フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

月とスッポン (パコ・デ・ルシア) [001]

2005年12月06日 | フラメンコ






月とスッポン (パコ・デ・ルシア)


 

     
         
Siroco/熱風』(POLYGRAM1987年)



 平均的な日本人の中には、神と仏は同居している。


 平均をやや下まわる私の中にも、神と仏は同居している。
 ただ、私の神と仏というのはもう少し具体的というか、現存する人物なのである。

 私が神と仰ぐのはご存知のスーパーギタリスト、パコ・デ・ルシアその人だ。
 失敗に明け暮れた高校時代からトータル三十三年間、一度としてブレることなく、彼は私の心の神として存在し続けている。


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 この夏22周年を迎えた月刊パセオフラメンコ。
 その
創刊のきっかけが『パコ・デ・ルシア/アルモライマ』なら、時おり訪れる廃刊の危機からパセオを救ってくれるのも『パコ・デ・ルシア/Siroco(風)』なのである。

 パコ・デ・ルシアのフラメンコギターが発散するファンタジーには、自分の人生を丸ごと賭けてしまいたくなるような「ときめき」がある。
 そのときめきには、聴き手のポテンシャルを引き出し育てるような響きが内包されている。


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 パコ・デ・ルシアを神と仰ぐ場合、その信仰効果は人によってまちまちであるが、私のケースで云うと「人生はいいなと思う」「不幸に鈍感になる」「すぐハラが減る」などである。

 若い頃の私は、パコのアートや生き様に少しでも近づきたくて必死にあがいたものだが、それを実現するには、私個人のレベルがあまりにも緩(ゆる)すぎたようだ。
 ここ十年の私なら、石炭に向かって「ダイヤモンドになってください!」と必死にお願いすることの方が、まだしも実現の可能性が高いことを知っている。

 「月とスッポン」と云うが、この地上から月(パコ)を眺めつづけ憧れつづけるスッポン(私)でありたい、というのが偽らざる心境だ。若き日はともかく現在の私には、パコ・デ・ルシアとのそういう距離感がちょうどいいくらいに感じられる。

 道に迷っては、思わず夜空を見上げるこの私に、その超然たる月は、進むべきだいたいの方向を示してくれる。


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 ご降臨とも云うべきだった、あの2005年夏の来日ライブ。

 ともすれば寄る年波にさらわれそうになる私たち世代は、自らのペースをまったく崩すことのない57歳パコ・デ・ルシアの、愛と勇気とユーモアに充ちたその原色のファンタジーに、目からウロコをぽろぽろ落とすことになる。

   ………神はときめき続けていたのである。

 この月を見失えば、そのときはナベにされちまう時だな、と思った。

 

 

                 
      
アルモライマ』POLYGRAM1976年)

 

 


またしてもパコ・デ・ルシアに勇気をもらって、
とりあえずは一年間を目標に、ブログを始めることにしました。

 「犬も歩けば棒にあたる」を基本コンセプトに、
新春日から「ときどき毎日更新」
ぐらいのペースでチャレンジしてみるつもりです。

今年もほんとうにお世話になりました。
それでは、良いお年をお迎えください!

2005年12月13日
株式会社パセオ 代表取締役 小山 雄二