ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2020J3リーグ第1節岩手グルージャ盛岡vsブラウブリッツ秋田@いわぎんスタ20200627 ~風を待ち~

2020-06-28 19:12:57 | 加賀さん

梅雨のさなか、フットボールフリークスなぼくらの暮らしのリズムが戻ってきました。いよいよJリーグ再開です。本日は、2020ブラウブリッツ秋田出陣、J3リーグ開幕戦。

残念ながら、加賀さんは欠場です。ニュースリリースに情報がないので大事ではないと思いますけど、そういう時こそ不安になるので心配です。こころから早期の復帰を待ちたいと思います。

秋田は体制が変わりました。これまでの延長線上であればリスクはないのですが、新監督の吉田さんはリアリスティックでアグレッシブなサッカーを志向されますから、ムービングサッカーを志向してきたブラウブリッツにとっては大チャレンジでしょう。チーム名通りの蒼い稲妻が実現しますから、結果が伴えば、サポもついていけると思います。

さて、吉田秋田のオリジナルシフトはスクウェアの4-4-2です。GKは雄大。CBは千田と韓。SBは右に準弥左に鎌田。CMは山田と江口。メイヤは右に沖野左に久富。2トップは亮太と恵太です。なお、愛称の間違いがあったらぜひご指摘ください。

全体構成としては、吉田秋田はスピード感があり、秋田サポのエイトビートな応援スタイルに合うのではないかと思います。プレーと応援が一体になると、ソユスタの劇場化も可能でしょう。スタイルのベースは、守備の基本のとしてレギュラー全員が1on1に強い印象を受けました。ゆえに、堅守は吉田秋田の大前提だろうと思います。

ポリシーとしては堅守速攻ですが、オリジナルスタイルは2パターン持ち合わせているようです。まずは、前半に見せたロングフィードスタイル、そしてリードした後半のポゼッションスタイルです。

ロングフィードスタイルにおける守備を確認します。ボールと相手の状況によってクリッピングポイントを使い分けます。アタッキングサードでボールを動かしている間は基本的にステイします。ミッドサードに入ると厳しくチェックに入ります。もちろんカウンターを狙ってのこと。ディフェンシブサードに入られると、マンマークに移ります。これがユニークであり、ちょっとリスキーだと思いました。よほど1on1に自信があるのかもしれませんね。

攻撃に関しては、ターンオーバーしたら、とにかく中盤省略してロングフィードを最終ラインの背後、かつアタッカーが入れそうなスペースに放り込みます。この精度が非常に高く、このスタイルを下支えしています。フィニッシュは、アタッカー二人のコンビネーション、とくに亮太のイマジネーションとプレークオリティに依存しています。恵太はすでに亮太の視点を把握しているようですね。良いコンビです。

後半のポゼッションスタイルの守備の特長は、4+4のボックスを敷く、一般的なゾーンディフェンスです。これが本来のスタイルなのかもしれませんね。相手によって使い分けるのかしら。中盤はフォアチェック主体で、優位性の確保を狙います。

攻撃については、守攻一体型ですから、フォアチェックによるトランジションから、攻撃に人数をかけます。ペナルティエリアにおいては、ボールサイドに相手を引きつけ、ファアをフリーにすることを思考しています。ペナルティエリアでもプレー判断がはやいので、相手を引き離すことにかなりの確率で成功しています。

では得点シーンを振り返りましょう。27分。中盤の競合いのこぼれを山田が拾います。この時最前線では、亮太が細かい動き直しでオンサイドに戻ってから裏に抜けます。山田は即座にフィード。アタッキングサードに入ってもフリーの亮太はルックアップ。この時ゴール前の恵太が一瞬ステイし下畑の視界からはずれ、再び飛び込んで下畑の前を取ります。亮太のクロスはピンポイントでした。盛岡0-1秋田。

34分。亮太が自陣右サイドで、後方から出たボールをダイレクトで前線へ。そこには恵太がいました。ハーフウェイ付近で受けた恵太はほぼ独走。ゴール左隅にイン。盛岡0-2秋田。

59分。自陣で有永が久富のプレスを受け四苦八苦。ホスピタルパスを石井を渡そうとしますけど、これが久富にあたってペナルティエリアに転がります。拾ったのは亮太。ワントラップして流し込みました。盛岡0-3秋田。

68分。ペナルティエリアゴール正面で茂が粘ります。この隙に右を亮太が上がります。茂は亮太にスルー。亮太はワントラップしてゴールを横切るクロス。ファア側にフリーでいたのは直輝でした。盛岡0-4秋田。

秋田の完成度の高さが目立ちましたけど、相対的な部分を割り引いてみたほうが良いでしょう。盛岡がポゼッションスタイルで、かつスローアタックを志向しており、加えてその完成度がまだ低い状況では、秋田にとっては初戦として絶好のスパーリングパートナーだったと思います。今後は、おそらくJ3で主流であろう、同じ堅守速攻スタイルのチームとの対戦で評価されると思います。

現時点のメンバーが盛岡戦にハマったので、加賀さんをaddした場合のプラス要素が分かりにくいですね。ただ、今日の最終ラインはまったく攻撃に絡みませんでしたから、加賀さんが入ることで、オーバーラップ等により攻撃特性が加わり、よりカウンターのバリエーションが増える可能性はあると思います。加賀さんをどこで使うか分からないけど、CBにしろSBにしろ、スピード感のあるサッカースタイルですから、加賀さんのスピードを存分に活かせるでしょう。いずれにしろ、もうちょっとコンディションがイーブンなチームとの対戦で課題が見えて、加賀さんの存在意義も具体的に見えるだろうと思います。

非常に順調な船出の吉田秋田。加賀さんファンの偏見で消化不良ですけど、チームが順調なら加賀さんが復帰するときも良いかたちでチームに入れると期待します。ゆっくり待ちましょう。


プロミスド・ランド

2020-01-19 16:47:15 | 加賀さん

ひとにとって、縁は最上の幸福なのではないかと思います。加賀さんと山形との邂逅は、単なるプロサッカークラブの在籍を超えた深い縁になりました。

プロサッカー選手は言わば転勤族です。選手生活のすべてを同じクラブで過ごす選手はそう多くはありません。ぼくは、選手の日常の暮らしを意識することはほとんどないけど、ウインターシーズンともなると、家族がいる選手はとくに引越しが多くて大変だなと思います。一般的には、選手はあくまでもサッカーに関わるタレントのみを期待されて単年契約でクラブに所属しますから、日々の暮らし以上に地域に関わることはあまりないと思います。

加賀さんのモンテでのキャリアは、木山さんに連れ立って愛媛から移籍した児玉さん、阪野さん、瀬沼さん、茂木さんとともに、ミシャサッカーをルーツとする木山さんの志向をすぐに実践できるプラグインとしてスタートしました。それから、経験の少ない選手が多い若いチームのなかで数少ないJ1レギュラー経験者として、メンタリティーの拠り所としても期待されていたでしょう。言うまでもなく山形は地元秋田の隣県であり、ご家族も北日本出身ですから、北に帰る加賀さんという文脈もありました。でもそれは外野がえがくノスタルジアに過ぎません。加賀さんの感覚のなかでは、これまで同様、プロサッカー選手として必要とされたからというのが唯一の理由だと思います。

加賀さんが山形で過ごした2017〜2019年の木山プロジェクトは理想的な右肩上がりを描きます。もう一年続ければ目標に到達できたことは想像に難くないでしょう。一方、加賀さんにとっては、チームのそれとは反比例し、成績上は消化不良に終わった三年間になりました。

シーズンごとの成績を振り返ります。まず加入初年度の2017年シーズン。20試合出場1得点。5勝10分5敗。勝ち点獲得率は.417。平均得点1、平均失点0.95。開幕から続いたフル出場は肉離れのため第5節で止まり、復帰は第21節。その後連続出場は翌第22節から第40節まで続きます。ハイライトはもちろん、10年ぶりとなった第24節のミドルゴラッソショット。最終2節は再び肉離れのため欠場のままシーズン終了。欠場した22試合の平均失点は1.27で、やはり加賀さんの守備力が顕著な一年目でした。

つづいて2018年シーズンです。15試合出場0得点。8勝4分3敗。勝ち点獲得率は.622。平均得点1.27、平均失点0.67。開幕は出遅れますけど、第6節から第21節までほぼ連続フル出場。この後右膝前十字靭帯損傷でシーズン終了まで欠場。この年は前年より加賀さんの出場有無の差が大きく、欠場時の勝ち点獲得率は.346。平均失点はやはり1点近く増えますけど、平均得点でも出場時が上回ります。チームの方向性は定まりながらも、総合力では未成熟だったといえます。

最終年となった2019年シーズンの実績は13試合出場0得点。6勝3分4敗。勝ち点獲得率は.538。平均得点1.38、平均失点1。所属した三年はいずれも、出場試合の平均得点が失点を上回ります。右膝の影響は開幕後も続き、復帰は四月に入ってから。出場が期待されながらも、再び右膝の怪我で、内側側副靭帯損傷により第11節から欠場します。復帰は真夏の第27節。第31節柏戦で左手小指骨折がありながら出場を続け、以降断続的ではありながらも、加入後はじめて最終節まで出場を続けます。ただ、無理が重なり、プレーオフ二試合は欠場でした。ついに一定の完成をみた木山モンテは、すべてのKPIにおいて加賀さん欠場時が出場時を上回りました。ただ、少しはや過ぎたチームの絶頂は加賀さんの復帰がもたらしたものであり、秋以降の急降下は加賀さんが足に違和感を覚えはじめた時期に重なります。若いチームにとって、まだ加賀さんの経験が必要だったかもしれません。

点ではなく線で加賀さんを追うファンのひとりとしては、浦和時代に過剰に出場機会が少なかったとはいえ、繊細な脚がにわかに負荷に強くなるとは思えませんでした。怒られるかもしれないけど、正直いうとぼくは、今となってはフルシーズン出場する前提では考えてなく、脚と相談しながらできるだけ長く過ごしてほしいと思っています。だから半数も実働していないのは残念だけど、けして悲観する実績ではないと思ってます。とはいえ、売り出し中ならともかく、すでにベテランと呼ぶにふさわしい年齢。存在のインパクトのわりに試合で姿を見なかった印象があるのも確かです。

モンテでの加賀さんは、試合での貢献以上のインパクトを残してくれたと思っています。出場しなくても、チームが表現するサッカーに加賀さんがインプットしたディテールを感じることができます。加賀さんがイメージするサッカーを加賀さんがチームに落とし込み、方法は違えど出場した選手が表現する。そんなプレイングマネージャーの理想の姿がモンテでの加賀さんに宿っていたと思います。

これは、ただプロ年数が長い、経験が豊富、あるいはプレーが上手いだけでできることではありません。事実、現役時代に名をはせた人がマネージャーになるとサッパリという事例は数多あり過ぎるほどあります。コーチングに必要なスキルが何なのかわかりませんけど、少なくとも今の加賀さんがそれを身につけていることは、モンテでの三年間が証明しています。

もともと加賀さんは、磐田時代から若手の面倒見がよく、その意味でアニキ肌の性格イケメンです。もしかすると、加賀さんについていけば確実に美味いものにありつけるという、類稀な味覚センスもひと役かっているかもしれません。かつてそんな食事会の場で若手にコーチングをしてたのだと思うけど、東京時代と浦和時代は試合やトレーニングで積極的にコーチングする姿を見た記憶がありません。でも、確実に、コーチングの素養は東京と浦和で過ごした時間があったからだと思います。そして、怪我が多いこともまた、逆説的に加賀さんに価値をもたらしていると思います。日頃からケアやトレーニング方法を貪欲に学び、自ら実践してきたからこそ、嘘のない真実を伝えることができるのだと思います。

プレーに関しては、かつての爆発的なスピードを観ることはほとんどありませんでした。これはフィジカルの衰えを示すのではなく、攻守においてポジショニングとタイミングのバランスを身につけられたからだと思います。それに磐田時代を彷彿とさせる攻撃参加を頻繁に見せてくれたことは、ゴールやアシストを期待できてとてもワクワクしました。加賀さんの攻撃は中途半端に終わらず、クロスであったりパスであったり、かならず仕掛けてくれます。淡白に見えるけど、イメージングと決断力、それを具体化する技術力が年々向上していることが裏づけになっているのでしょう。

とはいえ、ぼくにとっては、プレイヤー加賀さんのキャリアアップはもちろん嬉しいのだけど、それよりもなによりも、年々かっこよさが増していくルックスを見続けられることこそ、ファン冥利だと思っています。近年は、ただかっこいいだけでなく、色気を漂わせるようになりました。それもみな、外見だけではない内面の成熟が染みだしているのでしょう。それゆえか、かつては知る人ぞ知るマニア受けの選手だったのに、いつの間にか一般にもかっこよさが認知されるようになりました。モンテの試合を観にいくたびに加賀さんユニのかたを見かける頻度が高くなり、なかでも男性に多く着られるようになったことは、男性も惚れるルックスに加えて、純粋にプレイヤー加賀さんが評価されるようになったことを表していて、他人ながらわがことのように嬉しいです。

加賀さんがモンテサポさんに受け入れられたのは、他ならぬ加賀さん自身が山形という地を愛したからだと思っています。かつてない情報発信量は、大好きな山形を知ってほしいという気持ちから出るものなのでしょう。なにが加賀さんと山形の相思相愛をつくったのか分からないけど、まさに縁。もしかするとやっぱり、北国の風土と独特の明るさが引力なのかもしれませんね。それになにより、山形は食が美味しいですから。

残念ながら、加賀さんと山形の縁の深さとはうらはらに、チームの方向性を大きく変える2020年シーズンのモンテに加賀さんの名前はありません。運命の地との関係が続くことを望もうとも、プロサッカー選手の本質には抗えません。ただ、そのことに憤りや悲哀を感じることは、ぼくにとって反面とても嬉しいことだと気がつきました。なぜって、それは、現役で活躍する姿をまだ観られるということだから。気づけば今年37歳。40歳代が珍しくない昨今のJリーグだけど、ずっと怪我に苦しみ続けてますから、これだけ長く続けられたことだけでも驚異的だと思います。

2020年。東京がオリンピックを迎える年に、加賀さんは新しいチャレンジをはじめます。故郷秋田に帰還です。おそらくこれがラストダンス。加賀さんが現役でいることが当たり前な時間はけして長くはありません。ブラウブリッツになにかをもたらすこともさることながら、ファンとしては、ひと試合でも多く元気に出場してほしいと思います。そして願わくばもう一度、フルシーズンを闘いきる姿を見られたらと思います。

そしていつの日か、加賀さんと山形が再会することを祈って。


2019J1参入プレーオフ一回戦大宮アルディージャvsモンテディオ山形@NACK520191203 -行ぐべJ1!-

2019-12-03 21:13:16 | 加賀さん

師走。ぐっと冷えこむ日が増えて、今年は冬っぽい冬なのかなと予感します。

ひと足先にリーグ戦を終えたJ2はプレーオフシリーズに入ります。加賀さんのキャリアでもはじめてのプレーオフ。人を大切にする加賀さんですから、愛する山形の仲間のため、チームに貢献したいと責任感を強くしていると思います。

最終戦に強行フル出場した様子をみる限り、コンディションはパーフェクトではないなと思いました。ホーム最終戦だしプレーオフのホームアドバンテージを決める大事な試合だから強行したのだと思いますけど、プレイヤーとしてのキャリアを考えるとかなり心配でした。いまは、チームを信じて、捲土重来。

というわけで、今日の加賀さんのスコッド入りはないと思っていました。さいたま市は縁ある地ですからひょっとして帯同してるかなと思い、スタンドをウロウロしてみましたけど、今日は山形で全力応援なのでしょう。青き旗♪

それでは試合を振り返ります。プレーオフ1回戦の相手は3位大宮。山形バカンス♪

序盤から流れを掴み、快勝です。

モンテはオーダーを少しアジャストします。シフトは3-4-2-1。GKは櫛引政敏。3CBは右から熊本、栗山、怜大。WBは右にやっち左に拓巳。CMは本拓と駿。2シャドウは右に坂元左に井出。1トップは大槻です。

大宮は菊地が復帰です。シフトは3-4-2-1。GKは笠原。3CBは右から畑尾、菊地、櫛引一紀。WBは右にイッペイ・シノヅカ左に宣福。CMは三門と石川。2シャドウは右に茨田左に奥抜。1トップはシモヴィッチです。

プレーオフアドバンテージはたしかにアドバンテージだけど、捉えようによっては難しいのかもしれません。昇格争いを勝ち取った経験が豊富な高木さんをして、大宮に伝統的に内在するなんとなくコンサバな雰囲気に抗えなかったのかなと思います。

とはいえ、大宮が全般的に受け身にまわったのは大宮の能動的な作戦ではなかったと思います。もちろんBプランとして用意はしていたと思いますけど、あえてリスクテイクを積極的に選ぶ道理はありませんから。大宮が受け身に回らざるを得なかったのはモンテの圧力に屈したが故です。

とはいえ大宮に、結果論ですけど作戦上の誤算があったのはたしか。最大はシモヴィッチです。大宮はシモヴィッチのキープ力を基軸に、茨田の視野と奥抜の突破力を絡める意図だったと思います。ここで優位性を得ることができればWBとサイドCBを押し上げることができますし、その勢いでオーガナイズを取れます。

どこかで見たような光景ですよね。そう。モンテもまったく同じ作戦で臨んでました。つまり今日の鍵を握っていたのは前線です。後述しますけど、今日のモンテを牽引したのはアタッカーのトリデンテです。

大宮のもう一つの誤算もそこにあります。大宮は布陣を使い分けるチームのようですから、選択肢がありました。今日のチョイスは3バック。つまり大宮は、いわゆるミラーゲームを敷いてきます。ミラーゲームの効果はマークが明確になること。ただし前提があって、すべてのエリアでマークの優位性があること。おそらく大宮は、守ることを主眼にしたミラーゲームではなく、攻めることで山形の長所、あるいは現状唯一の攻撃プランを消すことにあったと思います。大宮が亡失していたのは、マークの前提。とくにモンテのトリデンテに対し守備陣が凌駕する大原則です。

むしろ大宮は、モンテのアジリティ高いシャドウに手を焼きます。序盤の文字通りにガチな主導権争いが決したターニングポイントは、坂元でした。坂元の独力突破が、バイタルエリアで三門、宣福、櫛引が作るトリプルチームもものともせず、局面打開を見せはじめます。たったこの一点だけで大宮にリスクマネジメントのイメージを想起させることに成功しました。

もし大宮が守り切るなら、そしてモンテのアタッカーを正当に評価するなら、ゾーンを消すシフトで臨んだほうがよかったでしょう。もちろんミラーゲームに成功していたら評価は真逆ですから、サッカーはつくづくおもしろいスポーツだと思いますし、サッカーの醍醐味を観せてくれた素晴らしい試合だったと思います。

もうひとつ、モンテが大宮を凌駕したのは中盤の構成力です。まさに大宮の裏返し。本拓と駿は、トランジションポイントでの優位性を持つだけでなく、ダイナミックに動いてモンテのポゼッションを活性化することに貢献します。ここはミラー的なシーンが多かった今日のなかでは珍しく、モンテの作戦が目立った箇所です。モンテは攻撃時に本拓を下げ、2バックにします。これは熊本と怜大をSBのように押し上げる意図です。同時に駿が中央を自在にポジショニングすることで、モンテのビルドアップルートを多方面化します。少なくとも以前観たときにはなかったミシャ的作戦の要素は、木山モンテの近未来予想図を見せてくれているのかもしれませんね。あ、そうか。だから木山さんは加賀さんが欲しかったのか。

前半はモンテペースで推移するもスコアレスのまま終了。

後半頭から高木さんが動きます。シモヴィッチに代えてファンマを同じくトップに投入します。以降の高木さんの作戦をみるとドラスティックに状況を変えるタスクを選手のクオリティに委ねた印象があります。なんだか根本的な部分でモンテの質が上回っていたことを証明するようで、順位とチーム力は必ずしも一致しないんだなとあらためて思いました。

それでもなお、スコアレスという意味では、大宮の優位で試合が進行していました。これもまたサッカー。最終的には5+4の堅陣が保証されますから、ミラーとの二枚腰作戦は成功の一端をみていたと言っていいでしょう。

そこで木山さんが動きます。井出に代えて山岸を同じく左シャドウに投入します。シーズン終盤、チーム状態が下降していくなかで逆に調子を上げ、三連敗となる可能性があった2点ビハインドを土壇場でひっくり返したリーサルウェポンが、モンテのレジェンダリーなパワーネームを背負って満を辞して登場です。

さらに木山さんが動きます。大槻に代えてジェフェルソンを同じくトップに投入します。前線をリフレッシュしつつ、マインドを含めたパワーで前線を活性化する意図です。

ところが、木山さんの想いに反して、この攻撃メッセージの投入によりモンテのバランスが崩れます。攻勢を支えていた中盤の構成力が薄れ、大宮が攻撃権を持つようになります。そこで高木さんが動きます。奥抜に代えてダヴィッド・バブンスキーを同じく左シャドウに投入します。プレースピードを上げ、一気にイニシアチブを取り戻す意図だと思います。

大宮にようやく光明が射してきた矢先、サッカーというのはつくづくシナリオレスなもので、まったく流れに反する先制点が生まれます。

73分。駿の左CK。モンテはファアに主力を固めます。大宮はハイブリッド。栗山に菊地、熊本に宣福、ジェフェルソンに畑尾、やっちに櫛引、拓巳にイッペイがそれぞれつきます。駿はショートコーナーにし、怜大とのパス交換でタイミングをずらします。この間、ニアにいた本拓がファアに下がってマーカーのダヴィッドを引きつけます。さらにショートコーナーにしたことでニアのストーンも上がります。これでニアにスペースができました。そこを狙ったのは坂元です。駿のスルーをゴールライン際で受けた坂元は振り向きざまにダイレクトクロス。そこに拓巳とジェフェルソンが飛び込むパターンでしたけど、どちらにも合わず。イッペイが触ってクリアしようとします。そのボールがゴールに吸い寄せられました。大宮0-1モンテ。

実質、試合の趨勢を決める決定打になりました。主導権が取れたのでそのままの状況を維持すれば良かった大宮が、一転追い込まれます。そこで高木さんが動きます。石川に代えて元紀を左シャドウに投入します。ダヴィッドが右シャドウ、茨田がCMにそれぞれ回ります。点を取ることに特化したセットです。

ここからのモンテのゲームコントロールが秀逸でした。リトリートするではなく、当初プランを維持します。これにより大宮に攻撃権を完全に明け渡すでもなく、ソフトランディングを目指します。なんとなく、守り切れる絶対的な自信のある布陣ではなかったからのような気がします。そして、そのポジティブな姿勢が追加点を生み出します。

82分。宣福のクロスを栗山がクリア。これを坂元が拾います。トリッキーにキープした坂元はルックアップ。前線を走るジェフェルソンにつけます。一気に局面が変わり、アタッキングサードに入ります。ジェフェルソンはキープ。坂元、やっち、中央に山岸が上がりますけど、大宮も六枚戻って4on6で数的不利です。でも、逆サイドのイッペイが戻りきっておらず、広大なスペースができていました。ジェフェルソンのパスを受けたやっちは、ようやく戻ったイッペイの背後を狙ってサイドチェンジを送ります。そこに拓巳がきました。ダイレクトに頭で折り返した拓巳のパスが絶妙で、畑尾の足が届かず菊地も追いつかない場所に落ちます。このとき中央は、大宮のCMが戻ってなく、山岸がフリー。山岸は、拓巳のクロスに右足ダイレクトで合わせました。山の神再降臨。大宮0-2モンテ。

それでもなお、木山さんは慎重で、試合の流れを見定めるため時間を使います。そして、クローズにかかります。拓巳に代えて野田を左CBに投入します。怜大が左WBに回ります。

思惑通り、このまま試合終了。大宮0-2モンテ。

モンテがラスト3ハロンの第一歩を征しました。二回戦に進出です。Blue is the Color♪

もし仮に大宮にアドバンテージがなかったとして作戦面でもメンタルでもエクスキューズがない状況だとしても、モンテが勝ったと思います。サッカーは、ほとんどの場合勝敗が決した彼我の差は見た目よりもわずかです。でも今日に限っては、作戦においてもパフォーマンスにおいても、完全にモンテが大宮を上回ってました。ただ、大宮以外のチームでも出来たかと言われると必ずしもそうではないでしょう。その意味では、大宮との対戦となったことは、ホーム開催を逃したとはいえ結果的には良かったんじゃないかと思います。

思いのほか長いプレーオフは、次は四位徳島。例年は昇格スタイルの、志の低いチームがからむプレーオフですけど、今年は四チームとも個性的なスピリットを観せてくれる魅力的なチームです。徳島とはレギュラーシーズンは1勝1分。つまりプレーオフのレギュレーションではイーブン。またもガチのおもしろい勝負が観られそうです。

そして、行ぐべJ1!。加賀さんとともに。


2019J2リーグ第32節鹿児島ユナイテッドvsモンテディオ山形@白波20190915 -気合いっしょ-

2019-09-16 15:41:44 | 加賀さん

生誕月祭りは、いきなりアクシデントではじまりました。

左手は骨折しているようです。公式発表がないのでそれ以上の状態がわからず、心配でした。

気合いっしょ!

ホントに気合いでしたね。いくら手だとしても、骨折してるんだからさすがに直後の試合は回避かなと思っていたら、気合いでしたね。ルカオが加賀さんサイドに流れることが多く、コンタクトプレーも頻繁にありましたけど、見ていてとくに違和感はなかったです。左手がからむコンタクトも避けてなかったですし、もちろん普通じゃないだろうけど、前節までと遜色なくプレーできているのですから可能な範囲での無理と捉えます。ファンがいたずらに心配するのは加賀さんの本意じゃないかなと思いました。なにしろ気合いっすから。

今日は、復帰後の試合のなかでは忙しい試合でした。理由は本来の加賀さんシフトが解禁されたから。モンテ独特の右肩上がりのCBラインです。加賀さんが攻撃の基点になることが多く、さらにトランジションを狙ったチャレンジングなチェックからそのまま最前線に上がるシーンも三度ほどありました。攻撃したそうだったのにパスがこず、残念そうにしぶしぶラインに戻る姿が可愛らしくもあり。ちょっと遅くなったけど、加賀さんの夏がやってきましたね!

それからチームを代表するようにレフリーに主張するシーンもありました。これまで観た記憶がない姿でしたのでびっくりしました。これまでは、加賀さんがいかずともほかにいましたから。とても若いチームがシリアスなシーズンを送っていますけど、ギリギリの勝負のなかでは時として主張する必要があることを示しているのだと思います。もちろん意図してやったわけではなくナチュラルな行動でしょう。でもそんな姿に、リーダーシップが宿るんじゃないかと思います。

では、今節も試合をみていきます。といっても前半早々セーフティリードになったので、途中から加賀さんばっかり観てましたけど。

モンテはほぼ前節と同じオーダーです。シフトは3-4-2-1。GKは櫛引。3CBは右から加賀さん、野田、熊本。WBは右にやっち左に拓己。CMは本拓と駿。2シャドウは右に坂元左に山岸。1トップは大槻です。

鹿児島もほぼ前節と同じです。シフトは4-2-3-1。GKはアン・ジュンス。CBは水本と堤。SBは右に酒本左に砂森。CMは八反田とニウド。WGは右に五領左に牛之濱。トップ下は枝本。1トップはルカオです。

優勝争いと残留争いの差は、正念場の念力が発動しなければそのままチームとしての完成度に現れるようです。今日のモンテは冷静でした。鹿児島の超攻撃姿勢を受け、90分をさばき切ります。

鹿児島は、残留に向けたシナリオをどのように設定しているのかわかりませんけど、シーズン序盤のようなポリシーに準ずるプランでのぞみます。もしかしたら、リーグでのポジションよりも、鹿児島に根差すプロチームとしての根っ子を作ることを優先しているのかもしれません。スタンドにいる限りですけど、鹿児島のファンは、古株のJリーグサポが無くした、純粋に応援して楽しむ素直さをもっているのだと思います。もちろん歴史を重ね、勝敗や順位、つまり相対性に芽生えると失ってしまう感覚なのですけど、それにもクラブによって個性がありますから、鹿児島はもしかすると純粋さを保ち続けうるのかもしれません。

とりわけ目をひくのは、もちろん自分がいた狭いエリアだけで俯瞰はできませんけど、小さな子ども連れの家族が多いことです。そして他の地域にないことは、子どもたちが一生懸命にユナイテッドを応援していること。だいたいは飽きちゃうものなのだけど、小さな子どもでも集中が保たれるのは鹿児島人の人柄なのかもしれません。酔っぱらって野次をとばす大人ももちろんいるけど、その野次もストレートで、なんとなくノスタルジックです。

そういう現在地の鹿児島だからこそ、超攻撃的なサッカーがいきるのでしょう。鹿児島は試合を支配することを基本プランとしているようです。かといってポゼッションスタイルではありません。アグレッシブな縦への仕掛けを基調とします。こういうサッカーはワクワクしますので、シンパシーも得やすくなります。攻撃ルートはサイドです。ただし、攻撃の選択肢の基本、ギャップの形成は能動的です。単純なクロスによるフィジカルギャップ勝負ではありません。両WGがフリーにポジショニングして、さながらシャドウのように振る舞います。これによってモンテ守備網の混乱を誘い、スペースギャップを作る意図です。これを実現するための基本布陣として、両SBを非常に高く配置します。そしてこれが、鹿児島のウィークポイントになります。

今日のモンテは、柏戦とうってかわって鷹揚に相手を受けるリアクションサッカーに徹します。鹿児島の布陣がリスクテイクであり、かつ縦に急ぐサッカーでもあるので、合理的な選択です。極端にいえば前三人で仕留める算段が成り立つ条件ですから、その三人の出し入れで試合の流れをコントロールできます。ただしコンサバティブだったわけではありません。狙いは先行逃げ切り。

加賀さんが入った場合のモンテは、攻守の比重が比較的わかり易くなります。一見してわかるのは加賀さんのポジショニングです。3CBがフラットではなく、右側だけ高くなります。これは、前線からの落としもしくは中盤のトランジションの預け先として加賀さんを使う意図です。加賀さんのシンプルかつはやい判断が一気に局面を変えることと、アップテンポなリズムを作ることを期待していると思います。

ただし、モンテの攻撃モードは裏付けがあります。このあたりが鹿児島との歴然とした差です。まず加賀さん自身のカバーエリアの広さ。以前はリスクヘッジとしてこの比重が高かったのですけど、加賀さんの怪我が生んだ副産物は、コレクティブな右サイドチームです。今日は右にいることが多かった本拓とやっち。加賀さんが高く位置取る場合は、それに野田が加わります。とりわけやっちと野田の負担が大きくなりますから、タレント力を問われます。つまり、右サイドチームにこそ、期するJ1仕様のモンテの原始の萌芽があるといっていいでしょう。

もっとも、加賀さんを基点とする右サイドアタックは、シーズン中の加賀さん復帰ということもありますし、あくまでもオプションですので、成果は上がってません。加賀さんが拾ってさばくまではできてるのですけど、加賀さんの精度か受け手の問題か、必ずしも有効なアタックに結びついているわけではありません。どちらにしても、言い換えるとこれはチームとしての伸び代。

四試合で4得点のロースコアチームだったモンテが、二試合で7得点とにわかに得点力のあるチームに確変しました。牽引しているのはなんといっても2シャドウでしょう。坂元のドリブルと山岸のスペースメイクが、局面を一気に変える高速カウンターの源泉になっています。カウンターの精度が上がって、流れを止めずかつタイミング良く良いパスが供給されるので大槻のシュート力も活きてくるようになりました。トリデンテの良いカップリングを見つけられたといっていいでしょう。有効なカウンターを繰り出せるようになった展開のなか、立て続けにゴールが決まります。

11分。ニウドからボールを奪った山岸のパスを大槻が決め、先制。続く16分。やっちのピンポイントアーリーに大槻が合わせ、2点目。さらに26分。鹿児島のカウンターを、なぜかやっちが逆サイドで止め、そこから送ったロングスルーを受けた坂元が決め、3点目。

セーフティリードをもったモンテは、前半は攻撃モードを保ちしのぎます。後半頭から両チームとも動きます。金さんは、ニウドに代えて中原を同じくCMに投入します。これでパスの循環がスムーズになります。鹿児島本来の主体的にオーガナイズするサッカーを表現できるようになります。

木山さんも動きます。やっちに代えて古部を左WBに投入します。拓己が右に回ります。WBのターンオーバーは常套ですけど、それ以外としては右サイドのリスクヘッジを図って、左右のバランスを整えたのかなと思います。最初は意図的だったかどうかはわからないけど、後半はほぼすべての時間を鹿児島をフルに受けるリトリートモードで過ごしました。バランスを整えておいたことか奏功したと言えます。

鹿児島の重曹的な攻撃も、そのルートをサイドに追いやることができていましたから、最終局面でのリスクは最小限に抑えられたと思います。それでもペナルティエリアでシュートを打たれるシーンが幾度かあったことは、リトリート作戦を取る上での課題だと思います。オーガナイズはしているのだけど鹿児島の攻撃を無力化できていたわけではありません。なんとなく攻めこまれている感がありました。その証拠に、スタンドのユナイテッドファンの感覚は、手も足も出なか、ではなくもうひと押しという雰囲気でしたから。柏戦で発見した先行逃げ切りを基本プランに加えるのであれば、ゾーンの作りかたの細部にこだわってもいいかもしれませんね。

ともかくも、このまま試合終了。鹿児島0-3モンテ。連勝です。六戦無敗継続中。二位。自動昇格権争いは依然お団子です。でも、終盤戦に向けて勢いを得たことは大きなメリットなんじゃないかと思います。しかも、根拠のない勢いではなく、闘いかたのかたちが付加されていますから、ますます心強いと思います。

なによりも、なにしろ手が心配でしたから、無事試合を終えられたことに安堵しました。それに、復帰以降の初失点が大量失点になった柏戦の直後にクリーンシートができ、流れを維持できたことも良かったと思います。二位。じわじわと柏に寄っています。もしかすると、お団子状態の二位以下を意識するより、柏を目指したほうがこのチームには良いのかもしれませんね。


2019J2リーグ第31節柏レイソルvsモンテディオ山形@日立台20190907 -逆襲の序章-

2019-09-08 13:18:09 | 加賀さん

この世をば加賀世とぞおもふ推し月の欠けたることもなしとおもへば

今年もやってまいりました。加賀さん生誕祭でございます。

第一週の相手は、生誕祭開幕にふさわしく、ぶっちぎり首位の柏です。二位以下はおだんご状態ですから、チームをいきおい付かせるためにも大事な一戦です。

直接観戦している試合で加賀さんが傷むシーンを目撃することは、とても心臓に悪いものですね。平静ではいられなくなります。最初によぎるのは、過去のイメージからやっぱり足です。今回は指のようですけど、加賀さん自信もまだまだ全然全開じゃないなか、徐々にコンディションを上げようとしているところでしょうし、なによりチームが自動昇格権に向けて大切な時期ですから、プレーへの影響がないことを願います。

そんなこともあり、指を傷めて以降はどことなくコンサバティブにプレーしている雰囲気があってかならずしも本調子ではなかったと思います。それにしても、今日は攻撃陣が好調だったので、加賀さんのプレー機会は、柏相手に意外だけど、顕著なシーンはほとんどありませんでした。もっともDFとしては、そういう試合こそベストかもしれませんね。

というわけで、攻撃に絡む機会はほぼ無し。守備機会をみてみます。前半は柏が1トップでしたので、数的優位から加賀さんのクリティカルプレーはほとんど無し。後半からサントスと1on1でマッチアップする機会が増え、件の怪我をはじめ、対応が忙しくなります。加賀さん自身が失点に直接関わることはなかったけど、右サイドで二失点ですから、右サイドチームとして課題が残りましたね。

一失点目は、クリスティアーノのトリックプレーがスーペルですから、どうしようもありません。二失点目は、サヴィオに対するやっちのコース切りが甘かったです。おそらくクリスティアーノと両方意識してたのでしょうけど、クリスティアーノには加賀さんがついていたので、お互いのマーキングをはっきりすべきでした。それから、再三バイタルスペースをドリブルもしくはタベーラで狙われていたにも関わらず対処できなかったことも課題だと思います。三失点目は、やはりサントスがバイタルエリアを狙ったドリブルのコース取りがきっかけですけど、これはただただクリスティアーノのスーペルゴラッソ。

これからの勝負処に向けて、チームが攻撃オプションを増やそうと取り組んでいくのだと思いますから、右サイドチームもいつまでも守備優先というわけにはいきません。加賀さんが攻撃に関わる比重が増えることになるでしょうし、逆に加賀さんの主戦である、広大なスペースケアが必要になってくるでしょう。そのためにも、とりもなおさず今日の怪我が大事ないことを祈りますし、万全なコンディションを維持してもらいたいと思います。

さて、再会戦だったヴェルディ戦は、ただただ加賀さんだけを観る贅沢な時間を過ごしたけど、今日は試合自体が楽しみなので、普通に観戦します。サマリーとしては、ストックを使いきってもお釣りがあり、予想外の点の取り合いを逃げ切りました。

モンテは上位直接対決を分けた前節のオーダーに、山岸が加入後初スターターとして加わります。GKは櫛引。3CBは右から加賀さん、栗山、熊本。WBは右にやっち左に拓己。CMは本拓と駿。2シャドウは右に坂元左に山岸。1トップは大槻です。

柏はオルンガが代表で不在。ブラジリアンで補うスクランブルオーダーです。シフトは4-2-3-1。GKは航輔。CBは次郎と染谷。SBは右に瀬川左に古賀。CMは大谷とヒシャルジソン。WGは右にクリスティアーノ左にマテウス・サヴィオ。トップ下は江坂。1トップはジュニオール・サントスです。

モンテの試合前のプランが先行逃げ切りだったのかはわかりません。でも結果的に、モンテの仕掛けによって先行逃げ切りが成立します。と同時に、柏の目利きの甘さがモンテに大きな貯金を許すことになります。

まず柏は、攻撃力を落とさない選択をし、オリジナルの攻撃に偏った布陣をしきます。ネルシーニョ柏伝統のサイドアタックです。右はクリスティアーノと瀬川、左はサヴィオと古賀。とくに右サイドは、わざわざ変態なまでに攻撃特性なコンビで臨みます。当然のことながら、ワイドに速く、かつ多重のアタックを繰り返し繰り出すことで、山形を守勢に回らせる意図です。つまりむしろ柏こそ、先行逃げ切りを狙っていたのでしょう。

モンテは周知のとおり、加賀さん復帰以降四試合連続クリーンシートを継続中で、二勝二分の無敗。一方得点は平均1点/試合で、スコアレスも二試合。いうまでもなく守備加重の状態ですから、ネルシーニョさんがキックオフからカチコミを狙ったのは当然です。ところが木山さんは、加賀さん生誕祭をターゲットにしていたのか、今日を逆襲の機会ととらえていたようです。むしろ柏のストロングの向こう側に存在するウィークポイントを狙います。柏の勇猛果敢な両サイド布陣は、自信なのか過信なのか、攻めていさえすれば安定するという思想です。攻め過重になるばかりに、攻撃的なサイドのウィークポイントであるSBの背後だけでなく、そのインサイド、つまりSBとCMとCBの間のトライアングルに安易なスペースを作ってしまいます。これが通常の布陣であれば、コンビネーションの高さからフォローができるのだと思いますけど、いかんせん急造ですからバランスが保てません。

モンテはおそらく、スカウティングで最初からそこを柏の狙い処と定めていたのでしょう。バイタルエリアに大槻もしくはシャドウを入れて基点とし、サイドに縦にはやい仕掛けをほどこします。のみならず、左右シンメトリーにクイックアタックを繰り出すことで、柏に対処の方向を定める余裕を与えません。それでもなお、柏は愚直に攻め手を保とうとしますから、サンドバッグ状態に陥っていきます。

モンテ攻撃陣の逆襲を支えるのは、堅実な守備です。柏は、攻撃特性を活かそうとするわりに、おさめ処に難儀するほどに攻撃のバランスが整いません。これはもちろん、四戦クリーンシートを支える、モンテの強力なディシプリンが成せる技にほかなりません。下支えするのは3トップの献身的なファーストディフェンスです。ネガティヴトランジションの局面で、守備態勢にすぐに切り替えることができているので、柏に有効な攻撃開始を許しません。そして、加賀さんをはじめとする、栗山、熊本の3CBのコンビネーションです。柏が1トップというミスマッチもあるにせよ、多重防御網が柏の強力アタッカーの進撃を拒みます。

もちろん、モンテの作戦を好結果に結びつけたのはゴールです。10分に駿の右FKからの山岸の先制弾にはじまり、20分に同じようなシチュエーションでの大槻の追加点と、立て続けに得点できたことで、逆襲へのたしかな自信を得たと思います。前半はリードしたまま終了。

勝負師、ミスタービトーリアのネルシーニョさんがこのままで終わらせるはずがないなと思っていた注目の後半のアジャストは、案外と実にシンプルでした。シフトをスクウェア型の4-4-2に変更。クリスティアーノと江坂のポジションを入れ替えます。ところが、たったこれだけで柏が激変します。ネルシーニョさんの抽斗はどうなってるのでしょうか。あらかじめプランをいくつか用意しているのでしょうね。

素人目には、柏の問題は守備にあると思ってました。でもネルシーニョさんの狙いは攻守両面です。キーマンは江坂。江坂を一枚下げることで、中盤に目標ができ、右サイドに攻撃ルートが確保されます。さらに守備時に4+4の2ラインを形成できますから、山形にさんざ狙われていたバイタルエリアをクローズできます。さらに柏は、トップを二枚にすることで最前線の納め処を増やします。だけでなく、クリスティアーノを中央寄りに置くことで、江坂による右サイドのみならず左サイドの活性化にも成功します。つまり、サントスを加賀さんにマッチアップさせることで、サヴィオを引っ張り上げることに成功します。おそらくネルシーニョさんのホントの意図はこっちでしょう。前半も、サヴィオのスピードだけはモンテに通用していましたから。

この柏のアジャストが二つの事件を誘因します。ひとつ目は49分に起こります。瀬川のクロスからのこぼれ球をクリスティアーノが右足ソールで押し込みます。柏の追撃がはじまりました。短時間のうちに、あっという間にチームをリビルドし、追撃態勢を整えてしまうのですから、やっぱりネルシーニョさんは策士ですし、リスペクトすべき素晴らしい監督ですね。

ここからは、ネルシーニョ柏が繰り出すマジックを木山さんがどう受け止めるのかが試合の鍵となります。そしておそらく、木山さんのチョイスが逃げ切りを果たした主要因だろうと思います。モンテは、最恐柏に対しガチンコのオープンファイトを挑みます。柏が激変したとはいえ、基本的なチーム資質が変わるわけではありません。なので木山さんは、サイドに依然ウィークポイントが残るとみて、まだまだストックを増やす余力があると踏んだのでしょう。そして読みが当たります。58分。拓己の折り返しを受けた駿が、山岸とのタベーラのいきおいのままに一気にシュートまで持ち込みます。実質、このゴラッソが勝敗を分けました。

ところが、直後に二つ目の事件が起こります。加賀さんがサントスとハードにコンタクトして倒れたときに、着地で左手の指を傷めます。後半の加賀さんはバックスタンド側でプレーしていたので遠目だったのですけど、倒れた直後、痛そうに足をばたつかせていて、しかもあたまを抱えているように見えたので凍りつきました。テーピングをして試合に復帰しましたけど、以降は、正直心配で心配でなりませんでした。メインスタンドからは表情まではわからなかったのですけど、ときおり手を気にしていたので、間違いなく痛みを感じながらのプレーだったと思います。試合のなかで最重要な局面に入ったところでしたから、加賀さんもチームの流れを変えたくなかったのだと思います。直前に秀仁が準備していたこともあり、加賀さんが下がると手札が一枚減ってしまいますから。結果的には、以降加賀さんサイドから二失点することになるのですけど、逃げ切りに成功しますから、加賀さんの献身が報われたと思います。

ここから両ベンチがあわただしくなります。先に木山さんが動きます。山岸に代えて秀仁を同じく左シャドウに投入します。これを受け、ネルシーニョさんが動きます。大谷に代えて祐介を同じくCMに投入します。ただし大谷が担っていた役割はヒシャルジソンに変わります。この両監督の作戦の成否を確認する前に、坂元の超低空直接FKゴラッソが決まります。このゴールが決勝点になりました。

ただ、ここからオープンファイトの代償を払うためにストックを切り崩す時間になります。73分。左サイドでのクリスティアーノとのタベーラから、サヴィオがゴール。続けざまに76分。サントスがドリブルで作ったチャンスを受けたクリスティアーノが、豪快なスーペルゴラッソミドルをたたきこみます。

ストックが尽きかけてきたことを受け、木山さんが動きます。大槻に代えてバイアーノを同じくトップに投入します。ここでついにモードチェンジです。考えてみればモンテは、超攻撃プランを加えることでダブルスタンダードを手にいれることになりました。一枚で体をはれるバイアーノに最前線を任せ、5+4の堅陣を敷くクローズドモードに移行します。ベースロードとして高い守備力を持つチームならではのポジティブな二枚舌。

モンテベンチの動きをみたネルシーニョさんがすぐに反応します。染谷に代えて山下を同じくCBに投入し、バイアーノを軸としたカウンター対策として備えます。ただ柏は、押せ押せの状態にすべきときに守備のカードをチョイスするわけですから、攻撃の機運に確実に影響しました。ネルシーニョさんが堅実を好むがゆえの落とし穴、なのかもしれませんね。と同時に、ネルシーニョさんをしてカオスよりリスクヘッジを選ばせた木山さんの仕掛けが奏功したともいえます。そして木山さんが〆ます。坂元に代えて古部を同じく左シャドウに投入します。守備網の強度を整え、柏のカオスを封じました。逃げ切り成功。柏3-4モンテ。

木山モンテの予想外なリスクテイク大作戦が、残暑の日立台に極上のエンターテイメントを呼び寄せました。サッカーを観る機会はそれなりに多いけど、これほどの好マッチはそうそうお目にかかれません。もしかするとモンテにとっても、今日の試合を観ずして今シーズンを語ることはできないと言えるほどではないかと思います。終盤戦にむけて、確実に勢いをつけてくれることでしょう。

ファンゆえに左手の怪我の状態が最優先で気になります。でもそれだけだと前進にはなりません。良きにつれ悪きにつれ、結果に光明が宿ります。クリーンシートでは見えなかった、自動昇格権に向けたチーム強化の課題を実感できたと思います。加賀さんにとって、右サイドをモンテのキーポジションとすべく、プランが芽吹く試合になったらいいなと思います。そしてやはり、まだあの輝ける躍動感が戻っていませんから、一歩ずつでいいので、ベストパフォーマンスができるコンディションをつくっていってほしいと思います。