<ウフィツィ美術館>の掉尾を飾るのは、<聖母子の画家>ラファエロの「ヒワの聖母」(写真上)。
画家24歳の頃に描かれたこの絵、聖母子を描いた最も美しい絵のひとつに数えられている。
幼き洗礼者聖ヨハネが両手に持つ鶸(ひわ)に、イエスが手をさしのべる場面からこの名がついた。
イエスが十字架を背負ってゴルゴダの丘に向かう途中、額の棘を抜こうと舞い降りた鶸、イエスの血を一滴浴びる。
それゆえ体に赤い斑点を持つという伝承にもとづき、主の受難を象徴する鳥とされている。
絵をよく見ると、幼子イエスは聖母の右足を踏んでいる。
これはミケランジェロの「<聖家族>」と同じように、幼子が神の子としてマリアより聖なる存在であることを表しているのだそうだ。
ところで、随分と長かった?ウフィツィ美術館、ラファエロの「グイドゥバルド・ダ・モンテフェルトロ」(写真下左)で、さよならにしたい。
自信なげな細い目、神経質そうな頬と薄い唇と尖った顎。
この人物、ピエロ・デラ・フランチェスカが板の表と裏に描いた、「<ウルビーノ公夫妻の肖像>」の、武術試合で右目を潰し鼻梁が欠けた、赤い服のウルビーノ公フェデリーゴの実の息子とは俄かに信じ難い。
描き手が異なるからではなく、モデル自身がこんな印象の人物だったらしい。
とはいえこの御仁、宮廷文化の承継にかけては父に優るとも劣らなかった、と言われているから血筋は争えない。
ラファエロは、弱々しげな風貌の中にも、統治能力とは別次元の才能を若き君主に見出し、その筆に託している。
それは、パトロンにおもねるのでもない、若き芸術家としての研ぎ澄まされた直感によるもの、と美術書が解説する。
そして、もう一枚は、モンテフェルトロの妻、すなわち、ウルビーノ公妃、「エリザベッタ・ゴンザーカ」(写真下右)だ。
「<ウルビーノ公夫妻の肖像>」でスタートしたウフィツィ美術館の旅、公夫妻の息子夫婦の肖像画でエンドマークを打つのは、いかにも面白いでは?「ちっとも!」「なんてことを・・・」。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.348