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ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

シャルダン 「プラムを盛った鉢 A」

2016年11月05日 |  ∟アメリカの美術館

 ※ ワシントンDC/フリップスコレクション(3) ‐ DC&NYの美術館にみる泰西名画選(3)

 貝殻装飾を語源とするロココ様式、そのフランス絵画を代表するジャン・シメオン・シャルダン(1699-1779)。
 静物画や風俗画などに、繊細な色彩、柔らかく包み込むような光の表現などで、当時、絶大な人気を博したという。

 また、後期印象派のセザンヌ(1839-1906/フランス)やマティス(1869-1954/フランス/20世紀芸術)などにも大きな影響を与えたとされている。

 その<シャルダン>の最初期の作品 「プラムを盛った鉢A」(1728年/62.2 x74.3 cm)。

 白い磁器の水差しとプラム、浅い鉢にも盛られたプラム、左隅にもプラム、そして洋梨とその種だろうか、が配されている。

 白地に花が絵付けされた水差しの光沢を帯びた輝く質感。
 その手前や鉢に盛られたプラムは、鮮度の良さを示す果皮の白い果粉まで微細に描かれ、甘酸っぱい豊潤な香りさえ感じさせるほどに瑞々しい。

 本作から35年、円熟期に同じモティーフで描いた傑作 「<葡萄と石榴>」(1763年/47×57cm)や 「<桃の籠>」(1768年/32.5×39.5cm/何れもルーヴル美術館蔵)に比べ、空間構成にややまとまりが欠けるが、それは若い画家が与えられた伸び代というものか?

 とまれ、これらの静物画、ここフリップスコレクションが所蔵する 「<生姜ポットとザクロと洋ナシ>」を描いた<セザンヌ>などに大きな影響を与えたことが窺えるのである。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1208

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エル・グレコ 「悔悛する聖ペトロ」

2016年11月03日 |  ∟アメリカの美術館

 ※ ワシントンDC/フリップスコレクション(2) ‐ DC&NYの美術館にみる泰西名画選(2)

 コレクションの紹介もあって、<ボナール>(1867-1947/フランス/後期印象派)から始めた小編。
 表現形式の年次からみればちょっと変則、で、美術館に入ったところから仕切り直すことに。

 新しく増築された建屋に入口があって、そこのエントランスロビーのインフォメーションでチケットを買った。

 階段を上って展示室に入る手前、少しほの暗い右手の壁だったと覚えている、黒ずんだ背景のなかで色鮮やかな黄色い衣を纏い、腰に鍵を提げた男の肖像画が嫌でも目に入った。

 イタリアやスペインで活躍、<マニエリスム期>最大の画家エル・グレコ(1541-1614 /ギリシャ・スペイン)の 「悔悛する聖ペトロ」だった。

 グレコは、生涯に六点ほどこの聖ペトロを題材に描いたとされている。

 傑作 「<トレド眺望>」(メトロポリタン美術館蔵)とほぼ同時期、晩年に描かれた本作、彼による聖人画の大きな特徴である、潤んだような上目使いの眼差しで聖ペトロを描いている。

 この聖人のことは何度も投稿したので重複は避けるが、グレコは、何時も布切れを懐に入れ涙を拭っていたという<泣き虫ペトロ>の気質を巧みに捉えてい、聖人の名を洗礼名に頂くペトロ、絵を前にして足が動かなくなってしまった。

 そんな感傷とは無縁のカタリナ、目指す作品があるのだろう、さっさと展示室に入ってしまったけれど。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1207

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ボナール 「棕櫚の木」

2016年10月28日 |  ∟アメリカの美術館

 ※ ワシントンDC/フリップスコレクション(1) ‐ DC&NYの美術館にみる泰西名画選

 この日のワシントンDCの天気、インディアン・サマーと呼ぶのだそうだ。
 小春日和にあたるこの言葉、北米東部で頻繁に使われ、秋から初冬にかけて晴天が続き、日中は高温、夜間は冷えこむ特異な期間をいうのだとか。

 そんな天気に恵まれた旅の二日目、出発前にHPで予約した 「NYからの日帰りDC一日ツアー」に唯一の半日組として合流、リンカーン記念堂でスミソニアン協会の航空宇宙博物館などへ向かうツアーを離れ、フィリップスコレクションへ向かった。

 デュポンサークルでタクシーを捨て、近くのレストラン、ティーイズムで、ちょっと変てこなランチを摂ってから、この旅で最初の美術館へ向かった。

 ジョーンズ&ラフリン製鉄会社の創設者の孫ダンカン・フリップスとその妻が蒐集した印象派などの作品をベースに公開されているフリップスコレクション、アメリカ最初の個人が所有する美術館として知られている。

 取り分け風景画や肖像画の他、裸婦などの人物画や風俗画で優れた作品を残した<ピエール・ボナール>(1867-1947/フランス/後期印象派)の蒐集に優れ、彼の所蔵数ではアメリカ随一とされている。

 初回は、その彼の代表作のひとつとされる 「棕櫚の木」。

 南仏ル・カンネ近郊の風景を背景に、棕櫚の葉の下で林檎を手にした少女が、淡い陰影に包まれて描かれている。

 黄色の花が咲く緑の生垣の奥には、青い地中海を背景に、いかにも南仏らしい赤い屋根の街並みが描かれてい、陽光を受けて明るく輝くその風景は見る者に開放感を与えている。

 この作品、じっくりと眺めてみれば、光の取り入れ方が前・後景、逆さまのように見える。
 そこに “ 画家の絵画的仕掛けが見出される ” とあったが、差し詰め、AE・自動露出で人物を撮ったものの背景が明るくて影絵になったようなものか?

 前回、各編、短くと断ったものの、コレクションの紹介もあってのっけから少し長くなった。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1204

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ふたりの旅

2016年10月26日 |  ∟アメリカの美術館

 何時かは、<世界四大美術館>のひとつ、と勝手に思っているNYのメトロポリタン美術館(写真)を訪ねたいと思っていた。
 そして10年の秋、カタリナ の誕生日を挟んで、どうせならワシントンDCのナショナル・ギャラリーも、とDC&NYの旅程を組んだのが、ふたりでの旅の最後になった。

 翌11年、教会が主催する<イスラエル巡礼>に加わったが、近隣教会も交えたグループ・ツアーだった。

 翌々年13年の初夏、ふたり旅の仕上げとして、サンクトペテルブルクにエルミタージュ美術館を訪ねる旅を計画。

 ビザをはじめ航空券やホテルの手配も終え、後は飛行機に乗るばかりだったが、出発直前になって彼女が病に伏してしまった。
 その顛末は、<幻のエルミタージュ>など、幾度か投稿したので憶えていて下さる方もあると思う。

 いつもの悪い癖で前書きが長くなったが、“ 中欧美術館の旅、ドレスデン、ウィーンを終えてベルリン、ハンブルクと回る予定だった。

 しかし、気まぐれペトロ、ドイツ語圏ばかりでは退屈・・・と、ちょっと中断して寄り道を。
 で、以前、本編<旅の途中>で機会があれば投稿、と約束?していたメトロポリタン美術館を思い立った。

 歴史が浅いアメリカが、欧州勢何するものぞと財力に飽かし集めた名画の数々、題して DC&NYの美術館にみる泰西名画選 、各編<リンク>を活用し短く綴りたいと思っている。

 膨大なコレクションを誇る両美術館、どこまで拾えるか心許ないが、覗いて頂ければ嬉しく思う。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1203

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なにこれ?

2011年01月26日 |  ∟アメリカの美術館

 初めて出会ったのが、ウィーン美術史美術館の第7展示室(当時)。
 その少し前から、美術雑誌などでこの画家の存在は知っていたが、直に絵を見たのはその時が初めてだった。

2_21_2  彼の名前は、ジュゼッペ・アルチンボルド。
 イタリアはミラノ出身のマニエリスムの画家である。

 そのスタイル、マニエリスムとは?
 後期ルネサンスの後、16世紀の後半にイタリアで起こった表現様式で、その代表格が、ギリシャ、クレタ島生まれでスペインのトレドなどで活躍したエル・グレコ。

 素人が判った風なことを説明するよりもグレコの絵、例えば「受胎告知」(大原美術館蔵)などを見れば一目瞭然。

 人物の顔や首などが、実際よりも引き伸ばされて描かれていることが判る。
 また、画家個々人の独創的な感性が顕著に投影されるのも、この派特有の表現スタイルとされている。

 11 独創的な感性が見られる作例としては、グレコの他に、イタリアの画家ブロンズィーノ「愛の勝利の寓意」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)や、これまたイタリアの画家パルミジャニーノの、その名もずばり「長い首の聖母」(ウフィツィ美術館蔵)などが有名だが、極めつきとなれば、このアルチンボルドの右に出る者はいないだろう。

 初対面でカタリナ は、 「なにこれ?と唖然、ペトロ は、「う~ん」と絶句、ためつすがめつ眺めた。

 この日のウィーン美術史美術館、彼の代表作「連作‐四季」の「夏」(写真上左)と「連作‐四大元素(大気・火・大地・水)」の「火」(写真上右)が架かっていた。

 22話は飛んで、ワシントン・ナショナル・ギャラリー。
 東館で彼の特別展を開催していて、別の連作「四季 ‐ 春・夏・秋・冬」などが架かっていた。

 最初に見たときほどの驚きはないが、呆れながら会場を回っていると、ある絵(写真中)の直ぐ下に30センチ四方の箱が置かれていた。

 興味に駆られて覗いたところ、箱に鏡が嵌め込まれていて、壁の絵とは全く違う絵(写真下)が、そこに写っていた。
 それもご丁寧に、素材が鉢植えの野菜たち? とはいやはや。

 ひょっとしたらこの画家、絵を見て驚く人を陰から覗いて笑っていた、のかも? 大阪弁で言うところの「いちびり」ですな。

 まあ何はともあれ、絵を拡大(左クリック)して、とくとごろうじあれ。
 写真は、美術史美術館のHPと特別展のパンフから。

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旅の途中に ‐ とにもかくにも

2010年10月21日 |  ∟アメリカの美術館

 ワシントンDC、緑も多く、圧するような高層ビルもないので開放的で明るい感じがします。

 待望のナショナル・ギャラリーへ行ってきました。
 
本家?ロンドン・ナショナル・ギャラリーに、比して遜色なしという印象でした。                                                                                               

                              

 

 Photo 

 

 ここには、ヨーロッパ以外では一枚も見ることができないとされる、イタリア・ルネッサンスの巨人、レオナルド・ダ・ヴィンチの、「ジネブラ・デ・ベンチの肖像」がありました。

 生涯に20作品ほどしか描かなかったダ・ヴィンチ。
 
その彼の二十歳過ぎの作品らしいのですが、若者らしい瑞々しさと限りない未来を予見させる作品でした。

 Photo_2 Photo_3  

 

 ヨーロッパでは、「また、彼」と思わさないでもない聖母子の画家ラファエロの「アルバの聖母」がありました。
 ヨーロッパ以外で見るのは、いかにも新鮮です。

 

 まあ、このふたりの作品だけとってしても、NYのメトロポリタン美術館が、「悔しいなあ」と言ったかどうかは定かでありませんが、「それに近い感情を持っていることは確かだろう」と、ペトロ は思う訳であります。

 

 Photo_4 Photo_5

 

 そして、カタリナ、オランダ絵画黄金期のこのふたり、レンブラント「自画像」などと、フェルメール「赤い帽子の女」などを堪能したようです。

 

 イギリス絵画の大家ターナ(写真下)を前に、「ようけ見たな~」なんて阿呆なことを言っているうちに、「恥ずかしい!と、連れは他人のように離れてしまい、印象派前後期の作品を前に、「どこでどの絵を見たのか?混線し始めたお頭を振りつつ、美術館を後にしました。

                             

 Photo_6 

 

 とにもかくにも、明日は帰国です。

 楽しく旅を続けられたことを感謝して 《旅の途中に》、これで現地からの投稿、エンドマークを打ちます。

 

 誰かさん、「直ぐに稽古なの」と実に嬉しそうです。

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