ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第16節FC東京vsベガルタ仙台@味スタ20161029

2016-10-31 00:52:44 | FC東京

秋まっただなか。ようやく天候が安定してきました。日に日に寒くなってきてて、もうすぐ冬なんですね。

まだ紅葉前だというのに、はやくもホーム最終戦でございます。恒例のディア・オブリガード。お手伝いしてる選手に会うことができました。むかし遠藤選手を寂しがらせてしまったことがあったのでかけることば選びが慎重になります。ありがとうはサウダージのことば。

ホーム最終戦に迎えますは、最終戦で好印象がある仙台です。ネマのマルセイユ式ルーレットは、今でも自分のなかでベストゴールのひとつです。本日のYou'll Never Walk Alone♪

好印象そのままに、宏太の一点を守りきりました。

今年は編成でも紆余曲折が多かったシーズンでしたね。ホーム最終戦も広貴が怪我で不在。シフトは篠田東京定番の4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは拳人と室屋。ボランチは梶山と草民。WGは右に今日は宏太左に翔哉。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

仙台は最終盤戦に来ての連勝で、残留争いから抜け出しました。牽引力は新エースのハモン・ロペス。シフトは4-2-3-1。GKは関。CBは平岡と博文。SBは右に大岩左に直樹。ボランチは富田と藤村。WGは右に梁左に奥埜。トップ下は野沢。1トップはロペスです。

渡邉仙台は従前より完成度の高さを感じていました。今シーズンの最終盤でまみえた仙台は、その完成度をさらに高めています。

仙台の完成度は、安定志向のオーソドックスなスタイルがその主たる理由だと思います。その意味では、2016篠田東京とコンセプトは同じ。ただ今年三年目、厳密には二年半の渡邉さんと、今年スクランブル登板の篠田さんとでは、完成に要する時間に違いがあります。自ずと、渡邉さんに分があろうというもの。

コンセプトだけでなく、闘いかたもとてもよく似ています。大雑把に言うと先行逃げ切り。ですから、似た者同士の序盤からのガチなぶつかり合いを制したほうがイニシアチブを握ることができると言う展望です。

さて、攻撃プランに関しても東京と仙台はそっくりでした。アタッカーが積極的に裏を狙う、縦に急ぐ作戦です。東京も仙台も、中盤から前の局面でアグレッシブな縦パスが見られます。この作戦を成就するために、両チームともコンパクトな陣形の重心をとても高く設定します。ですから、中盤の攻防が鍵を握る展開になりました。

この攻防を征したのは、東京でした。要因は三つ。まず、中盤の守備です。篠田東京の代名詞となったフォアチェックから守備の流れ作る作戦が今日も東京にリズムを生み出します。前線が8ビートの軽快なリズムを作り、中盤が調和することでアンサンブルが成立します。

シンメトリーな攻防で結果の彼我の差を分けたのは、中央の攻撃です。仙台は、4+4の守備網をコンパクトを敷いて中央を固める東京に対し抗じる術がありませんでした。ロペスにしろ野沢にしろ、中央ではることを試みますけど思うように納められず、自然に自らの選択でサイドに流れます。このため仙台の攻撃はサイドに偏重します。

一方東京は、より攻撃を優位に進めます。東京の守備は、仙台に対しフルゾーンです。言い換えれば特別にマークを強いられることがありません。対して仙台は、仙台から見て右に偏り勝ちになります。それは翔哉がいるから。今日の翔哉番は大岩でしたけど、状況によっては一枚で抑えきれるものではなく、このため仙台の守備網は少しばかり右加重になります。このことが、東京の右サイドの攻撃を活性化しました。

最後の要因は、草民の1プレーです。主導権を取り合う攻防のなか、草民が中央を抜けようとする慶悟に送ったロブのスルーパス。このパスの威力は、宏太のシュートに繋がったので仙台に守備の意識を芽生えさせましたから、試合の流れを決める決定的なプレーだったと言えます。

あまり取り上げられないけど、草民の進化は自分のなかで今年一番のポジティブな驚きであり、喜びでもあります。東京の中盤にかつて居なかったスキルフルなファイターは、ヨネ離脱の危機を救ってくれました。来年の編成はわからないけど、今年は東京の中盤にとってエポックメイキングな年だったかもしれませんね。

仙台が守備を意識したことで、東京の攻撃は、序盤の速攻から遅攻モードに移行します。この先停滞するかなと思った矢先、先制ゴールが生まれます。

14分。室屋のアタッキングサード左奥のスローインから。室屋はゴールライン際の翔哉に渡します。翔哉は室屋にリターン。室屋に梁が寄せます。室屋は態勢を崩しながらもキープ。梁を背負って、フォローに来た草民に渡します。これがスクリーンのかたちになり草民がライン際を抜け出します。この動きに梁と大岩だけでなくインサイドをケアする富田も引き寄せられます。結果、戻っていた翔哉が、最も大好物とする左やや内寄りのポジションでフリーになります。草民は翔哉にパス。翔哉はゴールを背にしながら平岡を引きつけ、さらに内にいる遼一とタベーラ。平岡が開けたスペースに入り込みます。ペナルティエリアに入ります。このときゴール前は、ニアに宏太ファアに慶悟。一方仙台は、翔哉が抜け出したことで、関を含め残っていた博文、奥埜、直樹が全員翔哉に注目しています。結果、宏太も慶悟もフリー。ドリブルしながら翔哉はルックアップして、この状況を確認。選択したのは宏太でした。翔哉は宏太にアーティスティックなロブクロスを送ります。宏太は合わせるだけ。東京1-0仙台。

今日の東京は、先制すると遅攻モードに移行します。と同時に仙台は、裏の脅威が少なくなったこともあって、ゾーンの守備が安定してきます。とくに翔哉のドリブルに対しては、サイドは大岩、内は富田がハードコンタクトでコースを消します。このため東京は中盤でトランジションされることが増え、仙台にイニシアチブが渡ります。

でも、相変わらずオーガナイズしていたのは東京です。この辺りがサッカー観戦の難しさでしょうか。仙台は攻撃権を持つ時間が長くなるにつれて、次第にロペスが存在感を無くしていきます。これは、攻撃コースがサイドに限定されたから。先制した東京がゾーンを固めたので、仙台は攻撃をサイドに押しやられます。いたずらに大岩と直樹の間のサイドチェンジを繰り返すだけで、有効な攻撃を仕掛けることができません。

前半は東京が試合を掌にしたまま終了。

後半頭から渡邉さんがマイナーチェンジします。WGを左右入れ替えます。梁も奥埜も左右できますけど、翔哉がいるサイドのバランスを重視したスタートだったのでしょう。仙台のWGはウィンガーではなく、梁はハブ、奥埜はセカンドアタッカーです。ともに攻撃時は内に絞ります。なので左右入れ替えても状況を大きく変えるものではありません。

そこで、渡邉さんがさらに動きます。野沢に代えて金久保を右WGに投入します。奥埜がトップ下に回ります。ドリブラーアタッカーの仕掛けを期待したのと、奥埜をゴールに近いところに置きたかったのだと思います。

渡邉さんが続けます。藤村に代えてパブロ・ジオゴを投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。ジオゴはロペスと並んで2トップ。奥埜が左メイヤ。梁がボランチに回ります。いよいよ超攻撃モードです。ロペスとジオゴはともにサイドに流れることを好みます。同サイドで被らないように左右に流れることで、固い東京の守備網を揺さぶる意図だと思います。

これが機能します。2トップの流れる動きに連動して、金久保と奥埜は内に絞ります。さらに富田も前に出るようになって、仙台にようやく、らしいダイナミックな展開が生まれます。

篠田さんが動きます。遼一に代えてバーンズを同じくトップに投入します。おそらく守備のケアを優先していたと思いますけど、まず手始めに、前線にロングカウンターの準備を整える意図だと思います。

ほぼ同時に渡邉さんが動きます。大岩に代えて菅井を同じく右SBに投入します。今日は大岩から有効なクロスが上がっていなかったことと、キャプテンシーのある菅井でチームを活性化したかったのでしょう。

直後に篠田さんが動きます。今度は守備のケアです。草民に代えて秀人を同じくボランチに投入します。ダイナミックな仙台の攻撃に対し、中盤をどっしりとケアする意図だと思います。これが機能します。

今年の東京は最終盤に失点するイメージがあります。今日の幕引きは、コントローラブルで安定していました。

最後にアクシデントが起こります。足をつった宏太に代えて羽生を同じく右WGに投入します。宏太は前線から走りまわっていましたから、期するものがあったのでしょう。

仙台のモードチェンジも東京のコントロール下にありました。このまま試合終了。東京1-0仙台。眠らない街♪宏太のシュワッチ篠田監督のシュワッチ

恒例のホーム最終戦のセレモニー。来年春まで遠いなあ。モリゲのスピーチ篠田監督のスピーチ

鹿島戦とはまた違った、ロースコアながらも安定感がある試合っぷりで、観ていて安心しました。基本的な闘いかたがしっかりチームに根付いている証拠でしょう。短期間でチームを仕上げることは、ベースとなるコンセプトがあったとは言え易しいことではなかったと思います。篠田さんの功績は大きいですね。

チームに所属する以上ディシプリンは大切です。とくに今年は、それぞれの立場で責任を感じる部分が強いでしょうから。でもプロですから、選手はいろいろ想うところがあるでしょう。これからはひとりの選手として、時間の許す限り、しっかり将来を考えてほしいと思います。

大宮戦のチケットが取れなかったので、個人的に今日で今シーズンが終了です。でも今シーズンの振り替えにはまだはやく、天皇杯がはじまります。総括はたぶんウインターブレイクにやるとして、今は天皇杯に集中します。元旦を吹田で迎えられますように。


べっぴんさんロケ地の旅 ―20161030 連続テレビ小説「べっぴんさん」展(神戸)―

2016-10-30 23:10:55 | 連続テレビ小説べっぴ...

秋らしい抜けるような青空のもと。

BKワンダーランドに参加し終えて、やってまいりましたのは、べっぴんさんの舞台、神戸でございます。

まずは表敬訪問から。ファミリアの神戸元町本店です。

べっぴんさんの放送期間中の4月3日まで、銀座本店と元町本店で「ファミリアの軌跡展」を開催中。元町本店は、二階に上がる階段の踊り場に展示があります。展示は随時変わるようで、今日は創業者の家族系譜、ミシンとアイロン、それから創業当時のぬいぐるみなどを拝見することができました。とても真摯で丁寧にアテンドしてくださるスタッフさんがいらっしゃいますので、小ぶりな展示ですけど楽しいです。さすがファミリアですね。

続いてやってまいりましたのは、ファミリア創業の地。三宮センター街です。神戸トアロードの東側に面したここは旧メディテラスで、三宮ゼロゲートとして新装予定。現在は神戸別品博覧会の会場で、神戸の物産、おみやげ、ワインなどが紹介、販売されています。こちらの敷地はかつては三つの店舗が並んでいたそうで、そのうち神戸トアロードから内に三件目が、モトヤ靴店。このお店の一角を借りて、1948年にファミリアの前進、ベビーショップ・モトヤが創業します。べっぴんさんでもそのストーリーが再現されていますね。ベビーショップ・モトヤがファミリアに改称して最初のお店を開いたのもこの場所だそうです。

こちらの三階で、連続テレビ小説「べっぴんさん」展が開催されています。来年5月までですので、スピンオフ放送まで見学できるかもしれませんね。

それでは、ご当地神戸のべっぴんさん展を見学しましょう。正直言って、スタジオパークのべっぴんさん展より展示が豪華で楽しいです(^^;。全景はこんな感じ。

 

中央の柱に、すみれさんと良子さんと君枝さんと明美さん。

べっぴんさんの物語の紹介パネル。

人物紹介など。

あさや靴店の紹介パネル。

小道具の展示コーナーが二つ。こちらは戦前のものです。

はなさんの病室に飾ってあったすみれちゃんの絵。

同じく病室に飾ってあったゆりちゃんの絵。

はなさんが手縫いした四つ葉のクローバーの刺繍がはいったハンカチ。すみれさんの宝物ですね。

子ども時代のすみれちゃんとゆりちゃんの写真。

すみれちゃんの最初の刺繍。

君枝ちゃんの刺繍デザインのデッサン。

女学校時代のすみれちゃんと良子ちゃんと君枝ちゃんの刺繍作品。

女学校時代のすみれちゃんと良子ちゃんと君枝ちゃんの裁縫道具入れ。

女学校時代のすみれちゃんの刺繍作品。

女学校時代のすみれちゃんが縫った四つ葉のクローバー。

紀夫さんに届いた召集令状。

招集された紀夫さんにすみれさんが送った裁縫道具。

戦地の紀夫さんから届いた手紙。

ゆりさんが潔さんに贈ったラブレター。

ゆりさんが翻訳した経済学の論文。

ゆりさんと潔さんの結婚写真。

べっぴんさんの台本。

坂東家の家族写真。

あさや靴店のシューズケース。

あさや靴店の靴の部材。

こちらはあさや靴店兼ベビーショップ・あさやモチーフにしたセットイメージのコーナーです。芳根さんと記念撮影ができます。

ベビーショップ・あさやオープンを告知するポスター。

テーブルは実際に撮影で使われたものではないですね。

椅子と棚は、似ているのでもしかしたら実際の小道具かもしれません。

お店の入口にかけてある靴の写真。

続いては、戦後の小道具のコーナーです。

すみれさんと良子さんと君枝さんがショーケースに飾るために作ったベビーショップ・あさやの顔、子供服です。

紺地に襟が白。ボタンの止め糸が赤くて、襟に四つ葉のクローバー。

すみれさんの写真入れ。

すみれさんがエミリーさんに贈った写真入れ。

あさやで売ってた写真入れ。

坂東家の家族写真。

同じフロアに併設で神戸スタイル展も同時開催中です。

神戸スタイルの歴史が刻まれています。

開催期間がべっぴんさん放送期間をすべて包んでいますので、展示は時々変わるのかもしれません。アテンドのスタッフさんがいらっしゃらなかったので確認できなかったけど、神戸に来る機会があったらまた立ち寄ってみたいと思います。


2016J1リーグ2ndステージ第15節FC東京vs鹿島アントラーズ@味スタ20161022

2016-10-23 19:06:23 | FC東京

リーグ戦のホームマッチは先月の浦和戦以来ですから、はやもう一月以上経ちます。季節はすっかり秋が深まってまいりました。

先週はサッカー観戦にもってこいの快適さだったのですけど、ひとつ週を経ただけで、ちょっと肌寒く感じます。

Jリーグも残り三試合。CSのせいというか何というか、今年も、まだ秋だというのに、もうシーズン終了を迎えます。本日迎えうつは、あれまだ残ってたのね感のある、鹿島です。そういえば1stステージ優勝してましたね。今月はリーグカップが中心で鹿島は存在感が希薄なので、すっかり忘れてました。本日のYou'll Never Walk Alone♪。新チャントはBring It On Down♪

我々のキッズチアに応援を被せてきた非礼の報いを受けよと、東京が終始圧倒しての快勝です。

東京は現時点のベストメンバーです。シフトは4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。今日のSBは右に拳人左に室屋。ボランチは梶山と草民。WGは右に広貴左に翔哉。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

鹿島は三週間ぶりの公式戦です。さすがにこれだけ長く開くと影響が心配ですね。中断の間に昌子が復帰です。今日は満男がオプションスタート。今日のシフトは鹿島本来の4-2-3-1。GKは曽ヶ端。今日のCBは昌子とファン・ソッコ。SBは右に伊東左に脩斗。今日のボランチは岳と永木。WGは右に康左に初スターターのファブリシオ。トップ下は聖真。1トップは夢生です。

今日の東京は、鹿島に対し鹿島みたいなサッカーで臨みました。想えば、今日のために鹿島モデルにしたというよりかは、篠田東京の闘いかたを振り返ると、当初より鹿島のサッカーをモチーフにしていたような気がします。

鹿島のサッカーの真髄は、ゴール裏から見たほうがよく分かります。それは、アタッカーのクリエイティブな流動性にあります。そして、それを支える守備力。

守備に関しては、個々の技術の巧みさとコレクティブな連携の高さはもとより、真の鹿島らしさはコンタクトの激しさにあると思います。これはJの上位チームに共通していることですけど、鹿島の選手のコンタクトは、とくに上手くて強い印象があります。なかでも中盤のコンタクトは、鹿島の守備の核心です。中盤で相手の攻撃をしっかり止める、あるいはコントローラブルにしているからこそ、全体の守備の安定につながっているのだと思います。

攻撃は、伝統的にサイドアタック基調です。サイドにボールを持てる選手を置き、アタッカーとSBとの絡みでサイドを崩し、中央に有効なクロスを供給するのが基本的な攻撃プランです。サイドのタレントは質量ともに豊富で、個性が異なる選手が揃っています。大別するとドリブラーの優磨、充孝。オーガナイザーの康とファブリシオ。基本的には、左右のWGはタイプの異なる選手で組み合わせることが多い印象があります。ドリブラーにしろオーガナイザーにしろ、ボール保持能力とゴールを目指す意識が非常に高いのが鹿島の特長です。つまり、高いディシプリンによるコレクティブネスが強みな印象がある鹿島ですけど、基本的には個のタレントの積み上げによるケミストリーを重視していると思います。

さて、現在の鹿島や如何。端的にいうとつまんなくなってます。鹿島モデルのサッカーをなぞっているのですけど、鹿島イズムが感じられません。鹿島モデルを振り返ってみて、鹿島という主語を他のチームに置き換えても違和感は無く感じないと思います。つまり鹿島のサッカーは、本質的にはとてもオーソドックスです。ですから、鹿島イズムの真髄は、オーソドックスなサッカースタイルの、その奥にあるのです。今の鹿島にはそれが足りません。

守備面では、ディシプリンの高さが前提になるのですけど、鹿島らしくなくミスが目立ちます。直接のマッチアップでのミスというよりかは、ゾーンでのマークの受け渡しがあいまいになるシーンがあります。もっと気になるのは中盤の守備の強度です。コンタクトが甘いというわけではなく、鹿島らしくガツガツきます。でも、効いてないのです。ダークさが足らないというか、全体的にクリーンな印象が残りました。どちらかというとゾーンに意識の加重があって、ボールホルダーに対する反応が、少し遅れていたように感じました。

攻撃は、ポストカイオの影響が強く残っているのではないかと思います。鹿島の復権はカイオなくしては有り得ません。つまり、やはり鹿島の攻撃は、タレントのクオリティが優位性を作っていると言っていいと思います。最近の鹿島を観ていないので確かではないのですけど、布陣を観る限りは、カイオと同じ役割を担う選手を左WGにはめるのではないようです。メイヤに康と岳を配置することが多いようですので、ドリブラーウインガーによるオラオラなサイドアタックではなく、高い位置で基点を作るポゼッションスタイルへの変更を模索しているのかもしれません。いずれにしろ、岳を前線で使うということは、現在のWGのラインナップではポストカイオには資さないということを表わしているのだと思います。

それから、サイドアタックの前提となるポストプレーの強度が不足しています。夢生にしろ聖真にしろ、ポストが安定しません。どちらかというと、バイタルエリアを広範囲に動いてスペースメイクする聖真がポストを担うことが多いようです。夢生が中盤に下りてくると最終局面での仕事ができなくなるからだと思います。むしろ聖真の魅力こそ、最終局面でのセカンドシューターだと思うので、役割が逆のような気もします。最近は夢生と赤崎の2トップを試すことのほうが多いようなので、今日布陣を変えてきたということは、やはり前線の攻撃の組み立てに大きな課題がありそうです。

つらつら述べてきたように、ようするに今の鹿島は、鹿島らしい強度が足りません。強度とは、守備局面でのコンタクトの強さだったり、いやらしさだったり、リスクを予見する状況察知能力だったり、そういうディテールにらしさが感じられないということです。また攻撃では、鹿島らしいオープンワイドで沸き上がるような迫力を生むタレントがいないということです。課題が明確なのは鹿島らしいと思います。鹿島が徹底してサッカースタイルを変えないからこそできることです。でも、とても難しい課題だと思います。復権したように見えたけど、まだまだ再建途上というか、ようするに育成の過程なんでしょう。

今日の試合の流れを作ったのは、ベースとしては鹿島の低調さにあると言ってよいと思います。理由はそれだけではありません。むしろ東京にあります。冒頭で述べましたとおり、東京は鹿島モデルで臨みました。そして、そのクオリティは鹿島を上回りました。

東京が取り組む鹿島モデルのポイントは、あえて長々と鹿島のサッカーを振り返ることでお分かりいただけたと思います。ようするに今日の東京は、中盤の守備強度において鹿島を上回り、攻撃のクリエイティビティにおいて鹿島を上回りました。攻守に本家を上回れば、勝つのは必然。

守備に関して鹿島と明確な違いがあります。東京は前線が献身的にチェイスを繰り返します。曽ヶ端やソッコがフィードをミスするシーンが序盤にありましたけど、東京のチェイスの深さと鋭さが要因です。秋元が追い込まれることがなかったことと比べると、東京のアタッカーの献身の高さが見てとれると思います。前線が守備の流れを作ってくれることで、中盤から後ろの選手も鹿島の攻撃ルートがよく見えたと思います。鹿島のポストが不安定だった理由は、ここにもあります。

それから東京は、攻撃面でも今日の本家を上回ります。東京はシンプルな攻撃プランで臨みます。左右のサイド深くをターゲットに、縦に速い攻撃を仕掛けます。鹿島の守備網がコンパクトで、かつ高く布陣することを踏まえた作戦です。これにより、東京は力強い縦への推進力を自ら主体的に手に入れることに成功しました。篠田東京は、どちらかというとリトリート基調でしたけど、カップ戦の結果を踏まえ、よりアグレッシブなスタイルへの変質を探っているのかもしれません。

興行面でも有意義なことだと思います。今日は、もちろん勝利したことが一番なのですけど、全体的にとても面白い試合でした。東京、鹿島ともオープンで、かつ攻守の切り替えが非常にはやく、飽きのこないスピーディーな展開でした。四万人近いお客さんのなかには、今日初めて味スタにお越しのかたも多かったと思います。普段は二、三万ですから。初見のお客さんにとっては、分かり易くダイナミックなサッカーのほうがうんと面白いでしょう。子どもを見ていると試合の面白さのバロメーターになるのですけど、今日は小さな子どもでも最後まで飽きずにいたようです。途中でゲームをはじめたり遊んだりするような子は、珍しくいませんでしたから。長く厳しいシーズンを闘うプロですからいつもエンターテイメント性の高い試合をするわけにはいけないけど、価値観のひとつとして、スピーディーで面白いサッカーを志すのもアリかもしれません。

こうして、同じモデルのサッカーのぶつかり合いは、前線から中盤にかけての守備の強度と、攻撃のクオリティで勝る東京がイニシアチブを握ります。そして、この展開を象徴するような先制ゴールが生まれます。

14分。アタッキングサード中央で草民と遼一がタベーラを試みますけど、ソッコがインターセプト。岳に渡します。岳は下がってきた聖真に当てる縦パスを送ります。これをモリゲが狙っていました。コンタクト一発で聖真をぶっ飛ばしてあっさりとインターセプト。前方の翔哉に渡します。鹿島は守備網を上げてなかったので、翔哉はどフリー。ターンしてドリブルをしながら状況を確認します。この時最前線では、中央にいた慶悟が昌子とソッコの間から、ソッコの背後を狙って飛び出そうとしています。さらに右大外から、広貴が修斗の背後を狙います。永木のプレスを引き付けながら翔哉は左から中央に移動。これで修斗も引き付けます。このため、広貴はファブリシオとのマッチアップになります。翔哉はファブリシオの背後のスペースにスルーを送ります。この時ファブリシオが謎のセルフジャッジで反応を止めます。当然広貴はフリーで抜け出します。広貴は曽ヶ端との間合いをはかり、左足で流し込みました。東京1-0鹿島。

通常、篠田東京は、少し過度に思えるほどリードするとコンサバティブになります。昔からの東京の課題で、リードした際のゲームコントロールの稚拙さが言われてきました。フィッカデンティ体制で課題を克服してきたのですけど、その名残が過剰なメソッドとしてチーム心理のなかに残っているのかもしれません。今日は、ひきこもりません。序盤からのアグレッシブなサッカーを継続します。この点では、鹿島モデルの完成度は、やはり本家にはまだまだ及ばないようです。あるいは、本家のフルコピーというよりかは、鹿島モデルをベースとした新しいサッカー、言わば源氏物語の複写のような、鹿島モデル東京本の構築を目標としているのかもしれませんね。フォアチェックや縦に速いサイドアタックなどに、その片鱗が伺えます。今日は、リズムを変えなかったことが奏功しました。先制後も攻撃権を含めてイニシアチブを握り続けます。

ここで東京にアクシデントです。広貴が足を痛め下がります。代わって宏太が同じく右WGに入ります。言わずもがな、流動性にダイナミズムを生む最大の原動力である広貴が下がることは、攻撃のクオリティに影響することを心配しました。でも今日は比較的縦に急ぐサッカーをしていましたので、宏太も違和感なく入れます。宏太は攻守にアグレッシブですから、その点でも今日の展開にフィットしていたと思います。

前半は、物理面実質面双方で完全に東京がオーガナイズしたまま終了。

後半頭から石井さんが動きます。康に代えて優磨を同じく右WGに投入します。

東京で唯一気になったのが、今日は左に入った室屋です。今日はマッチアップの構図が比較的はっきりした試合でした。互いにシフトが一緒ということもありますし、局面での攻防を重視するサッカーだからだと思います。室屋とのマッチアップは康。室屋は康との攻防に苦労していたように見えました。いつもはコンタクトで負けることがない室屋ですけど、康のゴツンとした当たりに弾かれるシーンが目立ちました。スペースの守備でも後手を踏むことがあり、もしかしたら室屋は、試合の趨勢を握るポイントになるかもと心配していました。その康が下がったので、大きな懸念が無くなりました。今日のWGのセットは左右ともオーガナイザーなので、攻撃の推進力が不足していたことが石井さんには違和感だったのかもしれません。さらには、室屋をもっと守勢に回すために、シンプルなウインガードリブラースタイルの優磨でゴリゴリ押し込めようという意図かもしれません。結果的には、室屋の攻撃参加の回数が増えました。一方の優磨もアシストを決めましたから、この作戦は痛み分けだったかもしれません。

鹿島は、岳と永木を左右入れ替えるシーンもありました。流れというよりかは意図だと思います。岳と永木は役割を分担していて、岳が前に出て永木がサポートします。なので岳は攻撃のハブであり、永木は左右にパスを散らすスイーパーです。スタートの岳は右に入っていました。ちょうど翔哉とマッチアップするかたちです。

前半は、その翔哉が躍動しました。翔哉を基点に、アイデア溢れるクリエイティブな仕掛けが次々と繰り出されます。ひとつには、東京が仕掛ける前線からのチェックを基調としたアグレッシブな守備のため、もうひとつは前に出ることの多い岳のポジショニングのため、鹿島はボランチの前後にスペースが出来ていました。東京はここを見逃さず、有効活用します。遼一のポストが非常に安定していました。慶悟もバイタルエリアの各所に顔を出して、攻撃のリンクマンとしてアクセントになっていました。そして、最終兵器翔哉のためのスペースを、東京がチーム全体で作れていました。

秋に入っての東京が、勝敗の結果はともかく、攻撃そのものに迷いがなく見えるのは、やはりエース翔哉の存在が大きいと思います。まず翔哉自身が自分のドリブルをコンペティティブなレベルに高めたことがもちろん最大の要因です。その翔哉の高い信頼性に基づき、チーム全体が翔哉を目標に出来たことも攻撃の基本プランを形成できた要因でしょう。

鹿島は、中盤のアジャストで翔哉を止めることに成功します。それでも東京の攻守のアグレッシブさを止めるには至らず、相変わらず有効な攻撃を見せられません。そこで石井さんが動きます。ファブリシオに代えて充孝を同じく左WGに投入します。石井さんは辛抱強くファブリシオの開眼を待ったようですけど、しびれが切れたのでしょう。

それでもなお、鹿島に躍動感と強さが生まれません。さらに石井さんが動きます。聖真に代えて満男を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。満男はボランチに入ります。岳が右メイヤ。2トップは夢生と充孝。長い中断の間に、鹿島オリジナルの4-2-3-1への回帰をはかったのだと思います。でも今日のセットでは、中盤の強度がやはり不足していたし、聖真の攻撃での負担が過剰だということでしょう。

これで鹿島が押し返してくることが想像されましたので、スミイチはなんとも不安だなと思っていました。でも今日の東京には、もうひと押しがありました。

84分。アタッキングサードにかかる辺り、左寄りの宏太のFK。東京はゴール前に集合するパターン。モリゲ、遼一、まる、拳人、慶悟、梶山。鹿島は昌子、ソッコ、修斗、永木、満男、夢生がマーカー。ストーンは壁に充孝と優磨。集合エリアの前に伊東です。宏太はニアに送ります。そこに遼一が飛び込んで合わせるパターンです。遼一はマーカーを振り切って右足で合わせますけど、曽ヶ端の正面。曽ヶ端が弾いたボールは落ち着かず、モリゲの前にこぼれます。モリゲはシュート。これも壁にはばまれますけど、クリアに至らずこぼれます。これを遼一が右足を巻き込み加減でたたき込みました。東京2-0鹿島。

このままアディショナルタイムに入っていき、スタンドも勝利へのプロセスに入るムードになってきたところで、ようやく鹿島が逆襲します。

後半アディショナルタイム+1分。東京陣最深部の伊東のスローインから。優磨が室屋を背負って伊東のスローを受けます。優磨は加重移動のフェイクで室屋をズラします。おそらくまったくゴール前を確認することなく、ままよどうにかなりまっしゃろクロスを強引に送ります。このときゴール前は守備網が出来ていましたけど、拳人の後ろから修斗が飛び込んできていました。拳人はボールを見ていて、修斗の動きに反応できません。フリーの修斗は頭で合わせました。東京2-1鹿島。

守り切れない課題は、今なお残るということでしょう。それにしても、追加点の重要性を再認識させられます。一点を守る闘いよりも、アグレッシブに闘い続けるスタイルのほうが、今の東京には合っているような気がします。

篠田さんが〆ます。翔哉に代えてバーンズを投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。バーンズはトップ。慶悟が左メイヤに回ります。攻撃モードに入った鹿島に、背後の脅威を植え付けることと、ボールを持てる選手を前線に置く意図だと思います。

攻撃モードの鹿島に対しても、東京は落ち着いていました。このまま試合終了。東京2-1鹿島。眠らない街♪遼一のシュワッチ広貴のシュワッチ

まだまだ未完成ながらも、鹿島モデルをモチーフにした篠田東京のサッカーは、その方向性が見えてきたような気がします。翔哉依存のサッカーに心配があったけど、鹿島と対戦してみて、結局攻撃のクオリティは鹿島であってもタレント次第なのだということが良くわかったので、翔哉という信頼性の高い魅力的なタレントを軸にしない手はないなとあらためて思いました。

今日は、鹿島モデル同士のガチのぶつかり合いになったので、単純にクオリティが高い東京が勝ちました。サッカースタイルが異なるチームとの対戦では、勝敗を分けるクリッピングポイントが変わってきますから、来年リーグ戦を征するためにはまだまだ課題を見出していく必要があるでしょう。シーズンも残りわずか。天皇杯でどこまで勝ち上がれるか分からないけど、ひとつ一つの試合が来年に向けての重要なテストの場になります。サウダージな季節だけど、しっかりと見守っていきたいと思います。


2016JリーグYBCルヴァンカップ決勝ガンバ大阪vs浦和レッズ@埼スタ20161015 -仲間とともに-

2016-10-16 16:25:52 | 加賀さん

天高く。

ようやく日本の秋の空です。

日本の秋は決戦の秋。シーズン途中に名称が変わった、YBCルヴァンカップもいよいよ決勝戦です。対戦するは、三年連続決勝進出のガンバ大阪と13年ぶりの戴冠を期する浦和レッズ。

当然、東京がこの場にいると思っていたのだけど、今日は当事者になれず残念です。あれからもう7年も経つのかと、遠い目をしてしまいました。来年はこの場所に戻ってきたいです。

正直今日は、代表組が戻ってくるので加賀さんのスコッド入りは諦めていました。それでもやっぱり、夏からのミシャの信頼を想うとかすかでも可能性があるかなと思っていたのだけど、叶いませんでした。レッズが優勝したら姿を見せてくれるかと思って、切り替えて決戦の空気を楽しみます。

運営がちょっと気になりました。埼スタが決勝の舞台になることはシーズンインの時点で決まっていたことですし、浦和が決勝の舞台に立ったことは浦和の力の成果以外の何物でもありません。なので、ある程度浦和側にアドヴァンテージができることは止む終えないと思います。それに、運営に浦和がかなり協力していたことが伺えたので、トレードオフの意味もあるのでしょう。それにしても、もうちょっとJリーグがガンバに配慮してあげてもよかったかなと思います。ガンバのチームとサポが完全アウェイをものともせず、また浦和もしっかり受け止め、素晴らしい試合になりましたけど、その点だけちょっとひっかかりました。

ガンバが、健太ガンバらしい強いサッカーを貫いて、プラン通りに試合を進めましたけど、浦和にはあの男がいました。浦和が13年ぶりのリーグカップチャンピオンです。

ガンバは準決勝第2戦と同じ布陣です。シフトはおなじみ健太さんの4-2-3-1。GKは東口。CBは丹羽とキム・ジョンヤ。SBは右に米倉左に藤春。ボランチは今野と井手口。WGは右に晃太郎左に秋。トップ下はヤット。1トップはアデミウソンです。

浦和は代表組みが戻ってきました。ひさしぶりのベストメンバー。シフトはおなじみミシャの3-4-2-1。GKは周作。3CBは右からモリ、航、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。2シャドウは右にムトゥ左にトシ。1トップは慎三です。

最近、ガンバと浦和双方の試合を現地観戦する機会があったので、両チームの基本プランは省きます。それにしても、吹スタで観たガンバとは見違えるように、今日のガンバは実に強かったです。あの時との布陣の違いは、アデミウソンと今野だけです。アデミウソンを1トップに入れたことと、中盤に今野を復活させたこと。たったこの二つのアジャストが、ガンバを激変させました。吹スタで観たガンバはゾーンディフェンスの強度不足で、ディフェンシブサードでの局面の競り合いに問題があったと記憶しています。今日のガンバが強さを発揮していた主因は、まず守備にあると思います。

基本的にリトリートスタイルであることとゾーン基調であることは変わりません。守りかたの違いは二点。ディフェンシブサードに迎え入れるときにマンマークになることです。これはガンバにとっては新しいスタイルではなく、三冠の年と昨年の天皇杯で見せた闘いかたに回帰したイメージです。もしかするとガンバは、シリアスな決戦の場にならないと本領を発揮しないチームなのかもしれません。その意味では、ガンバというチームは、深くて広い包容力を持つチームと言えると思います。

ハイブリッドスタイルはガンバ本来のかたちでもあるのですけど、対浦和の作戦として合理的です。最近の浦和は、客観的に見て攻撃でひとつ問題をかかえているように思います。それは、サイドアタックの威力不足です。浦和の攻撃はサイド基調です。ですから、相反するのですけどサイドにこそ優位性があり、それは最近の試合も変わりません。ただそれは、高速アタックが機能した場合のこと。最近の浦和は、リトリートされた場合もサイドアタックに偏重する傾向にあります。この遅攻を、言わば強制された場合のサイドアタックに難があります。もともとストロングポイントであるはずの、タカと宇賀神のオラオラした1on1の勝負にバリエーションがありません。ペナルティエリア内にコンパクトな守備網を作られ、浦和自慢のトリデンテが機能するスペースを消された場合、WBの選択はやみくもに中央にクロスを送ることしかありません。もちろんそれでもチャンスに繋げることができるクオリティはあり、相手の守備力によっては十分なアプローチです。でも、今日のガンバの中央四枚は、さにあらず。

つまり、今日のガンバの基本プランは、リトリートして浦和に遅攻を強要せしめることを発送の原点とします。WBに攻撃姿勢でボールを持たれた場合は、中央を固めてシューターのスペースを消します。でもガンバが守備網を作る本当の意図は、ただ守ることではありません。リトリートスタイルである以上、当然のことながら健太ガンバ伝家の宝刀、ロングカウンターの威力をより増すことが、今日のプランの真意です。

そのための工夫が二つ。まず布陣において、カウンターのキーマンであるアデミウソンを最前線に置くこと。アデミウソンが裏に飛び出す可能性をより広げようという意図だと思います。オリジナルポジションはトップ下のアデミウソンですけど、中盤に入った場合は、周囲との連携が選択肢に入ってくるので、時として、アデミウソンまでは有効なアプローチが取れるのだけど、アデミウソンから先に威力が不足することがあります。もちろんアデミウソンを最前線に置くと、中盤のチャンスメークが出来なくなるのですけど、一発勝負の決勝戦ということもありますから、健太さんはシンプルな闘いかたに徹することを選択したのでしょう。

1トップアデミウソンを有効にするためのもう一つの工夫は、ヤットを中盤に下げることです。これもシンプルなロングカウンターに徹する今日のガンバの作戦を表現するものです。前述の通り、守備の1stプライオリティは、矛盾する言い方をするとディフェンシブサードでのフォアチェックです。引くガンバに対し浦和が攻撃姿勢に入ろうとするタイミングでのトランジションを狙います。当然、攻撃の起点は低めになります。ガンバは、逆にこれを有効活用します。中盤でトランジションすると、低めの位置に下がってくるヤットに渡します。ヤットはその位置から、高精度でセクシーなフィードを前線に供給します。これにアデミウソン、晃太郎、秋が反応して、一気に浦和陣に入り込みます。

ややもすれば、攻撃モードに入ったときの浦和は、槙野が上がり切りになることがあり、モリがバランスするとは言え、実質2バックになることがあります。ガンバの割り切ったロングカウンター偏重作戦は、この浦和のクセを前提としたものでしょう。浦和もこの点はケアしていたようです。結局槙野は、試合を通じてほとんど前線に顔を出すことなく、自重していました。ところが、攻撃型のディフェンダーである槙野が、リトリートして誘い込むガンバに反応することを我慢できるものではありません。密やかな囁きが、青と黒の深淵な森の奥から槙野を呼びます。そして、悪魔が目覚めます。

17分。アタッキングサード左寄りでモリから槙野がパスを受け、そのまま仕掛けようとします。これをヤットが止め、もつれたところに今野も混じってイーブンになります。こぼれ球をヤットがかき出し、コロコロパスが航のつま先を越えてアデミウソンに渡ります。アデミウソンは、ほぼディフェンシブサードにかかる辺りからドリブルを開始。アデカウンターが発動します。アデミウソンは追い縋る槙野を振り切り、ペナルティエリアに入ります。対峙する周作の加重を見て、左足インステップで流し込みました。ゴラッソ。ガンバ1-0浦和。

絵に描いたようなガンバのプラン通りの展開になります。槙野自身も自覚していたことだと思いますけど、ガンバのあまりにも巧妙な罠に槙野は知らずしらずはまっていったのでしょう。

試合前に先制点が重要だと思っていました。ロースコアの試合になればガンバ、点の取り合いになったら浦和が勝つと踏んでいました。ガンバが先制すれば、得意の寝技に持ち込んで浦和をねじ込むことになるでしょうし、浦和が先制すればガンバは前に出てこざるを得ずオープンファイトになりますから、浦和アタッカーの好物のスペースが出来やすくなります。そして、作戦の巧みさと潔さ、そして作戦を遂行するチームキャラクターとディシプリン、なによりも、三年続けて同じ結果を見たくないという想いの強さにおいて、ガンバは浦和を圧倒的に上回ります。

こうして試合は、残りの時間で浦和がガンバを攻略できるかがポイントになります。正直難しいかなと思っていました。スターターのトリデンテにベストセットを選択していたので、選手交代で流れを変えることが難しいのではないかと思えたことが理由です。ただ浦和には、遅攻を強いられることへの対策があります。浦和もまた、カウンターを持っています。守備陣から少し離れ加減で、味方の選手間の距離を開き気味にすることで、縦に攻めるためのハブを作ります。ここをワンタッチ基調で繋げることで推進力を生み出します。もしくは、一気にWBを走らせるロングカウンター。

これに対してもガンバは備えていました。作戦というよりかは、献身性です。もし今日ガンバが勝っていたら、もちろんMVPはアデミウソンだったろうと思いますけど、献身性という面での影のMVPは、秋と井手口でしょう。二人とも中盤を広範囲に走り回って、浦和のカウンターの芽を摘み続けます。吹スタで観た井手口は、とくにスペースに対する守備強度に課題があるように見えました。でも今日の井手口はとてもパワフルでした。前に出て積極的に守るときは、井手口の守備力が十分に発揮できるのかもしれません。

さらにガンバの守備の安定を想えば、今野の技術力はやはりチームのクオリティアップの肝的な存在感でした。秋と井手口の献身性は走量に現れるものです。今野のそれは、コンタクトプレーの上手さです。今野にかかれば、魔法にようにボールが奪われてしまう感覚が浦和の中盤にはあったでしょう。ひさしぶりに今野の活き活きしたプレーを観て、なんだか懐かしくなりました。

さて、ほぼ一方的にガンバにオーガナイズされる展開になったことを受け、ミシャが早々動きます。宇賀神に代えて駒井を右WBに投入します。タカが左に回ります。おそらく攻撃のプラン変更というよりかは、あるいは宇賀神のパフォーマンスの問題というよりかは、単純に米倉と藤春のサイドのセットに対しては、右駒井左タカのセットのほうが良いということでしょう。本来の浦和のサイドアタックに比べると、最近はWBのシュートが激減しているように思えます。右タカ左宇賀神のセットの魅力はカットインからのミドルショットです。作戦面でのプラン変更をあえて考えると、ミドルショットではなく、ペナルティエリアに独力で近づくことができる選手を入れて、ガンバの中央の堅城に混乱を生み出そうというところかもしれません。でもパワーバランスに変化は起こりませんでした。

浦和は、陽介が中盤で攻撃ルートを探るような状態になっていきます。ここで中央のルートを開ければ良いのですけど、いたずらにサイドチェンジを繰り返すだけで、肝心のガンバの真ん中に混乱を起こすことができません。前半はガンバリードのまま終了。

後半も流れは変わりません。ガンバにすれば、もちろん1点でも逃げ切れる算段はあったろうと思いますけど、できれば安全圏に持っていきたいところ。でも、ロングカウンターに特化したプランで最大のキーマンであるアデミウソンが存在感がなくなり、攻撃が機能しなくなります。浦和守備陣があらためて対アデミウソン防御を心がけたようで、マークが厳しくなります。それとともにアデミウソンのコンディションも、90分間のパフォーマンスを発揮するまでにはないのかもしれません。

そこで健太さんが動きます。アデミウソンに代えて長沢を同じく1トップに投入します。これは予定調和。同時に、自動的に攻撃プランが変わります。個人技を前提としたシンプルなロングカウンターから、同じカウンターでも長沢と基点としたかたちに移行します。これでガンバは、一方的に攻め込まれるだけでなく、時間をコントロールできるようになります。

これに対しミシャが動きます。ムトゥに代えてズィライオを1トップに投入します。慎三が右シャドウに回ります。中央で基点を作れていなかったので、ビルドアップのキーマンであるムトゥよりも、ズィライオのスピードのほうが有効と考えたのだと思います。実際、ズィライオが入ったほうがサイドアタックが機能します。ズィライオがサイドに流れてチャンスメーカーになった場合、米倉にしろ藤春にしろミスマッチになりますから、とても守り辛そうでした。

そこで健太さんが動きます。晃太郎に代えて淳吾を同じく右WGに投入します。これも予定調和なのですけど、健太さんはタイミングを計っていたと思います。右サイドは、秋と米倉の守備のバランスがとても良かったので、健太さんにとっては嬉しい悩みというか、動き難かったと思います。ズィライオが米倉を狙うようになったことを受け、ここが動き時と踏んだのでしょう。

健太さんは承知の上だったと思いますけど、この交代で右サイドの守備バランスが崩れます。淳吾が良くないというわけではなく、それほど秋の頑張りが凄かったからだと思います。浦和が、左サイドを中心に、勢いを持った攻め込みができるようになります。まさにこの時間帯、70分からの10分間が、この試合の分岐点だと思っていました。浦和はこの時間帯が強いので追いつくならここ。逆にガンバはこの時間帯をしのげば勝利が見えてくると思いました。

その10分間も後半を迎えるとき、ミシャが動きます。トシに代えて忠成を右シャドウに投入します。慎三が左に回ります。ちらちらと、今日のように攻撃が停滞したときには、状況を打開できるのは忠成しかいないと思っていました。そして、いきなり天使が舞い降ります。

76分。陽介の左CK。浦和は奇を用いないガチ勝負を挑みます。アタッカーをズィライオ、忠成、槙野、航、慎三の五人に絞ります。必然的にガンバはマンマーク基調のハイブリッド。ストーンはニアにヤットと長沢の二枚。マーカーはジョンヤ、米倉、丹羽、今野、井手口です。浦和の狙いはさらにシンプルでした。マッチアップではもっともミスマッチな忠成vs米倉。お膳立てに、ニアにズィライオを入れてスクリーンを作ります。陽介は速めのクロスをピンポイントで忠成に送ります。ズィライオのマーカーのジョンヤの後ろに入ってしまった米倉は実質マークの機能を果たせません。忠成はフリーで合わせるだけ。ガンバ1-1浦和。

まったく。忠成という男は。なんなんでしょうね。

同点になった時点で、両チームとも延長、あるいはPK戦も視野にしていたでしょう。鍵を握ったのはガンバの守備です。ここでガンバは、集中力を切らすことなく、何事もなかったように守備の安定を維持します。これで、一瞬の天使降臨を観た浦和も、ふたたび停滞状態に戻ります。ガンバも今日唯一のゴールパターンであるロングカウンターの威力をアデミウソンを失ったことで減退させていたので、流れのなかでの追加点は、双方とも期待しにくくなります。ただ、両チームともセットプレーのマジシャンを揃えていますから、規定時間内で試合を決するとしたら、セットプレーかなと思っていました。

健太さんが動きます。秋に代えて呉屋を1トップに投入します。長沢が左WGに回ります。これも予定調和。ガンバはふたたび攻撃プランの中心をロングカウンターに戻します。

やはり双方とも攻撃の決定力がなく、90分間はイーブンのまま終了。

延長に入り、ガンバが攻撃プランを三度あらためます。ヤットの位置を上げて、ビルドアップスタイルに移行します。これが機能します。基点となったのは淳吾です。淳吾を右サイドの高い位置にはらせることで、攻撃ルートを確保します。淳吾の近くに米倉と井手口を置き、コンビネーションで右サイド突破を狙います。これで、それまでと打って変わって、ガンバが攻撃権を持つ時間が増えます。

ガンバが前に出た分、浦和も可能性のある攻撃を見せられるようになります。忠成のビッグチャンスが決まっていたらという想いはあると思います。天使は二度降りず。

さすがに延長に入り、足をつらせる選手が増えていきます。とくに前半から走量が高かった選手はつらかったと思います。延長に入ってにわかにガンバの右サイドが活性化してきたので、対峙するタカは相当しんどかったでしょう。それでも最後まで防ぎ切りましたので、その粘りに頭が下がる想いです。延長前半はイーブンのまま終了。

延長後半もガンバがイニシアチブを握ります。どうしても機能できていなかった呉屋が、最終盤でようやく力を見せて決定的なチャンスを作りますけど、これも周作にはばまれます。

延長は双方にビッグチャンスがあり、疲労困憊ななかでも試合を決めてやろうという高いモチベーションがあって、最後まで密度の高い素晴らしい試合になりました。120分間の闘いは、1-1のまま終了。

PK戦に入ります。1本目、淳吾のシュート。勇樹のシュート。2本目、今野のシュート。ズィライオのシュート。3本目、丹羽のシュート。慎三のシュート。4本目、呉屋のシュート。忠成のシュート。5本目、ヤットのシュート。のシュート。激闘の終止符が押されました。ガンバ1-1浦和。PK戦はガンバ4-5浦和。

浦和レッズが、2016年のYBCルヴァンカップチャンピオンとなりました。We are Diamonds♪

試合が終わって、すぐに加賀さんを探しました。どうやらPK戦のときに既にグランドに下りていたようで、歓喜の輪のなかにすぐに姿を見つけました。

加賀さんは、加賀さんらしく優勝を受け止めていました。選手とスタッフと喜びを分かち合うときは、いっぱいの笑顔を見せていました。それ以外は、こういうときの加賀さんらしく、選手の輪からちょっと離れたところで遠目に眺めていました。

もちろんメンバーに入りたかったでしょうし、試合に出たかったと思います。ぼくらも、表彰台でメダルをもらう加賀さんの姿を観たかった。でも、チームや仲間をとても大切に思う加賀さんですから、勝利をもたらしてくれたスコッドを埼スタのみんなが讃える空間を作ってあげたかったのだと思います。今日の優勝はとても嬉しかったでしょう。

いつか、歓喜の輪の中心にいる加賀さんを観られることを願っています。

浦和レッズのサポの皆さん、おめでとうございます。ガンバの作戦にはまった感はあるけど、失点を最小にとどめたことが結果的に天使忠成の降臨につながったと思います。選手たちの粘り強い闘いは、本当に賞賛に値すると思います。

ガンバサポの皆さんは、とても悔しい想いをされたと思います。でも、ガンバは本当に強かったし、作戦を含め、準備が万全でした。選手たちにとっては、悔しさももちろんありつつも、やり切った感が強いんじゃないでしょうか。本来はイコールコンディションであるべきですけど、結果的に完全アウェイ状態で決勝を迎えたことはガンバサポさんにとって切ないことになってしまったけど、優勝したいんだっていう想いの一体感は、数の問題ではなく強く伝わりました。

やっぱり、当事者としてこの場に立ちたいと想った、満月の夕べでした。


2016JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦浦和レッズvsFC東京@埼スタ20161009 -再会、そして闘いの場へ-

2016-10-10 20:36:50 | 加賀さん

今、ここに。

目の前に、加賀さんがいます。

おかえりなさい。加賀さん。

JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦、67分。その時が訪れます。

61分にミシャさんが二枚同時代えをしたときから、ずーとレッズのベンチを見ていました。いつものパターンですと残る一枚はアタッカーかWBを選ぶのがミシャさんの常套です。先日の第1戦で今季Jリーグ初出場で活躍した平忠さんか、一か月ほど出場機会から遠ざかっている石原さんが濃厚です。アクシデントがない限り、通常ではDFの出場はありません。

でも、さすがにセーフティラインの点差となりましたし、リーグ戦の優勝争いの渦中にありますから主力を休ませる選択もあるかもと思いました。

ずーっと見てたら、見覚えのある立ち姿がアップしてるみんなから離れて少し前に出てきました。それからくるっと90度ベンチのほうを向きます。堀さんだったかしら?。コーチのかたが真っ直ぐに近寄っていきます。遠目に見ても、加賀さんの表情が急に変わりました。すごい緊張が100mくらい先にも届くくらい、一瞬表情にシャープさが増しました。

いや、たぶん。絶対。緊張したのは加賀さん自身だけでなく、ぼくらも、です。

うわー。

からだが震えてきました。

加賀さんの緊張は、ほんの一瞬で消えます。平静な表情にすぐに戻ります。でも普段の柔らかさとは少し違います。嬉しさなのか決意なのか責任感なのかわからないけど、闘いの場に臨む戦士の表情が宿ります。

ミシャさんから1対1の距離感を指示されていたように見えたので、マーク相手を封じることがミッションだったのでしょう。

そう。加賀さんがマークする相手は、東京のニューエース、翔哉です。観ているこちらが、さらに緊張で昂ぶりました。まずミシャさんの信頼に感謝しました。たぶんミシャさんは、残り1枠を、今年ずっとチームを支えてきたベテラン三人のうちの誰かのために使いたかったのだと思います。平忠さんも石原さんも、もちろん加賀さんも、ミシャさんにしてみれば伝えたい想いの重さは同じ。難しい決断のなかで選んだのは加賀さん。もちろん通常では出場する可能性が一番少ないからということもあるのだと思いますけど、理由はそうではないと思います。あくまでもプロですから、そしてミシャさんですから、熱い想いはありつつもリアリスティックに、今一番機能してほしく、かつもっとも信頼しているバックアッパーを選んだのだと思います。

なぜならば、この夏の加賀さんの記録が表しています。9月17日から公式戦5試合連続スコッド入り。その前を含めると7月23日から公式戦14試合で11回のスコッド入りです。出場機会はルヴァンカップのアウェイ神戸戦だけだけど、DFのなかでもっとも重要なバックアッパーとして加賀さんを位置付けていることがわかります。

加えて、加賀さんが主たるポジションとする右CBの重要性も、ミシャさんのなかでの加賀さんのステイタスに影響していると思います。あらためてレッズの右CBの重みを先日の味スタで実感しました。あの時は、普段右CBをやっているモリさんが珍しく左に入っていました。そしてモリさんのプレーが、いつもとは全然違っていてとてもアグレッシブに攻撃参加していました。つまりレッズの右CBはバランサーなのです。イニシアチブを持っているときのレッズは超攻撃的なシフトとなり、見ようによっては2バックです。攻撃姿勢を取りつつリスクマネジメントに貢献するのが右CBの役割。そのようなレッズの各ポジションのなかの最難関のひとつに加賀さんが名を連ねていること自体が誇らしいのですけど、重要な戦力と認識されたということは、この二年半の加賀さんの進化を如実に表していると思います。

偶然ですけど、対峙する東京は左加重のチームです。さらにその左にはエース翔哉がいます。加賀さんの守備するエリアが、今日の主戦場なのです。そこに主力として加賀さんを投入する選択をミシャさんがしたのですから、温情とか調整とか、そんな生易しいものではありません。実力あるいはテスト。

テスト、十分じゃないですか。戦力の確認の対象として闘いの現場に立てることは、加賀さんの自らの進化に対する加賀さん自身のテストの機会でもあるのです。そしてその機会が、偶然にも古巣のわが東京戦。

先月のリーグ戦で、ひさびさに味スタに帰ってきた加賀さんは、試合後に東京の選手、スタッフと旧交を温めていました。きっとロッカールームにも押しかけてアミノバイタルを強奪したと思います。

第1戦でふたたび味スタに帰還した加賀さんは、今度はウェットな行動はまったくなく(それでもチラチラ東京側をしきりに見て気にしていましたけど)、粛々としていました。またアミノバイタルを強奪するのは織り込み済として、邂逅の回を重ねるにつれ、懐かしさから闘いへと少しずつ気持ちも変わっていくのでしょう。プロとして、プロを応援する身として、とても嬉しいことです。

最近は、というか少なくともリーグカップでは、スコッド発表で加賀さんの名前を見つけた時、もちろん嬉しいのだけど、その瞬間涙を浮かべるような感情はありません。ふつうに予想しています。

状況にもよるのですけど、応援するこちらも、加賀さんのステイタスを認識するようになっているのでしょう。今日も期待通りスコッド入りしてくれました。今日は、第1戦と違って、アップのときにしきりに東京側を気にしていました。誰かを探しているのかなと思ったら、やっぱりスタッフや選手と目が合うと、手をあげて挨拶していました。

アップ後にも笑顔を見せていて、外から観ていてほんのり嬉しかったです。東京と加賀さんの両方を応援する難しさはいろいろあるのだけど、加賀さんが東京の一員だったことを覚えてくれていることが嬉しいし、なによりも今日の加賀さんの笑顔を観ると、東京の三年間が加賀さんにとっても楽しい時間で、東京の選手とスタッフを今でも大切な仲間と思ってくれていることが分かって、たまらなく愛おしいです。

だからこそ、ぼくらは本当に、ホントの本当に、真剣勝負の闘いの場で東京と試合をさせてあげたかったし、加賀さんと闘いたかったのです。

ついに、その日が来ました。

レッズのなかで培ったニュー加賀さんは、アウェイガンバ戦で確認できました。目を疑うような安定感にびっくりしましたし、嬉しかったことを覚えています。ただあの試合は、ガンバがカウンター志向ということもあってレッズが攻撃権を持つ時間のほうが長かったです。今日加賀さんが入った状況は東京がアグレッシブに攻撃する状況でしたので、ガンバ戦のような安定して受けて立つプレーぶりではなかったです。失点シーンは加賀さんサイドが基点となりました。加賀さんが狙われたというよりかは、タカが上がっているところで、本来タカがカバーするゾーンに相太が下がり気味に入り、加賀さんがマークせざるを得ない状況を慶悟が上手く使ったプレーです。さらに兄貴も左からなかに入ってくる翔哉を意識しなければならないので加賀さんをフォローできません。つまり1on2。相太をケアするか慶悟をケアするか、加賀さんの選択肢は二択でした。そしてセオリー通り相太を選びます。

大事なことは結果ではなく過程だったと思います。たとえばモリさんならどうしたか。試合後の加賀さんが、なんとなく悔しそうだったのは、そういう想いがあったからだと思います。でも、それって試合に出ないと沸かない感情ですよね。だから、試合後のちょっと悔しそうな加賀さんが、とても嬉しかったです。

肝心のミッションはコンプリートでした。翔哉との直接マッチアップは二度。二度とも封じてます。駒井さんが、レッズ新加入選手にしては異例なくらいはやばやフィットしたことが地味に驚きですけど、その影には加賀さんあり。加賀さんは1on1のトレーニングが大好きで、駒井さんも加わることでレッズのWBに不可欠な1on1に磨きをかけたのでしょう。と同時に、加賀さんは苦手とする高アジリティ系との対戦を克服する努力を重ねたのだと思います。プレー時間はそれほど長くなかったけど、今国内で最高峰クラスの高アジリティ選手である翔哉とのマッチアップを、しかも押し込まれる状況で完封で終えたことは、大原で積み重ねた努力の時間の成果として十分に誇って良いと思います。

個人的には、愛する東京のリーグカップ敗退が決まるとともに、かつて東京に加賀さんが在籍していた頃は、互いに全力で凌ぎをけずる相手だったレッズにちからの差を見せつけられた悲しさと、念願の加賀さんのプレーを観る幸せが混在する、なんとも言えない複雑な感情が渦巻いています。きっと、東京の加賀さんファンのみんなも同じ想いだと思います。なので記事を分けてみました。それでも消化できるわけではないのだけれど、とにかくプロプレイヤー加賀さんとの邂逅は、喜び以外のなにものでもありません。

欲張りなぼくは、ニュー加賀さんをもっと観たい。ちょっとだけよ、な観方をさせられると、もっともっと観たくなります。あの日の、晩秋の陽射しのなかで細く長い影を作っていた痩せた姿が瞼に焼き付いているから、なおさら、いまの明るく力強い姿に希望と可能性を感じます。

もっと速く、もっともっと高いところへ。