5月なのに真夏日。
ちょっとはやいのですけど、今年も短パーニに衣替えです。
5月は大阪ではじまって大阪で終わる。大阪ダービーの仲人は東京なのかもしれませんね。You'll Never Walk Alone♪
ついに、今シーズン初敗戦です。
東京はヒョンスがサスペンション。シフトはダイヤモンドの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。
セレッソは曜一朗がお休みです。シフトは4-2-3-1。GKはジンヒョン。CMはヨニッチと木本。SBは右に陸左に丸橋。CMは直之とデサバト。WGは右に宏太左にキヨ。トップ下は奥埜。1トップはメンデスです。
苦手三連戦の中日は、実績としても連敗中のヤンスタです。
ロティーナセレッソ船出となった2019年。ロティーナさんのサッカーは、申し訳ないけど宗旨上の都合で前任チームの試合をみるわけにいかないので初見です。スペイン出身というイメージだけで、積極的に主導権を握ることを狙うスタイルだと思っていました。実際に観ると、たしかにその通りなのですけど、いわゆるバルサスタイルではありませんでした。スペインにもリアリストはいるんだなと、ちょっと新鮮な気分です。
2019年のJ1のトレンドになりかけたスペイン風邪は、現時点では流行することなく、神戸の瓦解をきっかけにもはやマイノリティに下がっています。唯一存続しているロティーナさんは、残っているだけのリスペクトすべき理由があるのだと思います。その理由のひとつはクラブとしての揺るぎないポリシーがあること。つまり一時の流行を追ってのスペインではなく、セレッソイズムの延長線上としてのロティーナさんであること。ふたつ目はサポーターの品格。セレッソサポは都会的で常識的な振る舞いをするイメージがあります。データがあるわけではないけど比較的平均年齢が高めなのと、大阪中心街だけでなく奈良や和歌山を生活圏としているかたが多いためだと思います。三つ目はなんといっても歴史。Jリーグこそ無冠ですけど、かつての第一人者ヤンマーですから。
さて、ロティーナさんのアプローチはとてもリアリスティックです。就任初年度は、ロティーナスタイルを確立することを優先しているようです。まあそれは誰しもそうなのでしょうけど、理念を優先してかたちにこだわるのではなく、結果を優先していることが、他のスペイン人監督と違い、ロティーナさんを好意的に感じる理由かもしれません。2019ロティーナセレッソは、守備を優先したチーム作りを進めているようです。
その核になるのがCMの二人。ロティーナセレッソの布陣の変遷をみると、CMは必ずしも当初想定通りではなかったようです。そういう意味では、今日もベストマッチングではないのかもしれません。でも、今日のデサバトと直之のパフォーマンスをみると、このコンビをしばらく継続すべきなんじゃないかと思います。それほど今日のコンビは強力でした。
セレッソは、謙佑のマークを捨てたと思います。これは東京対策として、ユニークな発想でした。東京の好調は、いうまでもなく攻撃陣が引っ張っています。今年の好調の理由は、とるべきときに点を取れているから。負け試合や引き分けを勝ち点に変えられるようになっているためです。守備陣単体でみると昨年とそれほどクオリティに差はないと思います。
攻撃陣にフィーチャーすると、もちろん建英です。ディエゴと謙佑、それに慶悟は、すべてのピースが揃うと強力なことは昨年証明できました。でもコンディションの問題であったりあるいは相手の対策によって分断されることで攻撃力を減衰したこともまた、体験したことです。そこに建英が加わることで、既存の攻撃陣の負担を分散することができました。ただ、サッカーはあくまでも個人が集合したスポーツである原則は変わりません。つまり建英が加わったとしても、本質的には個人のコンディション不良のリスク分散ができたに過ぎません。
セレッソは、東京攻撃陣の分断をはかります。そのターゲットにしたのがディエゴと建英です。まず建英。建英がボールを持つと、丸橋を中心にキヨと直之が絡み、ダブルチーム、ときにトリプルチームを仕掛けます。これにより、建英がフリーになる状況はほぼ皆無になりました。建英に対する不安は未知数の部分です。トップカテゴリーでフルシーズン闘った経験はもちろんありませんから、体と判断力と視野のキレに波が起こることは不可避でしょう。丸橋、キヨ、直之クラスの守備能力に対し、今日の建英のコンディションはストロングポイントには成り得ませんでした。建英は、逆サイドに流れた場合を除き、ほぼ存在感を消されます。
つぎはディエゴ。建英に増してディエゴのマークはタイトでした。ディエゴは下がり加減でボールを受け、そのまま前を向いて仕掛けるプレーを得意にしています。セレッソはそこからのカウンターを嫌います。ポストを受けるディエゴに対し、デサバトと直之がタイトコンタクトを辞さず、マークします。これが成功し、ディエゴの自由が奪われます。
一方謙佑に対しては、セレッソはある程度の仕掛けを許容したのではないかと思います。もちろん東京が重心をあげるきっかけを作るリスクが伴うのですけど、実験的な意味も含め、東京攻撃陣の組織的な連携の鍵は、謙佑ではなくディエゴと建英とみたのでしょう。そして、結局試合を通じ、この割りきりが奏功しました。
セレッソの攻撃は、守備を優先するためまだまだ発展途上です。基本スタイルはポゼッション。この点はさすかにスペイン的な発想です。攻撃ルートはほぼサイド。時間をかけてビルドアップしながら、高く上がったサイドで基点を作ります。攻撃のリズムは二列目の三人が作ります。奥埜、宏太、キヨは頻繁にポジションを変えます。これにより生じる混乱から、スペースのギャップを作ることが狙いです。ポジションを入れ替えますけど、二列目三人の役割は明確に別れています。キヨがゲームを作ります。奥埜は豊富な運動量からフィニッシュにも絡む仕事。宏太は左サイドに固定され、陸との絡みで数的優位を狙います。今日のセットは、このためバランスがとても良かったと思います。これに主戦である曜一朗と都倉が加わるとどんな化学反応を起こすのか見てみたかったけど、ちょっと心残りです。
バランスが良いとはいえ、セレッソは東京守備網を突破するまでには至りません。かたちを作ることはできますけど、ペナルティエリアに効果的に入ることができません。やはりもう一枚、セレッソも中央でごりごり状況を作ることができる選手が必要でしょう。
その意味では、東京もセレッソも、攻撃に一味足りないと感じました。東京はディエゴのマークを分散させられる基点です。セレッソはようするにメンデス。前半はスコアレスのまま終了。
後半は前半の流れを踏襲します。東京は、必ずしも良いとは言えなかったけど、試合が動いたわけではないので、とりあえずコンサバティブに様子みる選択でしょう。はやめに建英を真ん中にもってくるかなと思っていたのですけど、建英もコンディションがいいわけではなかったですから。この辺りは現場と傍観者の立場の違いによる見方の差でしょう。
東京はカウンターの機会が訪れず、セレッソもチャレンジングな仕掛けがなくジリジリする展開が続くなか、先に動いたのは健太さんでした。洋次郎に代えてアルを同じくCMに投入します。直前に剛が負傷したのでどうするのかと思いましたけど、プラン通りでした。まずアルが構想のなかにあること。アルのフィットが遅れていたのでしょうけど、おそらくミッドウィークのカップ戦のパフォーマンスが良かったこともあるのでしょう。編成の変更の可能性が否定できないなか、布陣のテストを兼ねたと思います。
作戦面では、リーグ戦デビューですから実戦でのアルは初見です。アルはコンダクタータイプですね。思ったよりも広範囲に動き、攻守両面で局面に積極的に絡みます。見た目通りパワーもあるので中盤の起点としてがんばりも効かせられます。この点で、トランジションの軸に成り得る存在だと思います。カウンターの起点でもいいし、ポゼッションの根拠としても貢献できそうです。作戦としては、パワーにはパワーを。中盤の支配力を高めることを狙ったのでしょう。アルの課題は、主役に成りたがりの選手にありがちですけど、志向と結果がまだ合ってないことです。コンディションと選手との距離感が改善されるともっと組織のなかでも機能できると思います。
健太さんが続けます。謙佑に代えてサンホを投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。はからずも、魔界ヤンスタの魔の時間帯に入ったので、リスクマネジメントを兼ねて主導権を握りにいったのだと思います。
ところが今日はトップ下建英が機能しません。中央はデサバトと直之の防御圏が建英に対しても機能しました。逆に、魔界の扉が開きます。
78分。例によって後方でポゼッションするセレッソ。東京がセットしたのを見た直之は、大きく右にフィードし、上がっていた陸につけます。フリーの陸はステイで受け、ルックアップ。このときゴール前は、セレッソがニアに宏太、中央にメンデス、ファアに奥埜を配置しているのに対し、当然東京はラインが整っていて、4on3の数的優位です。この状態で、陸は果敢にアーリーを上げます。おそらく陸とメンデスの間のコンビネーションなのでしょう。陸はメンデスの動きを予測してクロスを上げたのだ思います。メンデスは最初剛とマッチアップしていたのでモリゲの視界には入っていません。モリゲも剛に任せるつもりだったでしょう。でもメンデスは、ここから急にモリゲの前に出てきます。よくあるFWの駆け引きですけど、シンプルなるがゆえにはまったのでしょう。向かってくるクロスに対応しようとしていたモリゲの前にでたメンデスが陸のクロスに合わせ、逆サイドのゴール隅に決めました。ちょっと止めようがないゴールでした。セレッソ1-0東京。
これを受け、健太さんが動きます。剛に代えて輝一をトップに投入します。同時にシフトを4-4-2に戻します。拳人がCB、慶悟がCMに回ります。剛の負傷による不可抗力だと思いますけど、建英に前節のような圧倒的な存在感がなかったのもまた事実。
試合が動いたのをみたロティーナさんがようやく動きます。キヨに代えて亜土夢を同じく左WGに投入します。ロティーナさんは状況をじっくり観察するタイプのようですね。今日は作戦通りに進んでいたし、先制もできたので作戦変更を急ぐ必要無しと踏んだのだと思います。
ロティーナさんがたて続けに仕掛けます。メンデスに代えてトシを同じくトップに投入します。亜土夢もトシも、前線をフレッシュにすることで東京守備網をかき回し、東京が攻撃に専念することを予防する意図だと思います。
そして、アディショナルタイムにはいってロティーナさんが〆ます。宏太に代えて片山を同じく右WGに投入します。作戦変更がすべてアタッカーのコンディション維持だったのは、守備陣の安定に満足したためでしょう。
東京の猛攻はむなしく。ディエゴのシュートが残念だったけど、今日はサッカーの神様もセレッソのパフォーマンスを認めたのでしょう。このまま試合終了。セレッソ1-0東京。
今シーズン初敗戦の状況はイメージできなかったけど、らしい負けかただったと思います。本質である守備網を攻略されたわけではないので、許容範囲の波ととらえて良いと思います。切り替えというよりも、見つかった課題に前向きに対応することで、また新しい流れをつかみたいですね。ヤンスタは魔界だけど、バイオリズムを狂わせた実績はなく、むしろさらにパフォーマンスが上がるきっかけになることが多いですから、過剰な心配は不要でしょう。
とはいえ、今年はじめて自慢の攻撃陣が止められました。やっぱりディエゴが気持ちよくプレーできないとカウンターの威力を出せません。そして鍵を握るのは、建英。まだシフトチェンジの判断ははやいと思います。まずは建英自身のコンディションと、建英を活かす周囲の絡みかたが課題だと思います。とはいえしばらく建英不在になりますけど。
さあ、つぎはいよいよ、楽しみなニューカマー。おかえりなさいの大分です。片野坂大分を観ることは今年の楽しみのひとつ。どんなサッカーをするのでしょうね。