フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

桂銀淑 [101]

2006年05月11日 | アートな快感







        桂銀淑(ケー・ウンスク)




 三月なかばに大友浩先生ご推薦の韓国映画『風の丘を越えて』のことを書いたが、その時ふと思い出したのが韓国ソウル出身の歌い手、桂銀淑(ケー・ウンスク)さんで、最近またそのCDを引っ張り出してきて時たま聴いている。

 「あの人が好きやねん~」の『大阪暮色』や、「たかが人生なりゆきまかせ~」の『すずめの涙』なんかは、かなりヒットしたので憶えてる方も多いかもしれない。
 NHK紅白歌合戦も七回連続で出場してるし、あの小泉首相も彼女の大ファンだそうだ。

 桂銀淑のハスキーボイスと、その溜めとパンチの効いた歌いまわしに、三十代の私はかなり入れ込んでたようで、めったに行かない歌謡曲系のコンサートだが、彼女のそれは一度だけ行ったことがある。会場は練馬文化センターだったと思う。


      
           『桂銀淑 全曲集』東芝EMI発売


 ライブで聴くと余計に歌の上手さが伝わってくる人で、私はドキドキしながら彼女の哀愁歌にすぐに没入した。構成演出などもさすがに洗練されており、やっぱりこういうコンサートも時々はこなくちゃバランス悪くするよな、などと思ったものだ。


 そして、驚きは第二部冒頭に訪れたのである。

 板付きスポットライトで、桂銀淑はいきなり、無伴奏で歌い始めたのだ。
 歌詞はそれまで通していた日本語ではない。韓国語らしい。
 小太鼓の伴奏がなかったのでパンソリではないのかもしれないが、それ系(朝鮮半島の民俗歌謡)ではあったと思う。

 第一部では、基本的には愛なり恋なり別れなりをテーマにしたいわゆる歌謡曲だったのだが、休憩後はそれが一変して、プーロ(純粋)なカンテ・フラメンコ的衝撃が客席を突っ走る。
 それはまるで、マルティネーテやシギリージャの世界だ。

 最初はキョトンとしていた超満員の客席も、桂銀淑のあまりの気合いの入りように、そして“魂の叫び”と呼ぶにふさわしい本格歌唱に次第にひきこまれ、その日最大の拍手が巻き起こったことを思い出す。
 プーロを歌ったのはそれ一曲で、その後は何事もなかったように歌謡曲に戻った。
 それ以前に私が聴いた人間国宝クラスの女性歌手の、モノトーンのひたすら深い味わいには及ばなかったものの、そのとき桂銀淑が発したものはドゥエンデに近かったと、今もそう思う。


 「私がほんとうに唄いたいのは、これなのよ。歌謡曲を歌っているのは、これを唄いたいから」。


 例によって、これは私の勝手な思い込みである。
 あの入魂の一曲は、私にそんなドラマを想起させたのだ。
 ゾクッと鳥肌が立ってしまったこともハッキリ憶えている。
 映画『風の丘を越えて』のワンシーンで、彼女を連想したのにはそんな理由があった。

 本当のところはわからない。
 もう一度ライブで聴いてみたい人だな、よしコンサートに行ってみるかと、彼女のホームページを覗いてみたらこの二年近く更新されてないようだ。
 う~ん、どーしちゃったのかなあ、余計に聴きたくなっちゃったよ。……とゆーわけで、最近やたら気になる桂銀淑さんなのである。







 

 

【追記/関係ねーけど、本日の大笑い】

 先日のとんがりやまさんの大笑いに引き続き、本日も大笑い。
 まったく、仕事になんねえっつーの。

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