○ 狂喜と憤怒。1

2006-05-22 21:27:42 | ♪Weblog
メルキト族との初めての合戦でテムジンは勝った。
テムジン側3万、メルキト側 3千人、圧勝だ。テムジンの兵は、3百人の手勢だ。テムジンが必死に戦ったのは、彼の愛する妻のボルタの為である。婚礼の儀を挙げてからまだ2年と経っていない。ある夜、彼の妻のボルタがメルキトにabductされそれ以来テムジンに苦悩の日々が続いていた。
「元朝秘史」は伝える。
「ボルタは、逃げ惑うメルキト族の中にあって、わが名を呼ぶ夫の声をきき、テムジンの姿を感じ、暗闇の中の一条の光の中にいるテムジンに向かって静かに歩んでいった。
テムジンの馬の手綱に触れた。テムジンは、十五夜の薄明かりの中で、最愛の人のかほりを感じた。」
テムジンは生きて、ボルタにふたたび会えたことを、目をつむり 神に彼にとって最大の感謝をし、体がひとりでに、狂喜乱舞した。
ボルタの着ている服はあちこちが破れ、あの山羊の乳をつけ、いつも、しっとりとした緑の輝くような黒髪は、バサバサに立っていた。顔も砂漠の砂の中で汚れていたが、何よりもテムジンにとってしあわせだったのは、彼女の砂漠の中のオアシスのような、深い澄んだ瞳が彼を涼しく見ていることだった。
いま戦いが終わって、おびただしい血糊と死体の殺伐とした中で見るボルタの姿は、美しい。この世のものと思えない空気の中にテムジンは目をつむって浸っていた。
だが、次の瞬間、テムジンは体中の血が凍り、膝の関節の機能がゼロになった。ボルタのふくよかの胸が生後2カ月ほどの赤ちゃんを抱いていたのだ。

○ ミラーマン 2

2006-05-22 01:57:10 | ♪Weblog
もとに戻って、
さてそこで何が起こったのでしょうか。この理解できない行動に探検家たちは、あの原住民はは、気が狂ったか、それとも、仲間を呼んで探検家たちに襲いかかろうという合図なのか。
言葉がわかる一人の探検家が、恐る恐る、鏡を一撃で壊した男に近づいて問いかけた。「いったいどうしたのですか」
原住民の男は冷静に答えた。
「槍を持ったやつが近ずいてきて、俺を殺そうとしたのでやっつけた。」
これを聞いた探険家は不思議に思った。そのキャンプ地に外から人がやってきた気配はまったく無かった。
「その槍を持ったやつは何処からきたの。」
「その木の陰から覗いていた。」
と、その原住民はこなごなにこわれた鏡とそれを立てかけてあった木のほうを指差した。
探検家たちは、可笑しくなって笑い出した。
原住民が敵と思ったのは、鏡に映る自分の姿だったのです。槍を手にした自分の姿をみて怖くなってそいつを殺したのです。
理由が分かってので、原住民を別の鏡の前に連れて行った。
「なにも怖がることはないよ、これは鏡といって自分を映しだすためのものなのだ。」
「これは悪魔の板だ、この悪魔の板を見ると悪魔がでてくる。おれを殺そうとする。」
原住民は、悪魔の板といってきかない。それを諭すために、こういった。
「そうじゃないよ。これは天使の板だ。これを見つめると天使がでてきてあなたを
大切にしてくれる。あなたが怒っていると鏡のなかの人も怒る。心を和らげれば、鏡のなかの人も心を和らげる。」
鏡はもう敵ではなかった。