類まれなるリズム感
こう見えても、関東格闘犬選手権(シェパード部門)や全国闘犬グランプリ(土佐犬部門)や国際無人島グランプリ(スーパーヘビー級)などでは、一度として負けたことのない犬なのである。
まだ一度も出場したことがないからだ。
大体からしてそんな大会あんのかとも思う。
8時起床、朝風呂に飛びこんでからストレッチ、朝めしをがっつり食ってから、ジェーと共に代々木公園ドッグランで小一時間を遊ぶ。
ジェーとの協定によって毎週土曜午前中、近ごろ定着しつつある習慣だ。
いつかのノー天気な“バッハ歴”などもここで思いついたのだが、決まってロクでもないアイデアの源泉は、どうやらこの楽園における穏やかなひとときにあるらしい。
そのパラダイスから20分ちょい歩いて、代々木にある連れ合いのスタジオにジェーはそのまま出勤(=番犬担当)する。
一方の私は、スタジオ入口にあるバル“エントラーダ”で薫リ高いエスプレッソをすすってから、多くはパセオに、まれに急ぎ仕事のない場合はゆくえ定めぬ大江戸ぶらり歩き(=のら犬担当)に出かける。
で、夕暮れには家路につき、ひとっ風呂浴びて、スタジオから戻った連れ合いとともにご近所の行きつけで晩酌つーのが毎週土曜のお定まりコースだ。
いわゆる隠居生活なるものを前倒しにして40代ですませてしまった私に、かしこまった休日はかえって鬼門だったりもする。
四半世紀なじみ尽くしたフラメンコまみれの生活に、ストレスやマンネリを感じることはほとんどなくなったが、2日以上続けて休むとかえって体調を崩すことは何度も実証済みなのだ。
近ごろ流行の老人力と云うべきものかもしれない。どーでえ! 凄えだろ。(TT)
てなわけで、土曜日のこんなルーティンが、最近の私にはもっともリズミカルなペースをもたらすようである。
かくして、定評ある私の類まれなるリズム感は、よりいっそう研ぎ澄まされることになる。
「そもそもキミにリズムはあんのか?」
主に付点音符のとり方に独創的欠陥を発揮する十代の私に、
何とかリズム調教しようとする優しいギターの師匠の、
汗まみれのあきれ顔が、ふと懐かしく浮かぶ。
[自分が登場する回には、きびしい原稿チェックを入れるジェー]