フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2015年05月②

2015年05月01日 | しゃちょ日記

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2015年5月31日(日)その2141◆豆ごはん

「かんべんしてくれよ、おふくろ」

幼いころには天敵にも思えた豆(グリーンピース)ご飯。
三十を過ぎたころ、色川武大(=阿佐田哲也)さんがグリーンピスご飯を喰う、
そのいかにも旨そうな描写を読んで180度転じ、
今では〝最後の晩餐ベスト3〟にランクインしている。
まあ、こりゃ音楽・舞踊・絵画(もっと云えば人間)なんかでもよく起こる
汎肯定現象で、だからこそこんなおれでもせっせと書く。

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中野五差路うら、家路途中のなじみの八百屋の店先に
旨そうな旬のグリンピーが並んでたので、
早速これを豆ご飯に炊いて喰った(酒たっぷり、塩少々、昆布)。

う、うめえっ!
晩酌もそこそこに、はまぐりの吸い物とカブの浅漬けで結局三杯喰った。
遅くに帰ってこれを喰ったジェーも連れ合いも激賞。

四十代には、池波正太郎・藤沢周平の両巨匠の作中に登場する料理も
片っぱしから試したもんだが、まったく文学ってのは、
根本から食も文化も変えてくれるもんだよなあ。

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2015年5月30日(土)その2140◆原点還り

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どーしたかことか、いつの間にやらフリダシに戻ってる(笑)。

ご存知ヴィヴァルディの『四季』。
イ・ムジチ合奏団、ヴァイオリン独奏は初代コンマスのフェリックス・アーヨ。
世界中で大ヒットした懐かしの名盤で、録音されたのは昭和三十年代の半ば(1959年)。
大らかな明るさを希求するベクトルそのものが逞しい。

最初に聴いたのがこのアーヨで、以来四十数年、
さまざまなアレンジを含む100タイトルほどのレコード・CDを買い漁った。
昨年末の引っ越し大処分で手元に十種ほど残し、
近ごろはアーヨ盤が原点戻りのマイブーム。

屈託のない晴れやかさは、いかにも地中海イタリア風。
弱音も云い訳もない、ゆったりとしたテンポで、どこまでも朗々と歌う。
速度や明暗のコントラストが物足りない、みたいなヤボは云いっこなしで、
この極楽的明るさを縁の下から支える様々なファクターの肝をひたすら味わう。

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2015年5月29日(金)その2139◆国立バレエは先行予約割引で

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この秋来日するスペイン国立バレエ団。

一般層へのフラメンコ普及に大きく貢献してくれる本場の超一流名門舞踊団なので、
こちらもその援護射撃には力が入る。
芸術監督アントニオ・ナハーロによる飛躍的なクオリティ向上が大きかった
前回公演の大盛況を反映して、今回の東京公演は全8回とイケイケの攻勢である。

東京公演は、10/31土(昼夜)、
11/1日、11/3火祝が東京文化会館大ホールの【Aプロ】。
11/20金、11/21土(昼夜)、11/22日が渋谷オーチャードの【Bプロ】。

公演プロデューサーとの熱い協議の末、
フラメンコ界に向けた割引チケットの先行発売が決まった。
一般発売は7/5だが、パセオ読者は6/20から良い席が1,000円割引
(東京公演S席のみ)にて優先購入できる。
詳細はパセオ7月号(6/20発売~国立バレエ特集)とパセオDMにて発表の段取り。

その返礼として、いろんな媒体に国立バレエの推薦文を提供してるのだが、
「小山さんのイチオシを!」というリクエストに応える
ぶっちゃけメッセージはコレ(↓)。

【Aプロ】は、スペイン国立バレエ鑑賞歴が三十年近い私が、
その最高傑作だと感じる『セビリア組曲』(アントニオ・ナハーロ作)や、
お馴染みの舞踊団十八番のラヴェル『ボレロ』を含む鉄板プログラム。
【Bプロ】の『アレント』は鬼才アントニオ・ナハーロ振付による新作。
『サグアン』は国立バレエを代表する若手ダンサー振付による新作。
現在リハーサル中なので作品内容は未確認だが、
その音楽を聴く限りは相当に期待が持てる。
『アレント』にはクラシコ・エスパニョールの技法の魅力を存分に爆発させるであろう
シンフォニックなポテンシャルが充満しているし、
一方の『サグアン』にはフラメンコ組曲の格調高き現代ヴァージョンの理想形に期待が募る。
むろん私は両方に出掛けるが、もしもどちらかに限定されるなら、
ナハーロの鬼才に対する敬意と期待から【Bプロ】を選ぶだろう。
ただし、国立バレエがお初の方もしくはお久しぶりの方には、
やはり鉄板の『ナハーロ~セビリア組曲』『ラヴェル~ボレロ』に
まずは理屈抜きで感動してほしいので【Aプロ】を迷わずお薦めしたい。
             (月刊パセオフラメンコ代表/小山雄二)

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2015年5月28日(木)その2138◆節目の連れ合い

バツイチ同士で一緒になって17年になるが、
ライヴプロデュースで関わるのはこれが初めて。
これが最初で最後となるのか、そうではないのかは当夜のスリリングなお楽しみ。
尚、座席指定(全63席)はいま現在3席空きで、以降は立ち見席。
    
パセオフラメンコライヴVol.005
鈴木敬子ソロライヴ

2015年6月11日(木)20時開演(開場19時半/21時10分終了予定)
会場:高円寺エスペランサ
料金:3900円(税込/ワンドリンク付)
主催:月刊パセオフラメンコ&エスペランサ
出演:               
鈴木敬子(バイレ)
エル・プラテアオ(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
予約:☎3383-0246(セルバ)/☎3316-9493(エスペランサ)

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「宝探しみたいに最初から宝が埋めてあるものと自分探しは本質的に違う。
 いっぱいチャレンジして自分の中に宝を埋めておかないと自分探しは出来ない」
「考えてるだけではわからなかったことが現実にわかるのが本番。
 そこが終わりじゃなくて、そこが始まりなの」
「集中した分だけ無意識が鍛えられ、それが自分の地金になる。
 その地金がフラメンコにストレートに出てくる」

これらは以前パセオに載った鈴木敬子インタビューからの抜粋だが、
中でもラストの心理学的ツッコミはかなり実用性の高い技術論にも想える。
信頼厚いミュージシャンのライヴな高揚感と一体化しながら、
真っ赤な火の玉のようにうねりながら躍り弾けるバイレフラメンコの衝撃。
凄まじいエネルギーがこの世の華を炸裂させる目映い瞬間そのものに、
フラメンコ舞踊手鈴木敬子の本質本領が視えてくる。
他方、主旋律を思う存分に歌い尽くすダンスラインの美しさはもうひとつの彼女の特徴だ。
ずいぶん前のライヴでセヴィージャの名歌手の唄うスローテンポなセビジャーナスに現れた彼女の、
アンダルシアの郷愁を優美に舞う古典的たたずまいは今も忘れ難い。
相反するこうした二極を自在に往き来する旅を謳歌するように、
バイラオーラ鈴木敬子はフラメンコと共に歩む。
フラメンコは自分の意志を踊る唄。
そう表明する彼女は六月のソロライヴをこう云う。

「これまでさまざまな場所でたくさんのアルティスタと共演しながら、
 自分の中にどんな自分が潜んでいるのか? それを探しながら踊ってきました。
 そして、常にどのような状態でも観てくださる方々の心を動かすような
 フラメンコをやりたい!という気持ちはずっと変わりません。
 年令的にも節目を迎えた今回のこのライヴは、
 自分を見つめ直す良いチャンスだと思っています。
 気心の知れたギター(エミリオ)・カンテ(プラテアオ)の二人と、
 シンプルに自分らしく、そして、お客様みなさまと私たちの中に、
 終わったあとに心地良い充実感が残るライヴをしたいです」

    (月刊パセオフラメンコ2015年6月号より転載)
     文/小山雄二(株式会社パセオ代表取締役) 撮影/大森有起

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2015年5月27日(水)その2137◆

「心」を、英語では二つに分類するという。
 すなわち、
「マインド=意思」と「ハート=感情」である。
           
 ふーん、なるほど、
 で、それがどーしたという話。

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2015年5月27日(水)その2136◆蒼い予感

 君が見えなくなる
 僕は 息できない


いきなりのサビで始まるこの名唱。
張り裂けんばかりの痛く鋭い哀しみがオーバーラップして、
全身から涙を吹き出しそうになる。
だが、その辛すぎる記憶と向き合ったことのカタルシスが深い癒しを呼び込む。

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オンリーワンの名シンガー、ブッチーこと大渕博光の
作詞・作曲・歌唱による『蒼い予感』。
2005年キングレコード制作『大渕博光/エステ・アモール』に収録。

 君にもらったもの
 僕の体の中

優れた詩人の独創性や感受性というのは、
絶望にさえ意味を与え未来へのヒントを示してくれる。
実際、人の世の宝だと想う。

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2015年5月26日(火)その2135◆挑戦の根拠

内藤流・空中戦法はプロ将棋界の華麗なるアートだった。
CBSソニー専属歌手として歌った『おゆき』は100万枚を突破。

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天才・内藤國雄九段(1939年~)が、この春三月にプロ棋士を引退された。
内藤九段の自筆扇子(「伸び伸び しみじみ」と揮毫)は唯一私のお宝だが、
これは巨匠の娘さんがアフィシオナーダであることの縁で頂戴したものだ。

プロ棋士をめざす中三の私は内藤流・空中戦法(横歩取り3三角戦法)を
徹底的に研究し、また実戦で多用することで、
一年足らずでアマ2級から四段へと駆け上がった。
将棋というのは二次元ボードゲームだが、この戦法を指しこなすためには三次元感覚、
場合によっては四次元感覚が必要だった。

実質中学中退の私が、この内藤将棋(他にも独創戦法多数)によって
世渡りの基礎を学んだことを今なら解るが、ついでに凄いことに気づいてしまった。
出版について何も知らずにパセオを創刊した実務的裏付けは、
単にその一点だったことに。(汗)

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2015年5月25日(月)その2134◆合同生前葬

旅に出るといろんなことがいっぺんに分かる。

ヨシアキ、ヒデオ、カズユキ、エミオ、ミノル。
皆むかしとちっとも変わっちゃいないが、
みな一様に明るさと逞しさとを面白いくらいにパワーアップしていて、
おゐおゐ、未だ危なっかしーのはこの俺さまだけかよと、
そんなことに腹から苦笑できる底抜けに楽しい旅だった。

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大切な旧友との再会を果たしたこの金沢への旅が、
まだまだ先の永い冥土の旅の一里塚なのか、
それともそれぞれにとっての終点間近の合同生前葬なのかは分からない。

だが深く刻まれたこの旅の記憶が、
この先の道程に笑いと勇気と癒しをもたらすことだけは信じられる。
そうでねえと出発前に貯めに貯めた仕事は
永久に片付かないのである・・・フォー!( ̄▽ ̄)

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2015年5月22日(金)その2133◆旧交

明日から一泊二日で金沢を旅する。
高三時代の旧友どもと、同じく金沢に暮らす旧友に再会するのが主要目的。
仲間内の誰が逝ってもおかしくはない歳だから、そういう準備の含みもある。

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09:44東京駅発の北陸新幹線、もちろん初乗りだ。
野郎五匹の気楽な道中だから、まったくもって緊張感がない。
おまけに幹事がしっかり者の鉄板なので、まるで私は引率される幼稚園児状態。
旅の準備が3分で済んだのには驚いた。で、もちろんおやつは300円まで。
ただし、ゆで卵とバナナとアルコールなどはこれに含まない。

パソコンから丸二日も離れるのも十年ぶりくらいか。
大きなヤマも控えているので、そのガス抜きに
一切合切を忘れて高三当時に戻るとしよう。
そうでなくとも忘却能力は高まる一方だから、
青春時代へのワープは案外スムーズかもしれない。

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2015年5月21日(木)その2132◆フルスイング

「写真を決定する際、正直すごく緊張しましたが、
 振り切らない限りヒットも出ないと肚をくくりました」
(パセオフラメンコ6月号/小倉編集長・編集後記より)

「小山さん、6月号表紙これで行きます」
「おおっ、やるねえ~(汗)」

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「これでいかがですか?」とは云わない小倉泉弥(おぐら・せんや)はパセオ全権編集長。
異論ある場合は率直に提言するが、最終決定を下すのは彼だ。
それが全権編集長の自由であり不自由でもある。
そう、何にせよ、振り切らない限り球は前に飛んでいかない。

創刊31年の伝統的感傷を軽々と打ち破る奴の若いセンスに、
本心ドン引きしつつも、伸びやかで逞しい未来が視えてくる。

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2015年5月20日(水)その2131◆歩み寄り

およそ二十年ぶりで聴くポリーニの『月光』。

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本当にベートーヴェンの楽譜通りに弾いてしまう驚き。
好きとか嫌いとか云ってる場合じゃない快演。
アントニオ・マイレーナを最初に聴いた時の印象に近い。

ま、ともかくも、平気でベートーヴェンを聴ける年齢になった、と。
これもまた、意識と無意識の歩み寄りの成果だと、想うことにする。

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2015年5月19日(火)その2130◆いまだから

「いまはまだ人生を語らず」

親しい酒席でそんな言葉がポンと出た。
昔そんな歌があったような気がする。
志は高い。
やるなあ、おぬし。
   
一方の私はポンポン語る。
意識と無意識の合致点を探るのが、殊に楽しい。
独りで考えるより、会話のほうが効率いいしな。
若い頃は意識だけで自分を引っ張って来たから、
いまはその埋め合わせに邁進中というわけだ。

視えてくる自分の実像は相当に恥ずかしい。
苦笑というより爆笑だ。
そこが気に入ってるみたい。

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2015年5月18日(月)その2131◆最高傑作

依頼を受けて30分で書き上げた。
江戸っ子は早いのが取柄で、底が浅いのが泣き所だ。

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なんと発行部数36万部。
ダイナーズクラブカード会員誌『シグネチャー』6/20発売号に、
この秋来日するスペイン国立バレエ団の紹介記事を書いた。
タイトルは「人生の両極を繋ぐバレエ」で、これは私の最高傑作である。
ちなみに私の最高傑作は1000作ほどある。( ̄▽ ̄)

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2015年5月18日(月)その2130◆もれなくセットで

好きな仕事に就いておよそ四十年。
3勝997敗という通算戦績も伊達じゃない。

だんだんと〝自由〟の意味が分かってくる。
その間にだんだんと身体が不自由になってくる。
身体が不自由になるに従って、精神は自由になってくる。
性格が自由になるに従って、髪の毛や顔が不自由になってくる。

つまり、結論はこうだ。
自由には不自由が、もれなくセットで付いてくる。
だが悲観には及ばない。
不自由にも、もれなく自由が付いてくるから。

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2015年5月18日(月)その2129◆自由に選択

「何をもって〝自由〟とするか?」
   
正解は、幾通りもあると想う。
世渡りには往々にして目隠しも必要だから、
「自分にとっての自由」を正確に解明することは案外と難しい。
また、敢えてそれを突き詰めない生き方もあるだろう。

それを知ることが、自分の生き方・死に方を知ることだと、私個人は感じつつある。
年寄りのタワ事とは、こういったことを指すのである。

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2015年5月17日(日)その2128◆正直者
    
「金の斧」
「銀の斧」
「ふつーの小野」

さあ、あなたはどれっ!?

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2015年5月16日(土)その2127◆分裂症

おそらくは明け方にみた不思議な夢。
新手法ゆえ、しぶとく残る鮮やかな余韻。

  
田舎道をゆくトラック。
荷台には機関銃で武装した兵士が数名。
何とかビッチと呼ばれている私も、どうやらその一員であるらしい。
広がる田園の風情からアバウトに推測するに、ここは東ヨーロッパあたり。

富裕層の旧勢力と、貧困層の新勢力の抗争による内乱。
私は後者に属しているようだ。
善悪の争いではなく、格差が生む単なる経済闘争。

やがてトラックは敵方の前線拠点であるらしい豪奢な館へと到着する。
機関銃を構えながら、用心深く館内を捜索すると、
逃げ遅れたのか、あるいは故意にそれを望んだのか、
館の奥方らしき女性が広間で途方に暮れている。

内乱が勃発した頃に生き別れとなった幼なじみの恋人同士だから、
互いにすぐにそれと分かるし、互いの事情もひと目で分かる。
彼女の手を引き、ちゅうちょなく裏口から館を出る。
西と南には味方、東には敵方。どちらに逃げてもどちらか片方が助からない。
よって二人は北へと進む。

「大尉殿が逃亡された模様であります」
「いや特殊任務だ、放置せよ」                
司令部にいる私はとっさにそう命令するのだが、これは一体どうしたことだろう?
あの美しい女と逃げたのはこの私ではなかったのか?

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しゃちょ日記バックナンバー/2015年05月①

2015年05月01日 | しゃちょ日記

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2015年5月15日(金)その2126◆楽屋裏

いい天気だ。

書斎の縁側でひなたぼっこのジェーが、気持ち良さげに伸びをする。
老いて益々平和なその彼の脇で呑む、朝風呂あがりの生レモンソーダがおいしい。

昨晩の川島桂子カンテライヴの情感豊かな余韻は、
まだまだ心のひだに充満している模様だ。
終演後零時近く、にわかに始まるフエルガ。
歌い出し十数秒後、彼女のソレアに例のアレが降りた。
畏るべき踏み込み、心と技の完全リンクが、
居合わせた人々の魂を一本化する超常現象。

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締切をギリまで延ばしたパセオ7月号『川島ライヴ~楽屋裏』を午後には入稿。
得意のヨタローコーナーなので、まあ三十分もありゃあ書けるだろう。

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2015年5月14日(木)その2125◆情の艶

ウトレーラ姉妹、ペルラ・デ・カディス、マイテ・マルティンに並ぶくらい、
ずっと前から私は川島のカンテが大好き。
理由をひとことで云うなら、それは〝情の艶〟かな。

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上のフライヤーは、ウカツにも聴き逃した昨年の川島初リサイタル。
本日5/14(木)はそのリベンジとも云うべき、
パセオ&エスペランサ協働主催による川島桂子のカンテソロライヴ。

高円寺の生タブラオ〝エスぺランサ〟。
プログラム未定、ノンストップ70分の予定で今晩20時スタート。
若干の空き席ありということなので、希望者は☎3383-0246まで連絡されたし。

川島のセコンド役を終えたライヴ終演後のトムクルーズはカウンターで呑んでるんで、
ひとこと感想(7月号「楽屋裏」のネタ)聞かせてね!

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2015年5月13日(水)その2124◆そこに自分を入れないこと

「穏やかな均一性の連続、時おりの変化と刺激」
「それもある。さらに、そこに自分を入れないこと」

畏るべきシャンプー名人。
代々木上原駅前〝ダンドン〟。
カリスマ美容室のマスターはおれよりひとつ先輩。
彼のシャンプーに私は集中し、思いつくままを言語化する。
外せば「違う」と云われ、当たれば次なるヒントをプレゼントされる。

夢の如き、この奇跡のシャンプーは、
あらゆるコミュニケーション改善に直結すると、私は観る。

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2015年5月12日(火)その2123◆プレイバッハ

中野の街にも、じゃんじゃん雨が降っている。

明日は早出早上がりで、夕刻から十数年通う代々木上原駅前ダンドンへ。
同じ歳のカリスマ美容師ケイコちゃんに、
美しく伸びた碧の黒髪をちょん切ってもらいに行くのだ。    
髪の毛の本数に応じた料金設定(おれの場合半額だろ!という主張)を
ダンドンに交渉中なんだが、この十数年いまだ交渉は難航中である。

家路の寄り道はもちろん、以前住んでた家の斜め前、
かつては毎晩のように通った元代々木どさんこコース。
女将筆頭に懐かしい面々の誰かしらには会えるのがうれしい。

上原は青春を爆裂させた文京区の本郷(パセオ誕生の地)に次いで好きな街。
中野の新居からは三十分だし、なんやかんやで引っ越し後も月イチほどはやって来る。
そりゃあ、十八年暮らした街だもんなあ。
そんなんで今晩はおとなしく、安スコッチでJAZZバッハ。

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2015年5月12日(火)その2122◆ハルサイ奴

サラリーマン。
ゴルフ。
ロックンロール。

親しい連中に多く共通する項目だが、私には無縁だった三要素。      
就活は一次試験で沈没、なりようがなかったサラリーマン。
止まってるゴルフボールには興味を持てない性格。
ストラヴィンスキー『春の祭典』に17でヤラれちゃったらロックは無理。

すべて経験してれば、もう少し普通に軌道性の高い人生もあったと思うが、
脱線性の高い性格というのは案外とセーブがかけ辛い。
それを助長した犯人がハルサイ(春の祭典)であることはすでに判明している。

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不道徳なリズム
肝を冷やすグルーヴ感
エロティックな不協和音
原色の金管からほとばしる突進力
魂の故郷を謳う原始的未来的アヴァンギャルド

・・・などと、呪いの言葉は限りなく続く。

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2015年5月11日(月)その2121◆しゃんとして笑っていたかった

そうして休みなく働きつづけても稼ぎは知れているが、
どうにか食べてゆけるし、酒も飲めるのだった。
まだ働ける体と気力、粗末だが愛着のある家、衰えたとはいえ艶のある声。
このうえ何がいるだろう。
いしは冷静に考えてみるが、何も思いつかない。
これまでの人生が喜びに満ちていたとは言えないものの、
いまの自分を不幸だとも思わない。
さきのことを案じはじめたら切りがないのは若いころも同じで、
上を見ても下を見ても切りがないのだった。
どう転んだところで終わることに変わりない人生の、
終わり方を案じてもはじまらないし、安らかな死を求めて怯えるくらいなら、
与えられた人生を楽しく生きたほうがいい。
彼女は腐ったりぐじぐじするかわりに、しゃんとして笑っていたかった。


乙川優三郎の名作『虚舟(きょしゅう)』。
講談社文庫『夜の小紋』に収録されている三十頁ほどの短編である。
乙川はいいぞと方々で吹聴してた頃、数少なく反応した内のひとりから、
「主人公いしの在り方がヴィジョンです」という便りをもらった。
書棚から引っ張り出してみると、黄色のマーカーが引いてあって、
それが上記シーンである。

「彼女は腐ったりぐじぐじするかわりに、しゃんとして笑っていたかった」

古今東西、男も女も関係なく、未来永劫こんな在り方は人々にとってひとつの理想だろう。
少なくとも私はそうだ。
はるか遠方より、パコ・デ・ルシアのタンゴス(Siroco収録)が深く静かに聞こえてくる。

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2015年5月10日(日)その2120◆取材スケジュール

夏以降の取材スケジュールは、現時点でこんな感じ。
体力・精神力に自信はないが、好奇心だけはどーにも止まらないっ!

8/13(木)パセオフラメンコライヴVol.007/矢野吉峰ソロライヴ
8/21(金)日本フラメンコ協会・第24回新人公演
8/22(土)日本フラメンコ協会・第24回新人公演
8/23(日)日本フラメンコ協会・第24回新人公演
9/10(木)パセオフラメンコライヴVol.008/大沼由紀ソロライヴ
9/21(月)サラ・バラス舞踊団/フラメンコ組曲
9/23(水)アンダルシア・フラメンコ舞踊団
9/24(木)パセオライヴVol.009/ⒸディエゴⒼエミリオⒷ森田志保
9/26(土)カニサレス&新日本フィル/アランフェス協奏曲
9/29(火)カニサレス・フラメンコカルテット来日公演2015
10/8(木)パセオフラメンコライヴVol.010/今枝友加ソロライヴ
10/31(土)スペイン国立バレエ団2015「セビリア組曲/ボレロ」他
11/12(木)パセオフラメンコライヴVol.011/荻野リサソロライヴ
11/20(金)スペイン国立バレエ団2015「アレント/サグアン」
11/23(月)ロシオ・モリーナ舞踊団/アフェクトス
11/25(水)沖仁 CONCERT TOUR 2015 Guitarra Flamenca
12/10(木)パセオフラメンコライヴVol.012/石塚隆充ソロライヴ

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2015年5月9日(土)その2119◆意外性

「たけちゃんが住んでる代々木上原で、
 犬と散歩する社長を何度かお見掛けしたそうですよ」

えーーーっ! ひと声掛けてくれやあ。
しゃちょ対談やりてえって前から思ってたんだから。

たけちゃんとはフラメンコを踊る俳優さんだ。
ついこないだも大好きな『相棒』へゲスト出演した彼の充実する演技に、
いつか日かフラメンコぶっちゃけ話をしたいものだと思ったばかりだ。

昨晩の高円寺エスペランサ木曜会。
たまに来店するという(私から見れば)お若い男性客にいきなりそう云われたのだが、
たけちゃんとは親しい友人なのだという。ならばと、私の伝言をよろしく頼んだ。

ああ、なるほど、こういうとこから切り口が生まれることもあるんだなと、
実はそんなことばかりの31年間を走馬灯しながら、
改めて人の出会いの意外性を楽しむ。

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2015年5月8日(金)その2118◆終わりなき挑戦

いよいよ来週木曜、パセオライヴ初のカンテライヴ!

★★★★パセオフラメンコライヴVol.004『川島桂子ソロライヴ』
2015年 5/14(木)20時スタート!
19時半開場/20時開演
(休憩なし正味60~70分)
会場◇高円寺エスペランサ
料金◇3,900円(税込/ワンドリンク付)
※座席指定は各先着63名様までで、お申込み順に良いお席を確保いたします。
 それ以降(64~80名)は原則立ち見となります。
予約お申込み◇
昼(株式会社セルバ)☎03-3383-0246
夜(エスペランサ)☎03-3316-9493
メールお申込み◇ selva@tablaoesperanza.com
出演◇
川島桂子(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
有田圭輔(パルマ)
   
「昨年、最初で最後かな、と思いながらリサイタルをやらせていただきまして、
それまでやって来たことのあれこれを盛りだくさんに詰め込んで、
観に来てくださった方には〝川島百貨店!〟とご感想をいただいたりしました。
 やってみて、結局わかったのは〝終わりはない〟ということでした。
続けていくしかないレールから降りるのは、
むしろ難しい場所に私は来てしまっていて、それは果てのわからない、
呆漠としたフラメンコの地平線に向かっているかのように思えます。
 今回は、エミリオ・マジャとほぼ二人で、
シンプルに裸のカンテ・フラメンコを聞いていただく予定です。
エミリオは、〝私は今こうして歌っていていいのだ〟という
超ポジティブな気持ちにさせてくれる、大好きな伴奏家の一人です。
彼がいつも言う〝!Vamo a disfrutar! 楽しもうぜ!〟の気持ちが、
来てくださった方々に伝われば嬉しいです」

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「フラメンコは音楽なのか?!」
〝フラメンコは踊り〟と決めつけるバッハつながりの友人どもを
川島桂子伴唱のライヴに引っ連れて行くと、興奮気味に彼らはそう叫んだ。
実際、踊り手に勇気を注入しながらステージ全体を支える
彼女の歌いっぷりは圧巻だった。
声質、音程、リズム感、歌い回しが有機的に協働するしなやかな彼女の歌唱力は、
繊細にして濃密な情愛を醸し出す。
熱く強く巧い川島のカンテフラメンコは、ジャンルの壁もどこ吹く風で、
あらゆる音楽ファンを惚れ惚れさせる普遍的快感に充ちあふれている。
初演から注目するアルテイソレラ『フラメンコ曽根崎心中』お初(鍵田真由美)の
声部から川島桂子が消えてしまった最新公演、
その〝喪失感〟の大きさは彼女の巨大な存在価値を改めて認識させた。
そのショッキングな経験は、それが〝有るのが当たり前〟ゆえに気づけなかった
重要な存在を改めて熟考し直すチャンスを与えてくれた。
当ライヴは「最初で最後かな」と思ったという川島リサイタルを
聞き逃してしまった迂闊な私のリベンジに相当する小リサイタルである。
「結局わかったのは終わりはないということ」という最善の結論に達した
彼女はこの先もずっと、ソロ歌手として伴唱者として、
私たちを歓ばせ続けてくれることだろう。
療養から復帰したあの有田圭輔がパルマで助演するのもうれし過ぎるギフト。

  月刊パセオフラメンコ2015年5月号より(文/小山雄二)

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2015年5月7日(木)その2117◆往けばわかる

この道を行けばどうなるものか、
危ぶむなかれ、
危ぶめば道はなし、
踏み出せばその一歩が道となる、
迷わずゆけよ、
ゆけばわかる。
           (一休)

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京に生まれ京に死した一休さん(1394~1481年)は、
後小松天皇の落胤という。
早くから詩才に優れ、自殺未遂を経て仏門で悟りを開き、
その後は詩・狂歌・書画など風狂に生きた。
天皇とも親しく民衆にも慕われた和尚は、マラリアで88歳他界。

冒頭句ラスト「迷わずゆけよ、ゆけばわかる」は、
シンプルに人生の真実を映し出して絶妙。
ついでに、妙に艶っぽいのをもうひとつ。

「秋風一夜百千年」
(貴方と過ごす秋風の一夜、それは百年にも千年にも値する)

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2015年5月6日(水)その2116◆明るい発想

「フラメンコなんてどうでもいいの。ただ踊りたいだけなの」

それが多くのバイレ練習生の実情だと、力なく彼女は笑う。
そうか、優れてプーロなバイラオーラにも、そんな想いがあったのか。
こっちはこっちで、パセオ出版31年間の脱力シーンが走馬灯のように駆け巡る。

「踊りなら何でもいいのに、フラメンコを選んでくれたことに感謝したいですね」

前途有望な若者が、元気よくそう云い切った。
そうだっ、そうだよっ、そういう発想こそ正しい!

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2015年5月5日(火)その2115◆年に二回の大爆笑

きのうは三宅坂の国立演芸場の恒例〝大演芸祭り〟。
お目当てはもちろん呑み友〝師匠〟(写真右)の晴れ舞台。
チャーリー・カンパニーは実力派の爆笑コント二人組で、
年に二度ほどは万難を排して駆けつける。

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テレビや映像では伝わりにくい大胆繊細な優れた演芸というのはあるもので、
師匠のアルテなどはその最たるものと断言できる。
まあ、タブラオフラメンコの感動なども映像ではどうにも伝達しにくいわけで、
そのへんはくやしいから、短い人生、極力ライヴに通うのが正しい。

師匠のきのうの舞台も腹を抱えて転げ回りたくなるような怪演で、
名門・浅草デンスケ劇団出身の筋金入りのこの芸人にはリスペクトを惜しめない。
敢えて云うなら、舞台を降りてデレデレ呑んでる時の師匠は
まったくつまらねえ点なのだが、師匠つまんねーよと苦言を呈するたんびに、
彼は私の脇の下をつねるのである。( ̄▽ ̄)

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2015年5月4日(月)その2114◆バランス調整

攻める一方だと、心が荒れる。
守る一方だと、心が腐る。
やはり心はナマモノだと実感する。

攻守のバランスってのは実際、心の要だ。
そういう感覚に親しんだ原点は、最初は将棋、次いで落語。
大人になってからは藤沢周平の時代小説、そしてバッハの二声。
で近ごろは、生活の中の会話そのものがそのバランスを調整してくれる。
何のことはない、いつの間にかフリダシに戻っている(笑)

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2015年5月3日(日)その2113◆業の肯定

休日出勤のBGMには、落語を選ぶことが多い。

孤独で単調な事務などは、これですいすい片付く。
話の内容はほとんど追わず、リズムやメリハリ、
喋りの呼吸なんかを音楽として聞いてることが多い。
これはもう独立以降35年来の習性で、
私のしゃべりや文章がどこかヨタロー風なのは、主にこのことに起因している。

「落語とは、人間の〝業〟の肯定」

天才・立川談志はかつてこう断言したが、まあ確かに、
どこにも雇ってもらえず、やむを得ず25歳で独立した業深き私にとって、
落語というのはまさしくドンピシャだったことになる。

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2015年5月2日(土)その2112◆もがきの中から

「人間は、孤独な反省に頼って己れを知る様には決して作られてはいないのである。
 常に他人が必要だ、いや他人を信ずる事が、他人に信じられる事が」(小林秀雄)

無人島で独り生きることを想像すればよく分かる。
難儀なこっちゃが、人の営みの実相はここにある。

見事なチームワークを見るときの歓び。
あるいは、裏方でもいいので、そのチームワークの一員として自分が働くとき。
パセオだってそういうもがきの中から生まれたわけで、
いまだもがき続ける光栄に感謝せにゃならんと想う。 

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2015年5月1日(金)その2111◆小さな誤算

「人は誰しも、自分で思ったような自分になれる」

十代半ばあたりから、願望混じりにずっとこう考えていた。
実際にはちょっとニュアンスが違うかと、近ごろは感じる。

「人は誰しも、自分で思ったような自分になってしまう」

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