フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2013年9月①

2013年09月01日 | しゃちょ日記

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2013年9月1日(日)/その1361◇飛ばされるために生まれた

 「パセオフラメンコ10月号の今井翼対談『翔ぶために生まれた』のゲストは、
  笑こらにも登場したマヌエル・べタンソ師匠。
  NHK放映「今井翼×サムライ支倉/大いなる旅への挑戦」で話題になった
  日西交流400周年イベントの模様も巻頭カラー8頁で東敬子がレポート!」

 ツイッターに来月号の告知をちょっとだけ書き込んだら、
 パセオ定期購読を叫び、翼連載をバックアップしてくれるマイミクさんからコメント。
 
 「しゃちょ、いつもありがとうございます。楽しみです。
  しゃちょの『翔ばせるために生まれた』も毎月やって下さい」

 創刊三十周年企画で今月号にちゃっかり登場している
 この私の『翔ばせるために生まれた』記事に対する、
 優しく涙ぐましいヨイショである。

 だが、新連載の楽しい企画が続々と生まれる編集部にあっては、
 いまや「しょちょ日記」の連載でさえ、その存亡が危うい状況なのである。
 「しょちょ日記」というのは、もともとドタキャン執筆者の
 ページの穴埋めのためだけに生まれたコーナーであり、
 その原稿は楽々100年分以上ストックされているものの、
 惜しくも100%、その品質に問題がある。

 つい先日も、編集会議で新たに有望な連載企画が生まれたのだが、
 どうにも掲載するページが不足している。
 つまり、どこかのページなり連載なりを飛ばす必要がある。
 ふと、「しゃちょ日記」連載中の私を、小倉と岩井がじっと見る。
 おふたりの顔には、きちんとした楷書体でこう書いてあった。

 「(しょちょ日記は)
  飛ばされるために生まれた!


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2013年9月2日(月)/その1362◇しっくり感

 ああすりゃよかった、こうすりゃよかった。

 いかにも間抜けな自分史を振り返れば、
 出来るものなら修正したいことばかりで、
 ああ、またやっちまったと失敗するたびに、
 ため息をつきながら反省モードに入る 。

 そういう時の心持ちというのは、
 世間さまに引け目を感じつつナイーブに傾くことが多いから、
 愛すべき周囲に対して優しくなれるという利点が生じるし、
 また「この先やらない方がいいこと」を発見することも多い。

 理不尽に見舞われることもごく稀にあるけれども、
 自分史上のほとんどの事件の真犯人が、
 実はこの私であることに容易に気づけるようになったのは近頃のことだ。
 犯人を特定できる捜査分析というのは実に簡単なのだ。

 そんなわけで、書くことで自分の深層心理、あるいは自分の本音と
 対話しようとする習慣は、今の私にはとても有益に思える。
 若い頃のストレスの多くは、そこから目を背けることによって
 生じたものだと今なら分かる。

 「しっくり来ること」

 いいフラメンコをする人たちとのガチンコ・インタビューを重ねるうちに、
 彼らに共通するある重要なポイントに気づいた。
 彼らの日常はまさしく「しっくり来る」ことに集中しようとしている。
 どちらかと云えば、私もそうしたタイプではあるのだが、
 そのスケールや徹底ぶりが一桁二桁ちがっていた。

 理由も分からず若い頃からフラメンコに惹かれ続けた私は、
 この歳になってようやくその入口にたどり着いたことを知った。
 私にとって何故フラメンコだったのか、それがしっくり来た。
 さらに具体的な言葉に置き換えようとすると、
 かえってその感覚から遠のいてしまうのだが、
 今のいま、即興でひらめいたフレーズを忘れぬうちに書いてみる。

 「清濁併せ呑む本能的な善」

 出来る出来ないは別問題だが、
 少なくともそこには、〝懸け甲斐〟のようなしっくり感がある。


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2013年9月3日(月)/その1363◇秋近し

 「腰、楽そうだね」
 「わかるのか?」
 「まっすぐ歩いてるから」
 
 連れ合いにそう指摘され、腰が楽になってることに気づく。
 ふと思いつき、腰痛のリハビリを昨日から再開したのだ。
 仕事にかまけて前回は三日坊主だったが、
 今回は続ける気になってる。
 
 新たにチャレンジしたいことが生じたのだが、
 歩くのが辛いようではとてもままならんと、
 ようやく重くて痛い腰を上げたというわけか。
 そりゃギックリ腰より、しっくり腰のほうがいいに決まってるけどね。

 若い頃からフットワークだけが売り物で、
 たまの休日にもお気に入りの都内名所を歩きまわった。
 そう云や、近ごろはほとんど出掛けてないなあ。
 大好きな秋もすぐそこだし、行きたい場所はたくさんある。
 今日なんかもやけに涼しいなと、ふとベランダを振り返ると
 クーラーがひゅーひゅー云ってた。

                    
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2013年9月4日(水)/その1364◇早起きは三本の得

 ご近所行きつけで観戦したきのうの
 ボクシング世界戦の判定にはビックリ!

 早起きして作成中のカタログのCD解説を12本書いた。
 8時までにあと三本書かねば。

 おとついから再開した特製ジュースを飲んで、
 9時から腰痛リハビリ三日目。

 ぽてぽてとジェーがおはよう!とやって来る。
 今度の土日にゃ代々木公園に行けるといいな。


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2013年9月5日(木)/その1365◇カニサレス先行予約とリハビリ四日目

 パセオ最新号の今井翼対談『翔ぶために生まれた』に登場した
 "フラメンコギターのベートーヴェン"カニサレス。
 対談中、今井さんのリクエストで、彼はファルーカを弾いた。

 ラトル指揮ベルリンフィルでアランフェスを弾き、
 国際的に大ブレイクした超大物ギタリストの生音を
 約30センチの至近距離で今井翼はそれを聴き、
 それを機に互いにすっかり打ち解けたようで、
 おふたりは対談後も何やら楽しそうに話していた。

 そのマエストロの待望の来日公演(12月18~19日/新宿文化センター大)の
 先行予約が今日から始まる。
 いい席とって(03-3498-2881/プランクトン)みんなで観ような!


 さて、今日で三日坊主をクリアする四日目に入る。

 腰痛と左膝と右肩のリハビリ専科。
 四種類の治療はほとんど待つことなく約40分で終わり、
 保険が利くので治療費は毎度320円。
 週に1回、診療のうえ飲み薬と塗り薬をもらうと、
 その時は2,000円くらい余計にかかるシステムだ。

 休院は日曜・木曜なので、週5日通うつもり。
 9時開院なので、5分前に家を出て、
 10時15分ころにパセオに出社するパターンを、
 差しあたり9月いっぱいは続けてみようと思ってる。
 
 リハビリ中はヒマなので、
 普段はやらない深呼吸を盛んにやってみたり、
 事前に盤面を暗記してある簡単な詰将棋を解いたりしている。

 さあ、じゃあそろそろ朝めし代わりのジュース
 (林檎、檸檬、人参、蜂蜜、豆乳)でも飲んで出掛けるか。
 いや待てよ、今日は木曜休院じゃん。
 じゃあ、そのぶんお散歩しながらパセオに行くか。
 ところがあいにくお外は大雨で、やる気に水を差された感じ。
 
 今宵は高円寺エスペランサで恒例の木曜会。
 もう四半世紀近くつづく、業界仲良し連のゆる~い呑み会。
 22時スタートなので、少なくとも原稿はたっぷり書けそうだわ。


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2013年9月6日(金)/その1366◇無償の愛

 今日は美輪明宏さんのコンサートに行く。

 昨年末紅白のヨイトマケはほんとうに良かった。
 人気カンタオールの有田圭輔などは、
 あれを観てワンワン泣いたという。

 実は私も泣きそうになったが、
 独りではなかったので、どうやらこらえた。
 そして数日後、美輪さんのCDを買った。

 母ちゃんの愛とは、ほんとに凄いもんだと思う。
 あんなに凄い母ちゃんだったのに、
 なんでおれはこんなにもハチャメチャなのかと想う。
 あの曲を聴くことは、それでもどうやら
 心の折り合いをつけようとする祈りなのかもしれない。

 ライヴの感想は明日にでも書こう。


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2013年9月7日(土)/その1367◇ぼろ泣き

 『ヨイトマケの唄』にぼろぼろ泣いた。
 ああ、まだまだオレは無防備に泣けるんだ。
 とりとめのない、ふしぎな安堵感が押し寄せた。

 78歳の美輪明宏さんのライヴには、
 心を射抜かれるような素敵な生き様があった。
 ひれ伏したくなるような感覚を久しぶりに味わった。

 十代後半、もしもフラメンコではなく
 美輪さんのステージに出逢っていたなら、
 『月刊美輪明宏』なんかを発行してたかもしれない。
 そういう激しいインパクトが胸に響いた。

 渋谷パルコ劇場からは徒歩20分ほどの家路なので、
 とぼとぼと歩きながら、あれこれステージを回想した。
 あれだけ様々な過去に感情移入できる方だから、
 その言葉は意外であったが、その深~い意味合いが、
 やがて腑に落ちた。

 「ふり返らず今と未来をしっかり生きなさい」

                        
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2013年9月7日(土)/その1368◇妄想の家路

 美輪明宏さんの歌唱のベースがシャンソンであることは
 承知しているのだが、そのライブ中、
 私にはそれがどうしてもフラメンコに聞こえて仕方なかった。

 そのコンパスは正確さに留まることなく、フェルナンダのようなうねりがある。
 声質は実に多彩であり、絹のような繊細さから骨太なフォルテにおよぶ
 ダイナミックレンジの広さは、常識的な領域をはるかに超えている。
 あらゆる表現は美輪明宏その人のブレない信念に統一される。
 そして、すべての曲にフラメンコで云う〝ドゥエンデ〟が降りていた。

 新人公演のカンテ伴奏で、
 唄伴奏の理想の極致を弾いたエンリケ坂井さんのギターで、
 美輪さんの唄を聴いてみたいと妄想したライヴの家路。


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2013年9月7日(土)/その1369◇説得力

 きのう金曜の美輪明宏さんのコンサート。

 正味2時間半、休憩は20分。
 通常的には長いが、観客席に決してそうは感じさせないところに
 己の芸に対する尋常ではない自信を感じた。

 歌唱はトータル1時間ほどだから、
 合間のトークの方が1.5倍ほど長い。
 自慢話や毒舌もビンビンなので、
 最初のうちはやや苦笑気味だったが、
 各トークの締め近くの極めつきのユーモアで必ず爆笑させられた。
 胸を打つ彼女の話の核心だけが、快感とともに残る仕組みだ。

 それらユーモアの質の高さに仰天した。
 もちろんそうでないケースもあるが、
 何か本当に伝えたいことがある場合、
 そこに冷静な客観性をもたらすユーモアが、
 極めて大きな役割を発揮する事実を改めて想った。


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2013年9月8日(日)/その1370◇希望

 人類の一員として、トルコ開催を願っていた。
 日本人として、日本開催を願っていた。
 私人として、スぺイン開催を強く願っていた。

 マドリード開催が決まれば、スペインそしてフラメンコが
 バルセロナ五輪の時のように国際的注目を浴びる。
 東京決定を朝のニュースで知り、予想以上に落胆する非国民(私)を発見した。

 どよーんとした気分でこれを書いている。
 これからジェーと散歩に出掛け、気持ちを切り替える。
 どこで開催されても、それは素敵なことなんだという原点に戻ろう。

  「ふり返らず今と未来をしっかり生きなさい」

 またしても美輪明宏さんの言葉がよみがえる。
 東京五輪開催と震災からの復興がイコールになるイメージを強めてみる。


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2013年9月9日(月)/その1371◇絶叫!

 今日は地球唯一の月刊フラメンコ専門誌の編集長として絶叫!

 「絶対にスベらないフラメンコのコンサートだぞおおおおおおおおおお!」   
  http://www.plankton.co.jp/canizares/tickets.html  
 ウソだと思うならコレ観てくれやあ!
  http://www.plankton.co.jp/canizares/movie.html


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2013年9月10日(火)/その1372◇清らな心

 猛暑は幾分やわらいで来たが、
 猛省の日々が続いている。

 先週金曜の美輪明宏リサイタルのドゥエンデ的衝撃を、
 いまだに受け止めきれていないのだ。
 気分の切り替えは早い性格なので、通常こんなことは滅多にない。

 散々に凹みこんだ上で、美輪さんの舞台から何か確実なものをつかもうと、
 じっくり時間をかけてモガいてみよう。
 そんな潜在意識の意図がうっすら視えてきた。

 心はどよよんと暗いのだが、仕事に対する集中力は異常に増している。
 生き方の差によって生じる人間の格の差に意気消沈しながらも、
 いやいや俺だってと、手遅れながらも巻き返そうとする構図だろう。
 ・・・しめしめ。
 この機にたまりに溜まった仕事を気合いよく片づけてしまおう。

 美輪さんの舞台の観客席には三十代女性が多いのだが、
 「彼女たちはきっと叱ってもらいたいのよ」と、呑み友はサクッと看破した。
 そうか、こう見えてもこのオレ(58歳クソ爺い)は、
 今でも三十代女性の清らな心を持ち続けているわけかいと、ハタと気づいた。

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2013年9月11日(水)/その1373◇学びの宝庫

 「昔はよかったね」

 好ましいノルタルジーに浸るのは歳寄りの特権だから、
 時にはそれを謳歌させてもらうのもいいだろう。

 だが、当時もすぐ目の前に困難があったように、
 いま現在も眼前の困難がある。
 その困難に今このとき向き合わない限り、
 先送りされるその解決への道は、ますます遠ざかることになる。

 社会の歴史からはそれが容易に学べるが、
 自分の歴史を振り返れば、もっともっと容易に学べる。

             
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2013年9月12日(木)/その1374◇賢者のプレゼント

 「娘を保育園に預けてる今日は、カフェでパセオを読みながらランチ。
  フラメンコの勉強の為に旦那から年間購読をプレゼントされたんだけど、
  久々に浸る活字浴が心地よい。
  編集長小山さんの言葉はmixiよりも誌面からの方が心に暖かく届く気がした」

 きのうのツイートにこんな返信をいただいた。
 「旦那から年間購読をプレゼントされた」。
 いまどきこんな素敵な旦那さんがいることがうれしい。
 
 「将棋の本、欲しいんでしょ」

 プロ棋士に憧れた中学生の頃、
 姉からそっと小遣いを渡されたことを思い出す。
 そういうことってのは、一生忘れないものだ。
 近年は遠い海辺に暮らす姉に、無性に会いたくなった。


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2013年9月13日(金)/その1375◇丸ごとカブるか

 「あんちゃーん!」

 帰り道、家のマンションのちょっと手前でこう呼び止められる。
 この声は〝スーパーうさみ〟のおっちゃんだ。
 この春スーパーを閉めたが、その自社ビルにも借り手がつき、
 最近あまり見かけないが、引退して悠々自適の生活を送っているはず。

 安くて美味しいここの漬物は、
 他では調達するのが難しいレベルの上物だった。
 「おっちゃん、漬物専門店やってくれよっ」
 むろん冗談九割だが、そのたびに彼は破顔一笑した。

 自社ビルの向かいにある彼の自宅ガレージに私を招き入れ、
 おっちゃんはこう云った。
 「秋冬はここで前のように漬物つけて、お得意さんに売っからさ」
 「うわっ、やっぱしなっ!」

 おっちゃんと私は大笑いした。
 晩酌用にきゅうりの漬物を二本分けてもらった。
 働くことが好きな人ってのは、何ていうか実にいいなと想いつつ、
 これから冷や酒で、久々のうさみ特製きゅうりに丸ごとカブりつく。


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2013年9月14日(土)/その1376◇連鎖反応

 ハードだった今週のご褒美に、
 土曜午後は半休を取り、小石川・後楽園に遊ぶ。

 文庫のお供は、この春読んだばかりの藤沢周平『凶刃』。
 用心棒日月抄シリーズ全四巻の最終話で、
 ひょっとすると、すでに20回以上読んでいるかもしれない。
 詳細にストーリーが分かっていても、読み返したくなる作品というのは
 ほんとうに凄いもんだと想う。

 その前日、新譜CDで〝革命〟を成したカンタオール石塚隆充さんをインタビューした。
 後々のために、彼の〝日本語で歌うフラメンコ〟大成功の理由を、
 フラメンコ史に書き込む使命を痛感したからだ。

 さて、そのCDの選曲中、『ベサメ・ムーチョ』や『アルフォンシーナと海』は
 世界の名曲中の名曲だけど、今の若い人たちはほとんど知らないんじゃない?
 そう私が突っ込むと、タカは不思議そうな顔をしながらこう云う。
 「ある特定の世代の合わせて、という発想はなかったです。
  ふたつとも万人に聴いていただきたい名曲ですから」

 そうか、タカは曲の新旧ではなく、絶対基準で選曲したわけか。
 あっけらかんとしたその潔い回答がうれしかった。
 その翌日の散歩のお供に、読み掛けの新刊文庫ではなく、
 藤沢周平の不朽の名作をひっぱり出した理由が、いましがた判明したよ。

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2013年9月15日(日)/その1377◇いねむり先生

 『麻雀放浪記』の阿佐田哲也さん。
 そのペンネームは「朝だ、徹夜」から来ている。
 色川武大(いろかわ・たけひろ)の本名で、
 『怪しい来客簿』など数々の名作を書かれている。

 池波正太郎、司馬遼太郎、藤沢周平の三師匠にハマる前の青春期は、
 もっぱら色川作品に没頭した私なので、
 今でも暮らしの中に師匠の影響を発見して苦笑することが多い。
 ことごとく、良いとこ取りではなく、悪いところ取りなのだ。

 その巨匠との若き日の交流を描く伊集院静さんの自伝的小説。
 昨晩はその映像作品を観て、特にエンディング近くは胸が熱くなった。

 「楽しかった記憶を大切にせよ」。

 いねむり先生はそんなふうに云ったが、腑に落ちるものがあった。
 「楽しかった記憶」のための日常の奮起、
 その行為そのものが貴重なものに想えた。


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しゃちょ日記バックナンバー/2013年9月②

2013年09月01日 | しゃちょ日記

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2013年9月16日(月)/その1378◇フラメンコ曽根崎心中

 『フラメンコ曽根崎心中』、感動のライヴレポート! 

 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1911934806&owner_id=6763710

 近松の原作をもとに、阿木燿子がプロデューサー、宇崎竜童が音楽監督を務め、
 佐藤浩希、鍵田真由美が振付演出する、2001年の初演以来ロングラン名作。

 初演含め私も数回拝見したが、また観たくなった、無性に。
 「いつかフラメンコで『曽根崎心中』をやりたい」と、
 キラキラ眼を輝かせた今井翼さんを想い出す。


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2013年9月17日(火)/その1379◇ってか

 台風警報による足止め・引き籠もりのおかげで、
 パセオフラメンコ新年号『しゃちょ対談/ファミリア徳永(全7頁)』と
 『石塚隆充の革命(全6頁)』の二本執筆完了。

 う~む、人間万事塞翁が馬だっぺ。
 メゲちゃいけねえ、恨んじゃいけねえ、ってか。


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2013年9月18日(水)/その1380◇懺悔のチャンス

 「台風一家」

 どんだけ凄いヤクザもん一家なんだろ?
 「台風一過」と知るのは、ずっと後のことだ。

 誤った認識は強烈だったようで、
 今でも「たいふういっか」とニュースで聞くと、
 暴れん坊一家の乱暴狼藉をイメージする。

 彼らはどこに住んでるんだろう?
 どうやって生活してるんだろう?

 今も現在進行形でそういう疑問をお持ちの方は
 けっこう多いのではないか?
 ドキッとされた方は、白状するチャンスざんす。

 
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2013年9月19日(木)/その1381◇繊細な配慮

 さわやかな秋晴れ。
 ほんのり肌寒さが心地よい。
 
 昨晩は年に三度の三人会。
 プリメラのチコさん、SIEの林さん、そして私が
 代わりばんこにそれぞれの行きつけで呑ませる。
 それぞれ一度奢ると二度奢ってもらえるので、
 そのささやかな儲かり感がちょっとうれしい。

 すでに三十数年の付き合いなので、
 互いによく喰い、よく呑み、よく喋る。
 68、66、58、合計192歳である。
 あと三年続けば三人合わせて200歳を突破するが、
 同じ200歳ということなら、出来れば
 十人合わせて200歳のかわいい女子たちと呑みたいものだ。

 次回は林さんの当番。
 公演のため年末に来日するカニサレス夫妻をゲストに招くので、
 それぞれ連れ合い同伴とのお達しだ。
 会場は林さん行きつけの鮨屋。
 おそらくは、カニサレスでもエビサレスでもウニサレスでも大丈夫!という配慮だろう。


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2013年9月20日(金)/その1382◇ご褒美

 日中はまだまだ暑いけど、朝晩は過ごしやすい。
 いよいよ待ちに待った秋だなあ。
 やたら多忙なこの頃だが、明日の午前中までには諸々片づけ、
 午後から大江戸散歩に繰り出したい。

 向島の百花園、小石川の後楽園、駒込の六義園。
 それぞれ落ち葉のころの深まる秋の情景はすぐさま思い浮かぶが、
 意外なことにこの時期のイメージは不明である。
 まあ、とりあえずは今日の仕事が勝負だ。


 「一生懸命だと知恵が出る。
  中途半端だと愚痴が出る。
  いい加減だと云い訳が出る」
               (武田信玄)

 こんな当たり前なことに気づくのに、
 随分と遠回りしたものだと思う。
 一生懸命はたしかに疲れるが、
 自分で支給するご褒美の味わいは、その分だけ格別なのだ。


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2013年9月21日(土)/その1383◇フラメンコロイドの波紋
 
 その整然とした論理と決意と行動力には、思わずハッとさせられる。
 ギターの松村哲志、カンテの阿部真と高橋愛夜というツワモノ揃い。
 パセオ最新号〝フラメンコロイド〟のインタビューは、 
 前向きで骨太な現代フラメンコ論を奔放に展開している。

 その記事について、マイミク縁をきっかけに
 現在はパセオ執筆者として大活躍する〝みゅしゃ〟の感想。
 http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=6763710&id=1912300982

 「目立ちたいからフラメンコ」というプロセスを経て、
 「より良く生きたいからフラメンコ」へと時代は向かいつつある。
 一般的にはそんなのはマイノリティの戯言と一笑に付されるだろうが、
 そういう戯言がパセオを続けようとする最大の動機となっている。

 よりフラメンコに踏み込む人と、逆に引いてしまう人。
 リトマス試験紙のようなフラメンコロイドとのガチンコ対話。
 
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2013年9月22日(日)/その1384◇怪物たちがやってくる

「〝想像を絶する〟という言葉を体験したことがありますか?
 私はロシオ・モリーナの身体を見て、それを実感しました」
              (パセオフラメンコ7月号~東敬子)

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 いよいよ三週間後に迫るパルコ主催・秋のフラメンコ・フェスティバル。
 来たる10月14日(新宿文化大)には、いよいよロリオ・モリーナが出現する。
 約15分の映像を観て、特にバイレ練習生は〝想像を絶する〟ことになるだろう。
 すでに予定が入りロシオ公演をパスする方はこれ(↓)を観るのは危険!

 http://www.parco-play.com/web/program/movie/index.php#flamencofestival


 東敬子はパセオ9月号で、さらにこう書く。

 フラメンコに限らず、スペイン舞踊全般、バレエ、コンテンポラリーなど
 マルチにこなすロシオ・モリーナに、あるジャーナリストが
 「ダンサオーラ(ダンサーとバイラオーラを掛け合わせた造語)」
 という代名詞を付けました。

 普通、こういった踊り手はスペイン語で「バイラリーナ(女性舞踊手)」と呼ばれますが、
 このジャーナリストがロシオに対し、あえてバイラオーラを強調した造語を付けたのは、
 彼女があくまでも、フラメンコ舞踊に中で、その可能性を追求していることに対する
 賛辞でもあるのでしょう。
 そして、それをロシオは作品のタイトルに使いました。
 自身の未来への道しるべとして。

 ロシオ・モリーナという一人のダンサオーラは、未踏の道を、
 たとえ苦しくても、歩いていきます。
 だからこれからも追いかけていきたい。
 リアルタイムで、彼女の一挙一動に心を揺さぶられながら。

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2013年9月23日(月)/その1385◇平和

 とりあえず激イタの腰痛が収まり、
 〝どっこいしょ〟が減った。
 まずはめでたいことだ。

 ストレッチと歩きを増やし、
 薬を呑み、酒や食事を減らした成果が出てきたみたいだ。
 なるほど、継続は力なりか。
 何事も手間ヒマ惜しんじゃならねえってことだよな。

 表の道では、代々木八幡のお祭りの笛や太鼓が忙しい。
 仕事のメドも立ったので、これからちょいと散歩に出掛けるか。
 ドヨンとした空模様だが、歩くぶんには問題なかろう。

 さあ、どこらあたりを歩こうか。
 風の吹くまま、気の向くまま。
 束の間とはいえ、なかなかには得難い
 この慎ましい平和な気分を満喫してみるか。

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 2013年9月24日(火)/その1386◇負けるなアルコ&ピース!

 今朝のネット・ニュースから。

「コント日本一を決める〝キングオブコント2013〟の決勝戦が23日、
 東京・赤坂のTBSで行われ、アルコ&ピースのネタが視聴者からの苦情を呼んだ。

 1つ目のネタ披露で、白とピンクの全身タイツに身を包み、精子と卵子を表現。
 〝受精〟をテーマにシュールなコントを行った。
 得点は831点と決して低くなかったが、その後、2つ目のネタ披露を終えると、
 小林悠アナウンサーから『先ほどのネタで、苦情の電話が来ているそうです』と発表された。

 どうやらこのネタが〝下ネタ〟と受け取られたようだが、
 酒井健太(29)は『命の物語ですよ。これだから世間は...』と
 苦情に納得していない様子だった」


 「人は皆、数億分の一の確率で生まれてきたんですから」

 そういうメッセージを爆笑の中に盛り込んだアート性の高いシュールだったので、
 元気を引き出す後味も絶妙で、優勝するかもしれないと思っていた。
 未来への手応えを感じる着想そのものに対するクレームには、
 やり切れない理不尽を感じたことだろう。

 それもひとつの〝世間〟だが、割合的には極めて少ない。
 多くの〝世間〟は、アルコ&ピースの今後に注目している。
 落ち込む自分らに負けるな、アルコ&ピース!


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 2013年9月25日(水)/その1387◇ダンサオーラ

 〝ダンサオーラ〟とは、
 ダンサーとバイラオーラを掛け合わせた造語。
 ロシオ・モリーナのために創られたこの現代フラメンコ用語には、
 なぜか強烈な〝オーラ〟が漂う。

 ロシオ(29歳)は、その言葉に逆にインスパイアされて作品を創った。
 それが今回のパルコ・フェスティバルで上演される作品だ。
 そのロシオ・モリーナ『ダンサオーラ』(10/14新宿文化大)の最新映像がこれ。
 http://www.youtube.com/watch?v=-V7u2HffQAE
 
 5分ほどのダイジェストだが、まあ、あきれるほどに凄い。
 三度観たあと、あれこれ考えさせられたが、
 パセオ最新号に書いてもらった東敬子の分析の正確さに改めて驚く。

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 ロシオの中には完璧なリズムと音楽が常に存在しています。
 だから彼女は踊るとき、外部からのそれを必要としません。
 音や声を付けるのは、いわば観客へのサービス。
 裸で出かけるわけにはいかないから、服を着るようなものでしょう。

 けれど凄いのが、彼女の踊りを観ていると、観ている方も、
 音がだんだん遠ざかっていくこと。
 そして同時に、彼女が表現するとものが、
 静寂の中にぱあーっと広がっていきます。

 それは能の世界に通じるものかもしれません。
 特別な舞台美術や照明効果が無くても、
 演者と空間だけですべてが見える。
 それは、その演者の表現力であり、存在そのもの力です。
 彼女の舞踊は、観る者をインスパイヤーするパワーに溢れているのです。

       パセオフラメンコ10月号『いざ出陣!』より(文/東敬子

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2013年9月26日(木)/その1388◇解らぬままに

 なぜそんなことをする必要があるのか。

 私がそこに見たものは、たとえ抑圧されても貫き通す力。
 困難な状況でも水のように形を変え流れ続ける柔軟性。
 機転を利かせ、新しいものを生み出す創造性。
 それはまさにフラメンコの持つ存在意義であり、美しさでした。

 フラメンコの中に存在する人生の共通項を、
 身体を通して表現する。
 それがロシオのバイレなのです。

  パセオフラメンコ9月号『スリリングなダンサオーラ』より(文/東敬子)

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 笑えてしまうくらいに凄いので、うっかり何度も再生してしまう
 ロシオ・モリーナ『ダンサオーラ』(10/14新宿文化大で日本初演)の最新プロモ映像。
 http://www.youtube.com/watch?v=-V7u2HffQAE
 
 表現的には彼女の洗練の対極に位置する、先ごろ来日したカンテフラメンコの巨匠
 マヌエル・アグヘータの、洗練とは無縁の絶叫を、何故か連想してしまう。

 マヌエルとロシオの共通項を発見すること。
 もしも運よくそれを発見できた場合、
 それが自分の人生をより良くしてくれるヴィジョンだと考える可能性は高い。
 だがもしも、その結論が良いと分かったとしても、
 それがまるで自分に相容れないものである可能性はさらに高いかもしれない。

 十代で出逢ったフラメンコギターの預言者パコ・デ・ルシア以来、
 そういう問題の存在に気づき、にもかかわらず
 その問題解決を保留にしてきた自分を優柔不断だとも思うし、 
 おかげさんでいい仕事が見つかったとも思うし、
 また、楽ではない余生に退屈しない楽しみを残したとも想う。

                     
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2013年9月27日(金)/その1389◇このブチ切れを聴けっ!

 12月に来日するカニサレス
 パセオ9月号の今井翼対談に登場した、
 フラメンコギターの超大物マエストロである。

 きのうは仲間内で、カニサレスを肴に最終まで呑んだ。
 あのブチ切れインプロヴィゼーションを聴きたくなって、
 てゆーか観たくなって、深夜この映像にカブりつく。

 http://www.youtube.com/watch?v=WjKR-wC3myE&hl=ja&gl=JP

 終盤の息の長いインプロ(即興)。
 目の醒めるような超絶技巧でガンガン突っ走るんだが、
 その結果としての完璧な構成力にカニサレスの本領がある。

 アランフェス協奏曲など、カニサレスの弾くクラシックも絶品なのだが、
 二十数年来の大ファンとしては、やっぱりこの〝ブチ切れ感〟がたまんねーわ。


 カタログ追加写真(カニサレス_アランフェス).jpg

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2013年9月28日(土)/その1390◇徳永兄弟

 今朝は徳永兄弟の最近のライヴ映像を観る。

 http://www.youtube.com/watch?v=yRGBctTb_rI

 画面右脇を見ると、兄・健太郎(22歳)の、
 さらに若い頃のスペイン修業時代の映像がある。

 http://www.youtube.com/watch?v=FIWKrdhUqCg

 飾らない腕っこきのイケメン。
 メジャーシーンで大活躍する沖仁に続く、若きフラメンコギターの星。

 
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2013年9月29日(日)/その1391◇ひたすら純粋

 「何でっ!?????」

 ライヴステージ上の彼を初めて観たとき、そう心に叫んだ。
 イスラエル・ガルバンのあらゆる動作にはフラメンコの伝統が根ざしている。
 だが彼は、いっさい人マネをしない。
 さらに彼は、いわゆる〝カッコいい〟やり方もいっさい選ばない。

 今回(10/13/新宿文化大)の上演作品は2005年初演の『黄金時代』。
 1900年前後の黄金時代の伝統的フラメンコを、
 イスラエルだけに可能な先鋭な感性でステージに蘇らせる。
 4分足らずのダイジェスト映像からは、
 そんなイスラエルの輪郭が大まかにはつかめる。

 小さい頃から伝統的なフラメンコを徹底的に叩き込まれたサラブレッド。
 その部門での超エリートに収まることなく、
 賛否両論が吹き荒れるアバンギャルドな領域に、ちゅうちょなく彼は踏み込んだ。
 もちろん何をやっても彼の身体能力や表現力はあきれるくらいに群を抜いている。
 だが、怒り出す観客に対して〝サービス〟をすることもない。

 短い映像からハミ出すような数々のヌメロには、
 闇と光が淡々と交錯し、それらは安易には完結しない。
 それは人の心、あるいは生命の心の深層の率直な反映のようにも思えてしまう。
 喜怒哀楽の感情よりもずっと奥深くにあるそのセンサーは、
 人の世ではなく、むしろ宇宙とのつながりを強く想起させる。

 それをアバンギャルドと決め付けるのは私たちであって、
 いまを生きる彼は、自らを伝統や時空の制約からも解き放ち、
 〝プーロ(純粋)フラメンコ〟本来の普遍を、
 ただひたすら純粋に踊っているかのように想えてくる。

 
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2013年9月30日(月)/その1392◇泣く子も笑う

 近ごろはフラメンコのネット映像を盛んにググる。

 この秋から冬にかけては、この不況の中を、
 信じられないようなフラメンコの超大物がたくさん来日するので、
 そうした中でいい映像を見っけると、即ツイッターやFBやミクシィに貼り付ける。

 ロシオ・モリーナ、イスラエル・ガルバン、ベレン・マジャ。
 フアン・デ・フアン、レメディオス・アマジャ、ニーニョ・ホセーレ。
 そして大トリにカニサレス。

 そこそこ入ってもらえないと次が続かないので、
 フラメンコ応援団の一員として、紙やネットで伝達役に精を出す。
 踊る人口は増えたが、観る人口は意外と増えないフラメンコ。

 年々レベルの上がる日本のフラメンコ界だが、そこだけは泣き所で、
 なので泣いてるヒマにせっせとプロモーションを助るわけだが、
 あっと驚くイチコロ映像を発見するたび、大笑いしてバランス取ってる(笑)。

 日曜朝の大収穫は、
 フラメンコギター沖仁と玉置浩二(安全地帯)の「ワインレッドの心」。
  http://www.youtube.com/watch?v=STlzqd6jcFg
 さらに、カニサレスの超絶技巧コロンビアーナ(ガリガリ君)汗
  http://www.youtube.com/watch?v=LXJqf7GbWyI