ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2019J1リーグ第34節横浜F・マリノスvsFC東京@日スタ20191207

2019-12-08 21:11:56 | FC東京

因禍爲福。成敗之轉、譬若糾墨。

今シーズンの初雪を観測し、一時は試合中も降雪が予想された真冬日の横浜。

いよいよ2019年のシーズンもファイナルを迎えます。そして、東京サポ人生初のビッグファイナルです。首位マリノスに対するは、勝ち点3差、得失点差は7。いうまでもなく、4点差の勝利が条件です。You'll Never Walk Alone♪

東京は満身創痍です。ディエゴが前節の怪我で不在。成はサスペンション。謙佑も脱臼で万全ではありません。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは右にジェソ左に諒也。CMは拳人とアル。メイヤは右に慶悟左にサンホ。2トップは謙佑と洋次郎です。

マリノスはタカがサスペンションです。その他はベストメンバー。シフトは4-2-3-1。GKはパク・イルギュ。CBはチアゴ・マルチンスと槙之輔。SBは右にマツケン左右にティーラトン。CMはキー坊と和田。WGは右に仲川左にマテウス。トップ下はマルコス・ジャニオール。1トップはエリキです。

平常心で観ていない試合を平静に振り返るのは矛盾していますね。いずれの結果になったとしても、2019年のチャンピオンチームのプレーモデルを観る機会はもう今日をおいてないわけですから、あたまのどこかで、いつも通りサッカーを楽しみたい気持ちもあったのでしょう。結果は残念だったけど、東京はやるべき最大級の準備とパフォーマンスを見せてくれたんですし、純粋におもしろい試合だったと思います。

東京は、もしかするとぼくらが観たことがないスペシャルプランで挑んでくるかなと期待していた部分もあります。トレーニングを非公開にしていたので漫画的にミステリアでしたし。でも蓋を開けると普段着でした。東京ははやくタイトなフォアチェックを徹底します。その意味では、受け身に回った湘南戦の反省を、前節に続き示していました。シーズン通して悔やまれる試合が、第28節など振り返るといくつかありますけど、第32節もそのひとつ。

おそらく東京は、4点の取りかたを考えるよりも、1点を重ねるアプローチを取ったのでしょう。オープニングからラッシュをかけたということは、はやい時間に先制して、マリノスのチームとサポがぬぐいさりたくてもそこはかとなくつきまとういっぺんの不安と恐怖を覚醒させたかったのだと思います。よくいう2点リードの不安定は、普通の試合でさえマインドに影響しますから、優勝がかかった試合に、しかもある意味6万3千の期待と不安が押し寄せるなか、尋常なプレッシャーではないでしょうから。

誰しもが思うことですけど、東京がオープニングブローをひとつでもクリーンヒットさせていれば。実際、マリノスは一瞬および腰になります。想像していたよりも東京のチェックがはやく、タイトだったのでしょう。守備陣の6人は受け身に回りますし、前線、とくにエリキとマテウスは露骨にマインドへの影響を見せていましたから。立ち合いのかましで、相手の顎を上げることに成功したかのように見えました。

マリノスの懐に入り押しきれなかった理由は、彼我にひとつずつ。東京は、作戦において一つだけスペシャルプランを用意しました。それはアルチームです。CMを縦配置することでアルを前に出し、マリノスが引いたぶん空いたバイタルエリアにフリーとなったアルにボールを集めコンダクトさせます。そこまでは綺麗に、予定通りにはまったのですけど、そこから先が上手くいきませんでした。アルはドリブルとパスを駆使しますけど、ことこどくマリノス網に引っかかります。秘密兵器は秘密のままおわってしまいました。このことがマリノスにリズムと勇気を与えます。アルの攻撃を止めているうちに守りにリズムが生まれ、確実にトランジションできる自信とともに、前進の意欲が復活します。

もちろん、東京自慢のロングカウンターが、ディエゴの不在、謙佑のコンディションというエクスキューズによりいつものキレを見せられないことも強く影響します。それでもなお、数本謙佑らしい抜け出しを見せてくれました。一方で決めるべきところで決める大切さがしみたシーンでもありました。もう一つは、そのマリノスのカウンター対策。対策といってもシンプルで、チアゴです。東京のカウンターを不発にしたのは、ほぼチアゴといっていいでしょう。チアゴは、スピード、ポジショニング、コンタクトのパワー、ビルドアップのコントロール、それらすべてに、これまで観た外国人CBにないクオリティを備えているようです。

今日の楽しみのひとつはマリノスの守備でした。失点は相変わらず多いのだけど、今年の被ゴレアーダは第17節の味スタ以来なく、後半戦の平均失点は0.82。その秘訣は、コレクティブな変化を想像したのですけど、ようするにチアゴ・マルチンスです。もちろんマリノスを象徴するSBのポジショニングのタイミングと判断の修練もあるでしょう。マツケンとティーラトンはいわゆるつるべの動きで、サイドのリスクマネジメントに貢献していました。それから先に述べたアルを止めるゾーンディフェンスも、守備網全体がコンパクトであるが故でしょうし、キー某と和田の集中の成果でもあります。それでも、それらが霞むほど、チアゴのクオリティはそれだけで現地観戦の価値があるほどです。

東京の攻撃プランが対処された場合、普段ですと有酸素運動モードに入るのですけど、今日が特異だったのは、東京はそれでは目的を果たせないこと。ジワジワとマリノスがリズムを取り戻しはじめていくにつれ、逆に東京に不利な状況が訪れます。そして、流れを決定付け、事実上シャーレの行方を決定する、実にアンラッキーなゴールが生まれます。

26分。彰洋のGKをマツケンがクリア。これをエリキがフリーで拾います。東京は直前の攻撃の流れからモリゲが右に寄っていて、さらに諒也は攻撃参加していて彰洋のフィードのターゲットとなっていました。あえていうと、彰洋が諒也を狙ったのがリスキーでしたね。それでもエリキは拳人が戻って対応します。エリキはキープする選択に変え、状況を作ります。東京は戻り基調のため、バイタルエリア中央が空きます。そこに和田が入ります。エリキは和田にパス。和田は左横をスルスルっと上がるティーラトンに落とします。アタッキングサードにかかった辺りですけど、かまわずティーラトンはシュート。慶悟がクリアしようとしますけど、これがアンラッキーを誘います。慶悟の足に当たったボールはロブシュートのかたちとなり、彰洋のあたまを越えていきました。本当にアンラッキー。マリノス1-0東京。

勢いのあるチームは運も呼び寄せるのでしょうか。マリノスの攻撃は、想像していたよりもかなりシンプルです。近年の攻撃力志向の成功例といえば川崎ですけど、それに比べると単純明快。スピードです。マリノスは基本的にサイドアタック基調です。サイドアタッカーにボールが入ると両サイドともドリブラーアタッカーなので、まずドリブルで局面を作ります。両サイドとも超高速ドリブラーですけど、マテウスが直線的なのに対し、仲川は高アジリティも待ち合わせています。

今年のマリノスのバランスに寄与している一番は、なんといってもマルコスでしょう。その意味では、日産マリノスのトップ下=エースの系譜を継承しています。ただ、過去のトップ下のイメージとは異なり、マルコスは非常にカバーエリアが広く、かつスピードがあることが特長です。マルコス一人で攻撃のリズムと方針を定められますし、守備ではファーストチェイスからコンタクトまで幅広くこなせます。マリノスのクロスの備えは、そのマルコスとエリキに加え、CM、さらにはSBも加わり、数的優位を志向します。いずれも超高速を誇る選手が揃っているので、守備側がアンストラクチャーなまま攻め切ろうとします。ゴール前も同様で、スピードでスペースに対する優位性が持てることがゴール量産の秘訣です。

なので、その意味では、まだまだ荒削りです。Jリーグは模倣思考の強いリーグですから、チャンピオンチームやエポックメイキングな闘いかたのチームは翌年以降のトレンドになる傾向があります。マリノスは選手のタレントに依存するちょっと特異なスタイルで、かつモデルとして未成熟なので、模倣の対象にはならないかもしれませんね。

ただし、クラブのビジネスモデルとしては、マリノスは先進的です。マリノスの編成方針は、伝統よりも結果を重視するヨーロッパ的志向の上にあるようですので、選手はあくまでもピース。昨年と今年でまるで違うスターターセットになることを厭わないでしょうし、極端にいうとシーズン前半と後半で選手がガラッと入れ替わっても構わない。それを是とするか否とするかは好みが分かれるけど、今後確実にマリノスのモデルを模倣するクラブは出てくるでしょうし、是非は歴史が問うと思います。その意味で、非常にエポックメイキングなシーズンになるかもしれません。手負いの東京がそれでもモチベーションを維持してもがくなか、追加点が生まれます。

44分。マルコス、キー坊、和田、ティーラトン、槙之輔が絡むパス交換で守備網を揺さぶり、マルコスが誘いにのって出てきたアルの背後を取ります。マルコスはルックアップ。中央にエリキ。右に仲川がフリー。左のマテウスはジェソがついてます。マルコスはドリブルでアタッキングサードに入りつよしを引きつけ、中央に2on2の状況を作ります。諒也はエリキではなく仲川を見ていますけど、モリゲがそれに気づいていません。モリゲの背後を取ったエリキにマルコスがパス。諒也が絡もうとしますけど、エリキが重心を下げボールを確保します。これがスーペルでした。左足元にボールを置いたエリキはそのままゴール左隅に流しこみました。マリノス2-0東京。

前半は、こころの備えは実はありましたけど、現実をみて、空虚感すら覚えて終了。

後半頭から健太さんが動きます。サンホに代えてインスを同じく左メイヤに投入します。

慶悟に代えて田川をトップに投入します。洋次郎が右メイヤに回ります。アル大作戦が失敗したので、前線での洋次郎の受け手としての役割がなくなったことと、やっぱりスピードと勢いをチームにもたらそうという意図です。この時点でインスに頼るということは、余裕がまったくないということです。ここにきて、スペシャルプラン発動。

健太さんが続けます。アルに代えてたまを右メイヤに投入します。洋次郎がCMに回ります。スペシャルプランとはいえ、やれることは、がんがんフォアチェックとカウンターをやって縦の推進力を生むことだけなので、オラオラ度を高めます。

東京が早々カードを使いきったことをみて、アンジェさんが動きます。マテウスに代えて渓太を同じく左WGに投入します。コンディションの考慮だと思います。アンジェさんは奇を狙う必要はないので、作戦変更も常套です。

東京が縦に急ぐのでオープンになりがちなのですけど、マリノスの対応でバランスが保たれます。昨年一年をある意味捨てて熟成期間に当てた成果が、決戦の場面でも落ち着きとして現れているのでしょう。即物的イメージが出てきたマリノスだけど、チーム作りは最低二年スパンで考えているのかもしれませんね。

ここでアクシデントが起きます。イルギュが退場します。代わりに中林がGKに入ります。マルコスが下がり、シフトを4-2-2-1に変更します。直後のFKをしのいだ中林は、その後も大過なく過ごします。

そして、東京の攻撃を鷹揚に受けていたマリノスが、カウンター一閃。東京の夢を打ち砕く追加点をあげます。

77分。洋次郎のオフサイド判定に、東京は一瞬集中を切らします。ティーラトンは見逃さず、クイックリスタートを一気に前線の渓太につけます。渓太はチェックにきたつよしを背負いながらくるっと回転して、抜け出します。ペナルティエリアに入った渓太は、つよしとの1on1を左右の切り返しで征し、左足でシュート。彰洋が触りますけどゴール右隅に決まりました。マリノス3-0東京。

ビジネスモデルの転換期にあるマリノスの優勝に花を添えるゴールが、はえぬきの育成出身により生まれるというドラマは、日スタを沸かせるに十分でした。

実をいうと、優勝は現実的ではないなと思っていて、むしろマリノスに勝ちたいと願ってました。二位にしても同勝ち点であれば、グッドルーザーというかイデオロギーに対する矜恃は保たれます。もろもろシーズン中の勝ち点不利のエクスキューズも成立します。もちろんアウェイ八連戦の異常も主張できます。それも果たせず。東京の意図的な突貫をマリノスに上手にいなされた90分になりました。

アンジェさんが〆ます。和田に代えて渡辺を同じくCMに投入します。

そして、このままシーズン終了。マリノス3-0東京。

横浜F・マリノスのクラブ、サポ、スポンサーの皆様、J1優勝15年ぶりの優勝おめでとうございます。

東京の2019年シーズンの最終順位は、二位となりました。You'll Never Walk Alone♪

真の意味で、最後まで可能性を残し優勝争いを体験させてもらったはじめてのシーズンでした。悔しくて悔しくて、放心状態の家路でした。でも、とても充実した一年でした。優勝ということばを何度こころに思ったことか。今年の振り返りは別の機会にするとして、とにもかくにも、ここまで連れてきてくれたチームに本当に感謝です。ありがとうございました。そして一年間おつかれさまでした。

それにしても、どうやったら優勝できるんですかねぇ。ぼくらが優勝を経験するときは、いつかは来るのかしら。ああ。悔しい。

今年も一年間ぽちごやブログをご覧いただきありがとうございました。年末年始が皆さまにとって幸せな時間となることをお祈りします。


2019J1参入プレーオフ一回戦大宮アルディージャvsモンテディオ山形@NACK520191203 -行ぐべJ1!-

2019-12-03 21:13:16 | 加賀さん

師走。ぐっと冷えこむ日が増えて、今年は冬っぽい冬なのかなと予感します。

ひと足先にリーグ戦を終えたJ2はプレーオフシリーズに入ります。加賀さんのキャリアでもはじめてのプレーオフ。人を大切にする加賀さんですから、愛する山形の仲間のため、チームに貢献したいと責任感を強くしていると思います。

最終戦に強行フル出場した様子をみる限り、コンディションはパーフェクトではないなと思いました。ホーム最終戦だしプレーオフのホームアドバンテージを決める大事な試合だから強行したのだと思いますけど、プレイヤーとしてのキャリアを考えるとかなり心配でした。いまは、チームを信じて、捲土重来。

というわけで、今日の加賀さんのスコッド入りはないと思っていました。さいたま市は縁ある地ですからひょっとして帯同してるかなと思い、スタンドをウロウロしてみましたけど、今日は山形で全力応援なのでしょう。青き旗♪

それでは試合を振り返ります。プレーオフ1回戦の相手は3位大宮。山形バカンス♪

序盤から流れを掴み、快勝です。

モンテはオーダーを少しアジャストします。シフトは3-4-2-1。GKは櫛引政敏。3CBは右から熊本、栗山、怜大。WBは右にやっち左に拓巳。CMは本拓と駿。2シャドウは右に坂元左に井出。1トップは大槻です。

大宮は菊地が復帰です。シフトは3-4-2-1。GKは笠原。3CBは右から畑尾、菊地、櫛引一紀。WBは右にイッペイ・シノヅカ左に宣福。CMは三門と石川。2シャドウは右に茨田左に奥抜。1トップはシモヴィッチです。

プレーオフアドバンテージはたしかにアドバンテージだけど、捉えようによっては難しいのかもしれません。昇格争いを勝ち取った経験が豊富な高木さんをして、大宮に伝統的に内在するなんとなくコンサバな雰囲気に抗えなかったのかなと思います。

とはいえ、大宮が全般的に受け身にまわったのは大宮の能動的な作戦ではなかったと思います。もちろんBプランとして用意はしていたと思いますけど、あえてリスクテイクを積極的に選ぶ道理はありませんから。大宮が受け身に回らざるを得なかったのはモンテの圧力に屈したが故です。

とはいえ大宮に、結果論ですけど作戦上の誤算があったのはたしか。最大はシモヴィッチです。大宮はシモヴィッチのキープ力を基軸に、茨田の視野と奥抜の突破力を絡める意図だったと思います。ここで優位性を得ることができればWBとサイドCBを押し上げることができますし、その勢いでオーガナイズを取れます。

どこかで見たような光景ですよね。そう。モンテもまったく同じ作戦で臨んでました。つまり今日の鍵を握っていたのは前線です。後述しますけど、今日のモンテを牽引したのはアタッカーのトリデンテです。

大宮のもう一つの誤算もそこにあります。大宮は布陣を使い分けるチームのようですから、選択肢がありました。今日のチョイスは3バック。つまり大宮は、いわゆるミラーゲームを敷いてきます。ミラーゲームの効果はマークが明確になること。ただし前提があって、すべてのエリアでマークの優位性があること。おそらく大宮は、守ることを主眼にしたミラーゲームではなく、攻めることで山形の長所、あるいは現状唯一の攻撃プランを消すことにあったと思います。大宮が亡失していたのは、マークの前提。とくにモンテのトリデンテに対し守備陣が凌駕する大原則です。

むしろ大宮は、モンテのアジリティ高いシャドウに手を焼きます。序盤の文字通りにガチな主導権争いが決したターニングポイントは、坂元でした。坂元の独力突破が、バイタルエリアで三門、宣福、櫛引が作るトリプルチームもものともせず、局面打開を見せはじめます。たったこの一点だけで大宮にリスクマネジメントのイメージを想起させることに成功しました。

もし大宮が守り切るなら、そしてモンテのアタッカーを正当に評価するなら、ゾーンを消すシフトで臨んだほうがよかったでしょう。もちろんミラーゲームに成功していたら評価は真逆ですから、サッカーはつくづくおもしろいスポーツだと思いますし、サッカーの醍醐味を観せてくれた素晴らしい試合だったと思います。

もうひとつ、モンテが大宮を凌駕したのは中盤の構成力です。まさに大宮の裏返し。本拓と駿は、トランジションポイントでの優位性を持つだけでなく、ダイナミックに動いてモンテのポゼッションを活性化することに貢献します。ここはミラー的なシーンが多かった今日のなかでは珍しく、モンテの作戦が目立った箇所です。モンテは攻撃時に本拓を下げ、2バックにします。これは熊本と怜大をSBのように押し上げる意図です。同時に駿が中央を自在にポジショニングすることで、モンテのビルドアップルートを多方面化します。少なくとも以前観たときにはなかったミシャ的作戦の要素は、木山モンテの近未来予想図を見せてくれているのかもしれませんね。あ、そうか。だから木山さんは加賀さんが欲しかったのか。

前半はモンテペースで推移するもスコアレスのまま終了。

後半頭から高木さんが動きます。シモヴィッチに代えてファンマを同じくトップに投入します。以降の高木さんの作戦をみるとドラスティックに状況を変えるタスクを選手のクオリティに委ねた印象があります。なんだか根本的な部分でモンテの質が上回っていたことを証明するようで、順位とチーム力は必ずしも一致しないんだなとあらためて思いました。

それでもなお、スコアレスという意味では、大宮の優位で試合が進行していました。これもまたサッカー。最終的には5+4の堅陣が保証されますから、ミラーとの二枚腰作戦は成功の一端をみていたと言っていいでしょう。

そこで木山さんが動きます。井出に代えて山岸を同じく左シャドウに投入します。シーズン終盤、チーム状態が下降していくなかで逆に調子を上げ、三連敗となる可能性があった2点ビハインドを土壇場でひっくり返したリーサルウェポンが、モンテのレジェンダリーなパワーネームを背負って満を辞して登場です。

さらに木山さんが動きます。大槻に代えてジェフェルソンを同じくトップに投入します。前線をリフレッシュしつつ、マインドを含めたパワーで前線を活性化する意図です。

ところが、木山さんの想いに反して、この攻撃メッセージの投入によりモンテのバランスが崩れます。攻勢を支えていた中盤の構成力が薄れ、大宮が攻撃権を持つようになります。そこで高木さんが動きます。奥抜に代えてダヴィッド・バブンスキーを同じく左シャドウに投入します。プレースピードを上げ、一気にイニシアチブを取り戻す意図だと思います。

大宮にようやく光明が射してきた矢先、サッカーというのはつくづくシナリオレスなもので、まったく流れに反する先制点が生まれます。

73分。駿の左CK。モンテはファアに主力を固めます。大宮はハイブリッド。栗山に菊地、熊本に宣福、ジェフェルソンに畑尾、やっちに櫛引、拓巳にイッペイがそれぞれつきます。駿はショートコーナーにし、怜大とのパス交換でタイミングをずらします。この間、ニアにいた本拓がファアに下がってマーカーのダヴィッドを引きつけます。さらにショートコーナーにしたことでニアのストーンも上がります。これでニアにスペースができました。そこを狙ったのは坂元です。駿のスルーをゴールライン際で受けた坂元は振り向きざまにダイレクトクロス。そこに拓巳とジェフェルソンが飛び込むパターンでしたけど、どちらにも合わず。イッペイが触ってクリアしようとします。そのボールがゴールに吸い寄せられました。大宮0-1モンテ。

実質、試合の趨勢を決める決定打になりました。主導権が取れたのでそのままの状況を維持すれば良かった大宮が、一転追い込まれます。そこで高木さんが動きます。石川に代えて元紀を左シャドウに投入します。ダヴィッドが右シャドウ、茨田がCMにそれぞれ回ります。点を取ることに特化したセットです。

ここからのモンテのゲームコントロールが秀逸でした。リトリートするではなく、当初プランを維持します。これにより大宮に攻撃権を完全に明け渡すでもなく、ソフトランディングを目指します。なんとなく、守り切れる絶対的な自信のある布陣ではなかったからのような気がします。そして、そのポジティブな姿勢が追加点を生み出します。

82分。宣福のクロスを栗山がクリア。これを坂元が拾います。トリッキーにキープした坂元はルックアップ。前線を走るジェフェルソンにつけます。一気に局面が変わり、アタッキングサードに入ります。ジェフェルソンはキープ。坂元、やっち、中央に山岸が上がりますけど、大宮も六枚戻って4on6で数的不利です。でも、逆サイドのイッペイが戻りきっておらず、広大なスペースができていました。ジェフェルソンのパスを受けたやっちは、ようやく戻ったイッペイの背後を狙ってサイドチェンジを送ります。そこに拓巳がきました。ダイレクトに頭で折り返した拓巳のパスが絶妙で、畑尾の足が届かず菊地も追いつかない場所に落ちます。このとき中央は、大宮のCMが戻ってなく、山岸がフリー。山岸は、拓巳のクロスに右足ダイレクトで合わせました。山の神再降臨。大宮0-2モンテ。

それでもなお、木山さんは慎重で、試合の流れを見定めるため時間を使います。そして、クローズにかかります。拓巳に代えて野田を左CBに投入します。怜大が左WBに回ります。

思惑通り、このまま試合終了。大宮0-2モンテ。

モンテがラスト3ハロンの第一歩を征しました。二回戦に進出です。Blue is the Color♪

もし仮に大宮にアドバンテージがなかったとして作戦面でもメンタルでもエクスキューズがない状況だとしても、モンテが勝ったと思います。サッカーは、ほとんどの場合勝敗が決した彼我の差は見た目よりもわずかです。でも今日に限っては、作戦においてもパフォーマンスにおいても、完全にモンテが大宮を上回ってました。ただ、大宮以外のチームでも出来たかと言われると必ずしもそうではないでしょう。その意味では、大宮との対戦となったことは、ホーム開催を逃したとはいえ結果的には良かったんじゃないかと思います。

思いのほか長いプレーオフは、次は四位徳島。例年は昇格スタイルの、志の低いチームがからむプレーオフですけど、今年は四チームとも個性的なスピリットを観せてくれる魅力的なチームです。徳島とはレギュラーシーズンは1勝1分。つまりプレーオフのレギュレーションではイーブン。またもガチのおもしろい勝負が観られそうです。

そして、行ぐべJ1!。加賀さんとともに。


2019J1リーグ第33節FC東京vs浦和レッズ@味スタ20191130

2019-12-01 19:18:18 | FC東京

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。

ことさらに長く感じた2019年シーズン。今年の東京を象徴する一字は、「旅」でしょう。

多くの青赤な旅人を生んだ2019年のしめくくりもまた旅。横浜。寅さんのような束の間の帰省は最終章につなぐ過程であり、かつホーム最終戦でもあります。

いろんな人に感謝し感謝されたありがとう溢れる一年でした。最後までワクワクを与え続けてくれた東京の選手、監督コーチ、スタッフに精一杯の感謝を贈ります。

マリノスへの挑戦権を得るための最後の砦は、最大の壁、浦和。You'll Never Walk Alone♪

そしてまたも壁を越えられず。それでもしぶとくドローです。

東京はベストメンバーです。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右にたま左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。

浦和は少しだけターンオーバー。シフトは3-4-1-2。GKは周作。3CBは右から岩波、大輔、槙野。WBは右にモリ左に山中。CMはカピとエヴェルトン。トップ下は陽介。2トップは慎三とマルティノスです。

前節の経験を活かしたのか浦和越えの念願か、はたまたマリノス挑戦権のためか、東京は様変わりした素晴らしい入りかたをみせます。浦和は比較的スロースターターで、その癖を狙って試合開始からラッシュを仕掛けます。狙いはバイタルエリア。浦和の中盤はオーソドックスな役割ですけど、オリジナルは攻撃特性が高く、ゆえにスタートではバイタルエリアにスペースができ勝ちになるようです。東京は高い集中でそこをつきます。中心はディエゴ。前節は前線に張り気味で苦労したディエゴのポストは、バイタルエリア深くに下がることで安定します。

さらに高い集中力を発揮した部分が二点あります。ひとつはメイヤとSBの連動です。浦和の圧力を凌駕するためにはディエゴのポストを有効にする必要があります。この役割を果たすのがメイヤとSBです。メイヤはディエゴのポストを拾って基点に繋がるだけでなく、アタッキングサードでの基点ともなり、かつフィニッシュにも絡みます。今日は晃太郎ではなくたまをチョイスしました。前節は、ひさしぶりのホームに首位で帰還したので、知らずしらずチームがかかり気味だったのではないかと思います。そこでまずは試合を安定的にスタートするためにバランサーの晃太郎をチョイスしたのでしょう。結果的にキャスティングミスになるのですけど(晃太郎が良くないというわけではありません)、今日はスタートからかまして一気に押し切る作戦のため、たま起用だと思います。

これが見事にはまりました。たまと慶悟のポジションレスは確実に進化しています。仕掛けときにはボールサイドにメイヤが集まります。リスクテイクにはなりますけど数的優位を作る。上手に闘うだけでは浦和の怨念は祓えないという強い意志の現れだと思います。

東京がイニシアチブを握ることができるか否かのバロメーターはSBの位置です。のみならずタイミングが重要。SB、あるいはダイレクトでトップを走らせる、アタッキングサードに送るパスのタイミングが東京の生命線です。健太東京を二年間眺めていると、ファストブレイクのクオリティを高めるキーマンは受け手だと理解しました。出し手、つまりカウンターの起点は受け手のプレー選択に従う傾向にあるようです。これが両エースが交代した後の攻撃のクオリティに直接影響している原因だと思います。今日は、SBをふくめ、タイミングが絶妙でした。浦和が対応に追われるほど、東京は快適なリズムで試合をオーガナイズします。

もうひとつは中盤の支配力です。当然ファストブレイクの起点。強い時期の浦和は局面でボールロストすることはなかったですし、そもそもスモールゾーンの連鎖で局面自体を作らなかったと思います。オーソドックスな闘いかたに移行したことで局面が出現するようになりましたけど、今日はいとも容易に東京にトランジションされるシーンが目立ちました。東京の集中が浦和を凌駕していたのだと思います。

今シーズン随一と言ってもよいクオリティをみせた15分間で浦和を仕留められなかったことが勝ちを逃した主因だと思います。通常の試合ですと有酸素運動モードに入れば済むことなんですけど、焦りとは言わないまでも、なんとなくまた過去の浦和戦を継承してしまうのかという気分になります。これは浦和戦ならではの、意識のなかの負の遺産。

東京のラッシュを受け切ると、浦和に守備のリズムが生まれます。安定は3CBによるディエゴと謙佑の対応と、両WBのハードコンタクトによってもたらされます。このことがやがて東京に悲劇的なアクシデントをもたらすのですけど、東京の高い圧力を受け止めるために浦和が選択した対処が、東京に不利益をもたらすのですから、プレーイングアクシデントとはいえ、残念でなりません。

浦和の攻撃はシンプルなサイドアタック基調です。工夫はサイドチェンジ。WBからWBにダイレクトでパスを送ることで、スペースの優位性を確保する意図です。ここでもう一点かつての浦和とのギャップを感じました。クオリティの高い選手が揃う浦和ですからパス精度の高さはベーシックに持ち合わせるはずなのに、今日はパスミスが目立ちました。それも意思疎通のズレによりミスに見えたミスではなく、単純なコントロールミスです。浦和の問題は案外基本的な部分にあるのかもしれませんね。

アタッカーの構成にも苦労が見られました。慎三が絶対エースであることは変わらないのですけど、以前は能動的に消せていた慎三がビルドアップでも役割を果たしています。これではいかに慎三とはいえ、ゴール前の一瞬のポジショニングで勝負することができません。これもまた、ビルドアップのクオリティ不足が起因しているのでしょう。

そんなわけで浦和にゴールの香りはしなかったのですけど、均衡状態に入ったのでセットプレーが怖いなと感じてました。東京がオーガナイズしていた時間帯で得たセットプレーでも浦和の高さを意識せざるを得なかったし、時間を追うごとに浦和のセットプレーが増えていましたから。そして危惧が現実になります。

39分。陽介の右CK。ショートコーナーにします。陽介からエヴェルトン経由で山中へ。山中はアタッキングサードライン付近からミドルを放ちます。これは彰洋がはじきますけど、こぼれたボールが不運にもマルティノスに渡ります。さらに不運なことに、マルティノスのマーカーは直前に足を痛めたディエゴでした。マルティノスは流し込むだけ。東京0-1浦和。

直後に、失点以上にショッキングな大きなアクシデントが起きます。ディエゴが足を痛めて無念の交代。代わって田川が同じくトップに入ります。

今年の東京は両エースに頼ったままで終わりそうです。フィジカルに任せた単純なカウンターのように評されることが多いけど、実際はとても繊細なタイミングの上に成立している職人芸です。選手を固定していたわけではなくオプションにもチャンスはありましたけど、職人になるには至らず。ビハインドのなか、追いつき追い越すのは正直しんどいなと思いました。夢や希望はいくらでも語れるけど、現実に田川はリーグ戦ノーゴールでしたから。ここまでは。前半はビハインドのまま終了。

後半も浦和のリズムのまま入ります。浦和は慎三を組立てで使う割り切りをしたのでしょう。リードしていましたし、試合を安定させることを優先したのだと思います。慎三がボールに触れる回数が増えるにつれ、ゆるく浦和ペースを維持します。

そして、ふたたび東京をアクシデントが襲います。謙佑が右肩を痛めて下がります。代わってサンホが同じくトップに入ります。これで両エースがともに下がってしまいました。八方塞がり感があったのですけど、ここでサンホが復活してくれます。サンホが独力の仕掛けで浦和守備網をかき回しはじめてくれ、さらにポスト役も安定的にこなしてくれたので、東京はようやく縦の推進力を取り戻します。

試合がイーブンなカウンターの出し合いになってきたので、じれったいなかでもひと筋の光明が見えてきます。そして同点ゴールが生まれます。

69分。たまの左CK。東京はゴールエリアに散開する珍しいパターンです。主力はファア側。浦和はハイブリッド。ファアのマークはモリゲに槙野、つよしに大輔、拳人に岩波、洋次郎にモリ、田川にカピ。ニアはサンホに陽介がつきます。たまのキックモーションと同時に大外からモリゲが、洋次郎をスクリーンにしながらフェイドアウェイから中央に切り込みます。これでモリゲは槙野をふりきってフリーに。たまはモリゲに合わせます。モリゲの左足ダイレクトはタイミングが合わずミートしません。でもこれがニアにいたサンホへのパスのかたちになります。サンホは右足ダイレクトで合わせます。これは周作がカット。イーブンボールは、ちょうど中央フリーで待ち構える田川に吸い寄せられるように入ります。田川は左足ダイレクトボレーでたたきこみました。東京1-1浦和。

ついに、ようやく田川が魅せてくれました。念じていればチャンスが訪れることもあるのですね。これで流れのなかのプレータイミングもつかんでくれると嬉しいです。

浦和にしても、考えてみたら残留争いの渦中にいますから、勝ち点ロストはしたくないはず。大槻さんが動きます。モリに代えて橋岡を同じく右WBに投入します。浦和常套のWBリフレッシュです。

さらに大槻さんが続けます。山中に代えてタカを同じく左WBに投入します。これも常套。得点の香りがしない原因は別のところにあると思いましたけど、試合の流れそのものは悪くないと見たのでしょう。

直後に健太さんも動きます。たまに代えてインスを左メイヤに投入します。慶悟が右に回ります。作戦レスではあるけど、がむしゃらな躍動感がチャンスを呼び起こすことに期待したのだと思います。

すぐに大槻さんも動きます。陽介に代えて長澤を同じくトップ下に投入します。これもリフレッシュのため。とはいえ、ついに浦和のベストメンバーが揃いましたから、ACL決勝の極限のような集中の再現が心配でした。

心配は無用でした。浦和の埋み火は強くなかったようです。最終盤はオープンなカウンター合戦になります。前線がシンプルに縦を目指す覚悟があるだけ、流れがいくぶん東京に傾きますけど、文字通りの浦和の高い壁を越えるには至らず。願い叶わず、このまま試合終了。東京1-1浦和。

勝ち点3差ですから、勝ち点でマリノスを上回ることはもうありません。得失点差は7。正直川崎には、チャンピオンとしての矜持はないのかと苛立ちを覚えました。長谷川健太監督ののスピーチ東慶悟選手のスピーチ

辛うじて、ホントに徳俵分で、最終頂上決戦の体裁は整えることができました。挑戦権は、あります。確実にあります。スーパー大逆転優勝を勝ち取るためにすべきことは極めてシンプル。いっぱい点を取ること。まずは2点。本来リスクを多く取るマリノスが浮き足立ち、東京がゾーンに入るためには、2点先制だと思います。

泣いても笑うことになっても残すは決戦のみ。日スタは空前の満員ソールドアウト、当然地上波生中継。チャンネルは決まったぜ。