フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2014年11月②

2014年11月01日 | しゃちょ日記

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2014年11月30日(日)その1932◆魂の対話

「死ぬまで進歩するつもりでやればいいではないか。
 作に対したら一生懸命に自分のあらんかぎりの力を
 尽くしてやればいいではないか」 (夏目漱石)

 

以下は、漱石と私の深遠なる魂の対話(妄想)である。

 

おれ「先輩、僕も先輩のようなモノ書きになりたいので、
   死ぬまで毎日日記を書き続けるつもりです」
漱石「うん、その意気だ。いまの君はまるでなっちゃいないが、
   君はまだずいぶんと若いから、きっと間に合う・・・はずである」
おれ「はい、来年60です」
漱石「うっ、もう60なのかっ!?(わしゃ49で死んだが)」
おれ「はい、四捨五入するとピッタシ100歳です」
漱石「うっ、だ、大丈夫、き、君には〝伸びしろ〟がある。
   いや、むしろ伸びしろしかないと云っていいだろう!」

 

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ま、そんなこんなで、今朝もとりあえずがケンタローに清き一票!
【新潟イケメングランプリ/ファイナル選出投票】
 http://ikemen-niigata.com/second.html

 

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2014年11月29日(土)その1931◆どろどろビシバシ

 

「次回しゃちょ対談、来年四月号でよろしく」

 

社長業(=雑用)に追われる私に、パセオ小倉編集長から丸投げリクエスト。
本文モノクロ4頁、1/20締切、3/20発売、原稿料なし(泪)、人選お任せ。
一方的なインタビューではなく、五分と五分、互いに突っ込み合いボケ合う
丁々発止のインプロ対談をご所望だ。

 

稽古不足を幕は待たない、どろどろビシバシの本音トーク。       
う~ん、どなたがよろしかろーか?
年内に決めて、新年早々収録だな。

 

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さて、とりあえず今日も、われらが徳永健太郎に清き一票!
【新潟イケメングランプリ/ファイナル選出投票】
 http://ikemen-niigata.com/second.html

 

土曜午前は東京北部を散策、午後からパセオで
新年号校正(表紙ガデスでがす)と2月号追い込み、
宵からは親しい仲間と全身全霊ドンちゃん騒ぎ。
今日死んでもいいと想える一日を!

 

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2014年11月28日(金)その1930◆愛しき日々

 

「所詮我々は自分で夢の間に製造した爆裂弾を、
 思い思いに抱きながら、一人残らず、死という遠い所へ、
 談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」

 

                       夏目漱石『硝子戸の中』

 

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漱石先生、例によって身もフタもないようなお話だが、
「談笑しつつ歩いて行く」というフレーズが気に入っている。
殺傷による解決が流行する中、
人間存在そのものが愛おしく想えてくる〝ものの哀れ〟。

 

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2014年11月28日(金)その1929◆千里の道も一歩から

 

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あのブッち切りギター。
あのナイスな性格。
そして、あのイケメン。

 

なんと、若い頃の私とウリふたつではないか!
とても他人とは思えん・・・うそ ( ̄▽ ̄)

 

てなわけで、フラメンコの太陽・徳永健太郎に本日も清き一票!

 

新潟イケメングランプリ二次予選通過者
一般web投票開始
http://ikemen-niigata.com/second.html

 

毎日一回の投票は楽ちん、慣れると10秒。
千里の道も一歩から。
まずは新潟制覇。
みんなもよろしく頼む!

 

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2014年11月27日(木)その1928◆ヤングマン

 

写真整理をしてたら、こんなのが出てきた。
ご近所代々木公園にくつろぐジェーと私だが、
FBトップの写真とはビミョーに違う。

 

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昨年の創刊三十周年記念号の『パセオフラメンコ社長/翔ばせるために生まれた』
(文と撮影:井口由美子)の折の写真だが、こっちの方が3ミリほど表情が柔らかい。

 

てめえで云うのもなんだが、実際のおれはけっこう若く見えるらしい。
当時私は58歳だが、どう見たって57歳ぐらいにしか見えねーだろ?

 

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2014年11月27日(木)その1927◆奨励賞インタビュー

 

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月刊パセオフラメンコ最新号。
夏の新人公演の奨励賞受賞者インタビュー。
構成/小倉泉弥、撮影/大森有起、カッコ内は取材担当。

 

【バイレソロ部門】
◆山崎愛(小倉泉弥)
◆ヴォダルツ・クララ(白井盛雄)
◆横山亜弓(井口由美子)
◆ブラシェ小夜音(小倉泉弥)
◆関祐三子(井口由美子)
◆重盛薫子(小倉泉弥)
【バイレ・群舞部門】
◆Hijas de Manszanilla(井口由美子)
【ギター部門】
◆大山勇実(白井盛雄)
【カンテ部門】
◆大森暢子(白井盛雄)

 

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2014年11月26日(水)その1926◆これもひとつの男気

 

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若き友・徳永健太郎から昨晩メッセあり。
いいぞケンタロー、暴れるだけ暴れてみろっ!

 

新潟イケメングランプリ二次予選通過者
一般web投票開始
http://ikemen-niigata.com/second.html

 

私もさっき投票してきた。
簡単なんで、みんなもよろしく応援頼む!

 

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2014年11月26日(水)その1926◆無差別主義

 

△月△日『高度成長期

 

「人生が解ってきた」
四十代でそう思った。
その錯覚に気づくのに三年かかった。
五十代で今度こそ本当に解った。
そしてその錯覚に三日で気づいた。
つまり私はモーレツに成長を続けている。

 

        ◆   ◆   ◆

 

パセオ12月号〝しゃちょ日記〟の冒頭に置いた
涙とペーソスの大河エッセイ(構想二十年!)。
添付のポートレイトは、カメラに凝ってるギターの沖仁さんの撮影。
葉山のカフェで逆取材されたんだが、
被写体を選ばない(人間と怪獣を差別しない)
果敢な彼のパイオニア精神は絶賛に値する。

 

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2014年11月25日(火)その1925◆ハレオス

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パセオ小倉編集長が大暴走する大物対談〝ハレオス③〟。
最新号ゲストは、今枝友加と吉田久美子の先輩後輩対談。
とーぜんのよーに、チョーおもろっ!

 

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2014年11月24日(月)その1924◆大人の世界

 

気立てのよい女性の、その目元の小じわにふと色気を感じる。

 

ピチピチ好きの若い頃には想いもしなかった発見で、
ああなるほど、これが歳を重ねることなのだと気づく。
気立てはともかくも自分だって大じわ小じわがワンサカだから、
まあこれも一種の自己肯定なのだろう。
すべて引っくるめてそれも善しとしよう。

 

穏やかな笑顔にふと刻まれる愛らしい小じわの、
その苦労と頑張りの歴史が品格ある色気に変換されるさまは、
まさしく〝もののあはれ〟と云っていい。

 

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2014年11月24日(月)その1923◆宝のヤマ

 

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「自分を追い込んだ時の快感というものは、掛け替えのないものだと思う。
 踊っていることもだけれど、動いて、動いて、体に負荷が掛かり、
 痛みや疲労に見舞われるとき、生きているという実感を沁み沁み感じる」

 

パセオ最新号、若手フラメンコたちのモノローグ〝フラメンコ・スピリッツ〟には、
才能&リスク満載のバイラオーラ宝が登場。
その踊りに現れるように、彼女の感性・生き様は切れるように鋭い。  
宝のモノローグに読み入っていたら、
ふと文豪・夏目漱石のこんな独白が懐かしく想い出される。

 

「人間は自分の力も自分で試してみないうちは分かりません。
 握力などは一分で試すことができるが、
 自分の忍耐力や文学上の力や強情の度合などは、
 やれるだけやってみないと、自分で自分に見当のつかないものなのです」

 

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2014年11月23日(日)その1922◆身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり

 

人生には、過去と現在に一線を引く、決定的な瞬間がある。

 

彼女がどう言うかわからないが、僕は作品『ラ・フランセサ』を発表した2006年が、
このセビージャ出身のバイラオーラの、最大の転機だったように思う。
(中略)
『ラ・フランセサ』でパストーラ・ガルバンは、自分の中の大切なものを、
愛と尊敬の念をもって、あえて壊した。
彼方に見える地平線に、新しい何かを発見するために・・・。

 

(文:ハビエル・プリモ/パセオ12月号より)

 

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脱皮に失敗してエラい目に遭うことはいやというほど経験したし、
この出版不況下における月刊パセオの発行自体も毎度毎度の脱皮なので、
どヘボなりにパストーラの気分だけは分かる。
結果を問わず、やらないで後悔することより、
やって後悔することを彼女は選んだのだ。

 

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2014年11月23日(日)その1921◆編集者冥利

 

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この夏もっとも強烈に輝いたバイラオーラ本田恵美。
すかさず追っかけるパセオ最新号〝しゃちょ対談〟。
彼女の慶応大哲学科の卒論は意外にも〝家紋〟だった。

 

本田「もともと複雑なものを、ひと目で分かる美しさに凝縮するところですね。
 家紋はいろんなエッセンスをシンプルにストレートに伝える。
 ひと目で身分や職業や出身地がわかったり・・」
おれ「その美性あふれる機能性が、本田恵美の踊りにそのまま反映されるわけだ」
本田「そう在りたいとは思っています。(中略)
 出てきただけでその人って分かるとか、踊りがその人そのものっていう
 フラメンコが私は好きです。自分だけの家紋で勝負したいんです」

 

そしてラストの本田の言葉に私はシビれ、編集者冥利を想った。

 

「今回の新人公演のように、
 人目を恐れずに没頭できる目標とともに生きるのが理想です」

 

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2014年11月23日(日)その1920◆未来を創るイケメン

 

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フラメンコギターの若き天才、徳永健太郎23歳。
        
弟康次郎とともにフラメンコ新世代の旗手として立つべく、
スペイン・日本を往復しつつ、さまざまな現場最前線で修業真っ只中である。

 

すでに技術面の不足はないし、本場仕込みのアイレも満タンだ。
この『ケンタローWorld』は、エスペランサの生音ライヴを聴いて、
その場で企画を決めケンタローを口説き、その翌月からスタートしたパセオ連載。

 

彼ら兄弟にはパコ・デ・ルシア『二筋の川』『アルモライマ』のような、
波及力の強いヒット曲を強烈に待望している。
創ろうと思ってできるもんでもなかろうが、彼らに会うたびにそれを云い続ける。

 

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2014年11月22日(土)その1919◆爆裂美

 

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ケレン味と様式美が渾然一体となるド迫力!
エンタテインメントとアートを結ぶ人間の生命力の完全燃焼!

 

再演された鍵田真由美・佐藤浩希『道成寺』は、
『FLAMENCO曽根崎心中』に並ぶアルテイソレラの名作に成長していた。
きのう晩の日本橋劇場、その観客席はバカ受けのド感動。
そのハミ出しまくる魔力の詳細は、編集長・小倉泉弥とライター井口由美子が
パセオ3月号に余すところなく伝えてくれるだろう。

 

さて。
世間一般にも歓迎される圧倒的水準のスーパー舞台ゆえに、
敢えてひとこと苦言。
休憩なしアンコール含めて100分は長い。
トータル90分まで削ぎ落とせばパーフェクトな作品になる。
ガデスの鉄則を忘れてはいけない。
エラそーなこと云ってすまんが、
アルテイソレラ応援隊のメディア代表として、
本音アドバイスと心底からの大絶賛!

 

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2014年11月21日(金)その1918◆古典の力

 

「人間の目的は、生まれた本人が、
 本人自身につくったものでなければならない」(夏目漱石)

 

情報の氾濫に却って道を見失いやすい現代。
たまには古典もチェックしないとね。

 

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「君、弱い事を言ってはいけない。
 僕も弱い男だが、弱いなりに死ぬまでやるのである」
       
グレン・グールドにも愛された夏目漱石はこうも云った。
世界中に愛されるあの天才グールドもこうした言葉に励まされたのかと想うと、
何故だかうれしさがこみ上げてくる。

 

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2014年11月20日(木)その1917◆男の肖像

 

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「それで、どうすれば自分が居心地良くいられるのか、検証しました。
 そしたら、自分と演奏して、共演者のパフォーマンスが良かったときが、
 一番嬉しかったんです」

 

人気連載『男の肖像』。今回のゲストは、
先週のロルカ・オペラでも大活躍したギターの智詠。
独自性と柔軟性が心地よく共存する、彼のギターの秘密を垣間見た。

 

『男の肖像』は、小倉編集長の企画・執筆・撮影による入魂連載で、
ローコスト・ハイリターンをものの見事に実現している。
他方でノーコスト・ノーリターンを実現する『しゃちょ日記』には、
ノータリン説さえあるのが若干辛い。

 

フラメンコ好きなら読まないとゼッタイ損ぼける、
本日発売、月刊パセオフラメンコ12月号。
イケイケ表紙はパストーラ・ガルバン!

 

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2014年11月19日(水)その1916◆未来

 

「十年後のおまえの未来を、ひとつだけ教えてやろう」

 

ちょっと胡散臭そーな神がそうおっしゃる。
ひとつだけか・・・おれは何が知りたい?
「十年後もおれは生業を楽しんでいるか?」
そこかな。だが、待てよ・・・

 

「おまえは楽しんでいる」と云われたら、きっとおれは手を抜いてしまう。
「おまえは楽しんでない」と云われたら、
未来を改善すべく必死こき過ぎてフライングでくたばりそーだ。
「おまえはすでに死んでいる」と云われたら、
ある種安堵して余生に打ち込めるだろうが、
物語の結末が透けてしまうのが興冷めかもしれない。

 

・・・いずれにしてもビミョーな難点があるし、
大体からしてそんなこと知る必要あんのか?
で結局、おれは神にこう云う。

 

「今回パスとゆーことで」

 

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2014年11月18日(火)その1915◆相性のよい人

 

「控え目ながらも頼りになる、全体の調和を大切にするタイプ」

 

老若男女を問わず、こうしたタイプの呑み友とか仲良しさんが多い。
私は正反対のタイプ(※注1)なので、
お互いにギブ&テイクしやすい相性なのかもしれない。

 

(※注1)
「傲慢ながらも頼りにならず、全体の調和をかき乱すタイプ」

 

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2014年11月17日(月)その1914◆箴言

 

一生懸命だと知恵が出る。
中途半端だと愚痴が出る。
いい加減だと云い訳が出る。

 

信玄の生態ウォッチングは現代でも冴えまくる。
ジェーもおれも、毎日三回思い出す必要がある。

 

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2014年11月16日(日)その1913◆タカミツ翔んだ!

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石塚隆充の存在感が日生劇場いっぱいに轟いた。
重く鋭く安定するカンテは、ロルカ・ワールドの核心を貫いた。
フラメンコの底力は、面白いくらいにオペラの世界でも実証された。

きのう土曜、日生劇場オペラ『ロルカ/アイナダマール』。
音楽関係者が多数詰めかけた満員の観客席はこうした想いを共有し、
また、ギター智詠やパーカッション朱雀はるならフラメンコを代表したミュージシャンも、
一流オケに溶け込みながら、その深く確かな技の快感を存分に発揮した。

「リハーサルを重ねるほどに、異なる世界と融合しながら
 凄味を増してくるフラメンコに感動しました」

終演後のロビー、制作広報の担当美女は眼をキラキラさせながら隆充らをこう讃え、
思わず私たちは固い握手を交わした。
まさかここまでやってくれるとは!
タカミツとフラメンコ共演陣は、日本におけるフラメンコのステータスと
未来ポテンシャルを飛躍的に前進させた。


しゃちょ日記バックナンバー/2014年11月①

2014年11月01日 | しゃちょ日記

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2014年11月15日(土)その1912◆迷わず買いっ!

きのうは、赤坂見附のフラメンコ衣裳ソニアジョーンズの移転リニューアルのパーティー。

新店舗は旧店舗から歩いて1分なんだが、
迷子になったところをバイラオーラ小林理香ちゃんに救ってもらった。
到着すると会場は美女たちの群れ。すぐに村松夫妻に乾杯の音頭を頼まれたが、
音頭をとるタイミングをまつがえた(汗)。
おまけにオレだけフライングで呑んじゃってるし。

そのあとすぐ、まさかの今枝友加ミニライヴで、こりゃ大変な儲けもんだった。
明日発売の彼女のファーストCDも無事出来あがっていた。
すでに聴いたがこりゃ凄いよ、迷わず買いだっ!

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2014年11月14日(金)その1911◆翔べ、タカミツ!

あのタカミツ(石塚隆充)がオペラ出演!
          
あす土曜は日生劇場、待ちに待ったガルシア・ロルカ『アイナダマール』。
タカミツ最新CDの日本語タンゴスや津軽恋女(ルンバ)なんかは、
アイポッドに入れて毎日のように聴いてる。
オール・ロルカのプレコンサート(写真)ではカマロンなんかも歌いまくったが、
今年もっとも楽しんだ爆裂ライヴだったな。

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一般音楽シーンでいつブレイクしても当ったり前の底力を彼は持っている。
そこにタカミツを送り出したい。
フラメンコ全体にも灯りが射すからね。
そういうウィンウィンな循環には、アフィシオナードの応援がもうちょい必要だ。

さてこのロルカ公演、フラメンコからはギターの智詠とフェルミン・ケロル、
カホンの朱雀ハルナが出演。
オケは広上淳一指揮(←うまいよこの人)読売日本交響楽団。       
終演後は懐かしい戦友と呑み会。   

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2014年11月14日(金)その1910◆二極同居

わずか一音で聴き手のハートを震わせる。
ロマンティックを極めるその音色は、セゴビアトーンと呼ばれた。

クラシックギターの巨匠アンドレス・セゴビアはそういう怪物だった。
すべての録音を収集し、晩年の来日公演(新宿文化大)にも駆けつけた。
作曲者や作品の意図はまるで無視のセゴビア節。
コンパスなんかもしっちゃかめっちゃかで、ただし、
その歌心と音色に人々を感動させる強烈な魅力がある。
ああ、あのポルタメントの甘い官能!

そういう個人芸名人芸の世界の他方に原善伸という、
普遍性に充ちたギタリストがいる。
皆がセゴビアを追う中、原は音楽の源流に挑んだ。
ドイツの国立音大を主席で卒業した彼は、
音楽の本質と構造を徹底的に解明した上で、己の生命力を吹き込む。
作曲者や作品が望むヴィジョンはものの見事に反映され、
その音楽は過去から未来を展望しながら輝かしい生命力を帯びる。

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〝鬼平〟の池波正太郎なら迷わずセゴビアを選び、
〝この国のかたち〟の司馬遼太郎なら迷わず原善伸を選ぶだろう。
伝承不可能な名人芸にほとんど興味を持たなかった司馬遼太郎は、
未来に伝承できるであろう精密なシステムと普遍性を愛した。
永らく池波派だった私が、司馬派にも所属したきっかけは、
原善伸の弾く〝アルハンブラ〟だった。
そのギターはスペイン的でなく地球的だった。

これらラッキーな相乗体験は、自分のライフワークに選んだ
フラメンコの出版事業に大きな影響を与えたものと想われる。
そのわりに大した仕事もしてないのは実に不思議でありまた残念でもあるが、
少なくとも人生の楽しみ方だけは格段に上達したものと想われる。

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2014年11月14日(木)その1909◆ショーシャンク

『ショーシャンクの空に』。

フラメンコに惹かれる人の多くは、この映画も好きなんじゃなかろうか。
ついでに云うと、私を捨てた女たちもみんなこの映画が好きだった、、、
うっ、やっぱり云うんじゃなかった。

取材対象に座右の銘、血液型、愛読書、好きな映画などを
お聞きするのは私のルーティンなんだが、
ついこないだ信念のリサイタルを成就した土井まさりさんも、
やはりショーシャンクを一番に挙げた。

あのラスト近くの雨のシーン。
ああいうヴィジョンを自力で目指せるならば、
人はどうやら生きていける。
あの〝シジフォスの神話〟の如く、
その達成は実は次なるショーシャンクの始まりなわけだが、
それらを飽きずに繰り返すのが人間の宿命かつ希望であり、
神の意図がどうあろうと、また、冒険の結果がどうあろうと、
淡々とこれを楽しむことこそ暮らしの中の最良の知恵なのだと想う。

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だからと云って、雨の日の社長室(=屋上)で、
このポーズで一服する最近のマイブームを100%自己肯定するわけでは決してない。   

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2014年11月13日(水)その1908◆本能的教養

「教養」

キザでアホな夢。
近年はそんなイメージなのか、ほとんど死語になっている。

だけど、昔も今も、私はそれが好きだな。
鴎外・漱石なんかの腰の入った教養は人生の座標軸となり得るし、
それと、フラメンコは〝本能的教養〟だと想えるから。
とりわけ、行動と直結するこの人の教養の普遍性。

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2014年11月12日(火)その1907◆カード遊び

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「カード遊びをする二人の男たち」
   
年齢とともに、その好ましい落ち着きが募りくるセザンヌ。
何ともないようでいて、この世を肯定するような深く懐かしい響きがある。

何かがマイナスされている。
その引き算は例えば、伝統的な生々しい遠近法。
さらに、時の激動を嫌うスタンスは確かに視える。

ところでこの二人の老紳士は、どんなカード遊びをしているのだろうか。
男性オンリーなので、〝ばば抜き〟ではないかと推測できる。

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2014年11月11日(月)その1906◆未来にリーチ

いわゆる〝流行〟が苦手なのは、生来私がヒネクレ者だからだろう。
つまり、無理やり周囲の流行りに合わせるのがちょっとしんどい。

また近ごろは、ある時期の特定の〝古典〟に執着することも少なくなってきた。
最近の興味はどーやら、現在・過去・未来を自由に行き来するものに向いているらしい。

現在と過去を充たしながら未来にリーチする何か?           
まあ、そんな意味ではパセオも捨てたもんじゃねーかも。

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次号(11/20発売)のウリは、小倉編集長渾身、
今枝友加と吉田久美子の若手ビッグ対談。
表紙と列伝はパストーラ・ガルバン。
本田恵美(しゃちょ対談)もガッツリおもしれーぞ。
ラストにしゃちょ日記読んでガッカリしてくれ。

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2014年11月10日(月)その1905◆仲よき

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いろいろあるが、ま、基本これだわな。

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2014年11月10日(月)その1904◆しておく

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うーん、84歳にしてこのしなやかさ!

「しておく」っていう、現在進行形的な祈りが好きだ。

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2014年11月10日(月)その1903◆運命

「運命はその人の性格の中にある」 (芥川龍之介)

うーん、いまさら知っても手遅れなのが惜しい!

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2014年11月9日(日)その1902◆淡きがゆえに

「初フラメンコがカルメン・アマジャ」みたいなもので、
その原体験があまりに凄すぎると、
その呪縛から抜け出すことはなかなかに難しい。

のだめ以来、ずいぶん知られるようになったラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。
高校時代にハマって、以来そのLPやCDを買い漁り続けたが、
最初に買ったモノラル廉価盤LPがリヒテルの超名盤だったので、
なかなかそれを超えてくれるものが出なくて困った。

ロマンティックなそのラフマニノフが古い洋画に使われていることを知り、
名画座に足を運んだのは二十代半ばのころ。
『逢びき』(1945年イギリス映画)という、
結ばれることのない双方既婚者同士の淡い純愛物語。
日本の『曽根崎心中』に比べればずいぶんと品のいいお話だが、
その淡きがゆえに〝ものの哀れ〟が痛く濃厚な点は共通している。

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同じ頃、惚れに惚れ抜いた憧れの女性の暮らす家を観に行ったことがある。
そんなことは後にも先にも一度っきりの愚行だが、
それはそれは噂通りの豪邸だった。
おまけに彼女は既婚者であり、また小さなお子さんもいた。
当然片想いだったが、敢えて観に行ったことで、半分くらい吹っ切れた気がした。
永い歳月を経ればそれもまた美しい想い出であり、
そんな回想に寄り添うようなラフマニノフの二番、
殊にその第二楽章アダージョの哀切なメロディが
ドタバタに過ぎた青春に一点の潤いをもたらす。

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2014年11月9日(日)その1901◆時代

「セフレになってもらえませんか?」

家のななめ前、地元行きつけ女将トモコ(独身/自称・山口百恵)が、
イチゲン客にこう口説かれたという。
真面目そうで、そこそこイイ男の〝変態紳士〟風なのだが、
話がつまらないのでピンと来ないのだという。
話とセックスは別物だろうと、彼女の幼なじみの超美女アキコがけしかける。
そのとーり、やってみなけりゃ分からん。

で、やったのか?と、腕も心も達者な女将に問うと、
いまだペンディング中なのだと云う。
な、なんだと、この優柔不断ががが、き、貴様それでも軍人かあ!
と叱る筋合いでもないし、またトモコは軍人さんでもないので、
やさしく穏やかに率直に、こう私は感想を述べた。

「ふっ、見損なったぜトモコ」

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2014年11月9日(日)その1900◆瞬間マニア

「人生は呼吸の数で決まるのではなく、
 どれだけハッとする瞬間があったかで決まる」

そんな瞬間を感じたいがために、今の商売を選んだ。
布石屋的で飽きっぽい私が、それでも31年続いてるのは、
フラメンコには常にそんなシーンが充ち満ちているからだ。

最初にそういう手応えの感触を知ったのは、
中学~高校にかけて熱中した将棋だ。
プロにはなれなかったが、「ハッとする瞬間」をつかまえるための方法論は
〝きびしい勝負〟という日々のトレーニングを通じて、
多少は身に着いたかもしれない。

今日は久々に、日曜午前のNHK将棋トーナメント観戦。
スポンサー(主に新聞社)の経営危機と、
コンピューター将棋の急激な追い上げというダブルパンチを喰らう将棋界だが、
志の高い極めて優れた頭脳集団ゆえ、
未来につなげる〝次の一手〟をきっと発見してくれることだろう。

午後からは仕事。山のような実務が待ち受けているが、
自分を必要としてくれるパセオがある限りは、
フラメンコの未来につなげる〝次の一手〟の発見に熱中できそうな気もする。

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2014年11月8日(土)その1899◆〝あな〟が好き

 山のあなたの空遠く
 幸い住むと人のいふ。
 ああ、われ人と尋めゆきて、
 涙さしぐみ、帰りきぬ。
 山のあなたになほ遠く
 幸い住むと人のいふ。
                (カール・ブッセ/上田敏訳)
                  
諦観と受け取ることもできるし、
また『青い鳥』的解釈も可能なところが、この詩の人気の理由だろう。
歳を重ねるごとに、その両面性のそれぞれの意味を噛み締めることになる。

ところでこの詩人ブッセは、本国ドイツよりも日本のほうがはるかに有名。
その理由は、な、なんと日本の落語家にある。

「山のあな、あな・・あなた、もう寝ましょうよ」と冒頭の一節をパロる、
二代目三遊亭歌奴(後の三代目三遊亭圓歌)の爆笑落語『授業中(山のあな)』は
1960年代に一世を風靡した。
「圓歌は〝あな〟で落語協会会長になった」と、鈴々舎馬風は断言する。

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2014年11月7日(金)その1898◆癒しの正体

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「実は気性の烈しい人だったと想うんだ」

物事の本質を瞬時に見抜き、誰に対しても穏やかに優しかった本間先生を、
入魂のフラメンコギターで知られる三澤勝弘さんはある時、意外なことにこう評した。

まだまだ渡航が困難だった半世紀も昔、サブロー師匠は単身スペインに乗り込んだ。
やがてマドリーのタブラオに出演する師匠(その頃の写真)は、
云わばフラメンコ修業のパイオニアである。

三澤さんの分析はおそらく正しい。
そして、その〝烈しさ〟を〝癒し〟に変換する覚悟と実践。
私の中に生き続ける師匠はつまり、
ダメ過ぎる弟子に、さり気なくそれを教え続けている。

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2014年11月6日(木)その1897◆師を偲ぶカラオケ

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「こんどの木曜会はカラオケ行こーよ。
 本間(サブロー)先生のレパートリーをみんなで歌おう!」
              
遠征呑み会からの家路、湘南ライナーのボックス席で、
あのチョー人格者バイラオーラ鈴木眞澄がいきなり吠える。

照明の井上巨匠も、田代の淳ちゃんも、このオレも、
みんなイッキに引いたが・・・
今日がその日だフォー! ( ̄▽ ̄)

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2014年11月5日(水)その1896◆この世の不思議

〝この世の不思議〟を肴に、ヒデノリ、サトル、ツトムらとわいわい呑む。

霊的体験、空飛ぶ円盤、ユダヤ陰謀説・・・
あーでもねえ、こーでもねえと不毛な議論は続く。
そのとき、地元最年長の通称・大将がこう叫び、
一同唖然としながらも拍手喝采の嵐!

「おめーらな、何が不思議かって、
 まXこにチXポ入れるだけで人間が出来ちゃう以上の不思議はねーぞ!」

ぷっ。だがこりゃ、単なる霜ネタではない。
柄にもなく大将が説きたかったのは、この世の最大の不思議、
それは実に〝愛〟なのであった!

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2014年11月5日(水)その1895◆両刀使い

「男とも女とも、私はやりたいな」
「へえ~、なんで?」
「だって、行き交う人がみんなその対象になるのって、すごい楽しいじゃないですか」
「ああ、そりゃちょっと忙しいが、偉いこっちゃ」
「でしょ、人類愛ですよ、人類愛!」
                
会話の主人公は、一応あのT大出身の女子である。
以来私は、人類平和にきっと貢献するであろう、
いわゆる両刀使いを評価することになった。
いやむしろ、女性を偏好しすぎる自分を恥じた。
それからしばらくして、トホホにフラれる夢をみた。

「わたし可愛い彼女が出来たので、あなたとはお別れです」

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2014年11月4日(火)その1894◆土の音

ラストのソレアは圧巻だった。
真摯に積み上げ続けた彼女のめざす世界がくっきりと視えた。

昨晩の土井まさりリサイタルは超満員の大盛況。

今枝友加がプレゼント受付係をやっていた。
吉田久美子が開演の挨拶をやっていた。
森田志保と新企画の詰めを話した。
右隣りにはパセオ忘備録を執筆する白井盛雄。
大沼由紀が開演直前にやって来て左隣りに着席した。
右横の私に気づいた瞬間、明らかに引いた彼女に追い討ちを掛ける。

「由紀ちゃん、ここはアベックシートなんだぜ」
「エッー、手をつながないと座れないのっ?」

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2014年11月3日(月)その1893◆表裏一体

彼は信念の人です。
(単なる頑固者じゃないっすか)

理想は高く、男同士の友情にも厚い。
(世間知らずで、女にはモテない)

趣味は、落語・将棋・散歩と実に渋い。
(あわわっ、こりゃ引くわ)

こんないい男があなたの目の前にいる!
(い、いらないっ!)

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2014年11月3日(月)その1892◆狩人

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『雪中の狩人』

農民画家ブリューゲル(ベルギー/1525~1569年)の代表的油彩。
素朴な田園風景に、人間の哀歓を浮き彫りにする構図が素晴らしい。
潔いバランスの暖かな遠近法は、会話や文章にもそのまま活用できそうだ。

40歳のブリューゲルが名作『雪中の狩人』を描いたのは1565年。
この年スペインはグアム島、マリアナ諸島、ミンダナオ島を植民地化。
日本では松永久秀と三好三人衆が足利義輝を滅ぼし、
足利義栄が室町幕府14代将軍に就いたのが1565年。
ちなみに、日本を代表する狩人が
〝あずさ2号〟を歌ったのは1977年だと云われている。

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2014年11月2日(日)その1891◆秋のセピア

好ましい秋を存分に味わう散策から戻り、
晩メシを準備しひとっ風呂浴びてのスコッチ&ソーダ。
ふと本棚の端にある古いノートをめくって苦笑。

若いころに感動してガッツリ摂取したつもりの偉人たちの名言の数々が、
意外なことに、歳とともに色あせて来ていることに気づく。

この先も〝普遍性〟はもっとも興味あるテーマであろうことに違いないが、
やはり人は人、我は我なのだと想う。
永い歳月を過ごした経験は、ほんとうに好ましい景色や人や物事などを、
改めて率直な心で選択する。

生きてる限り何事にも成就はなく、
ただシンプルで素敵なプロセスそのものを
死ぬまで追い続けたい自分が視えてくる。

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2014年11月2日(日)その1890◆丸もうけ

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そこそこの天気。

午前中は原稿整理。
午後からはこんなイメージ(シスレー)でのんびり散策。
心穏やかにフランスバロック、あるいはイギリス近代を聴きたい。
ド・ヴィゼ、クープラン、ディーリアスあたり。

帰路はおそらく、私鉄沿線センチメンタルジャーニー。
夜は家で熱燗ちゃんこだな。

往く秋をサクッと味わう、丸もうけの一日。

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2014年11月1日(土)その1889◆失われた夢

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あのベートーヴェンと同時代に活躍した、
愛国と神秘の画家フリードリヒ(1774~ 1840年)はドイツ浪漫派の巨匠だが、
この『失われた夢』は、それとはまるで別人のフリードリヒ(1803~1887年)の代表作。

ハプスブルグ家の宮廷画家だった彼とは誕生日が同じなので、
何となく縁を感じて興味を持った。
殊に美しい女性の一瞬の哀しみを捉えるこの肖像画は印象深い。

気のせいかもしれないが、
初対面の女性にこんな表情をされることがある。
気のせいかもしれないが、
『失われた夢』(=失望)というタイトルにもちょっと引っかかる。

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2014年11月1日(土)その1888◆ご機嫌よう

機嫌よく暮らすこと。
結局、そこに尽きるな。

うっかりそれを忘れると、
何かと面倒が起きるから。

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2014年11月1日(土)その1887◆若旦那

「君はまるでヨーロッパ人の如くだな」

音楽の世界では知られたそのベテラン編集者は、
半生レバ塩が絶妙な下落合の焼き鳥屋で冷や酒片手に、
三十半ばの私をこう評した。
是々非々ではっきりモノ云う私を軽く持ち上げながらも、
協調性に問題のある私の言動に苦言を呈してくれていることに、
しばらくしてから気づいた当時の私も相当にドンくさい。

タダ酒とセットで有益なアドバイスを振る舞ってくれる、
こんなふうに柔らかで味のいい先輩たちが、かつては周囲にたくさん居た。
けれどもずっと私はボヘミアンな立ち位置でいたから、
実際にそれら良薬がトホホなこの身に沁み始めたのは
五十の坂に差しかかった頃だった。

季節はめぐり、そういう先輩役の順番がとっくにこちらに回って来ているわけだが、
相変わらず落語ワールドの若旦那気分が抜けない。
場をにぎやかすことだけは達者だが、
即効性のある良薬を振る舞うことも出来ず、
ただ若いもんと一緒になって下らねえ霜ネタに興じている。(T_T)

だけどな、もうあとちょっくらだけ待ってくんな、
オレのヨタ話ってのは漢方薬みたいなもんでさ、
オレが死んだあとでじわじわっと効いてくるんだよ。(大うそ)

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