチングを模索する布陣のアジャストです。シフトは3-3-3-1。GKは彰洋。3CBは右からカズ、おかえりヒョンス、まる。WBは室屋と宏介。アンカーは洋次郎。IHは右に拳人左にヨネ。トップ下は翔哉。1トップは遼一です。

大宮も連戦のアジャストと新加入選手のマッチングの布陣です。シフトは4-2-3-1。GKは順大。CBは河本と菊地。SBは右に諒左に和田。ボランチは茨田とカウエ。WGは右に横谷左にマテウス。トップ下はマルセロ・トスカーノ。1トップは江坂です。

大宮は、順位から連想する未成熟はまったく感じません。むしろ、エッジの効いた攻撃で特長付けした、洗練されたサッカーを展開します。

守備は、渋谷さんが作りあげた大宮らしいやりかたを踏襲します。大宮の回帰すべき場所として確立していると言っていいでしょう。大宮は4+4の2ラインを10mほどの間隔で保つことを優先します。コンパクトな守備網はけして下がりすぎることはありません。なのでトランジションポイントは中盤です。いくぶん左右に振られたときにバランスを崩すことがあったように見えました。新加入選手がいることもあって、まだ昨年終盤のころのコンディションには戻っていないのかもしれません。

もうひとつ守備の特長はセットプレーです。CKのような横からのセットプレーでは、5+3のフルゾーンで守ります。最近同じ守りかたをするチームが増えていますのでトレンドなのかもしれませんね。

マルセロと江坂のチェックは、前線から守備のコースを作り出す役割を果たしています。なので大宮は、中盤の低めの位置でトランジションして、攻撃の体勢を整えてからビルドアップに入っていくかたちを志向しています。昨年までの大宮のイメージは守備優先のカウンター志向でした。今年は、キャンプからより攻撃的なサッカーに取り組んできたようですけど結果が伴わず、伊藤さんに変わったことで守備志向に回帰しているのかと思ってました。大宮の攻撃志向は良い意味で期待を裏切ってくれました。東京も攻撃的に臨んだこともかみ合って今日はとても面白いオープンな試合になりました。

というわけで、伊藤大宮の攻撃プランは、もしかすると渋谷さんが描いたチームの正常進化なのかもしれません。とてもユニークな攻撃を見せます。いくつかの特異な作戦を見ていきます。基本プランはサイドアタックに置いていますから、特長の多くはサイドにあります。まず攻撃時にSBがWGとクロスオーバーしてとても高く位置取ります。諒と和田のスピードを活かす意図だと思います。このためWGが比較的低めの位置を取り、SBにパスを供給する基点となります。

WGの役割は左右アシンメトリーです。横谷はコンダクターです。和田よりも諒のほうがより積極的な姿勢を見せていたのは横谷と組んでいるためだと思います。横谷はときに中盤中央に入ります。このことでボランチが攻撃に参加する際のリスクマネジメントができます。一方マテウスはスピードを活かして、スペースに抜け出しパスを引き出す役割を担います。

大宮のサイドは、縦のポジションチェンジだけでなく左右のポジションチェンジも頻繁に見せます。瀬川が入るとより顕著で、マテウスと瀬川が同サイドでコンビネーションを見せる不思議な光景が見られます。これは、大宮のアタッカーのポジショニングの流動性を表しています。WGだけでなく、マルセロも広範囲にポジションを変えます。そこでスペースギャップの発生を予防しているのが横谷であり江坂です。言い換えると、横谷と江坂がチームのリスクをコントロールしていると言って良いと思います。

序盤こそ、攻撃的な東京のWBの背後を狙って諒とマテウスがアタッキングサードに入る有効な攻撃を見せていましたけど、次第に大宮の攻撃は停滞します。理由は東京の攻勢が強かったので、作戦を変えてバランスを取るようになったためです。それから、マルセロにポストが収まらず、チームの重心を押し上げることができなかったことも影響していました。前半のマルセロは、中央のポジションを保ちます。序盤は最前線にはっていてポストプレイを担いますけど機能せず、中盤に下がってビルドアップに加わるようになります。

さて今日の東京は、新潟戦と同様に攻撃的な志向で臨みます。作戦は基本プランの通り。中心ラインでボールを前に運び、最前線にはったWBに出してクロスを供給します。今日は遼一が入りましたけど、ポストの安定感はさすがです。遼一にしっかり収まるので中央に洋次郎と翔哉の縦の関係が成立します。ここは大宮のゾーンとの綾かもしれませんね。洋次郎のポジションはゾーンの前ですからフリーになりやすく、ラインの間に入る翔哉に対しても、大宮はバイタルエリアから前に出ない限りはプレスをかけないので、比較的自由にポジショニングできてました。

中盤の関係も良くなってきていると思います。洋次郎が前に出るときは拳人とヨネが下がり、バランスを保ちます。案外中盤がはやくフィットできたのは、フィッカデンティさん時代の財産のたまものかもしれませんね。

大宮のオープニングブローをいなすことができた後は、ほぼ一方的に東京がイニシアチブを握ります。前半にCKが集中していたことが象徴しています。そして5本目にしてようやく先制ゴールが決まります。

30分。宏介の右CK。大宮は例によって5+3のフルゾーンです。東京はゴールに向かって五枚の平行ラインを並べます。ニアから拳人、ヒョンス、カズ、遼一、大外にまるです。宏介は、巻いてくるクロスを、拳人をスクリーンに使ってニアに飛び込むヒョンスに合わせる狙いです。でもクロスはヒョンスとカズと順大を越え、菊地の足に当たります。それが遼一の足に当たりました。J1通算400試合出場を祝う、ラブリーゴール。大宮0-1東京。

東京の圧倒的な安定感と攻勢は、大宮に攻撃の糸口を見つけさせません。大宮は出しところの無いまま、中盤でパスミスを連発します。リードした東京は、5+3のラインを保つことを優先します。完全に東京がオーガナイズする展開になります。前半はリードのまま終了。

後半から伊藤さんが作戦変更を施します。中央にはっていたマルセロをサイドに流します。サイドでも最前線付近に位置取りますから、ようやく高い位置で基点を作れるようになります。さらにサイドのアタッカーをフリーにし、パスの供給源となります。大宮のサイドアタックが活性化します。

それからボランチを縦関係にします。カウエがアンカーに入り、茨田が攻撃に加わります。茨田は、江坂と横谷と絡み、中央の高い位置でハブの役割を担います。このアジャストの恩恵を一番受けたのはマテウスです。マテウスのスタート位置が高くなりますので、ゴールとの距離が近くなります。大宮のシュートアテンプトにゴールの香りが漂うようになります。

伊藤さんがさらに策を加えます。二枚同時代えです。横谷に代えて瀬川を同じく右WGに、茨田に代えて大山を同じくボランチに投入します。瀬川は、マルセロが基点になれるようになったので、チャンスメーカーよりもフィニッシャーアタッカーを増やす意図だと思います。

瀬川は頻繁に左サイドの攻撃に加わります。前半はマテウスが横谷と諒に絡んで右サイドに厚みを加えていました。後半は室屋との関係からマテウスサイドに優位性があると見たのだと思います。

ボランチは縦関係を保ちますけど、カウエを前に出します。大山は中盤のバランサーを担います。これで前線にパワーが加わります。大宮の攻撃オプションが多彩になります。そしてこの一連の作戦が奏功します。

70分。マルセロの右FK。東京はストーンとして室屋とヨネの二枚を置いて、ペナルティエリア内にゴールに平行して七枚のラインを並べます。ニアから拳人、遼一、ヒョンス、カズ、まる、洋次郎、宏介。大宮はオフサイドエリアに瀬川を置き、主力はこれまたゴールに平行する並びで、ニアから菊地、河本、カウエ、江坂、マテウスです。マルセロのクロスはシンプルにニアの菊地に合わせるものでしたけど、カズとヒョンスと競った菊地に当たってこぼれます。そこにいたのはカウエでした。カウエはこれを右足ダイレクトで豪快に合わせました。大宮1-1東京。

同点になったことを受けて篠田さんが動きます。遼一に代えて嘉人を同じくトップに投入します。意図は言わずもがな。そして嘉人は実にあっさりと仕事をしました。

77分。マテウスのクロスをキャチした彰洋のスローインを受けたヒョンスから。ヒョンスは前線から下がってきた嘉人に当てます。嘉人は洋次郎に落とします。洋次郎はタメつつセンターライン付近まで上がります。これによって全体が押し上がります。大宮陣に入った付近の左寄りにヨネが上がり、洋次郎からのパスを受けます。ヨネは左ライン際を高く上がったまるに渡します。まるはルックアップ。この時前線では、宏介が諒と河本の間を狙って脱け出そうとします。これを見たまるはスルー。ゴールライン際で追いついた宏介は、ままよどうにかなりまっしゃろのマイナスのクロスをゴール前に折り返します。このボールが待ってましたの嘉人に渡ります。ボールを持った嘉人は冷静に順大の状況を確認して、ゴール左隅に決めました。大宮1-2東京。

この風景は、何度も味わいました。得点後の10分間の危険な時間帯。既視の風景と違うのは、失点ではなく得点ということ。東京の夏の逆転攻勢を予感させる流れだと良いなと思いました。

ふたたび東京がリトリートしながらカウンターを狙うモードに移ります。反動のように大宮が攻め込みますけど、後半のアジャスト後とは異なり、能動的にストロングポイントを使ってイニシアチブを握るというよりか、東京に攻めさせられているような印象を受けました。

そこで伊藤さんが動きます。諒に代えて岩上を同じく右SBに投入します。大宮はまだ武器を持っていました。岩上の、強くて高精度なキック力とロングスローに期待する作戦です。大宮は意図的に岩上にボールを集めます。ゴール前にクロスが次々と供給されます。

それでも東京の安定感は変わりません。ヒョンスが加わることで、ウィークポイントだった裏のスペースのケアが充実します。ヒョンスは強さよりも守備の上手さが格別に増していますね。もともと、ティピカルな韓国人ディフェンダーのストロングスタイルとは異なり、守備技術を強みにする異質な選手でしたけど、タイミングと読みも向上して、レベルアップして戻ってきてくれました。

リベロにヒョンスが入る効果は3CBの確立にも貢献するのではないかという予兆が今日は伺えました。それは何度か見せたまるの攻撃参加です。象徴的なプレーは追加点のシーンです。3CBは左右の選手が攻撃に加わることでサイドアタックの厚みを増しますし、ゴール前に人数をかけることもできます。まるは今日のように基点になるだけでなく、シュートも狙えるようになるとさらに魅力が増すのではないかと思います。それから、今はクローザーである右サイドも攻撃に加われるようになると攻撃のバリエーションが増えると思いますので、チャレンジしてほしいところです。

篠田さんが動きます。翔哉に代えて慶悟を同じくトップ下に投入します。中盤の攻守の運動量を補強する作戦だと思います。

最終盤に篠田さんが〆にかかります。ヨネに代えて山田を投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。山田はカズと並んでCB。まるは左SB。ヒョンスがボランチに上がります。拳人が右WG。

大宮にセットプレーの機会が増えてシュートを受ける展開になりますけど、守備の安定感が損なわれることはありませんでした。このまま試合終了。大宮1-2東京。

前半と後半で展開がガラッと変わり、充実した飽きのこない試合でした。時間が経つのがあっという間でした。お互いに攻撃マインドで臨んでくれたので、テンポもよくワクワクできました。眠らない街♪WE ARE TOKYO♪嘉人のシュワッチ

試合ごとに新システムで表現したいことが実現できています。システム変更以降、1勝2分の負けなし。クリーンシートはありませんけど、三試合連続で最小失点に留めていますし、流れのなかでの失点はゼロですから、名実ともに安定感が出てきたと言って良いでしょう。注文は、失点が三つともセットプレーだったこと。それでも、今日は新潟戦と川崎戦とは異なりミスではなかったですから、強化してきているのだと思います。

二ヶ月前の勝利はアウェイでした。ホームの勝利は4月30日まで遡ります。リーグ戦では三ヶ月以上、ホームのサポーターは眠らない街を歌えていません。次節こそ、もやもやを吹き飛ばす快勝を魅せてほしいと願います。