メルキト族との初めての合戦でテムジンは勝った。
テムジン側3万、メルキト側 3千人、圧勝だ。テムジンの兵は、3百人の手勢だ。テムジンが必死に戦ったのは、彼の愛する妻のボルタの為である。婚礼の儀を挙げてからまだ2年と経っていない。ある夜、彼の妻のボルタがメルキトにabductされそれ以来テムジンに苦悩の日々が続いていた。
「元朝秘史」は伝える。
「ボルタは、逃げ惑うメルキト族の中にあって、わが名を呼ぶ夫の声をきき、テムジンの姿を感じ、暗闇の中の一条の光の中にいるテムジンに向かって静かに歩んでいった。
テムジンの馬の手綱に触れた。テムジンは、十五夜の薄明かりの中で、最愛の人のかほりを感じた。」
テムジンは生きて、ボルタにふたたび会えたことを、目をつむり 神に彼にとって最大の感謝をし、体がひとりでに、狂喜乱舞した。
ボルタの着ている服はあちこちが破れ、あの山羊の乳をつけ、いつも、しっとりとした緑の輝くような黒髪は、バサバサに立っていた。顔も砂漠の砂の中で汚れていたが、何よりもテムジンにとってしあわせだったのは、彼女の砂漠の中のオアシスのような、深い澄んだ瞳が彼を涼しく見ていることだった。
いま戦いが終わって、おびただしい血糊と死体の殺伐とした中で見るボルタの姿は、美しい。この世のものと思えない空気の中にテムジンは目をつむって浸っていた。
だが、次の瞬間、テムジンは体中の血が凍り、膝の関節の機能がゼロになった。ボルタのふくよかの胸が生後2カ月ほどの赤ちゃんを抱いていたのだ。
テムジン側3万、メルキト側 3千人、圧勝だ。テムジンの兵は、3百人の手勢だ。テムジンが必死に戦ったのは、彼の愛する妻のボルタの為である。婚礼の儀を挙げてからまだ2年と経っていない。ある夜、彼の妻のボルタがメルキトにabductされそれ以来テムジンに苦悩の日々が続いていた。
「元朝秘史」は伝える。
「ボルタは、逃げ惑うメルキト族の中にあって、わが名を呼ぶ夫の声をきき、テムジンの姿を感じ、暗闇の中の一条の光の中にいるテムジンに向かって静かに歩んでいった。
テムジンの馬の手綱に触れた。テムジンは、十五夜の薄明かりの中で、最愛の人のかほりを感じた。」
テムジンは生きて、ボルタにふたたび会えたことを、目をつむり 神に彼にとって最大の感謝をし、体がひとりでに、狂喜乱舞した。
ボルタの着ている服はあちこちが破れ、あの山羊の乳をつけ、いつも、しっとりとした緑の輝くような黒髪は、バサバサに立っていた。顔も砂漠の砂の中で汚れていたが、何よりもテムジンにとってしあわせだったのは、彼女の砂漠の中のオアシスのような、深い澄んだ瞳が彼を涼しく見ていることだった。
いま戦いが終わって、おびただしい血糊と死体の殺伐とした中で見るボルタの姿は、美しい。この世のものと思えない空気の中にテムジンは目をつむって浸っていた。
だが、次の瞬間、テムジンは体中の血が凍り、膝の関節の機能がゼロになった。ボルタのふくよかの胸が生後2カ月ほどの赤ちゃんを抱いていたのだ。