フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー2019年8月

2019年08月17日 | しゃちょ日記

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2019年8月31日(土)その3609★暗闇に象を評す

まっ暗闇の中に象がいる。
「丸くて太い棒のようだ」
象の鼻にさわった者はこう云う。
牙や耳や胴や背中や足や尻尾にさわった者も、
それぞれの感触を述べる。
皆の感想は部分的に正しいが、
象全体のイメージはつかめていない。
ローソクでもあれば一目瞭然なんだが・・・

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毎夏の新人公演やプリメラ祭を観るたびに想い出すのがこの話だ。
ああ、相変わらずおれもこの内のひとりだ。
宗教もアートも、国家も会社も家族も、相変わらずその内のひとつだ。
個人も組織も、ローソクの機能を探す旅には終わりのないことを想い出す。
そこには虚脱も後悔もあるが、それがゆえに希望もあるし退屈もない。

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2019年8月30日(金)その3608★フーガの技法

想えば、単眼的な原理主義(=妄想)でぐいぐい引っ張り押しまくる青春だった。
その弊害に気づくのは四十代前半で、複眼的なサラリーマン経験のないことの
最たるマイナスだったと今さら想う。
かと云ってその場しのぎの調整主義も未来に災いをもたらすアホらしい迷惑だろう。
保身のためにそこまで堕ちる必要もないし、実際には保身にすらならない。
名案浮かばず、とりあえず真夜中、バッハのフーガを聴く。
先輩の云い分、後輩の云い分、そしておれの仮説。
今すぐ解決には至らぬだろうが、にじり寄るイメージは
やはりThe Art of Fugue、フーガの技法。

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2019年8月30日(金)その3607★チョイ役

来年7月号の特集(プリメラのニューウェーヴ20周年)の
写真取材も兼ねる今宵のライヴ。
主役のチコさんを撮影するのだが、
カメラマンの要望で私もチョイ役で参加、
たぶん犯人役か死体役だと思う。

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2019年8月29日(木)その3606★手遅れヤロー

毎晩呑んでた酒を週2~3日にしたという。
炭水化物は昼めしだけで野菜とフルーツに凝ってるという。
モクも電子タバコに切り替えたという。
昔からやること為すこと手遅れなヤロー・・・云うまでもなくオレである。

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2019年8月29日(木)その3605★秋が来ない

近ごろのマイブーム。 ピアノ・インプロヴィゼーションで一世を風靡した
キーズ・ジャレットがチェンバロを担当するバッハ・シリーズの一枚。
二十年ほど前の録音で、颯爽としたテンポで独奏楽器
(この録音ではキムのヴィオラ)を終始盛り立てる。

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タテ軸をこだわることなくヨコ軸の美しい流れに身を任せるような 演奏だが、
ラストまで聴き終える頃には、バッハ本来の骨格や
構築性がしっかりと印象づけられる快演で、
一日中流していても飽きが来ない。
秋が来ないのはやだあな、
と混ぜっ返しながら仕事に戻る。

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2019年8月28日(水)その3604★一曲入魂!

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この夏ラストのライヴは、巨匠チコさんのプリメラ祭。
私は金曜の『バイレソロの一曲入魂』に出掛ける。
来年二十周年を迎えるプリメラ祭の取材に出掛ける編集部井口が、
木・金とロビーにパセオブースを出すというから、ぜひ賑やかしに寄ってね!
昨日今日明日と酒抜いて、金曜終演後は
夜の中野に繰り出す定番へべれけコースだわ。

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2019年8月28日(水)その3603★王侯貴族

フラメンコだととめどなく暴走する危険性が高く、
そこにのめり込んでは、まるで仕事にならない。 
ベートーヴェン以降も同じく。

リーダーシップを発揮するいくつかの独奏楽器、
それらを支えるストリングス、そしてがっしり足元を固めるベース。
そういうチームワークのBGMが小さく流れることの多いパセオ編集室。
古き佳きバロックや大人のジャズが中心で全体に淡々と地味系。
その昔の王侯貴族のような環境で、
現代のビンボー人が快適に仕事できること自体おかしくてラッキー。
人類の音楽史の恩恵は豊かな暮らしの源泉。
だんだんと人類が好きになってくる感じがいい。

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中央のフルート奏者はドイツ史に名高いフリードリヒ大王。
大王の与えたテーマ(9小節)で、バッハは名作『音楽の捧げもの』を作曲。
曲中のトリオソナタはそのジャンルの王さま!

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2019年8月27日(火)その3602★死んだら休める

「小山くん、死んだら休めるから」

なくなった川原先輩の十八番。
激忙をボヤく私は、呑むたびにそうハッパを掛けられた。
創立以来のフラメンコ協会の名監事で、もろもろお世話になった。
業界ボランティアに8時間、本業に8時間、残りは呑みと睡眠。
年中無休でそんな毎日のアラフォー時代だったが、
いま流行りの働き方改革も悪くない。
多様性を実現できる時代だし、 人類平和の鍵はそこにあると想えるから。

自分の場合は労働そのものに歓びを見い出すタイプなので、
労働の目的や方向性そのものへの関心が高い。
ひと足お先に行った同期の間瀬も、そんな意味で同質だったから、
互いに余計な説明の要らぬ仲だった。
何をやっても、どう生きても一生は一生、
間瀬は幸せな奴だと納得している。

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2019年8月26日(月)その3601★多重人格

新人公演の三日間というのは、
私の中の多重人格がそれぞれ堂々と渡り合う。

★フラメンコ派
★アート派
★エンタメ派
★絵心・歌心派
★トータル派

この他にも技巧派など数人いるのだが、代表格はこの5名。
私同様みな我がままなので、まとまるわけもない(TT)

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2019年8月26日(月)その3600★絶倫

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新人公演全三日間のすべてを全身全霊で味わい尽くす
スーパーパセオライタートリオ。
休憩中はロビー・パセオブースでさくらをやる、
想像を絶する体力精神力!

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2019年8月26日(月)その3599★驚きの飛躍

ギター部門の飛躍的なレベルアップがうれしかった。
この調子がずっと続きますように!
新人公演の出演者とあらゆる裏方の皆さん、
そして三日間盛り上げてくれた来場者の皆さんに感謝します、ありがとう!

祭りが終わり一休みしたいところだが、
今週はパセオ10月号最終入稿と月末業務が山盛りで、 もうあとひと踏ん張り。
まあ、踏ん張れるうちが花だしな。
夜は月曜定番おとなり大吉で、通常コンパス進行に。

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2019年8月25日(日)その3598★バトンタッチ

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いよいよ最終日。 あまりのおつかれさんに、ゆうべは急きょ呑みを入れ、
ノンストップ9時間の爆睡、日本最大のフラメンコ祭の楽日に備えた。

こんなのが毎年あったらいいなと業界の明るい未来を夢見た28年前。
三十代・四十代だった若き設営陣も皆六十代・七十代となった。
世代交代を恐れぬ好ましいバトンタッチこそが、
これからの三十年を願う最善手とみえる。

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2019年8月24日(土)その3597★ナイスブレンド

お祭りと10月号最終入稿が重なり、
冷や汗と油汗がいい感じでブレンドする土曜午後。
まあそれでもどーやら一区切りつけ、盛大にステレオタイム。
会期中の定盤はもちろんカマロン&パコ・デ・ルシア!

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2019年8月23日(金)その3596★立ち読み大推奨!

サンプル誌6冊出して、立ち読み大推奨!の明朗ゆるゆるブース。
特典付き定期購読申し込みが順調でうれしー
端っこで呼び込みやってる太めのトムクルーズがおれだす!

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2019年8月23日(金)その3595★お祭りスタート!

猛暑もいいが、雨もいい。
いよいよ本日より三日間の新人公演。
15時になったら家に戻ってシャワー浴びて、徒歩12分の中野ZEROへ。
今年も特集号(12月号~大森有起撮影)の表紙は
全出演者の中から選ぶのでワクワクドキドキの全編鑑賞。
では、ご来場のみなさん、 のちほどロビー右手のパセオブースでお目にかかりましょう!

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2019年8月22日(木)その3594★フラメンコ甲子園

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フラメンコの夏の甲子園。

明日から丸三日間、フラメンコ協会の新人公演。
今年で28回目、当初の頃の私は三十代半ばだったが、
慣れない設営に人手が足りず炎天下の入場整理に
駆け回った若さとドキドキ感が懐かしい。
開演までにはバケツ一杯ほどの汗をかいたから、
どうしても夏の甲子園を連想してしまう。
ともに大汗かいた間瀬弦彌は一足先にこの夏旅立った。
現在の会場なかのゼロは冷房の利いた建物内に
行列を収容できるのがホントありがたい。
ただし、出演者の汗と涙は昔も今も変わらない。

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2019年8月21日(水)その3593★再稼働

激忙の助けにと購入したパセオの新しいミニコンポ用に、
家からせっせとCDを持ち込む近ごろのマイブーム。
さくさくと作業効率を高めるためのBGMなので、
 「大好きなCD」というくくりでは選べないこと (仕事にならないこと)に気づく。
よって、押しつけのない淡々と清々しい演奏が主流になるから、
もう20~40年聴いてないディスクがこの場合のお宝だったりする。
古典派はお行儀が良すぎるし、 ロマン派以降はちょっと主張が強すぎるから、
どうしても即興気分満載のバロック期の音楽が中心となる。
バロック特有のポリフォニー(複数メロディ)のほうが
古典派以降のホモフォニー(単一メロディ)よりも、
各案件に柔軟に対応できることにも今回気づいた。
小さな音量でもやる気にさせてくれる音色と
爽やかな曲想が重要なポイントで、どよよん系はこの際パス。
まあこれらは作業と連動する個的な音楽生理の偏好。
高校時代の地味なお気に入りヴィヴァルディ『忠実な羊飼い』
 (実はシドヴィル作曲)もまさかの再稼働で、 気分よく集中を高めてくれる。
1970年代、格調高きマクサンス・ラリュー(フルート)の録音。 
ひたひたとうれしい。

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2019年8月20日(火)その3592★引き継ぎ

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36周年に突入、本日発売パセオフラメンコ9月号。
巻頭クドトモの見開きが眩しい。
来年11月のパセオライヴ出演も決まった。

さて、今宵は赤坂で三人会。
四十代カサの西田氏、五十代ガルロチの村松氏、
六十代オレという面子で、 昨年から年に三度のペースで呑んでる。
持ち回りで幹事&勘定を担当するが、今回は尚さんで次回は私。
ややこしい決め事もなく、まあ世代間ギャップに
自然と馴染む親睦会とでもいうか、各員暴走歓迎のお気楽な集まり。
なき本間三郎師匠が三十年以上むかしに始められた木曜会が原型で、
この先も三十代や二十代の若手レギュラーが現われるのを静かに期待している。

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2019年8月19日(月)その3591★シギリージャの理由

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「癌の痛みや治療の煩わしさの中で弾くには
 シギリージャがもってこいだったのです。
 まさにシギリージャしかなかったのです」

69歳・協会新人公演奨励賞受賞ギタリストは、
イヴ・サンローラン ファッションジャパン元社長。
森谷忍『夢の途中』(パセオ9月号)

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2019年8月18日(金)その3590★涼しげで頼もしい

大久保通りを南に歩いて五分のパセオだが、
困ったことに道中日陰がない。
もれなく直射日光がついてくる歩くサウナである。

着くなりクーラーを利かせ、きのう設置したミニコンポにかぶりつく。
仕事がはかどりそうなBGM用CDを30枚ばかり担いできたのだ。
多くは雑味のないバッハで、中でも集中を助けてくれそうな
このバロックリュートは追い込み仕事に最適かも。
この涼しげで頼もしい構築性はタダ事ではない。

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2019年8月17日(金)その3589★新宿いまむかし

パセオのBGM用ラジカセがぶっ壊れて、
家のお古を持ってきたのだが何せ音が良くない。
朝イチで新宿ビックロに出掛け、いい感じのミニコンポを買ってきた。
つもりだったがスピーカーが別売りだった(TT)
ビジュアルは堀潔の描く大正時代の東京郊外・新宿駅だが、
今日はもう少し混んどった。

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2019年8月16日(金)その3588★よりどりみどり

ライヴや取材や呑み会以外は、
ここ中野を出ることの少ない箱入り爺の近ごろ。
若干自家中毒気味なので気晴らしに出掛けたくなるのだが、この猛暑である。
向島百花園から隅田川・浅草界隈、西日暮里・道灌山から谷根千散策、
深川あたりで満喫したい江戸情緒などなど、選択肢はよりどりみどり。

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さあ、出掛けるか!と威勢よく徒歩四分の中野駅に向かうのだが
手前の珈琲ロードで一服するうちに面倒になり、
そのまま家路をたどるパターン。
家の前のバス停から吉祥寺の井の頭公園をめざすも、
終点に着くなりカフェに飛び込み、公園まで歩くのが面倒になり、
JR吉祥寺から中野にUターンするパターンなどなど、
果敢な決断の結果もよりどりみどりである。

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2019年8月16日(金)その3587★漁夫の利の結末

終戦記念日の晩、昭和11年2.26事件の最新資料を公開した
NHK特番のソンタクのない潔いスタンスには驚いた。
陸軍若手将校クーデターの一週間前には、
海軍はその具体的情報を掴んでいたこと。
陸軍・海軍の上層部はともに漁夫の利を狙い、
そして昭和天皇の恐れと怒りと決断。
この事件を契機とする、逆えば殺すという軍人の勢いに政財界は沈黙し、
それから五年後、日本は太平洋戦争に突入する。
過去の真実に迫った番組の締めくくりは
〝真実とは何か?〟に対するシャープなナレーション。
知らない方がよかったという真実はたくさんあるが、
知らずにいると悲劇を反復する真実もある。
いつの時代もこれからも、
自ら見極め自ら判断行動するよりないのだと、改めて想う。

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2019年8月15日(木)その3586★時の運

昼めし休憩は、カタロニアの盲目のジャズピアニスト、テテ・モントリュー。
バルセロナのプロダクション社長の薦めで知ったのだが、
それがきっかけで彼の会社と取引を始めた。
テテのピアノを愛する人にそう悪い奴もいねえだろうと。
早いな、あれからもう25年ほど経つ。

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終戦記念日を迎えるたびに想う。
もしあと25年早く生まれていたら、
十中八九は戦死してたであろう私は〝時の運〟を想う。
25年なんてアッと云う間だからそれは生々しい。
聞こえてくる蝉の音がテテのピアノとシンクロし、
それはまるでレクイエムのよう。

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2019年8月15日(木)その3585★歓喜と狂喜

駅前の銀行で原稿料を振り込み、いつもの珈琲ロード経由で出社、
『シェルブールの雨傘』サントラで涼む。
今日は原稿二本と雑務片づけ日。
おとついからの酒抜きに身体が安堵しながら歓喜しているのがわかる。
まあ、呑んだら呑んだで身体が狂喜するわけだがね。

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2019年8月13日(火)その3584★ささやかな修復

通夜、接待、祝い事、定例と四夜つづけて呑み。
久々の二日酔いで大いに絶不調。
フランシス・レイ『白い恋人たち』サントラで心身を涼ませる。
欠けた茶碗をご飯つぶでくっつけるほどの効果あり。

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2019年8月12日(月)その3583★どの道ダメなら

曲はクラシコでもおなじみのファリャ〝はかなき人生〟。
ファンタスティックなバッハで、 パコ・デ・ルシア以前は最も好きだったギタリスト、
あのパークニングのやんちゃが爆発する。

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あー、残り人生はこんな感じがいーかも。
技術的には100パー無理だが、犬も歩けば棒に当たるの要領で、
 どの道ダメなら当たって砕けたい。
今日は月末金土日の新人公演に通うための編集ストック作りに精出し、
夜はおつかれ定番大吉。

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2019年8月11日(日)その3582★至芸は祈る

家で練習するヴァイオリニストの父が音を外すと 泣き出したというハイフェッツ(1901~1987)は、
七歳のときメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲でデビューした。
ロシア帝国リストニアに生まれ、ロシア革命を避けアメリカに移住したこのユダヤ人は、
ドイツの誇るバッハにおける最良の演奏を残した。
神々しいとしか云うようのないこの完全無欠のシャコンヌは、
ハイフェッツ69歳のスタジオ録音。
音楽は国境を超えるとはこのことかと想う。
そこには国際平和への静かに深い祈りが聞こえる。

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渋い超絶技巧の延長線上に想い起こすのが、
ひとつ年上の三遊亭円生(1900~1979)。
師匠もまた、70歳前後に多くのスタジオ録音(ソニー)を残した。
永遠なる至芸という点で、円生録音はハイフェッツと同じ領域にあると私には想えるが、
言語の壁が国境を超えられないことが残念無念。
まあこれはAI時代に期待を託そう。
ちなみに晩年の師匠は中野区中央に暮らされたという。
五年を暮らすこの町内はくまなくジェーとほっつき歩いたが、
そのお住まいの位置はいまだ定かではない。

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2019年8月10日(土)その3581★臨時休業

ボトル半分でやめといてよかった。
八時間ノンストップ爆睡と、朝湯にオレンジですっきり。
本日臨時休業。
ああしかし、パセオに行きたい。

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2019年8月9日(金)その3580★ツルんだ理由

こんな時代だというのに、この暑さだというのに集客力はバツグン。
みんな彼を頼りにする面々だ。
感激屋の奴に見せてやりてえ光景だが、
この肝心なシーンにお前だけがいない。
変わらぬドジさ加減がおかしくて泪がとまらん。

あいつもおれも二十代半ば、
どちらも会社員には向かないところ、
好きな仕事ならナンボでも頑張るところ、
いい女が大好きなところ、ツルんだ理由はそれだけだった。
呑まない奴だったが、時おりストレートをイッキ呑みして場を盛り上げた。
ふと気づけばさっき開けたスコッチが半分空いてる。
ま、いいか、明日は臨時休業だ。

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2019年8月9日(金)その3579★フラメンコ

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大森有起撮影の間瀬弦彌。
四十年前は奴もカメラマンだった。
可愛いらしい女性を見つけると、反射的にシャッターを切った。

仕事を切り上げ、ひとっ風呂浴び、似合わぬ黒ネクタイを探す。
これから着替えて、間瀬が休息する明大前の会場へ。
奴に先を越されたのは、ほんと痛えよ。

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2019年8月7日(水)その3578★ファンタジスタ

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いつどう顕れるか分からないエスプリの宝石箱。
井上圭子ファンタジーナイト、妖しい予感のプログラム。

1.カーニャ
2.ブレリア
 (ギターソロ)鈴木淳弘
3.ティエント
4.マラゲーニャ
 (カンテソロ)川島桂子
5.アストゥリアス
6.グァヒーラ
 (ムシコス)三木重人 鈴木淳弘
7.アレグリアス

2019年8月8日(木)20時(19時30分開場)
高円寺エスペランサ
パセオフラメンコライヴVol.114
井上圭子ソロライヴ
 井上圭子(バイレ)※写真/小倉泉弥
 川島桂子(カンテ)
 鈴木淳弘(ギター)
 三木重人(ヴァイオリン)
【料金】4,500円1ドリンク付
【予約】昼☎03-3383-0246/夜☎03-3316-9493
     selva@tablaoesperanza.com

パセオ忘備録担当は白井盛雄、撮影は井口由美子。
やや壊れ気味の今週、ファンタジスタ・ドド子の余韻次第で、
おとなしく帰るか、しっかり呑むか。

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2019年8月5日(月)その3577★天使の帰郷

おれはさぁ、この歳まで好きなフラメンコでどーやら食っていけるって、
なんてツイてるんだって思うんだよな。

ここ数年は、これが彼の常套句だった。
学年はいっしょで四十年来の盟友。
プロモーター時代の二十代は、新宿界隈を根城に
現場オールマイティの彼と何だかんだと毎日のようのツルんでた。

ともに我がまま同士でありながら、奴が天使なら私は悪魔であり、
掛け値のない彼のプーロスタイルが私にはうれしくもあり負い目でもあった。
奴の〝純粋〟はハンパではなかった。
時おりブラッと訪ねてくる彼と編集部の屋上で語り合う小一時間を、
ヨーロッパ映画のロングシーンのようにいまも生々しく再生できる。

去年の秋ぶらっとやって来た彼が、
2019年夏は彼が手塩にかけた団体の25周年イベントだと云うので、
その場で現地取材を決めた。
理不尽に対する復讐からフラメンコ協会を立ち上げた私に対し、
純粋なフラメンコ愛から彼は全国学生連盟を立ち上げ育てた。
勝負師気質に辟易としながらも彼は私を重んじ続けてくれたが、
私には彼のプーロな生き様が眩しすぎて
奴と真正面から向き合うことがややシンどかった。

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2019年8月5日(月)その3576★フルカバー

パセオ斜向かいの評判のフルーツ屋さん。
仕事を終え、ここでオレンジやらバナナなどを仕入れて家路をたどるのは、
ほぼ一日おきのルーティン。
湯上りのオレンジとバッハタイムがめっちゃ肩こりに効く。

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朝から途方に暮れる事態に直面し、午後になって
なぜか渇望したヒラリー・ハーンのシャコンヌ。
優等生的に弾くが、攻めに転じる刹那の逞しい音色がグッと来る。
ゆえに弱音も優しく美しい。
ダブルストップ(重音)はこの上なく透明で、
落ち着いたリーダーシップは常に全体を俯瞰しながら推進する。
つまり、私に欠落する要素を
ほぼ全面的にカバーする相性抜群のヴァイオリンと云えよう(TT)

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2019年8月5日(月)その3575★妖しいオーラ

中野に住んで五年目。
暮らしやすい街、お気に入りの住まいなので、
ジェーと同じく終の棲家になるのかもしれない。

ただ、若干の謎は所どころにある街だ。例えば、
私の住まいは「中央五丁目」で、すぐ近くのバス停は「中野三丁目」。
パセオの住所は「中野三丁目」で、すぐ近くのバス停は「中央五丁目」。

え、えーーーっ?
・・・だが、この謎はそのままにしておこう。
なぜなら、あのミステリアスな中野ブロードウェイのように、
ほんのり妖しいオーラはこの街の最たる魅力だから。

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2019年8月4日(日)その3574★予行演習

☆週に二、三日呑んでいい。
☆朝昼は好きなものを好きなだけ食っていい。
☆毎朝カレンダーに体重をデカデカ書き込む。

普遍性はさておき徹底的におれ向きに、シンプルにこの三つ。
この二ヶ月ちょいあまり、新しい暮らしのコンパスにすっかり馴染んだ。
すぐさまリバウンドではつまらないのでのんびり気長にやりたい。
10キロ軽くなって、ウソみたいに足腰も軽くなった。
この先一年、月1キロのペースで12キロ減量の見通し。
ジェーの具合がよろしくなくなった頃から止めていた
趣味の散歩も、ぼちぼち再開だな。

隅田川から水源の井の頭公園をめざす神田川のぼり、
三ノ輪から早稲田の都電沿線をブラつく昭和の旅、
故郷お江戸の輪郭を味わい尽くす山の手線沿線一周などなど、
かつてのお気に入りコースがおいでおいでと手招きする。
まるで冥土の旅の予行演習だが、まあ善は急げで、
まずはジェーとツルんだ裏の遊歩道(終点は東中野)で軽くリハビリだ。

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2019年8月4日(日)その3573★日曜日

NHK将棋トーナメントで手に汗握ったあとは、
シャンプーの魔術師・カリスマななちゃんの
カット&カラーで鼻の頭に汗をかく。
シュッと整えたら、パセオ寄っていい汗かいて、
晩めしはおでんかチャンコで汗ダクだな。
仕上げに体重計乗って冷や汗もしくは油汗の段取り。

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2019年8月3日(土)その3572★ふつーが恋しい

枝豆のイタリアン風。
ネットで知り即日試した。
枝豆を塩もみして5分寝かす。
その間にニンニク・鷹の爪をオリーブオイルで温め、
そこに皮ごと豆をぶっこみ、好みの硬さに炒って出来上がり。
所要時間は8分くらい。

ん、んまいっ、ムイ・イタリアン!
お供は安売りスパークリングワインね。
調子こいてバクバク喰ってると、ちょっとモタれてくる。
・・・次第にふつーの塩ゆでが恋しくなってくる三代目江戸っ子(TT)
えーと、試すんなら、ちょっと目がいーかも。

で、写真は注目◎の宮原一浩さんのイタリア旅情。

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2019年8月2日(金)その3571★時の流れに

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テレサ・テンは若い頃から大好きな歌い手だが、
「☆☆ハラ、★★ハラ」全盛のこの時代、ただ彼女のひたむきな歌声が好きだと
云った途端にお縄になりそうなムードがある。
近未来に向け、おおむね健全な方向性だと納得できないわけでもないが、
SNSをエンタメ化し過激な少数意見を増幅するマスコミは、
あの悪名高き猜疑心魔王スターリンをも連想させる。
    
1917年ロシア革命、当時の芸術家たちは共産主義政府に深く関わり始めた。
だが、社会秩序の確立に焦る政府は、やがて味方であるはずの
芸術家たちを排除し自由な創作をも奪い始めた。
どちらもノータリンだがスターリンは「社会主義リアリズム」提唱から数年後、
芸術家を含む68万人の同志を殺した。
健全さを求める腰の入った反動はいつの時代も好ましい。
だが、魔女狩りや踏み絵を強要するマスコミの扇動や全体主義的な動向は、
大戦突入前の世相をもフラッシュバックさせて情けない。
人の情感を甘くみてはいけない。

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2019年8月1日(木)その3570★気合いと経験値

今をときめくアントニオ・ナハーロ表紙のパセオ9月号。
フラメンコを知りたい人たちを、ひと目ハッとさせたい。
なので誌面の随所に強烈な憧れ感を放つフラメンコ・ヴィジュアルを散りばめた。
フラメンコを知る人たちとは、有益な知恵と情報を共有したいので、
連載と特集の濃度をシュッと高めた。
69歳奨励賞受賞の森谷忍『夢の途中』は圧巻。

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来春予定の改編だったが、めきめき腕を上げる相棒井口の参加で
半年以上も前倒しで実現した。
編集長復帰から1年半、ようやくスタート地点に立てた・・・とまあ、
可哀想なくらい気合いだけは充実している8/20発売の9月号。
新人公演ロビーにその見本誌をごっそり並べるので、
まあ、変貌パセオをひと目ご覧になっていただきたい。
もちろん大いにバカ売れを期待するものだが、創刊36年、
内なる私の豊富すぎる経験値がそれを涼しげにあざ笑う(TT)