サンタ・マリア・ノヴェッラ教会のルチェッライ礼拝堂。
斜塔の町、<ピサ>のサン・ジョヴァンニ洗礼堂の説教壇を制作した、ニコラ・ピサーノの「聖母子像」が置かれている。
主祭壇の右、ストロッツィ礼拝堂の壁面には、15世紀フィレンツェ派を代表する画家のひとりで、ブランカッチ礼拝堂の「<聖ペトロ伝>」を仕上げたフィリッピーノ・リッピが手がけたマニエリスム様式の先駆的代表作、「マルス神殿から龍を追い出す聖ピリポ」(写真上)が描かれている。
この作品は、「福音書記官聖ヨハネとピリポ伝」のひとつがテーマ。
イエスの十二使途のひとり聖ピリポが、トルコ西部の世界遺産で名を馳せる石灰華段丘・パムッカレの上のヒエラポリスに建てられた、軍神マルスの化身である悪龍を崇めるマルス神殿に十字架を建てたところ、悪龍が現れ、王子を始めとする数名が惨殺されるも、聖ピリポの奇蹟により死者が蘇生した伝説的な逸話である。
また、「福音書記官聖ヨハネとピリポ伝」のひとつ「ドルシアナの蘇生」(写真下)も描かれている。
この逸話は、聖ヨハネが、エフェソスへ帰還の途中、ドルシアナの葬式行列に出会うところから始まる。
ドルシアナとは、生前ヨハネの戒めに従い、「死ぬ前にもう一度彼を見たい」と切望していた女性のこと。
葬式行列に出会ったヨハネは、行列に止まるよう命じ、そして、大声で、「さあ、起きあがってドルシアナ。家に帰り、私のために食事の用意をして下さい」と言った。
彼女は奇跡的に息を吹き返し、棺の中に起き上がった。その劇的な場面を描いている。
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会、有料にはなっていたが、これらの作品が全て修復され美しく蘇っていた。
傑作を目の当たりにした時の、何時もの快い余韻を楽しみながらノヴェッラ教会を後に、リッカルディ宮へ向った。
教会前のサンタ・マリア・ノヴェッラ広場には、大きなクリスマス・ツリーが飾られ、オーナメントが夕暮れの広場に点滅を始めていた。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.380