自然に景観、宗教に文明・芸術、料理から美人、はては恐妻家に至るまで 「世界三大○○」という言い回しがある。
勿論、遊びの範疇のこと、ムキなるほどのものでもない。
では、世界三大美術館となれば何処だろうか? パリのルーブル美術館に異を唱える人は少ないだろう。
残るふたつがなかなかもって難しい。
世評高いのはサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館とマドリードのプラド美術館あたりか? ニューヨークのメトロポリタン美術館を推す方も多いのはとも思う。
そのプラド美術館(写真上:ゴヤ門)、97年と10年後の07年に訪ねたが、膨大な収蔵作品に感嘆したのを覚えている。
取り分け、収蔵作品の中で、これまたスペイン三大画家とされるグレコ、ベラスケス、ゴヤの作品を誇る。
就中(なかんずく)18世紀末から19世紀にかけヨーロッパで生まれたロマン主義の画家ゴヤの作品は、質量ともに群を抜き、彼を語るにはまずプラドともされている。
ゴヤは、カルロス4世治下宮廷画家に選ばれ、「カルロス4世一家の肖像」(写真中)を描いている。
が、絵の中心に女王を描いたことで不評を買い、それ以降王室からの注文が減ったことは知られている。
また彼はその時期、「1808年5月3日プリンシペ・ピオの丘での銃殺」 「巨人」や、当時住んでいたマンサラネス河畔の家の壁に 「連作・黒い絵」などを描いている。
連作・黒い絵とは、用いた色彩ではなく主題から呼ばれたものだが、「わが子を喰らうサトゥルヌス」や 「砂に埋まる犬」など、暗く重いテーマが観る者を押しなべて沈思させるようだ。
これらの絵が、彼を、“ 社会的な事件や死や病がおりなす恐怖や絶望など、心理的異常性を表現するロマン主義の先駆者 ” としての面目を躍如たるものにしているとされているようだ。
ところで、少し前この 「巨人」(写真下)が、彼の弟子のアセンシオ・フリアの作品だったとする調査結果を、同美術館が公表するとの報道があった。
予ねてから、この作品の動物の描き方に粗さが目立つなど、ゴヤ本来の作品との違いが指摘されていたのだそうだ。
件の作品を目の当りにした時、そんなこととは露も知らず、作品のスケールの大きさに、したり顔で頷いたりもしたのである。(続く)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます