ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

第95回天皇杯準決勝浦和レッズvs柏レイソル@味スタ20151229

2015-12-30 17:27:40 | 加賀さん

本日も晴天なり。年の瀬の東京は、穏やかな好天が続きます。

今年のサッカー観戦の最大の楽しみのひとつが、天皇杯決勝元旦味スタです。東京がホーム味スタで天皇杯決勝を迎える姿を、当然のごとく想い描いていました。悔しいことに諫早の地で夢は消え去りました。

今年は東京だけでなく加賀さんを追いました。浦和はベスト4に残っているので、個人的には今年のサッカー観戦ロードは続いています。

今日で11試合目となる今シーズンの浦和の試合観戦です。すべて加賀さんとの再会を期待してスタジアムに訪れたのですけど、願いが叶ったのはACL水原三星戦だけ。アウェイ新潟では、帯同していた加賀さんが目の前でアップに参加していたのを見逃すという大後悔がありました。

正直、一発勝負の天皇杯終盤はおなじみのメンバーで臨むと思っていたので、あまり期待していませんでした。でも直前にみっちゃんが怪我をしたらしく、ベスト8にメンバー入りしていました。みっちゃんの状態はわからないのですけど、日程がつまっているのでもしかしたらという期待がありました。

加賀さんがメンバー入りです!。

ピッチにいる加賀さんを観るのは、件の4月21日水原三星戦以来ですから、じつに8ヶ月ぶり。いろんなことがあった今年の加賀さんですけど、終盤に来て天皇杯4回戦のパフォーマンスが認められたのか、DFのオプションとして三番目の位置を獲得できたようです。

入団当初から「いつかベテランのちからが必要とされる時が来る」という言われかたをして、ファンとして理解しつつも納得できてなかったんですけど、結果的にはそのようになりました。モリさんと那須さんがともにコンディションを崩すスクランブルを、みっちゃんと加賀さんで乗り切ってきました。悔しくはあるのですけど、それでも慣れない環境でのゼロからのスタートで、必要とされる場所まで加賀さん自身の粘りとちからで勝ち取ったことが、誇らしかったです。

今日はさすがに出場するイメージがありませんでした。出場する状況は浦和にとって良い事態ではないことが想像できますから、安易に出場を願うのは控えました。だからむしろ、ただただ加賀さんが目の前で楽しそうにアップしてる姿を観られるだけで、それだけで幸せでした。

ひとつ一つ丹念に、体の隅々と会話しながらゆっくりとアップしている姿を観て、充実感のようなものを感じました。メンバーに入ったからなのか、それともひさびさの味スタだからなのかな。アップの様子その1その2その3その4ハーフタイムの様子

今日一番の楽しい時間はあっと言う間でした。

せっかくなので試合のほうも(^^ゞ。ここからは通常モードでいきます。

ベスト8の状況を振り返ると、浦和は神戸に3ゴールで快勝です。柏はクリスティアーノの神FK三発で、仙台との120分間+PKの激闘を征しました。なので、コンディション的には浦和のほうがアドバンテージがあったような気がします。

柏の予想外のコンサバティブな作戦がはまった、ドロドロした120分間の攻防は、忘れたころにヒーローになる、あの男のゴールで浦和が勝ち抜けました。

浦和はベストメンバーです。前線の入れ替えはありますけど、これもお約束。シフトは言わずもがなの3-4-2-1。GKは周作。3CBは右からモリ、那須、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。今日の2シャドウは右に梅崎左にムトゥ。今日の1トップはズィライオです。なんとなく自分が観戦するときはこの組み合わせが多い気がします。

柏は秋野がサスペンションで不在。後述しますけど、それを受けての吉田さんの選択は衝撃的でした。ベスト8は不在だった大輔が復帰です。シフトは5-2-2-1。GKは菅野。3CBは右から大輔、中谷、エドゥアルド。WBは右にキム・チャンス左に輪湖。ボランチは今日の大谷の相棒は茨田。メイヤは右にクリスティアーノ左にこの試合のあと海外移籍が発表され、柏でのラストマッチとなった工藤。1トップは武富です。

今日の試合をドロドロにした最大の要因は、なんと言っても柏の作戦です。ベスト8の柏は、あえてオープンファイトで臨みました。柏はどSというか、なんとしても自分からしかけて、相手を引きずり込むことを好むようです。ベスト8は守備的な選択をすることも考えられた仙台を、オープンファイトのどつきあいに引きずり込みました。そして今日は、ドロドロの泥沼に浦和を引きずり込みます。

ただ柏のストロングポイントは、守備加重だろうが攻撃加重であろうが、変わりはありません。最終的にはクリスティアーノ大作戦です。どんな状況であろうとも、直接ゴールを狙えるFKさえゲットできれば、イニシアチブを握られてもオーガナイズは渡さない展開に持ち込めるのです。今日の柏の狙いはまさにそれ。

今日の柏の守備のポイントは、3CBの配置です。大輔、中谷、エドゥアルドは、ゴール前をゾーンで守ります。これが特異でした。意識をしたのは、明らかに浦和の1トップ2シャドウでしょう。浦和の2シャドウはクロスオーバーをするので、マンマークだとアジリティで不利にたつことが想定されます。この作戦をさらに堅実にするためには、中央を閉じる必要があります。浦和はサイドアタックだけでなく、中央をこじ開けることもできます。柏は中央にデカい選手を三枚並べたので、少なくともゴール前の高さは、180cmオーバーがズィライオしかいない浦和のアタッカー陣に対し、優位です。でも逆に、ドリブルで仕掛けられるとやっかいです。なので、ゴール前三枚に加えて、大谷と茨田を中央に配置します。3+2の台形で中央をがっつりクローズドするイメージです。

ゾーンの守備方法で得てしてよくあるのが、試合の入りに苦労することです。マークの受け渡しの連携がしっくりくるまでに時間がかかるようです。序盤の浦和は、この間隙をつきます。

浦和も攻撃面で作戦を用意していました。柏が5バックで臨むことを予想していたのか、それともびっくりぽんだったのか、ミシャに聞いてみたいところです。いずれにしろ、今年11回目にして、また新しい浦和のサッカーを見せてもらいました。ポイントはモリの位置です。通常攻撃時には陽介をぽっかり開けた中盤の中継点として使いますけど、今日は攻撃に入ると右CBの位置に下がります。勇樹も通常通り左に入るので、左右のメンバーを変えた3CBのような形になります。

攻撃時も3CBを維持するのは、まずは柏のアタッカーが1トップ2WGで、ピッチの幅いっぱいのワイドアタックを志向することへの対処だと思います。柏の攻撃は基本的にビルドアップですけど、ベスト8ではスクランブルとは言えロングカウンターも見せていたので、それを警戒したのだと思います。

もうひとつは攻撃面です。通常の柏は3CHですから、IHの横にウィークポイントがあります。なので、中央での組み立てよりもモリと槙野を基点にしたサイドでの展開を形成し易いと見たのかもしれません。

浦和の予想がどちらであったにしろ、序盤はこの作戦がはまります。まず通常通り、梅崎とムトゥをかわる変わるボランチの横まで下げ、ポストを入れます。序盤はこのポストが安定していたので、タカと宇賀神を高く位置取らせることができていました。さらに陽介を下げるもうひとつの意図、モリを高く位置取らせることも成功していました。この作戦は、輪湖をターゲットにしていたのだと思います。モリを工藤と輪湖の間に置くことで、工藤を引きつけタカと輪湖の1on1を作りだし、あわよくば輪湖も引っ張り出してタカをフリーにする狙いでしょう。

今浦和のストロングポイントは、明らかにタカです。タカのスピードと切れ味鋭いドリブルは、一年通じて試合に出続けた今年、どのチームのサイドプレイヤーと対峙しても優位に立てることが、チームとしてもタカとしても実感して、自信になっていることでしょう。モリを攻撃の基点とする、あまり目にしない攻撃プランの意図は、このタカの優位性をさらに高めることだったと思います。浦和はタカからのクロスで何度かビッグチャンスを得ます。

ところが、これもゾーンのチームによくあることですけど、一定の時間を我慢して耐えると、流れのなかでアジャストが進み、ゾーンがフィットしてきます。そのために、耐える時間で大事なことは、ゴール前の最終局面でCBが立ちはだかり続けることです。今日の柏は、基本的にサイドを捨てます。捨てるというと語弊があるのですけど、中央を五枚で堅めるため、サイドはWBに任せます。でも序盤は、浦和が右サイドに偏った攻撃をしたこともあって、エドゥアルドがサイドに引っ張り出されるシーンが何度かありました。それでもまだ、ゴール前には大輔と中谷がいます。大谷と茨田もシャドウをケアし、中央の守備の集中を切らしませんでした。

こうして柏の守備がアジャストされ、以降はドロドロの展開に持ち込まれます。柏の本来のケアのポイントは、バイタルエリアです。梅崎とムトゥがポストを受けに下がると、エドゥアルドと大輔が寄せてきます。これを地味に繰り返していると、寄せ切らなくてもちょっと姿を見せるだけで、梅崎とムトゥが警戒するようになります。こうして浦和のバイタルエリアの基点を消すことに成功します。

こうなると浦和は、長いパスを直接WBにつけるようになります。もとより柏がサイドを捨てているので、この作戦も比較的容易に実行できます。とくに右サイドでは、タカと輪湖の見ごたえのある1on1が繰り返され、タカがほとんど勝っていました。クロスを上げるまでは。タカと宇賀神が、さらにはモリがアーリーを上げますけど、柏の中央の牙城がどうしても崩せません。

一方、今日の柏は攻撃プランを二つ用意していました。ビルドアップとカウンターを、状況に応じて使い分けていたようです。今日の基本プランは、おそらくカウンターだったのでしょう。仙台戦で手応えをつかんだのかもしれません。工藤ではなく武富を1トップで使ったことからも伺えます。ボールをキープできる武富が時間を作ってアクセントになり、左右をクリスティアーノと工藤が上がってチャンスメークからフィニッシュまで一気に流れ込むイメージです。もちろんこの流れからのゴールも狙いつつ、柏には言わずもがなのオプションがあります。飛び道具です。

浦和の今日の勝因は、もちろんスーペル忠成であることは間違いないのですけど、結果的に120分間を完封した守備陣の粘りがスーペル忠成を生み出したと言ってもいいと思います。ベスト8の柏とは180度違うプランで挑まれて、少なからず戸惑いがあったと思いますけど、守りかたのポイントをシンプルにしっかりと捉え、混乱することなく120分間集中していました。ポイントは、クリスティアーノ対策だったでしょう。浦和が許したFKのうち、クリスティアーノの射程距離だったのは、結局1本だけでした。これは、ひとつはクリスティアーノ自身に対し、槙野とモリがファールをせずに対処することができていたこと、もうひとつは、武富の高い位置でのポストを自由にさせなかったことが要因です。

ということも予想してか、柏は攻撃のセカンドプランを用意していました。本来の柏のかたちであるビルドアップです。ボールをゆったりと保持することで浦和をリトリートさせ、ジワジワドロドロと浦和陣に進出するイメージです。左右に浦和を振ることで、前線に基点となるスペースを作る意図だと思います。ただこの揺さぶりに対しても、浦和守備陣はしっかりと対応できていました。

前半の終盤にアクシデントが起こります。武富とのコンタクトプレーで足を痛めた陽介が下がります。代わってカピが同じくボランチに入ります。

浦和は、前半の残り時間が少なかったこともあってか、攻撃をやめてアジャストに務めます。陽介とカピでは攻撃の組み立てのパターンが異なります。まずは前半と同じプランでアジャストします。カピが左CBに下がり、右には勇樹が入ります。ただやはりタイミングが異なるようで、モリが上がることは無くなります。前半はスコアレスのまま終了。

後半から浦和が少し攻撃をアジャストします。通常モードに移行します。カピをひとり中盤に残し、経由点に据えます。勇樹は左に入り、モリはバランサーになります。これは、ひとつには柏のカウンターが機能しないことを受けて、前線に顔を出せる枚数を増やす意図だと思います。でもそれよりかは、カピが合わせ易いかたちをとったと言ったほうがいいと思います。

柏も攻撃をアジャストします。クリスティアーノを左に置きます。槙野に完封されていたので、ターゲットをモリに変える意図だと思います。モリが前半が上がり気味だったので、モリの背後を狙う意図もあると思います。ただ前述の通り、浦和が通常モードに直したため、この意図ははまりません。モリも槙野同様、粘り強くファールをせずにクリスティアーノに対処します。

後半はほぼ、浦和が柏陣でプレーすることになります。イーブンボールを浦和が保持する確率が高くなったのと、柏がトランジションして前線で基点を作ろうとしても、重心が低いのでアタッキングサードまでボールを運べないためです。

とは言え柏の守備は、時間が経過しても集中とコレクティブネスを失いません。相変わらず中央でクロスを跳ね返し続けます。こうしてずぶずぶの泥沼にはまっていきます。ミシャ、吉田さんともに、動けません。吉田さんはたぶん、動かなかったんだと思います。守備が想定以上にはまって機能していたので、作戦を変えることでバランスが崩れるのが怖かったのでしょう。

一方ミシャは、ドロドロの展開に延長戦を感じていたんじゃないかと思います。ベスト8で柏は、フレッシュな選手を延長で投入して、結果的にPK戦を優位にしました。PK戦でなくても延長はフレッシュさがコレクティブに勝ることが想定されたので、吉田さんが動かない以上、ミシャも動けなかったのでしょう。そして90分間の闘いが終了。

満を持して延長前半頭からミシャが動きます。一気に二人同時交代です。ズィライオに代えて慎三、宇賀神に代えて忠成を投入します。梅崎が左WBに回ります。ズィライオ、宇賀神とも、コンディションを考慮したのだと思います。

シャドウの使い方を少しだけアジャストします。忠成はあまり下がりません。バイタルエリアではなく、もっと高い位置で最終局面での仕事をさせる意図だと思います。変わってトップに入った慎三にボールを集めます。ムトゥを含め、三人のアタッカーに寄りシュートを意識したプレーをさせたかったのでしょう。ただ慎三がコンタクトプレーで腰に違和感を感じたようで、慎三らしくフリースペースを探して前線を浮遊しますけど、ポストは安定しません。まだ柏の牙城を崩し切れません。

吉田さんがようやくようやくようやく動きます。延長後半頭から茨田に代えて栗澤を同じくボランチに投入します。この交代を見ても、吉田さんがどれほど今日のリアリスティックな闘いかたに自信を持っていたかが伺えます。茨田のコンディションを考慮したのだと思いますけど、安定感のある栗澤をチョイスすることで、大きな変化が及ばないように配慮したのでしょう。

吉田さんが続きます。武富に代えて大津を同じくトップに投入します。これは、初めて吉田さんが見せた色気です。ベスト8でも120分フル出場して体をはり続けた武富のコンディションを考慮したのでしょうけど、前線にフレッシュで走れて、なおかつドリブルもある大津を入れることで、ロングカウンターの脅威を浦和に与えたかったんだと思います。

それでも浦和は、柏をアタッキングサードに入れることなく、粘り強い守備を見せ続けます。繰り返しになりますけど、今日の浦和は守備の集中力の勝利です。そして、そんな守備陣のがんばりに報いるプレゼントが、ようやくようやくあの男から届けられました。

117分。アタッキングサードで、タカが慎三に送ったパスを大谷にカットされます。こぼれ球を輪湖が拾って前線をルックアップしたところにタカが寄せます。こぼれたボールをタカが拾います。柏が一瞬前加重になっていましたので、カウンターブローになります。タカはドリブルで内に絞ります。この時柏の最終ラインはエドゥアルド、中谷、大輔、チャンスの四枚。タカには栗澤と大谷が寄せます。一方浦和は、慎三がゴール前に飛び出そうとしてます。ムトゥはバイタルエリアにフリーでステイ。タカの後ろになぜか那須がいます。大外に梅崎がフリー。タカはムトゥではなくあえて那須を選択します。自分を含めてアタッカーを三枚にする意図でしょう。さらには忠成が前線にあがります。柏は大谷と輪湖も戻って、ゴール前に六枚。栗澤が那須に寄せます。中央が堅いと見た那須は、左に展開。梅崎にはチャンスと栗澤が寄せます。この時中谷の背後から忠成が飛び出そうとしています。これを見た梅崎は強引にクロス。これは栗澤にあたります。でもここで奇跡その1が起こります。跳ね返ったボールがペナルティエリア内深くに転がり、タベーラのようなかたちになります。梅崎はルックアップ。この時ゴール前の柏はゾーンで五枚。浦和はニアに慎三、中央に忠成、ファアに那須です。慎三が柏のラインが下がるのを見てステイ、フリーになっています。それでも梅崎の選択は中央でした。ダイレクトでクロスを送ります。奇跡その2が起こります。梅崎のクロスは、絶妙に中谷の頭を越えて、中谷とエドゥアルドに間にいた忠成に届きました。浦和1-0柏。

天皇杯が再開して絶好調の忠成ですけど、この男にはこれがあるんです。忘れたころに、記憶に残るスーペルな仕事をしてくれます。いつ発動するかわかんないのが難点ですけど、今日は素晴らしい仕事を魅せてくれました。

ビハインドとなった吉田さんが最後のカードを切ります。中谷に代えて徹郎を投入します。同時にシフトを4-4-2に直します。徹郎は右メイヤ。大津が左メイヤ。工藤とクリスティアーノで2トップとします。最後の最後で堅固な守備が決壊しましたから、もう攻めるしかない柏のひと足搔きの選択でした。

浦和は落ち着いて対処します。ポゼッションを維持して、柏に攻めさせる機会すら与えません。ドロドロの粘闘は、浦和の粘り勝ちでした。このまま試合終了。浦和1-0柏。

今日は、何度も言うようですけど、忠成だけじゃなく槙野とモリのがんばりを讃えて欲しいと思います。決勝の相手はCS初戦と同じガンバ。浦和としてはリベンジマッチですね。激闘必至で楽しみです。忠成を讃えるゴール裏本日のWe are Diamonds♪

今年ずっと、リーグ戦で中位から下をさまよっていた柏がなぜ、ACLで活躍できたのか不思議に思っていました。柏のACLはひと試合も観てないのですけど、今日なんとなくわかった気がします。2015年の柏はノックアウトに強いチームだったのかもしれません。守備の粘り強さと飛び道具という、リアリスティックなサッカーの材料が揃っていて、シンプルにゲームプランをまとめ上げることができれば、強さを発揮できるチームなのでしょう。工藤をはじめ選手の入れ替わりがありそうな気がしますし、輪湖、武富、茨田に続いて、秋野や中谷のような楽しみな若手も出てきてます。新監督によってどんなふうにモデルチェンジするのか、楽しみです。

出場機会がなかったので、笑顔は観られないかなと思っていたのですけど、試合後の加賀さんは素直な笑顔であふれていました。チームの勝利をこころから喜んで、加賀さんなりにはしゃいでいたようです。観てるこっちまでほっこりしました。このメンバーと一緒にいるのが幸せなんでしょう。それにやっぱり、元旦にサッカーができる喜びは、昔も今も変わらず感じるところはあると思います。

元旦に会えるかわかんないけど、また今シーズン最後に、そして2016年の年の初めに加賀さんに会えるお年玉を期待して、大晦日を過ごしたいと思います。

年内のブログ更新はこれにておしまいです。ご覧いただいた皆様、本年も本当にお世話になりました。東京と加賀さんを追うことで、東京サポさんだけじゃなく浦和サポさんにもご覧いただくようになるとは、去年の今頃は夢にも思いませんでした。両チームのサポの皆様、ありがとうございます。ロケ地めぐりは、まれがロケが多くて大変でした。その分あさが来たのロケが少なくて、バランスが取れてたのかな。来年は、サッカーのほうはアウェイの現地観戦は少なくなります。今年テレビ観戦記をテストしてみましたけど、それほど違和感がないので、採り入れてみようと思います。ロケ地めぐりのほうは、行ったことがない和歌山と静岡を巡れそうなので楽しみです。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。


第95回天皇杯準々決勝FC東京vsサンフレッチェ広島@長崎県立総合運動公園20151226

2015-12-27 17:12:19 | サッカー

クリスマスを過ぎるとその瞬間から一気に和の季節が訪れます。今日から冬休みというかたもいらっしゃるでしょうね。

今年は、慌ただしい年末年始をぬうような天皇杯が戻ってきました。ベスト8からの闘いがはじまります。

東京は割り当てというか、ベスト8恒例の地方巡業になってしまいました。諫早です。よりによって、この時期の長崎遠征はとてもじゃないけど行けません。無事に味スタ決勝に戻ってきてくれることを願って、テレビ観戦です。と言って仙台で、ですけど(^^;;。

 

とても悔しい結果になりました。気持ちの整理がつかないかたも多いと思います。落ち着いたら、もし良かったら一緒に激闘を振り返ってみてください。

プラン通りの先行逃げ切りパターンにはまりかけましたけど、残り5分を耐え切れませんでした。悔しいけど、これがサッカーなんだな。ミステル東京の冒険がおわりました。そして今年二度目の愛する選手との別れです。

東京は今年のベストマッチ、2ndステージ第13節とほぼ同じ布陣、今年のベストメンバーです。シフトはミステル東京の集大成4-3-1-2です。GKは達也。CBはモリゲとまる。SBは徳永とフィテッセへの移籍が発表された宏介。3CHは右から拳人、秀人、ヨネ。トップ下は河野。2トップは遼一と慶悟です

広島はCSとCWCの連戦のなかで、晃誠と野津田を失いました。航平は間に合ったようです。単純なフィジカルのコンディションに関してはベスト8チームのなかで最悪でしょう。ただコンビネーションとメンタルを含めた総合的なコンディションは、逆に最高かもしれません。シフトは言わずもがな3-4-2-1です。GKは卓人。3CBは右から塩谷、千葉、翔。ボランチは青山とカズ。WBは今日は右に柏左に航平。2シャドウは今日は右にドゥグラス左に茶島。今日の1トップは皆川です。

東京も広島も2nd第13節の結果を踏まえたアジャストを前提にしたプランで臨むのは、誰の目にも明らかだと思います。

東京の成功要因は、プラン面ではミキッチと航平の両WBを押し込めたことと、ドゥグラスの自由を奪えたことにあります。加えて1st第6節で手痛くやられたジャガーにスペースを与えないバックス陣のがんばりが完勝を引き寄せました。成功者である東京は、当然同じプランで臨みます。つまり試合開始の時点で、今日の試合展開を左右するキャスティングボードは、ポイチさんが握っていたのです。

なんとなれば、東京にはあの日以上ののり代はありません。一方の広島は、あの日のエクスキューズを含めて、晃誠と野津田不在がありつつも、選択肢がまだあります。あの日最大のエクスキューズは、柏がいなかったことです。東京は、宏介の1on1はもとより、チームとしてミキッチを封じました。キャラが大きくことなるドリブラーでシュートもある柏に対し、同じことができるかが試合の趨勢を握ります。

広島の攻撃の特長は、中盤を潔く省略して一気に前線につけることです。前線に五枚並ぶので、カズと千葉は五つの選択肢を持つことになります。あの日は、ドゥグラスと晃誠にマンマーク気味についてバイタルエリアの選択肢を消すことに成功しました。これも要因のひとつ。

ですので、考えうる広島のアジャストプランは、ミキッチを見切って柏を使うこと、それからドゥグラスをシャドウではなく裏を狙う役につけることです。もうひとつは、ジャガーを頭から使うこともあり得るかなと思ってました。

ポイチさんの布陣の選択は、前述の通り。皆川の選択は、CWCからの良い流れを保ち、前線に明確なターゲットを作るという意図だと思います。いずれにしろ、スターターのポイントは、宏介vs柏。

東京の入りかたは、あの日とほぼ同じでした。拳人を航平の裏に走らせ、これを河野にフォローさせ、広島の左サイドを撹乱しつつ、高い位置で基点を作ります。もちろん宏介をフリーにするための罠です。

でも柳の下に二匹目のドジョウはいません。あの日の広島はコンサバティブな入りかたをしました。それが東京のプランと噛み合ってしまった要因です。ミキッチではなく柏を使った、ミステルに対するポイチさんのメッセージがここにあります。

航平サイドは翔とカズのトライアングルをバランス良くコンパクトに保ち、拳人を中心にした東京のアタックに対処します。自明ですけど、広島はビルドアップスタイルですから、トランジションポイントは低いです。左でトランジションすると翔、カズ、千葉がボールを回して東京のフォアチェックをかわします。この間に柏とドゥグラスを高い位置で並ばせます。東京にリトリートさせると、やや上がり加減の塩谷に預けます。ここに広島の攻撃スイッチがあります。塩谷の選択肢は二つ。ドゥグラスと柏です。最終的な狙いは柏なんですけど、直接つけるパターンとドゥグラスを経由するパターンがあります。東京のマーキングの状況を見て、塩谷、柏、ドゥグラスはパターンを使い分けていました。

今日の東京の中盤の守りかたは、左右アシンメトリーでした。右サイドはマンマークです。茶島は秀人、航平は徳永、翔は拳人がケアします。シンプルなマンマークなので、右サイドはキックオフから安定していました。何度か航平にクロスを上げられましたけど、茶島を秀人が消していたので、航平は単独でプレーせざるを得ず、効果的なクロスはほとんどありませんでした。

一方の左はゾーンです。大きな役割を担ったのは河野です。河野は基本的には青山をマークします。展開が塩谷サイドに向いた瞬間に、河野は青山から離れ、左サイドの守備に入ります。塩谷にボールが入ったらほぼ必ず縦パスが入ることがわかっていたのでしょうね。

左サイドがゾーンなのは、ドゥグラスと柏の動きにバリエーションがあるからだと思います。柏の前後を慶悟と宏介がケア、ドゥグラスの前後を河野とヨネがケアします。塩谷はあえてフリーにして、起点ではなく基点を抑えるイメージです。

右に比して左サイドは連動性が求められるので、アジャストに時間がかかります。ゆえに序盤は、宏介が柏と1on1の状況にさらされるシーンが目立ちました。アジリティでは柏のほうが上ですから、宏介は手を焼きます。柏が何度か危険な突破を見せます。

アジャストしてきた広島のプランがはまり、猛攻を受けることになります。でも東京は、次第に守備が安定してきます。一番の主要因は、モリゲとまるです。モリゲは皆川にマンマークでつきます。まるはヨネの後ろにいて、ドゥグラスが東京のゾーンから抜け出たところをケアします。茶島は前述の通り。なので、柏、航平からクロスがゴール前に供給されますけど、最終局面でモリゲとまるが跳ね返します。広島にシュートすら打たせない完璧な守備でした。

やがて左サイドのゾーンが安定してきます。塩谷の攻撃パターンを見切った左サイドのグループは、コレクティブに予見できるようになります。だから宏介も体勢を保ったかたちで柏と対峙できていました。柏から効果的なクロスが供給されなくなります。

守備が落ち着いたので、東京はあらためて攻撃を開始します。今度は慶悟にパスを集めます。左サイドに張った慶悟を基点に、内にヨネ外に宏介を置きます。宏介に柏との1on1の状況をプレゼントする意図です。

ちょっと理由を読めなかったのは、河野の役割です。河野はボランチの横のスペースに仕切りに顔を出し、フリーになっていました。でも東京はあえて河野を使いません。東京の攻撃の基本プランが河野を経由するかたちだという認識が広島にあるので、もしかしたら河野を見せて囮にする意図だったのかもしれませんね。

もうひとつは、ビルドアップの起点です。通常は秀人を頂点にした正三角形に徳永と宏介を加えた逆台形ですけど、今日は秀人をほとんど経由しません。秀人は攻撃時も下がり加減で、代わってモリゲが高めに位置取り、攻撃スイッチを押していました。これも理由はよくわかりません。細かいことですけど、ここに来てまた新しいミステルのサッカーを観ることができました。

37分。東京が押し込む状況が続いた時間帯。右サイドアタッキングサードのスローインからボールをつないでサイドチェンジ。宏介に渡ります。広島の守備網はボールサイドに寄せています。この時、というよりもこの少し前から、徳永がこの広島の守備のやり方を見て、大外を伺っていました。この時も徳永が高い位置でフリーになっています。宏介からの戻しを受けたヨネがルックアップ。徳永の呼び込みを見逃しません。徳永に気づいた茶島が航平に指示しますけど、航平は河野をケアしていて徳永につけません。茶島がケアすべきですけど、ラインを意識してか離れられません。ヨネは徳永にピタリとつけるスーペルなロングサイドチェンジを決めます。パスを胸で受けた徳永はゴール前の状況を確認。徳永には航平が寄せています。広島はゴール前に6人並んでいますけど、局面はゴール前のみ。ファアに慶悟がいて千葉が見ています。ニアに遼一が飛び込もうとして翔が見てます。遼一にやや遅れて拳人が入ってきて、カズのケアが遅れ加減です。徳永はこれを見逃さず、拳人に折り返します。拳人がトゥで触れたシュートが、千葉の前をとった慶悟へのパスのかたちになります。慶悟は右足で流し込みました。東京1-0広島。

東京の望み通りに先制できましたけど、あの日との微妙な違いがここにもあります。あの日の先制は70分。ジャガーが投入されて広島がモードチェンジした直後でした。そして1stの逆転負けでは、開始早々によっちが先制しています。今日もまだ後半まるまるたっぷり残っています。

守備が安定していたので安心感はありましたけど、なんと言っても今日の広島は、ジャガーだけじゃなく寿人も控えていますから。前半はリードしたまま終了。

後半頭から広島がアジャストします。フォアチェックをはじめました。東京の中盤とゴール前の守備が完璧だったので、状況を打開したかったのかもしれません。でもフォアチェックを専門とするチームをすらものともしなくなった東京守備網ですから、慌てることはありません。

ちょっと早すぎ感がした先制からのこちらの心配をよそに、東京の守備はますます研ぎ澄まされ、集中したコレクティブネスが増してきます。もともと広島の攻撃パターンがシンプルなこともあり、広島の攻撃をすべて読み切れるようになりました。たぶん選手は、この時間帯相当な手応えを感じたと思います。

なので先に動いたのはポイチさんです。皆川に代えてジャガーを同じくトップに投入します。ただジャガー投入はだいたい後半15分くらいなので、予定調和だったかもしれません。

ジャガーが入って、トップにポストがおさまるようになります。マークはやはりモリゲです。モリゲは緊張感があったでしょうね。皆川の時とは表情が違ってみえました。ここからが真の広島との真っ向勝負ですから。

そして、事件が起きます。66分に、慶悟が二枚目の警告を受けて退場します。これは地味ですけど攻守に大きな大きな痛手になりました。ここから先、事実上東京は完全に守勢に回ることを余儀無くされます。まず攻撃面では、前線の納めところを失います。なので後ろの選手を押し上げられなくなり、攻撃のかたちすら作れなくなります。守備でも慶悟は重要なフォアチェッカーのひとりです。それまで安定していた中盤左サイドのゾーンが効かなくなります。

それでも東京は、耐えます。ひたすら耐えます。まずはシフトを4-4-1に変更します。河野が左メイヤに下がります。そしてなによりも、最後の砦CBを中心としたペナルティエリア内の守備が堅く、マンマークに集中し続けます。

ただこれには東京に有利な条件がありました。ジャガーがトップに入ったことです。東京がリトリートするので、ジャガーの大好物、スペースがありません。必然的にスタンディングでのプレーになります。もちろんジャガーはテクニシャンでもあるのでクローズドスペースでも打開するタレントではあるのですけど、なにしろマーカーが日本代表で、今年のベストイレブンですから。

広島は普段着のサッカーを脱ぎます。東京の前線の枚数が減ったので、カズが下がらず中盤に残ります。カズに高い位置でコンダクトさせる意図だと思います。ただその分青山がちょっと位置取りを迷っているように見えました。青山はカズの横にいましたけど、もっと前でドゥグラス、茶島をフォローする動きをされたら怖かったです。カズを上げても広島の攻撃パターンそのものは変わらず、翔、カズ、青山、塩谷と回して、柏に預けて宏介との1on1です。

ミステルが動きます。河野に代えて羽生を同じく左メイヤに投入します。慶悟退場の時点で予想されましたから、ちょっと引っ張った感がありました。

そしてポイチさんが同時に動きます。航平に代えてミキッチが右WBに入ります。柏が左に回ります。ドリブルでは状況を打開できないと見たのでしょう。

宏介vsミキッチの再現です。そして宏介、ミキッチともに退団が決まっていますから、おそらく最後の対決です。宏介はパーフェクトでした。ミキッチのクセを見切っているのでしょうね。なんとなくミキッチを使ってくれるほうが、怖さがなくて安心して観ていられました。ただ、しきりにミキッチを使う分、左に回った柏の静けさがなんとも不気味でした。

そしてついにあの男が登場です。ポイチさんが動きます。茶島に代えて寿人をトップに投入します。ジャガーが左シャドウに下がります。このかたちが嫌でした。寿人のゴールセンスはもとより、ジャガーが一枚下がることで、小さいながらもジャガーにとっては十分なスペースができます。なによりも、モリゲが寿人のマークに変わり、ジャガーにはスピードで明らかに不利な秀人がつくことになることです。

あと15分、あと10分と、もうここから先は祈るばかり。時間が経つのがこれほど遅く感じたことはありませんでした。そして、後半も40分が過ぎ、長居が見えはじめた矢先、ついに猛獣の咆哮がとどろきました。

85分。達也のパントキックを塩谷が拾ってそのまま左に展開。翔から青山に。青山は拳人に背後のライン際にいる柏にフィード。広島陣から一気にアタッキングサードに入ります。柏は寄せてきた拳人を左脚トラップでかわしつつルックアップ。この時ゴール前は、ニアの寿人はモリゲがケア。やや遅れてファアに入るドゥグラスは宏介がケアしています。ただ、柏と並走して中盤から長駆前線に上がっていたジャガーを、ボールウォッチャーになっていたヨネが気づきません。これを見た柏はジャガーの頭にピンポイントで合わせます。達也は動けませんでした。東京1-1広島。

正直、これで終わったと思いました。東京は攻撃のかたちをまったく作れて無かったですし、もし逃げ切りだけを意図していたとしても、もう一度攻めるモードに切り替えるのは不可能だと思いましたから。

アディショナルタイムを含め、まだ十分な時間があったので、広島は一気にトドメを刺しにくるかと思いました。でも広島の選択は、延長止むなしのリトリートでした。

図らずもというか、昼間に現地で目撃した仙台vs柏も似たような展開で、リードする柏が退場者を出し、仙台のパワープレーになりました。数的優位の広島と仙台、数的不利の東京と柏、どちらも対照的な選択をして、とても興味深いです。

秋野が退場した直後に仙台が追いつきイーブンになります。ここで柏がとった作戦は、シンプル is the bestでした。ロングカウンターです。ロングフィードを前線に放り込みます。加えて前線に、基点になれるクリスティアーノと裏を狙える工藤、山中を配置します。

これに対し東京はというと、事実上攻撃を捨てました。柏と違って基点となる慶悟を失った状況がなんとも痛かったです。さらに東京にはスピードマンがいません。ずっと我慢していましたけど、よっちがいたらなと恨めしく思いました。

仙台は延長前半早々とリードします。その後、なぜかポゼッションせず、縦に急ぐ攻撃に固執します。ポゼッションを持たないならいざ知らず。リードした時間帯が早すぎたのかもしれません。

一方広島は、リードではないとは言え、チームとしての闘いかたを安定させることを優先します。攻めるときと守るときの間に休符がひとつあるイメージです。もしかしたら、広島の強さの根源はそんなところにあるのかもしれませんね。

後半アディショナルタイムにミステルが動きます。拳人に代えて翔哉を同じく右メイヤに投入します。

延長に入ります。シフトを4-3-2に変更します。遼一と翔哉を前線に並べます。翔哉投入の意図はこれでわかります。翔哉に預けて独力でアタッキングサードに運んでくれることを期待したのだと思います。

おそらく流れのなかでの得点は難しいなと思いましたけど、なんと言っても東京には飛び道具があります。昼間の試合で、手詰まりのときのクリスティアーノの威力をまざまざと見せつけられましたから、その残像が焼き付いていました。グッバイ&グッドラックを笑顔でさせてくれるのは、ほかならぬ宏介自身。

ただコンセンサスがとれていたのか、あるいはシンプルな宏介大作戦で臨んでいたのか、疑問に感じるプレーがいくばくかありました。パスよりもドリブル、無理なシュートよりキープを優先すべきだったと思います。

同時にリスクも内在します。後ろの構成をスタートに戻したとは言え、明らかに中盤サイドエリアの守備網がもろくなっていますから、それまで完璧だったミキッチ、柏対策が行き届かなくなる心配がありました。そして。

103分。ミキッチのスローインを塩谷がミキッチに戻します。ミキッチはルックアップしてゴール前を確認します。ペナルティエリア内は、寿人が前ジャガーが後ろの縦関係です。それに対し東京は、モリゲとまるが並んだまま。つまりジャガーがどフリーです。ミキッチはこれを見逃しません。でもミキッチのクロスは宏介が背中にあてていったんは死に体にします。でも不運なことに、ニアに飛び込む寿人の背後から忍び寄ったジャガーのもとに届いてしまいます。ジャガーは肩で合わせました。東京1-2広島。

ことばがありません。延長前半が終了。

ここから先はもう何も言いたくないので、抜け殻のように。延長後半の広島は、やはりリトリートします。当然東京のポゼッションが高まり、広島陣で過ごす時間が増えます。頼みの綱のセットプレーもできるようになります。

最後にいまさらながらミステルが動きます。ヨネに代えてバーンズを投入します。シフトを4-2-1-2に変更します。トップ下は遼一。

リトリートした広島は、ジャガーを本来のかたちで使います。114分、ジャガーを倒したモリゲが、覚悟の静かなる断末魔で退場。宏介にキャプテンを託します。バーンズが奇跡的なチャンスを二度作りましたけど、幻でした。

そして、すべてがおわりました。東京1-2広島。

ミステル東京の冒険がおわりました。ミステルへの感謝はあらためて綴るとして、今日はありがとう、おつかれさまを贈りたいと思います。

そして、宏介との惜別となりました。直に送別できないのが悔やまれます。オランダでもがんばってほしいです。

年内の東京ブログはこれでおしまいです。ご覧いただいている皆さま、本年も大変お世話になりました。いつも応援していただいてありがとうございます。来年もがんばります。よろしくお願いします。それでは皆さま、よいお年をお迎えください。


第95回天皇杯準々決勝ベガルタ仙台vs柏レイソル@ユアスタ20151226

2015-12-27 17:11:31 | サッカー

暮の元気なご挨拶。今年はそれほど風邪は流行ってはいないようですけど、急に寒くなってきましたので、くれぐれもお体はご自愛ください。

Jリーグの最終戦からはやもう5週間。直近の観戦もCS初戦以来ですから4週間経ちました。その間ロケ地めぐりもせず落語にも映画にも博物館にも行かず、ダメ人間でした^^;。これらを取ったらポチえもんにはなーんにも残らないですね。

わが国トップのサッカーが再開です。天皇杯ベスト8。東京は長崎は諫早に巡業。今日から冬休みというかたも多い旅行シーズンですから、とてもじゃないけどエアが高くて行けませんでした。さらにテレビ中継もなく録画放送ということがわかって、いてもたってもいられなくなり、やってまいりましたは、ベスト8で東日本圏唯一開催の仙台でございます。対戦しまするは、もちろん仙台と柏。

予報では土曜日から気温が下がって雪になると聞いていたのですけど、行ってみると快晴。バックスタンドはむしろ暑かったです。諫早が寒くて雨もパラついてたみたいなので、やっぱり自分は晴れ男。

PK戦までもつれ込む死闘は、クリスティアーノのFK3発とPK戦1発のセットプレー計4発で柏が大逆転勝利です。柏がベスト4に進出しました。FKだけでハットトリックは初めて観ました。まったくびっくりぽんです。

仙台はベストメンバーです。中断期間が長かったので、各チームは離脱者が戻ってきているようですね。シフトは渡邉仙台の基本となった4-4-2です。GKは六反。CBは次郎と博文。SBは右に蜂須賀左に退団が決まっている村上。ボランチは富田と藤村。メイヤは右に金久保左に梁。2トップはウイルソンと奥埜です。

一方の柏は大輔が不在です。シフトはこちらも吉田柏を象徴する4-3-2-1。GKは菅野。CBは今日のエドゥアルドの相棒は中谷。SBは右にキム・チャンス左に輪湖。3CHは右から中川、秋野、大谷。WGは右にクリスティアーノ左に武富。1トップは工藤です。

両チームともシーズン総決算です。とくに柏は新潟への移籍が決まっている吉田監督の最後の舞台ですので、これが2015年の形だというものを示す意気込みがあったと思います。

両チームの戦いかたのおさらいをしましょう。仙台はとてもオーソドックスな戦いかたです。守備では4+4の2ラインをしくリトリートスタイル。攻撃は2トップを基点にワンタッチで縦にはやくつなぐサイドアタックが特長です。

柏は、3センターが特長です。守備は両IHとWGが追い込むフィアチェックスタイルです。攻撃は中盤のパス回しでリズムを作り、バイタルエリアを基点にして、〆はクリスティアーノに預けるパターンです。

試合の入りかたは柏のほうが良かったです。てかひさしぶりの公式戦だったことが当初影響したのは仙台のほうが強かったような気がします。仙台の守備網の2ラインはけして綺麗ではありません。藤村がやや下がり加減で富田が上がり加減の、ギャップを作るスタイルです。さらにはバランスをとる梁に対し右の金久保が上がり気味なので、中盤のラインが凸凹しています。このためバイタルエリアにスペースができ易い傾向にあるといえます。仙台はリトリートスタイルですけど、ガンバのような綺麗な4+4をしく完全なリトリートではなく、フォアチェックを仕掛けることも準備したハイブリッドなスタイルと言っていいと思います。試合が続いているときは、選手が微妙な距離感のバランスを取ることができていたのだと思いますけど、エンジンがかかるのに時間を要したような気がします。

柏はそこを狙います。てか柏は基本プランを粛々を遂行しただけで、仙台がはまってしまったと言ったほうがいいのかもしれません。柏もリトリートスタイルですので、トランジションポイントは最終ラインです。相手が守備網をしく時間を与えながら、どっこいしょと攻めはじめます。攻撃ではアンカーの秋野を必ず経由します。秋野が真ん中でボールを持つと、チャンスと輪湖を含め、中谷+エドゥアルド+どちらかのSBの三枚を残し、全員が秋野の前に位置取ります。なので秋野のパスコースは、常時五つ用意されています。秋野の基本的な選択は、一度バイタルエリアに顔を出して、つるべの動きで交互に下がってくる大谷と中川です。そこでリズムを作って左右に長めのボールを供給するのが柏のパターンです。今日は一つのプランを用意していました。クリスティアーノをやや下がり目の置いて村上を引っ張り出し、その裏に中川が飛び出していく形です。柏のストロングポイントがクリスティアーノなのは自明なので、ケアに気を割く仙台の裏をつく作戦だと思います。

もう一つ用意していたのは、これは常套ですけど、武富が内に絞って開けた左サイドのオープンスペースに輪湖を飛び出させる作戦です。序盤の柏はこのサイドアタックがよく機能していました。所以はバイタルエリアで大谷、中川、武富が基点になっていたことです。これによって仙台の重心を下げ、秋野の視界を良好にしつつ、サイドに美味しいスペースを作ることが可能になっていました。この柏の攻勢がさっそく実を結びます。

11分。武富が蜂須賀に倒されて得た左ライン際のFK。仙台のストーンは二枚。クリスティアーノは、低い弾道で梁の横をなめるように越し、針の穴を通すようにゴール右隅に決めました。スーペルゴラッソ。仙台0-1柏。

この失点で仙台は目を覚ましたようです。まず守備を整えます。柏の攻撃のコンダクターである秋野に対し奥埜がケアをはじめます。さらに大谷と中川は対面する藤村と富田がマンマーク気味にケアをします。これで柏の中盤のパス回しを止められるわけではないのですけど、パス回しの支点を下げます。つまりバイタルエリアにかかったトライアングルではなく、アンカーのほうにベクトルが向いた効果の薄いパス回しに追い込みます。中盤の高い位置で基点ができないので、高く張るクリスティアーノと輪湖、さらには武富に効果的なパスが入りません。こうなると仙台の守備網の圧力のほうが勝ります。

守備が安定すると攻撃面も改善されます。仙台は2トップがポストを分担します。主にはウイルソンが右、奥埜が左です。ウイルソンにはエドゥアルド、奥埜には中谷が付きます。序盤の柏は、ウイルソンに対しエドゥアルドが密着マークで自由にポストを許しません。これでは金久保に効果的な落としができないので、仙台の右サイドが活性化しません。ところが奥埜は、今日はポストがホントに安定していました。もしかすると今日の立役者は、大立者はクリスティアーノで間違いないですけど、片方の主役は奥埜だったと思います。奥埜が居てこそ、今日はめっちゃおもしろい熱戦になったと思います。奥埜は中谷を背負いながら、ことごとくポストを納めます。序盤はこの奥埜の献身を活かすことができなかったのですけど、仙台はやはり突破口を見逃しません。

序盤は左サイドに張っていた梁を、奥埜の下、真ん中に絞らせるようにします。さらに金久保も梁の横に並び加減に配置します。これで奥埜の落としを確実に拾えるようになります。さらに富田と藤村を縦関係にして、富田を攻撃に絡ませます。梁を基点に右に金久保、加えて富田も右寄りに構え、中盤で複数の基点ができます。これで右サイドは、前方ではウイルソン、後方では蜂須賀がフリーになる場面が出てくるようになりました。このアジャストがさっそく奏功します。

25分。村上の、アタッキングサードでの意図不明なサイドチェンジがライン際に流れます。輪湖が追いつきエドゥアルドに渡そうとしますけど、このパスがショート。輪湖を追っていた奥埜が先に拾います。奥埜は右脚トラップでエドゥアルドの股を抜いてペナルティエリアに侵入します。この時ゴール前では、中谷がニアをケアしてますけど、その背後に梁はいます。これを見た大谷がケア。その大谷の背後からウイルソンもどフリーでペナルティエリアに入ってきています。奥埜はこれを見逃しません。エドゥアルドと中谷を引きつけて、ウイルソンに丁寧にパス。ウイルソンは右脚ダイレクトで丁寧に流し込みました。仙台1-1柏。

この美しいゴールで、ビハインドで吹雪いていた真冬の仙台の空に希望の光が射しこみます。むしろ仙台がイニシアチブを握ることになります。柏は中盤を無力化されるとアジャストするプランを持ちあわせていないようです。このことが、今年の柏をしてこの順位に甘んじさせた要因のような気がします。吉田柏はホントにおもしろいサッカーをします。中盤の構成力にはサッカーの楽しさが溢れています。秋野に重責を負わせるのは酷だとは思いますけど、意気に感じるだろう最重要ポジションを任されていますから、ちょっとしたタイミングのずらしや意外性のあるパス、とくに長めのグランダーを最前線につけるとか、裏に絶妙に落とすようなパスがあるともっとアンカーとしての価値が上がるような気がします。

柏も黙っていません。武富をトップ下に固定して意図的に明確なバイタルエリアの基点を作ろうとします。仙台に奥埜がいれば柏には武富がいます。武富はテクニシャン揃いの柏のなかでも、なおかつ輝くほど足元が巧みです。分かっていてもボールを納めさせてしまうので、トップ下に張った武富に対し、仙台はダブルチームで自由を許しません。それでも最低限のボールキープをしてしまいますから、停滞していた柏の攻撃も、少しづつ重心を高く取り戻せるようになってきます。

互いに攻守の意図がかみ合いはじめて、ノックアウト方式の一発勝負にしては意外なほど、オープンファイトの展開になります。攻守が入れ替わる展開のまま、前半は同点のまま終了。

後半のスタートは、両チームとも選手のアジャストはありません。仙台がイニシアチブを握りに行きます。この試合はじめて、コレクティブなフォアチェックを見せます。それまでは起点ではなく基点を消しに行きましたけど、後半の立ち上がりは、起点を狙います。バイタルエリアを閉じても武富に支配されるので、武富に入る前の前をケアしようという考えだと思います。もちろん高い位置でのトランジションからのショートカウンターで、一気に物理的な優位性を持とうという助平根性も込みだと思います。

柏は慣れているのかな。仙台のこの圧力をさらりとかわし、また前半と同じような展開に戻しました。さて柏には飛び道具があります。苦しい状況で飛び道具を使えることは、ずるいなと思いますけどサッカーを面白くする重要な要素です。一本目のFKを観て、今日のクリスティアーノは絶好調なのが見て取れました。まさに起死回生の飛び道具が炸裂します。

52分。ペナルティエリア外、ど真ん中ですけど遠目のFK。ちょっと遠いかなと思いましたけど、クリスティアーノには技術系だけでなくパワー系のFKもあったんです。二本続きます。一本目は金久保がはやく飛び出して警告を受け、やり直しの二本目。今度は豪快にゴール左隅に決めました。ゴラッソ。仙台1-2柏。

これを受け、ふたたびビハインドとなったので、先に渡邉さんが動きます。村上に代わって二見が同じく左SBに入ります。最前線でも仕事ができる二見を投入して、攻撃力を強化する意図だと思います。のちに結実します。

重ねて渡邉さんが動きます。奥埜がコンタクトプレーで足をつり加減になったように見えました。実際にコンディションが良くなかったのでしょう。奥埜に代わってハモン・ロペスが同じくトップに入ります。これは、その後の仙台にとって重大な事件になりました。なにしろ安定感のある基点を失ったわけですから。ウイルソンを真ん中に置き、ロペスを左右にポジションを変えながらサイドに張らせます。この時点で奥埜離脱はそれほど影響あるようには見えませんでした。梁と金久保が変わらず内に絞ってバイタルエリアを支配しているので、ポストを使わずともビルドアップの基点があったからでしょう。

ここで吉田さんが動きます。中川に代わって山中が左WGに入ります。武富は左IHに回ります。まず中川のコンディションを考慮したのだと思います。武富はもとよりトップ下のような位置にいたので、あらためて中盤の基点に据える意図も含み。さらにはテクニシャンの山中を入れることで、クリスティアーノだけでなく左右のキッカーを揃える意図もあったと思います。

ところが、事件が起こります。秋野が二枚目の警告で退場します。柏はオーソドックスなダブルボランチを強いられます。武富が下がります。クリスティアーノが右メイヤ、左は山中。前線には工藤がひとり残ります。

当然のことながら、パワープレーとなった当初の時間帯は仙台が猛攻します。バイタルエリアに柏の選手がいなくなったので、中盤には藤村ひとりを残して、富田を含めて両SBも上がり、柏陣に入りっぱなしになります。そして仙台が押し切ります。

74分。柏陣でウイルソンが倒されて得たFKからのリスタート。仙台は右サイドで細かいパスをつないでアタッキングサード深くに入ります。ペナルティエリアで藤村のスルーを受けた梁がフリーの金久保に戻します。金久保は上がってくる蜂須賀に落とします。蜂須賀はルックアップ。この時ゴール前は、ニアからエドゥアルド、中谷、大谷、チャンスが揃っていて、仙台は中央に藤村、ファアにロペスだけ。蜂須賀は状況を変えようと、寄せてくる山中をかわしつつ、縦にワントラップ。これでニアに金久保とウイルソンを呼び寄せます。ただ依然ゴール前は数的不利。でもこの時、チャンスを背後に二見が上がっていました。これを見逃さなかった蜂須賀は、SB to SBのクロスを送ります。二見は丁寧にゴール左隅に流し込みました。仙台2-2柏。

ここで柏が奇跡的な勇敢さを見せます。同点になってどうするかなあと思っていました。セオリーでは、負けるわけではありませんから、PK戦も視野にまずは守備を整えることを優先すると思っていました。ところが柏は攻めます。まずこの勇敢さを讃えたいと思いますし、その後の奇妙な流れを作ったのは、つまりこれ以降をオーガナイズするのは、数的優位にある仙台ではなく、柏でした。このあたりが、捉えようによって、つまり自らの選択で、サッカーにおいては数的不利を必ずしも物理的な不利にさせないことができる、不思議さの象徴だと思います。仙台サポには納得できないことでしょうけど。

柏の攻撃は、まずシンプルなロングボールが中心になります。これが縦への推進力を生みます。皮肉なことに、序盤から柏が見せていたゆったりとしたビルドアップが、仙台にとってジャブのような形になりました。さらに柏は、攻撃時に工藤だけでなくメイヤも必ず参加します。クリスティアーノは前線の右寄りでロングボールを待ちます。山中はバランスを取ってますけど、クリスティアーノと工藤にロングボールが供給されるとすかさず前線に飛び出します。これで左右に翼を広げて大いに羽ばたく形ができます。それに加えて、武富がやや遅れて前線に顔を出します。ファストアタックにならず、アタッキングサードで基点ができたときに、中央に武富がいることでサイドチェンジ、あるいはスルーパスの供給源になることができます。当然のことながら、中盤には大谷をひとり残すことになるのでハイリスクです。柏はそれを承知で、勢いを取り戻したかったんだと思います。

こうして、柏のロングカウンターが仙台の意識に幾分か後方へのベクトルを持たせ、攻守の展開がはやく、かつバランスが保たれた、奇妙な膠着状態ができあがります。そして時間は90分を経過しました。

延長前半開始早々、勝利の女神は退場者を持たない善者たる仙台に微笑みかけます。

91分。梁の左CK。フルゾーンの柏は、ニアに二枚、ゴール内に一枚のストーンと、ゴール前に3+3のラインを置きます。仙台はゴール前にウイルソン。やや離れてニアから奥埜、蜂須賀、ロペス、次郎です。蜂須賀がニアに流れてニアストーンのエドゥアルドを引きつけます。さらにウイルソンがゴール内ストーンの大谷の背後から前に出ます。梁はここにピンポイントで合わせました。仙台3-2柏。

ところが、勝利の女神は勝利を決定付けるのではなく、あくまでもいたずら好きなものでしょう。30分という長い可能性を残す、この試合初めての仙台のリードは、仙台に勝つためのプロセスを忘れさせたのではないかと思います。仙台は、攻めます。びっくりぽんでした。どうしてもミステル東京を基準にしてしまうのですけど、セオリーでは当然ボールポゼッションを高める選択をすべきところだと思います。でも仙台は、縦に急ぎました。点を取り合うオープンなシーソーゲームでしたので、2点差にすれば決定づけられると思ったのかもしれません。もしかすると、数的不利の柏がオープンファイトを仕掛けてきたので、挑発に乗ってしまったのかもしれません。それから、なんと言っても仙台サポの大声援を背中に受け、知らず知らず前進するしかなかったのかもしれません。仙台はいろんな意味で無邪気でした。

一方の吉田さんは冷静です。このマインドのコントロールというか、状況を作り出し状況を見て状況に応じた対処ができたことが、最終的な結果の微細な彼我の差を産んだような気がします。工藤に代わって栗澤がボランチに入ります。武富が1トップに回ります。これはもう明らかに、武富のキープ力を最大限活かしてロングカウンターの精度を高める意図でしょう。さらにはボランチに栗澤が入ることで、攻守のバランスが向上します。試合はますますオープンファイトに流れ込んで行きます。柏が引きずりこんだと言っていいと思います。

延長後半の頭から渡邉さんが動きます。ウイルソンに代わって金園が同じくトップに入ります。得点源としての期待は変わらないというか、むしろレギュラーシーズン中は金園のほうが中心だったので、大きな影響があるようには思いませんでした。ただ今日のウイルソンはノレていたので、急に入った金園が15分で機能するか不安ではありました。案の定、金園はほとんどプレーに絡めません。むしろロペスにシュートチャンスがいくつか訪れます。でも今日のロペスのシュート精度は、惨憺たるものでした。

延長後半も最終盤に入り、吉田さんが最後のカードを切ります。輪湖に代わって徹郎が左メイヤに入ります。山中が左SBに下がります。輪湖のコンディションもあったと思いますけど、パワー系ドリブラーでクロスがある徹郎を投入することで、強引にでも独力突破するシーンを作ろうとしたのかもしれません。

こうして仙台がリードしながら落ち着かない状況のまま、試合は進みます。そして、今日の主役が大立者たる地位を確固たるものにする、確信の時が訪れます。

116分。武富が次郎に倒されて得た、ペナルティエリアやや外ゴール正面のFK。これはもう、ゴールの匂いプンプンでした。クリスティアーノは壁の上を越えてゴール右隅に決めました。仙台3-3柏。

大歓声で再度の逆転を期待する仙台サポの願いむなしく、120分間が終わりました。PK戦に入ります。

PKは技術のある選手がフレッシュな柏が有利かなと思っていました。柏はクリスティアーノ、山中、徹郎、大谷、エドゥアルドの5人全員が成功。仙台はロペス、金園、金久保が成功して、三人目の梁のシュートを菅野がセーブ。乳酸が溜まっていたのでしょう。切ないですけど仕方がないですね。仙台3-3柏(PK仙台3-5柏)。

行ったり来たりの展開でハラハラドキドキするのは天皇杯独特の緊張感ですけど、それにしてもらしくないオープンファイトでした。ネガティブな意味ではなく、互いに持てるちからを全部出しきるしかなかったんでしょうし、それが好マッチを産んだ最大の原動力でしょう。

それにしてもクリスティアーノ祭りでした。さすがに陽が陰ると北国らしい冷え込みになりました。それでも熱戦と貴重な記録に立ち会えましたから、仙台まで来たかいがありました。さあ。今シーズンも残り二試合。加賀さんファンに徹します。


ぽちごやのサッカー観戦法(観戦方法編)

2015-12-13 16:08:25 | サッカー

自分のサッカー観戦方法を解説することは、好みや癖や至らなさをさらけ出すようなもので、とても恥ずかしいです。でも、とても嬉しいことに、ブログを読まれたかたからどんな風にサッカーを観ているのか、質問をいただくことがあります。なので、恥を忍んでお話したいと思います。とっても変な観方をしているので、ご参考にはならないと思いますけど、みなさんのサッカー観戦にひと味加えるスパイスになったら良いなと思います。

まずはじめに、感覚的な話になるのですけど、サッカー観戦は状況を大雑把に捉えたほうが良いと思っています。サッカーは様々な要素が絡み合っていますから、ある意味で、定義付けするのはナンセンスです。たとえば守備的と言っても攻撃しないわけではないですし、攻撃がビルドアップ一辺倒なのかと言うとそんなことはなく、カウンターもあります。それに90分間で起こったことすべてを理解しようと思っても、まず不可能だと思います。捉え方として大事なことは、基本プランは何かを見つけることです。言い換えると、流れのなかで偶発的に起こったことやオプションを捨てる作業が必要ということです。基本かオプションかの見分けかたは、試合の入り際、いわゆる最初の10分のプレーをしっかりチェックすることです。ほとんどの場合は、この時間帯は基本プランで臨んでいます。サッカー観戦には、いい加減さと諦めと割り切りが必要なんです。

ここで言う大雑把とは、試合を流し見るということではありません。試合を理解するためには、なにより現場の情報を可能な限り収集することが求められます。その上で、状況を整理して分析します。

というわけで、なにしろ現場の状況をしっかりチェックする力が必要です。サッカー観戦力というものがあるとしたら、一番大切なのは、可能な限り多くの情報を収集する技術だと思います。よく陥り勝ちなのは、中途半端な情報量で型通りの分析をしてしまうことです。メディアの弊害だと思うのですけど、通り一辺倒な意見になって、おもしろくない。しかもそれが、選手や監督への批判であることが多いのですけど、フェアじゃないと思います。批判をするなら、状況をできるだけ正確に把握した上でないといけないと思っています。

前述しましたように、サッカー観戦はとても難しい作業です。ボールを追うだけでは必要な情報を得られません。なので、情報収集のために求められる技術は、いわゆるバードアイ、俯瞰的な視点です。前回テレビ画面にたとえましたけど、科学的な根拠はともかく、情報収集は視野の範囲に影響されると思っています。なので、ピッチから離れれば離れるほど俯瞰力が増します。もちろん逆に臨場感や迫力が失われてしまうのですけど、最初のうちは遠目から観てみるのも良いかもしれません。自分は味スタではバックスタンド中央の前から10列目付近を定席にしてます。さすがにピッチレベルでのバードアイはまだできませんけど、慣れればそのくらいの距離でも俯瞰的に観られるようになると思います。

視覚に入った情報を脳内にインプットするためには、それなりに作業が必要だと思っています。自分の場合は、どうやら視覚情報を声に出すことで脳に書き込まれるようです。サッカーに限らず仕事でも同様。いずれにしろ、ただ漫然と試合を流し見ているだけでは、俯瞰的に見られる席にいても情報収集はできません。自分なりのインプット方法を見つけてみるといいかもしれませんね。

自分のやり方をご紹介しますと、先に述べましたとおり声に出します。友達と観てるときは、あーでもないこーでもないとお互いに90分間喋りっぱなしなんですけど、ひとり観戦のときはさすがに迷惑だし気持ち悪いので、聞こえない程度にブツブツ呟いてます(^^ゞ。一緒に観戦されたかたならご存知なのですけど、自分は結構試合中うるさいです(^^ゞ。

まずは両チームのシフト(フォーメーション)をチェックします。今のトレンドは、だいたい4-4-2、4-2-3-1、3-4-2-1、3-4-1-2なので、最終ラインの人数と中盤の人数を確認できたら割と容易に把握できると思います。テレビ放送でかならずシフトの確認がありますけど、あれなんでやってるのか説明がありませんよね?。サッカー放送のわかりにくさの原因のひとつだと思います。シフトにはそれぞれ個性、つまり長所と短所があります。暗黙知的にこの個性を視聴者が知っていることを前提にしているのです。でもこれ、案外難しいんです。シフトでわかる長所短所は、スペースギャップが出来易い場所がシフトによって異なるということです。セオリーの話になるので細かくは解説しませんけど、戦術論の書籍はいっぱい出ているので参考なる書籍もあると思います。

シフトを確認したら呟きをはじめます。気づいたことをブツブツ呟くのですけど、相手チームの攻撃から確認します。これは前提として、東京のことは頭に入っているからです。東京は基本プランとの違いだけをチェックできればいいので、試合の最初は優先度を下げます。感覚的には、相手チームに関する情報量を東京のそれにできるだけ近づけるイメージです。浦和の場合も同様。

ちょっと逸れますけど、なので見慣れているチームと対戦する時は、スタート時点での情報量が多いので、より深く試合を楽しむことができます。広島、ガンバ、浦和、鹿島、川崎のように、長く個性的なサッカーを続けているチームは、基本プランを予備知識として持っているので、差分というか、キックオフから、その試合で何をしようとしているのかを観ることができます。逆にJ2、J3を観るときはしんどいです。両方とも知識がゼロなので、基本プランを確認するまでに15分から20分くらいかかります。90分まるまると70分とでは、情報の量と質が違うので、楽しさもやっぱり違ってきます。

予備知識が少ない場合を前提にしますと、最初のうちはボールホルダーの名前をパスがつながる度に呼びます。俯瞰力が必要といいつつ、やっぱり事件はボールサイドで起こりますから。ボールホルダーを追うことで、試合情報を少しずつ貯めていきます。何が見えてくるかと言うと、繰り返し名前を上げる選手が出てきます。きっとその選手は、攻撃の起点だったり基点だったり、あるいはストロングポイントだったりすると思います。とくに起点の選手のプレーに注目すると、基本プランがなんとなく見えてきます。東京なら秀人、モリゲ、まる、ヨネ。浦和なら勇樹、槙野、モリ。広島ならカズ、千葉。ガンバならヤット、今野ですね。ホントは、この時に攻撃のセオリーを予備知識として持っているともっと分かり易くなるのですけど、最初のうちは、起点が狙っているのが、ロングボールかショートパスか、サイドか中央かくらいを判別できたら十分です。スタジアムに何度も通うと、そのうちセオリーの知識は勝手に身につきますから。

そうやってボールホルダーを追っていると、そのうちにパターンが見えてくると思います。パターンというのは、たとえば秀人からモリゲ、徳永、ふたたびモリゲ、このとき河野がバイタルエリアでフリー、拳人が右サイドをオーバーラップ、モリゲは河野に長めのグラウンダーパスか拳人にロングフィード、みたいな流れです。あるいは、勇樹から槙野、ムトゥがバイタルエリアに下がってきて槙野がポスト、ムトゥは陽介に落とす、その間にタカが右サイドを全力で上がっていて、陽介か、戻しを受けた勇樹、あるいは絞った宇賀神からサイドチェンジのフィード、みたいな。なんとなくどっかで見たことがある風景でしょ?。このシュートまでの導線をイメージできるようになったら、攻撃の基本プランは把握できると思います。

その日の作戦として押さえておきたいポイントは、攻撃に転じた時に最初にパスを受ける選手です。上記の例だと河野(もしくは拳人)、あるいはタカです。これで何が分かるかというと、攻撃側のストロングポイントと守備側のウィークポイントを攻撃側のチームがどう考えているのかが分かります。Jリーグでは、だいたい正攻法で臨むチームが多いので、まずはストロングポイントを活かすことからはじめようとしますね。なので、最初に頻繁に使われるアタッカーがストロングポイントだと思っていいです。ただ、ちょっと難解なのは、東京の例です。東京のストロングポイントは宏介ですけど、右サイドの河野や拳人を最初に使うのは言わば囮です。これも、流れの続きをチェックしていれば、そのうち見えてくると思います。

今度はちょっとステップが上がるのですけど、ボールホルダーから目を離して、寄せてくる守備側の選手を把握します。こうすることで、守備側がマンマークなのかゾーンなのかが分かります。それから寄せるタイミングにパターンがあることが分かるようになります。誰にどの場所で誰がどのタイミングで寄せるかがパターンです。たとえば、中盤でまるから宏介に渡ったタイミングで、相手のMFが素早く寄せてきたら、そこをトランジションポイントと狙っていることが分かります。さらにはトランジションからの攻撃がショートカウンターを狙っていることも想像できます。逆に、広島やガンバのように、中盤では厳しい寄せを見せずに、整然とした守備網を作るチームは、ドリブルや縦パスを守備網で引っ掛けるゾーンディフェンスを意図しているのが分かります。

さらにステップを上げます。ボールホルダーからもディフェンダーからも目を離して、スペースを見つけます。まずスペースとはどんなものかを認識する必要があります。これは守備網を見ます。守備網がきちんと整然と並んでいる状況を残像として頭に残しておきます。それと今の状況を比較したときに、きちんと並んでいない場所がかならず出てきます。それがスペースです。むしろ守備網がきちんと並んでいることのほうが少ないので、スペースはそこかしこにあります。見つけるべきは、ボールホルダーの視野の範囲にあるスペースです。先ほどの攻撃パターンを確認できるようになったら、バイタルエリアでなぜかフリーになっている選手を経由してパスがつながるシーンが何度か出てくると思います。それがスペースで、上手く使えている状況です。東京の基本プランは、河野にバイタルエリアのスペースを見つけさせて、河野を経由して前線にパスを供給する形ですね。浦和の場合は、ムトゥと梅崎。もしボールホルダーが、モリゲやまるのように長いパスを持っている場合は、遠いところにもスペースができます。攻撃パターンを見つけるのは現状把握なんですけど、スペースが見えるようになったら、未来予想ができます。未来予想ができるというのは、ボールホルダーのプレーの選択肢が見えるということです。よく秀人や梶山のバックパスを批判する人がいますけど、スペースが見つからない場合に下げていることもあるので、安易な批判は選手には通じないと思います。

繰り返しますけど、サッカーは時々刻々とダイナミックに状況が変わります。相手との力量差、作戦の綾だけでなく、時間帯によって自ら状況を変える場合もあります。両チームの基本パターンを押さえられたら、それを基準にして違和感を探します。とくにアタッカーに注目すると違いに気づき易いです。基本パターンと違う選手の名前が出るようになったら、攻撃の作戦を変えたことが想像されます。あるいは攻撃の選手の名前が上がらなくなったら、いわゆるリトリート、引いて守っていることが考えられます。

以上で、ミッドサードとディフェンシブサードの90分間の状況はだいたい把握できると思います。サッカーの流れは中盤で決まるので、試合の流れの大部分を掴めたと言えると思います。

正直言って、アタッキングサードの理解は自分にはまだ難しいです。アタッキングサードでも、基本的にはギャップの攻防であることには変わりはないのですけど、中盤に比べるとはるかにタイトでスピーディですから、脳のなかでの情報量の解析が追いつきません。プレー経験があればまた違うのかもしれませんけど、現場でリアルタイムに状況を把握するのは今のところ無理です。なので、ゴールシーンだけは録画で確認します。ゴールはほとんどの場合守備側のミスが原因です。言い換えると、ミスを誘う周到なプロセスを用意しています。ボールホルダーの仕掛けに目が行き勝ちですけど、ボールホルダーをフリーにするための周囲の動きあってのゴールと言えるのかもしれません。

もうひとつ大事な観点はセットプレーです。ただセットプレーはセオリーの塊のようなものなので、インプレーのような視野の技術というよりかは、オプションの知識の抽斗の多さが求められますね。

やっぱり、試合をよりはやくより的確に理解して、様々な未来予想ができるようになるためには、セットプレー同様セオリーの知識を増やすことが必要です。自分が知り得たセオリーを細かく解説するととっても長くなってしまいますので、この場では控えますし、教材となる書籍がいっぱい出ているので、そちらを読まれるほうが絶対良いと思います。

ひとつだけ捕捉すると、セオリーを知るためには、試合を数学的に捉えることが望ましいと思います。おっと。数学が苦手なかたでも大丈夫。自分も苦手ですから(^^ゞ。数学ではなく、数学的。サッカーを文学的に捉えると、これはもう感覚論ですから、体系化するのは難しいですね。一般的にスポーツ番組やタブロイド誌レベルのスポーツの表現は文学的ですよね。だから、現場で起こった事実を映像、コメント、記事からは十分に把握できません。

数学的に捉えるというのはどういうことかというと、サッカーをいくつかの変数の組み合わせとして観るということです。変数、懐かしいですね。xとかyとかのアレです。数学には公式がありますけど、公式を持ってくると足し算なのか掛け算なのか定義が難しく、文学的になってしまいます。たとえば結婚が1+1なのか1×1なのか、正しく表現できないのと同じです。ですから公式は無視します。ここが、数学ではなく数学的と考える理由でもあります。変数には以下のものがあります。
・選手の特長
・インプレーの守備方法
・インプレーの攻撃方法
・セットプレーの守備方法
・セットプレーの攻撃方法
・チーム・コンディション
・環境条件

数学でご経験だと思うのですけど、変数が多いと答えのバリエーションも乗数計算のごとく増えていきますよね。セオリーの知識が増えると、変数を仮の固定値に変えることができます。aとかbとかのアレです。先ほど、東京の試合では東京を見てないと言いましたけど、そういうイメージです。セオリーを知っていればいるほど、見るべきポイントを絞ることができるのです。

視覚のことを文章で表現するのは難しいですね。お分かりになり辛いところがあったらごめんなさい。ホントは実際のプレーを見ながら解説できるといいのですけど。ご要望と機会があったら、いずれやってみたいと思います。

繰り返しになりますけど、サッカーの楽しみかたは人それぞれです。自分は、選手や監督のアイデアにできるだけ近づきたいと思っています。結果だけでなく、結果に至るプロセスを感じたいからです。プロセスを感じるということは、プレーの選択肢を知ることでもあります。サッカーはシンプルなスポーツですけど、シンプルゆえに多様性が高いことも魅力のひとつです。選択肢を知ることで、多様性を享受して、そしてもっともっとサッカーを楽しめるようになると思ってます。同じような感覚をお持ちのかたや、サッカーに興味を持ちはじめたかたに届いて、今よりもっとサッカーを楽しんで愛していただけたら、とても嬉しいです。


ぽちごやのサッカー観戦法(サッカー観編)

2015-12-13 00:05:52 | サッカー

長らくサッカーを観てきましたけど、ようやく今年になって、自分のなかでなんとなく、現地で観戦中にサッカーを理解できるようになってきた気がします。ブログをご覧いただいてるかたから、どんな風にサッカーを観てるのかご質問をいただくこともありますし、自分自身でもサッカー観戦方法を体系的に整理してみたくて、2015年秋現在の観戦力でちょっとチャレンジしてみます。毎年観戦方法を少しづつ変えているので、来年は違ったを意見を持っているかもしれません。調子にのって書くと本になってしまいそうな文量かも(^^ゞ。

肝心のサッカー観戦方法に入る前に、前置きを少々。自分のサッカー観を綴ってみたいと思います。

サッカーの楽しみかたは、人それぞれだと思います。Jリーグのファンのだいたい3分の1くらいはゴール裏住民だと思いますので、歌い跳んで応援することを中心に楽しまれているかたが一番多いでしょう。好きな選手を見つめるのも可愛いですね。ビール片手に雰囲気を楽しむのもいいです。ゴールシーンだけ追うのもOK。極端に言うと野次も迷惑をかけず個人で楽しむ範囲ならアリかもしれません。自分はひとつの夢があります。選手と居酒屋でマジで試合の話をしてみたいんです(もちろん実現はできないですけど)。つまり選手と同じ感覚で試合を捉えられたらなと思っています。もし同じような観方をされているかたがいらっしゃたら、自分の観戦方法も、もしかするとご参考になるかもしれません。

2015年秋の時点では、サッカーの全体像を大まかに捉えることはできるようになったと思います。でもまだセオリーや局面のプレーなど、ディテールは正直わかりません。自分はプレー経験がないので、プレーの感覚は永遠に理解できないと思います。セオリーは、これはもうOffJTでしょうね。そのような専門書があるのかどうかはわかりませんけど。

サッカーは、ルールもプレーも非常にシンプルなスポーツです。突き詰めると、脚だけでボールを扱うことだけですから。でも、サッカーの観戦はとてもとても難しいです。理由は三つあります。観戦のし易さ、言い換えると観戦する時の分かりやすさは、テレビサイズで考えるといいと思います。他の球技でいうと、バスケットボールやバレーボールなどの室内球技は、そもそもテレビの画面サイズでコートがデザインされてます。それから野球、ラグビー、アメリカンフットボール、クリケットは、グランドは広いですけど、プレーは基本的に局所的です。だからテレビ画面で映っている範囲だけで、現在の状況把握と未来予想が十分にできます。そこへいくとサッカーは、ボールのある位置だけでなく、オフ・ザ・ボールのエリアでもプレーが行われているし、むしろ次のプレーの種、つまり未来予想は、ボールの無い場所で起こっていることがあります。目がいくつあっても足りません。これがサッカー観戦の難しさの原因のひとつです。

次の原因は、これは言わずもがなだと思いますけど、サッカーは他の球技と違って、原則はプレーが止まりません。ダイナミックに場面が変化します。なので現在の状況を理解するためには、瞬時の理解力が求められるのです。これは実際には不可能だと思います。

最後のひとつは、サッカーは人間がやるスポーツだということです。サッカーの試合を形作るのは、プレーしている選手の思考と選択です。野球の場合は、静的には、ピッチャー、キャッチャー、セカンドベースマンは高い思考力が求められると思いますけど、ダイナミックに変化する状況下での思考を求められることはまずありません。アメフトも同様。ラグビーはプレー選択のオプションが豊富なので状況判断を求められますけど、サッカーよりもパターン化されています。人が何を考えているかは、正直他人には完全には理解ができません。この人間関係の本質が、サッカーというドラマを形作っていると言えると思います。

というハードルの高い作業を、サッカー観戦では求められます。ある意味で、サッカーファンはどMだと思います。現実の世界でも同様ですけど、いろんな要素で形成されている社会を解読するためには、数学的なアプローチが、複雑さを人間が理解できる程度に溶解してくれます。経済学が良い例ですよね。

サッカー観戦方法の解説に入る前に、もうひとつ前置きが(^^ゞ。サッカーの本質です。形而上的にサッカーを捉えると、ギャップの攻防だと思います。ギャップという表現はちょっと分かりにくいですね。対戦するチームの差と思っていただいていいと思います。試合は、サッカーがもともと持っているギャップのうち、対戦する両者それぞれがクリティカルだと考えるものを互いにピックアップすることで成立しています。分かり易いところを上げると、テレビ中継で試合のキーマンを上げたりしますけど、それもギャップのひとつです。ギャップを大別すると、スキルギャップとスペースギャップの二つです。

たとえば、よっち、ジャガー、パトリックなどはスキルギャップを生み出せる選手の典型ですね。マーク相手を、技術、パワー、スピードで凌駕して独力突破できる選手がいれば、守備側は対処のしようがありませんから、スキルギャップを活かすことが、最も効率的で基本的な作戦だと言えます。ただ、守備の技術が高度なプロレベルでは、スキルギャップをオプションに使うことはあっても、それを中心にすると良い結果が長続きすることはあまりありません。よっち頼みになっていた今年の1stステージの後半を想い出していただくと分かり易いと思います。

スペースギャップはもう少し定義が必要ですね。ボールホルダーより後方はスペースのうちには入りません。あくまでも攻撃方向です。スペースには2種類あります。最終ラインとゴールラインの間、いわゆる「裏」のスペースです。もうひとつは、守備網の隙間です。文章では難しいので、イメージで表現しました。ぼくらが観戦するレベルの試合では、スペースギャップの攻防を観る機会のほうが多いですね。ヤット、俊輔、憲剛のように「試合が見えている」選手を中心に据えるチームは、スペースギャップを前提に攻撃の基本プランを作ります。

サッカーのプレー人数が11人なのは、いかにも絶妙な設定ですね。極論すると、11人でやるからドラマチックなんだと思います。11人だと、かならずどこかにトレードオフが生まれます。たとえば8人で守れば、3バックでも4バックでもほとんどのスペースギャップを消すことができて、プロレベルの拮抗下であればまず大崩れはしません。でも攻撃の人数が不足します。逆に5ないし6人で守る形だと、攻撃は活性化しますけど守備の強度は脆くなります。

サッカーは、基本的にはもちろんゴールを目的とします。サッカーはある意味で陣取り合戦なわけですけど、これはなぜかと言うと、シュートという人間が行う行為に影響します。ゴールするためには、シュート精度を高める必要があります。自陣から確実にゴールできる能力の選手がいたら、おそらくサッカーはまったく別質のスポーツになるでしょう。たとえメッシやクリスティアーノ・ロナウドであったとしても、シュートレンジというものがあって、ゴールの確度を可能な限り高めるためには、より相手陣深くでプレーする必要があります。このシュートレンジの統計的なアベレージが、おそらくペナルティエリアです。したがって攻撃の近視眼的な目的は、ペナルティエリア内でシュートを打てる状況を作り出すことにあります。

ここでもうひとつのサッカーの特長を上げてみましょう。サッカーは相対的なスポーツです。つまり相手がいます。サッカーの試合を理解できるかできないかの境界線は、相手を意識するかしないかにあると思っています。自分のサッカー観戦方法の特長は、対象のチームを相手側からの目線で観ることにあります。たとえば東京の試合の場合、東京を対戦相手側から観てます。この、相手という存在が、サッカーの複雑性を増し、そして面白くしていると言えます。

いかなるチームも、守備の仕組みを前提にシステムを構成していると思います。つまり、ギャップを消すことを考えます。スキルギャップができるだけ生まれないような選手を選択し、スペースギャップができるだけ生まれないような守備網を敷きます。攻撃側からの視点で言うと、スキルギャップができるだけ生まれるような選手を選択し、スペースギャップができるだけ生まれるような作戦を採用します。サッカーは、基本的には攻撃側が有利な設定になっています。これはあらゆる球技に共通することだと思いますけど、攻撃側に状況を作る権利があります。攻撃側がギャップを作ろうとし、守備側がそれに対処するというラリーの積み重ねがサッカーの試合を構成します。

以上の点から、ものすごくシンプルに表現すると、サッカー観戦はギャップを発見する作業だと言えます。ギャップを試合中に見つけられるようになると、両チームの「意図」を推測できるようになります。

自分は、自分のブログを戦術分析とは思っていません。そもそも戦術ということばが好きではありません。先にも述べましたけど、サッカーはダイナミックに状況が変遷するスポーツです。戦術ということばが発するニュアンスは、試合で起こっている事件を抽象化する行為をイメージします。それはそれで価値があることだと思いますけど、自分はできるだけ現場で起こっていることを総括的かつ客観的に捉えたいと思っているので、抽象化に意味を見いだせません。むしろ自分は人間の行為を観ていたいと思っています。生身の人間である監督や選手の「意図」をたぐり、相対性のなかで紡ぎ合わせることを目指しています。ブログをご覧になったかたから「相手へのリスペクトがある」、「サッカーへの愛がある」というコメントをいただくことがありますけど、もしかしたら自分のそのようなアプローチが、文章の上に染み出しているからなのかもしれません。そうだったらとても嬉しいことです。

前置きが長くなりましたけど、次回はようやく観戦方法の解説をします。一緒にギャップを見つけてみましょう。