フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2018年01月

2018年01月01日 | しゃちょ日記

 

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2017年1月31日(水)その3120◆万難を排し

銀行回り、パセオ3月号最終校正、支払調書の作成配送、
原稿整理2本、原稿執筆2本と、晦日は何かと忙しい。
本日『相棒』後編、万難を排し万全の体制でこれに臨む!

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2017年1月29日(月)その3119◆寝床

長々と出口の視えない退屈極まりないスピーチに、
パーティ設営側も参加者も全員ハラワタが煮えくりかえっている。
校長先生の炎天下の役に立たねえ訓話やら結婚式の拷問的式次第などを含めれば、
誰だって百回や二百回はそんな目に遭っている。
されど人は誰しも、実もなく面白みもないダレ話など正直御免こうむりたいものだ。
また、そういう悪趣味な時間超過によって、
その後に準備された設営側の汗と苦心の工夫は一挙に破壊される。

語られるご本人さまだけがご満悦の様子は、
地位を笠に着て罪なき庶民に痛すぎる独演会を拝聴させる、
あの古典落語の大傑作『寝床』の拷問シーンそのものである。
古今東西、鬱屈した自己顕示欲の暴走というのは
大小さまざまな事件を巻き起こしてきた。
昔も今もスピーチは三分以内という粋な良識。
誰でも知ってるそういう当たり前の相互マナーを意に介さない御仁の厚顔には、
被害者全員でパイやらピザなどを思いきり投げつけるのが
世の中の健全なバランスというものだろう。

まあしかし、加害者はご高齢であられることも多いし、
それで怪我でもされた日にゃ大騒動となるから、
目には目を!ではなく、もっと穏やかに抗議する必要がある。
例えば、囲碁・将棋のような秒読みシステムの導入はどうか?
スピーチの持ち時間は常識的に3分、残り30秒前になったら
記録係が秒を読み始める(なんなら慣れてる私がやってもいい)。
ところがどっこい大先生、時間切れになってもまだまだ喋り続けるだろうから、
次なる一手は送迎係の出番だ。
万難を排し語り続ける大先生を高価な壊れものでも扱うように
若手力持ち四人がかりで台車に乗せ、
会場となりの来賓用カラオケマイク付き豪華控室にご案内する。
「先生こちらでお気のすむまでお語りください」と思いやりを込め
明るく前向きな忖度を胸に、外側からしっかり鍵をかける。

何だかますます『寝床』みたいになってきたが、
こんな陽気な逆襲ならば被害者全員ハラを抱えて笑えるし、
その後は安心して運営陣が工夫を凝らしたパーティの段取りを楽しめるから、
次回の参加者が増えることだけは間違いない。
また逆に開き直って、そういうお笑いアトラクションとして
最初からプログラムに組み込む手(所要時間3分半)は相当に有力だ。
まあ誰しも欠陥はあるし、
これはあくまで自戒のための冷や汗ものの是々非々論。
           
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2017年1月28日(日)その3118◆留守番のご褒美

「2020年、2020人で踊る大セビジャーナス」
きのう日曜は早朝から編集整理と原稿書き。
午後から中野サンプラザで大セビジャーナスの決起大集会を取材。
全国からそうそうたるメンバーが集結し、そ
の実現に向けギネスものの巨大プロジェクトが豪快にスタートした。
南口の珈琲ロードで記事をまとめ、
17時より同じサンプラでフラメンコ協会恒例の新年会。
前年の新人公演奨励賞の受賞式で、ようやくフラメンコ界の新年が始まる。
ベテラン陣もみんな元気で何よりだ。
その初司会を務めた連れ合いが何も食えなかったというので、
帰り道の安旨寿司で打ち上げ。独り留守番を務めたジェーは、
土産の厚焼き卵でさくっと機嫌を直した。

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2017年1月28日(日)その3117◆知的好奇心

この正月からそれが毎晩のルーティンになった。
藤井聡太四段の棋譜を一局だけ並べる。
就寝前の小一時間、対戦相手の側に座り、彼の指し手とじっくり対話する。

上達を望んでいるのか?

いや、実戦から退き45年、筋ワルの老境アマチュア六段に
そういう良質な野心はない。
多少なりとも知識のあるジャンルを足掛かりに、
AIおよびAI世代の思考方法を探る試行錯誤をただ飽きずに繰り返している。

17世紀から徳川政権のサポートを受けつつ積み上げられてきた、
人知の結晶とも云うべき膨大な将棋定跡および手筋の数々。
「これにて先手良し」的な神話に現代科学のメスが入り、
がらがら音をたてながら伝統が崩壊する様子には、
現代人としてのある種の快感があるが、
その美性・善性まで同時に失なってしまう寂しさは正直やるせない。
もう、あの日には帰れないのである。

藤井さんの指し手には、真理探求を軸に、
そうした諸々を具体的に現場検証するかのような、
時おり鋭い痛みを伴なう未知なる覚醒がある。
まるでイスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナの舞台に
ガチンコ対峙するかのような興奮と落胆と希望がある。
45年ぶりの知的好奇心が、
この先の仕事や暮らしに役立つかどうかは分からない。
ただし、それが〝フラメンコの未来〟に無縁であるとは感じられない。

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2017年1月27日(土)その3116◆「許しませんよっ!」

早起きして原稿到着分の編集整理を終え、家に戻りジェーと
遅めの昼飯とドラマ『相棒』にかぶりついてると玄関チャイムが鳴る。
重要なシーンだったが、宅急便を待たせちゃいかんと急ぎドアを開くと、
ひと目アレだった。

それまでの人生の来し方がすべて現れる十秒という時間だけ、
濁った両眼の勧誘者のプレゼンを聴き、折悪く水谷右京警部が憑依中の私は、
怪しい来訪者に吠えまくるジェーの正義を背中に受けつつ、
よしゃあいいのにこう云った。

「あなた方はご自分の心の闇に他者を巻き込むことで、
ご自分を救おうとしておられる。
ご自分の魂はご自分で救済すべきではありませんか?
いたずらに他者の大切なひと時を奪うなんて、、、
決して僕は許しませんよっ!!!」

柄にもないことをやり過ぎだぞと自分を戒めながら、
束の間の平穏を唐突に侵され怒りまくるジェーをなだめつつ、
かの二人組が相棒ファンでないことを彼らの神に祈った。

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2017年1月27日(土)その3115◆もやし野郎

光栄にも女子会(ほぼ円熟系)からお呼びがかかり、
タダでたらふく呑ませるから外部アドバイザーをやれと依頼(脅迫)される。

「エラソーで頼りないモヤシ野郎は絶滅せよ」
     
最長二時間のお約束で参加した当懇親会における、
それが第一線で活躍する彼女たちの不満とストレスと糾弾の結論であり、
現代の残忍極まりない犯罪の多くもソレ系男子の仕業だと断定し、
客観的同意を私に求める。
つまり私は外部アドバイザーなどではなく、
吊るし上げの格好のリアル素材だったことに手遅れながら気づく。
タダより高いものはないのである。

窮地に追い込まれつつも、ひき肉餡かけもやしラーメンが大好きな私は、
もやしと俺とを一緒にすんな、もやしにはもやしなりの重要な役割
(麺とか肉とか他者とかに逆に勇気を与える)があるんだ、
それが調和を夢みる全体バランスってもんだと熱弁をふるい、
争点をボカし局面を複雑化させる姑息な手筋によって、
辛うじて集団パワハラから逃れたのであった。
しかしながら、自立する女性たちが世のもやし野郎を嫌う気持ちは実はよくわかる。
なぜなら私だって頼りない無責任もやし姫がちょっと苦手だから。
           
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2017年1月26日(金)その3114◆若い理由

「自動車の安定じゃなく自転車の安定を」

老いたがゆえの鑑賞眼(=老眼)で周囲を見渡せば、
転ぶリスクを背負って漕ぎ続ける人はたしかに、
彼(彼女)ならではの魅力を失うことがない。
つまり、チャレンジには付きものの〝いい冷や汗〟を
かき続けているから呆けてるヒマがないし、
リスクに対する真剣さがゆえの艶がある。
還暦過ぎの舞踊家たちが十も二十も若い主たる理由はそこだ。
なるほど、そーゆーことだったか、
・・・ったく老いも若きも、楽しいことは楽ではないねえ。

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2017年1月25日(木)その3113◆運動不足

「家と会社の行き帰りで10分、歩くのはそんだけの日もあるなあ」
「そりゃ運動不足だな」
「あ、でも、区切りのたんびに屋上で一服するから、けっこう階段歩くな」

「余計悪い、タバコやめてマラソンやれよ、お前全校三位だったじゃん」
私を除く六人のうち三人が口をそろえてこう云う。
みな元ヘビースモーカーの現役マラソンマンである。
一方、現役スモーカーである残りの三人はこう断言した。

「階段いいじゃん、タバコやめたら運動不足でお前死ぬぞ」

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2017年1月24日(水)その3112◆ソコロフの憧憬

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ソコロフこそは世界一のピアニスト。
         
そう主張するピアノファンの気持ちは、例えば彼の弾く
ショパンの協奏曲(第一番)を聴くと、いとも簡単にわかってしまう。
そのあまりの雄大さに畏怖さえをも感じるのだが、
それは例えば今話題の藤井四段の棋風にも通じるところもあって、
しかし私はそうした完全性をあまり好まないという本音が羞恥となって、
健常なる音楽愛好家たちとの対話を曇らせるのである。

偉大なる崇高なるロシアン・ピアニズム。
ソコロフのバッハ(パルティータ第二番)を聴きながらこれを書いているのだが、
好みから云えば圧倒的に愛着の深いシフの演奏(二度目の録音)と
ついつい比較してしまう。
ソコロフの淡々と流れる巨大さに、寒々とした冥さを感じてしまう
自分のみみっちい器を照らし出されるようで、いまひとつ踏み込めないでいる。

とは云え、グレゴリー・ソコロフ(1950年~)は
現代の混沌とその解決のヒントを実に大胆繊細に描き出す。
深々とするあの重低音からは未知なる領域からの普遍と救いが聞こえてくるし、
その中高音は人間の業や欲望を否定しない。
文学の領域では難しいかもしれない生理感覚で描き出される憧憬にひれ伏しながらも、
その完璧な即物性にちょっとだけカチンと来ている。
うっ、なんか昭和のガキだぞおれ。

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2017年1月24日(水)その3111◆フライング情報

明日木曜晩、高円寺エスペランサ20時スタート
エル・プラテアオのカンテソロライヴ。
新春を飾る本格プログラムにどっきり。
究極のパコに出会う予感!         

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1. TIENTOS
2. GRANAINA
3. SOLEA DE TRIANA Y APOLA
4. ABANDOLAOS
5. PREGON Y SEGUIRILLA
6. CUPLES POR BULERIAS
7. CANTIÑAS Y MIRABRAS

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2017年1月23日(火)その3110◆老境

思わぬ臨時収入にニヤリ。
何か買おうと考えるが・・・欲しいモノがひとつもない。
ひゃあ~~~、老境とはこうしたものなのか。
・・・まあええわ、モノよりコトとゆーことで。

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2017年1月22日(月)その3109◆真っ赤なバスと透明な青空

海岸線の道をひとり歩いている。
ほとんど波のない静謐な海。
夕暮れにまでには時間がありそうだ。

百メーターほど先に十名ほどの集団が見える。
時おりふり返り、手を振る者が何人かいる。
中学か高校の仲間のようだが、はっきりとは視えない。

追いつこうとするが、疲れているのか歩は遅い。
ふと見やれば、ちょっと先にバス停がある。
ベンチに腰かけバスを待つことにする。

ここは何処だろう? 後方を見渡すと、穏やかな一面の砂丘。
その背景に山や街は見えない。
穏やかすぎて寂しい、淡い水彩画のような風景。

海の方向に振り返ると、目前にあったはずの海が遠ざかっている。
道の右手から真っ赤なバスが走ってくる。
よし、あれに乗ろう。

停留所に間に合うかどうかは微妙だ。      
砂丘から海に向かって、なぜか私は自転車を漕いでいる。
必死にペダルを漕ぐのだが、海は遠ざかる一方ではないか。

その時、真っ赤なバスが方向を変え、
猛スピードで私をめざし突っ走ってくる。
私もバスめがけて突っ走る。

この忙しい中、何となく闘牛をイメージしている。
正面衝突寸前でバスは消えるが、うなるような走行音は残っている。
恐怖も安堵もなく、仰向けにぶっ倒れて仰ぐ透明な青空が奇妙に美しい。

そこでおしまい。
先週見た路面電車の夢よりスリルがあったが、
必死でチャリンコを漕いだぶんだけ疲れた。

途中から半覚醒であったような気もする。
真っ赤なバスと透明な青空が象徴するものは何か。
いろんな夢判断が可能だろうが、観たままをメモることに留める。

明朝は郵便局・銀行に立ち寄り、某賞の選考会議で喰っ喋り、
各種役所を駆けまわり、中野南口・珈琲ロードで文春・新潮を読み、
午後の自由時間にどっしり本業と向き合う段取り。

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2017年1月21日(日)その3108◆熱望

ああ、このお方のカンテが聴きたい!

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2017年1月20日(土)その3107◆おまじない

「マイナス的なことを決して云わない」
娘さんは大好きな父親をそう評した。

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夜の人気ニュース番組に生出演した将棋の羽生善治永世七冠。
強く優しく愛され続ける自然体なキャラを、改めて凄いものだと想う。
マイナス的なことを云わない理由は、
「自分の言葉は自分という人間を創るものだから」。
なるほど、愚痴も云い訳も悪口も、デビュー当時から決して口に出さない人だ。
将棋の発展深化に全身全霊で集中するあまり、
そんな馬鹿げた行為に興ずるヒマはなし、という側面も少しはあるのだと想う。
私に云える筋合いではないが、人生の楽しみ方を、きっと彼は熟知している。

「リスクを引き受ける」
今夜の生出演もそうだが、近ごろの羽生さんは必ずこうコメントする。
その深く厳しく楽しい意味合いに反応できるうちは、
きっと自分も何とかなるだろうと、効果不明のおまじないを唱えてみる。

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2017年1月19日(金)その3106◆博士の愛した数式

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『博士の愛した数式』。

寺尾聡さん主演の映画で知ったが、
第一回本屋大賞の受賞作で、原作は小川洋子さん。
芥川賞受賞作を読んでつまずいたが、この作品で再度注目した。
朝湯で読んだ昨日の東京新聞の彼女のエッセイが、二日酔いの胸に突き刺さる。

「こうしたいろいろな場面が、スコット・ロスのチェンバロの音色とともに蘇ってくる。
 そのCDをかけると、聴いているのか、思い出しているのか、
 記憶の中の風景を見つめているのか、よく分からなくなる。
 どれでも同じことだと思えてくる。
 死者と一緒にバッハを聴いていると、口先だけではなく、
 心の底から正直に、死ぬのが怖くなくなる。
 自分が死んだあとの世界にも、バッハは流れる。
 この当たり前の事実が、私を慰めてくれる」

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2017年1月19日(金)その3105◆霊感

80回目を迎えるパセオフラメンコライヴ。
当初目標の100回まであと20回。
そりゃ何をやってもいろいろあるけど、
やってよかったと心底思える納得のシリーズ。

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今回登場はセビージャ出身、おなじみエル・プラテアオ。
この歌い手の語りかけるようなグアヒーラにやられた瞬間、
古典フラメンコの小粋な味わいに目覚めた。
彼の生音ライヴでは予想だにしない霊感と出逢うことも多い。
高円寺エスペランサ、1/25(木)20時スタート。
踊り伴唱とはまた異なる深淵を引っぱり出すパコ。
絶対に後悔させないカンテフラメンコのソロライヴ!

http://www.paseo-flamenco.com/daily/2018/01/2018125.php#006026

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2017年1月18日(木)その3104◆基礎工事

あす金曜晩は、カンテフラメンコ奥の細道。
スペイン人にも敬愛されるカンテ伴奏の名手エンリケ坂井による、
しみじみと心洗われる上質レクチャー。
現代フラメンコに脈々と引き継がれる古典の霊感。
聴いて歌って、歌って聴いて、
そのルーツの風景を味わい尽くす。
   
そのことはバイレ上達に関係あるのか?
いや、関係というより、深層心理の基礎工事に近い。
それは無意識の最深部を育くみ、
揺るぎない動作の品格を高める源泉だと私は想う。

http://www.paseo-flamenco.com/daily/2018/01/626_1.php#005931

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2017年1月17日(水)その3103◆内圧と間

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さあ、今宵はパセオライヴ、
「内圧と間」
あの稲田進の登場である。
必ず何かが起こるっ!
当日予約は17時までによろしくっ!

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2017年1月16日(火)その3102◆社会人への道

なぜか将棋と落語が来てる。
特に将棋は江戸期以来の空前のブームである。
理由はちょと分からんが。
さて、ここにフラメンコとバッハが加わると、
私の趣味道楽は四冠王となる。
すでに半世紀以上、終始沈んだまんま、
あらゆるブームとはまるで無縁なさみしい江戸っ子だっただけに、
正直ちょとうれすい。
一般人・社会人への道は、わりと近いっ!・・のかっ?

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2018年1月15日(月)その3101◆オブリビオン

曲はオブリビオン(忘却)。
暗いガード下でピアソラを弾く老人。
ぎりぎりの演奏だが味わいは深い。
持ち合わせがないので、足元にそっと煙草を置く。

やって来た路面電車にあてもなく乗り込む。
夜明けとともに田園風景が広がる。
神保町らしき街で降り、角の花屋で真っ赤なバラを求める。
入院する彼女を見舞いに行くのだろう。

名前も顔も忘れてしまったから、逢えるかどうかわからない。
すずらん通りのオープンカフェで熱いカフェオレを頼む。
やって来た路面電車にあてもなく乗り込む。
運転手の動作をまねてみる。

線路はやがて単線となり、終点は増上寺近くの砂丘だった。
キーを渡しながら運転手は云う。
「あとはよろしく」
見よう見まねで電車を動かす。

そこでおしまい。
もう少し続きが見たかった久々の長夢。
ちなみに夢はカラーだった。

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2018年1月14日(日)その3100◆タイプ

滔々と流れる大河のように、ぎりぎり一杯まで歌う。
今となっては稀少となったプレイズバッハ。
無伴奏のチェロ一本でここまで歌い切るリスクは大きいが、
それでも全体の構築性がビクともしないところに名人フルニエの真髄がある。
好み以外の何ものでもないが、舞踊家でも俳優でも、
結局このタイプにシビれてしまう傾向に、たった今気づく。

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2018年1月13日(土)その3099◆おつかれ会

この土日はパセオでどっぷり編集・執筆。家でやるのも好きなんだが、
ひと仕事片付けるごとに青空社長室(=屋上)で一服する開放感がたまらなくいい。
さて、今宵は連れ合いと月一のおつかれ会。
彼女はフグ刺しを狙っているが、
ジェーは玉子焼きのお土産を狙っている。
         
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2018年1月12日(金)その3098◆犯人

初めて入る東高円寺の呑み屋。
めちゃ良しライヴの余韻醒めやらず、
ああだこうだと親しい仲間と呑んでると、
なにやら不穏な匂いが漂ってくる。
そのあまりの強烈さに、すでにヘベレケ同士の
フラメンコ談議は余儀なく中断される。

「うっ、こ、これは、くさやの干物っ!」

そのときハッと気づく。
犯人(注文した不届き者)はおれだった。

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2018年1月9日(火)その3097◆妙味

なんて深い味わいなのだろう。
ひゃあ、うめえもんだなあ、惚れぼれするわあ。
おそらくは、技術のための技術ではなく、
あらゆる細部が表現を助けるための技術であるところに深い共感が広がるのだろう。
戦前から戦後にかけ一世を風靡した国民的大歌手・岡晴夫さん
(1916~1970年)の名唱の数々を、近ごろは同じく
フラメンコの大歌手マイレーナ(1909~1983年)や
カラコール(1909~1973年)に浸るような感覚で聴いている。

空前のヒットを飛ばした『憧れのハワイ航路』『啼くな小鳩よ』
『東京の花売娘』などは、カラオケのお仲間だった今はなきフラメンコ界の
マエストロ本間三郎師匠(1936~2013年)の十八番だった。
銀幕スターのような容貌で、若い頃には歌手を志したくらいの粋人だから、
渋くて艶のある、そりゃもう実に見事な歌いっぷりだったよ。

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サブロー師匠の生歌唱を二度と聴けないのがちぎれるほどに寂しいが、
高円寺エスペランサの木曜会で折あるごとに拝聴させてもらったおかげで、
今でもあの味わい深い響きをフィードバックすることが可能だ。
眼前で聴く師匠の歌唱には、生きるヒントが満載だった。
こういう素朴なエピソードが、振り返れば実は
人生の核心のひとつだったりするところに人生の妙味がある。

さて、年とともに〝味わい深さ〟にハマってゆくのは悪い感じではないのだが、
若さゆえの芸についてもみっちり向き合っていたい。
元若者ながら実は後者のほうがはるかに難しいが、
楽しく暮らしてゆくには仕事も私事もここらへんのバランスは極めて重要だ。
そんなこんなの偏りを改善すべく、この正月から毎晩寝る前に一局ずつ、
若いエネルギーに充ち満ちた、あの藤井四段の
ハチャメチャど迫力の棋譜を並べている。

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2018年1月8日(月)その3096◆定跡

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「さてとっ、今宵の金曜ロードショーは何かな?」

大吉の親切な美人さんたちが毎日切り抜きストックしておいてくれる
一週間分の新聞将棋欄を読み終えた私は、
その日の夕刊を手にしながら毎度こう云う。
手相観の鉄人・大吉マスターは焼き鳥を反転させつ定跡通り淡々と応える。

「はい、今日は月曜ですから、金曜ロードショーは無いですね」

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2017年1月7日(日)その3095◆希望

「おいっ、そんな手は破門だ」

1970年代、かなりの筋ワルだった私が、
独創性と信じ本筋にはない手を指すと、
そう師匠にドヤされた時代が懐かしい。

ここ数年は、人工知能の発達によって伝統的な〝本筋〟そのものの
合理性・実利性に鋭くメスの入る時代だ。
永遠にも想えた将棋定跡の神話は崩れつつあり、
既存の価値観に安住していては敗北にまみれるばかり。
そうした傾向は序盤戦術と中盤の戦略に顕著であり、
将棋界も囲碁界も日夜その対応に追われる時勢となった。
困惑するであろう社会の十年・二十年先の現実に先んじ、
彼らは未知の困難に直面しているのである。
ただし、最近の棋譜を観る限りの羽生さんについては、
むしろこうした状況を歓迎しているかのようにも想える。

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2017年1月6日(土)その3094◆最大リスクとは

「年齢を重ねるとリスクを避けがちですが、あえてリスクを取るのも大事。
 まったくリスクを取らないのは最大のリスクになる」

史上初の将棋永世七冠王・羽生善治(47歳)さんは、
同じく史上初の囲碁現役七冠王・井山裕太(28歳)さんに、
かつてこうアドバイスしたという。
わたしたちの次元に当てはめては火傷するだけだが、
なんとも身に染み入る言葉だ。
こたびのお二人の国民栄誉賞授与によって、
たとえ一瞬であっても政治が真実に追いついたことがうれしい。

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2017年1月5日(金)その3093◆案外単純

「男らしいカッコよさ、女らしいカッコよさって、確かにあるのよ。
 それを捨てた時、つまんないおじさんおばさんになっちゃうの」
あの時分、実際カッコよかったその女性は云った。
「しかしさ、そういうのを超えた人間らしいカッコよさってあるだろ」
「ぷっ、馬鹿ね、人って案外単純なのよ」
そんなことあるもんかと思っていたが、
まんざら間違いでもなさそうだと、今は想う。

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2017年1月4日(木)その3092◆繁栄の昭和

パセオから帰ってゴロンと横になってたらウタタ寝したらしい。
散歩をせがむジェーに鼻先をペロペロ舐められ目を覚まし、
まだまだ新年の薫る町内をぐるっと回って先ほど帰宅。
湯上がりにアンドレ・プレヴィンのギター協奏曲(ギターはジョン)を聴いてるが、
ちょっとだけプロコフィエフなところが好き。
いつもはシンプルなバッハなのに、ちょっとユーモラスな管弦楽に、
足元でフシギ顔のジェー。

今日から本格的に仕事始め。
おとつい下準備を蒔いた成果から絶好調で目標クリア。
さて、正月に鳴神響一さんの小説を二冊読んで、すっかり読書づいたようで、
これから筒井康隆さんの新刊『繁栄の昭和』(文春文庫)を読む。
十代後半から記事を書き始めた50歳まで、
毎日一冊ペースで文庫を乱読してた頃を想い出す。
あの時代の猛烈なインプットが現在の文章力にまったく反映されてないところに、
この私の大器晩成の資質が垣間見れる・・てゆーか、
いってえ大器晩成っていつごろなのか?(汗)

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2017年1月3日(水)その3091◆君の名は

「君の名は。」

世代ギャップを覚悟でラストまで観る。
意外にも「コクリコ坂から」のようにどっぷり楽しめた。
身体のガタピシはともかく、気だけはまだ若けーなと想う。

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2017年1月2日(火)その3090◆ユニバーサル

それは本場スペイン仕込みの邦人フラメンコが、
日本人のオリジナリティをフラメンコの根源に違和感なく融合させることで、
フラメンコ全体の広がりと深まりに貢献する美しい情景によく似ている。

鳴神響一『猿島六人殺し』。
ブレイク必至の『脳科学捜査官』につづく正月期待のもう一冊。

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読み始めて間もなく、アガサ・クリスティへのオマージュ作品とわかる。
模倣の仕方が下手なら〝パクリ〟、上手なら〝オマージュ〟である。
三章までは面白さでぐいぐい一気に読ませるが、
四章・五章の深い味わいのオリジナリティが上質のオマージュたらしめる。

鳴神響一のボーダーレスでハイセンスな音楽的教養にはいつも驚かされるが、
彼の中ではやはり異邦人(特に日本人)のフラメンコは
特別な位置付けなのではなかろうかと推測する。
赤丸上昇中の超多忙な作家だからそう簡単には実現しないだろうが、
パセオ本誌(しょちょ対談)でそこらへんに思いきり突っ込みたい衝動に駆られる。

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2017年1月2日(火)その3089◆極楽読書

年末からうずうずしながら封印してた、鳴神響一さんの新刊二冊。

一気に読ませてしまう面白さがこの並み優れた小説家の特性だ。
『脳科学捜査官 真田夏希』は、
おなじみの逢坂剛さん『カディスの赤い星』(1987年直木賞受賞作)を
想起させるスピード感とクオリティ。
サスペンス・エンタとしても抜群だが、プラスアルファの領域に
彼の真摯な美性が大いに発揮される。
発売わずか一週間で増刷だという。
とても興味深い実用性もあって、近いうちに再読復習することはまず間違いない。
そう遠くないうちに映像化されることも予言しておこう。
主役は例えば、そう、綾瀬はるかさんかな。
どうあれ、この作品のシリーズ化は必至!

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2017年1月1日(月)その3088◆わっしょい 

達者になった甥や姪たちとの新年ギャグバトル、
そして〝相棒〟元旦スペシャル。
そこでようやく正月を実感するここ数年の定跡。
明日はちょこっとだけ会社に出て、
あさっては昼から〝相棒祭り〟で盛り上がる。

夢のような三が日だが、四日本格スタートのプロジェクトも待ち遠しい。
ナンボ生きてもやっぱ正月は楽しいわあ。
あっ、そう云や今年はいぬ年だわ、おめえもせいぜい
妙なる浮世のコントラストをさくさくっと楽しむこっちゃ。

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2018年1月1日(月)その3087◆初笑い

お月さまとお日さまと雷さまが、仲よく旅に出かけた。
ある朝、雷さまが目を覚ますと連れのお二人がいない。
こりゃどうしたことかと宿の姐さんに尋ねると、
「あら、お月さまとお日さまなら、朝早くお立ちになられましたよ」
おや、そうかい、雷さまは感慨深げに独りつぶやく。

「ふうっ、月日の経つのは早いものだ」

深読みするほどにおもしろい、
年明けに何かしらのヒントをもたらしてくれそうな、
元旦の笑いにドンピシャの、ほのぼのとする古典小噺。
本年もまた、どうぞよろしくお願いいたします。

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