随分と昔、写真雑誌のさきがけとも言える、朝日グラフという週刊誌があった。
芸能人などを隠し撮りするといった類の物ではなく、朝日新聞や週刊朝日のビジュアル版のような存在だった。
その朝日グラフに、「我が家の食卓」という連載物があった。
文人墨客を始め芸術家など各界の著名人が、家族と食卓を紹介する巻末記事だった。
登場人物は、押しなべて垢抜けした服装で、初めて聞く料理の前でポーズを作っていた。
時代は高度成長期に差し掛かった頃だったが、多くはまだまだ貧しく、田舎から出てきたばかりのペトロには、「へ~っ、こんなハイカラなもん食べてるんや!」と目に眩しかったことを覚えている。
そんな折、作家の遠藤周作がこのページに登場した。
幼い頃にカトリック夙川教会へお母さんと一緒に通った人で、その意味で作品とは別の親近感がある。
余談はさておき、その日紹介された彼の食卓には、なんと、梅干と丸干しが二匹載っていた。
この作家、神と信仰の意義を書いた「沈黙」、神なき日本人の罪意識を問う「海と毒薬」など、キリスト教をテーマに多くの佳作を著す一方、自ら狐里庵と称し、「周作口談」や「狐里庵閑話」など、軽妙洒脱な掌編も残している。
で、その号の食卓風景も狐里庵先生の諧謔な一面を窺わし、写真もさりながら添えられた文章も面白かった。
ところで梅干といえば、カタリナ のお茶の仲間にWさんという方がおられる。
この方から度々、大好物の梅干を頂戴し、とても喜んでいる。
最近の梅干、蜂蜜入りの少し甘い物が主流。厚かましくも、「酸っぱい方が・・・」とちょっぴり我侭を言ったら、カタリナ、なんと当のWさんにそのことを話したらしい。
気立てのいい方なのだろう、笑いながら、「判りました」と言って下さったらしいが、それを聞いてしばし絶句、冷や汗が出た。
朝日グラフの遠藤さんちではないが、今朝の我が家の食卓、大粒の酸っぱい梅干と三匹のうるめの丸干しが乗っていた。冷や汗を拭いながらも、美味しく頂いたのは言うまでもない。
今年も余すところ僅か、カタリナ朝早く、「気忙しいこと」と言いながら、あたふたと研修会へと出かけた。
今週の朝日俳壇 日陰なる力まとひて実万両 (東京都・岩崎玲子さん/金子兜太選)が印象に残った。
写真の万両や山茶花など、<大谷記念美術館>の庭園で撮った。