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2018年8月31日(金)その3333◆フル煮えおでん
夏バテを防げたのは、おそらくは週イチで作ったおでんのおかげで、
ジェーの食いつきの良さも尋常ではなく、
運があれば彼はこの猛暑を乗り切るかもしれない。
カツオの一番出汁、多めの酒、塩と醤油少々と隠し味にコンソメ。
メインは骨付き豚と里芋と蓮根とちくわぶ。
さらに昆布、大根、こんにゃく、椎茸、ごぼう、ゆで卵、薄揚げ、
焼き豆腐、小ぶりのジャガ芋、はんぺんなどの好物で賑わう。
小さな弱火でことこと煮込む二時間半は、重低音と相性のいいステレオで
バッハ無伴奏チェロ(全六曲で同じく二時間半)にどっぷり浸る。
70種ほどの無伴奏CDから選ぶ奏者は、
おでんだけにもっぱらピエール・フル煮え。
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2018年8月30日(木)その3332◆夫婦の絆
猛暑で疲労こんぱいのこの夏の締めくくりは、毎年恒例のプリメラ祭り。
新しくパセオおとなりに出来たバルで初ランチを食い、
パセオ11月号(特集は鍵田真由美・佐藤浩希の曽根崎心中)の入稿をすませ、
ひとっ風呂浴びて今宵の公演に出かける。
公演忘備録(12月号)は『夫婦の絆』を井口由美子が、
『一曲入魂』を白井盛雄が担当。
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2018年8月30日(水)その3331◆人類の英知
スタート時の運営陣は四十代が中心だった。
協会新人公演もこの夏で第27回、運営陣の多くは七十代となった。
自分たちの時代にはほとんど皆無だった若手の登竜門を、
ならば自分たちの手で創ろうと持ち出し・手弁当で奔走した団塊世代周辺。
先輩におごられたら後輩におごり返すのは人類の英知だが、
おごってくれる先輩たちがいなかったパイオニア世代。
与えられなかった恩恵を、
せめて後輩たちにという想いは様々な功罪を生んだ。
功が優ると私は想う。
そして泣いても笑っても、物理的にはもうあとニ・三年で世代交代。
他のあらゆる世界同様に、AIは産業革命以上の激変をもたらし、
新しい未知の時代は確実にやってくる。
それぞれがどんなポジションを選ぶか、年寄りも若者も、
その選択権は昔も今もこの先も個々の意志に一任されている。
時代の波に流されるのも自由なら自ら波を創るのも自由であるし、
何事もやってみないことには分からない。
ただひとつ明確なのは、愛とは決して後悔しないこと。
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2018年8月29日(水)その3330◆革命家の正体
スペイン舞踊の革命家、超人アントニオ・ナハーロ、
志風恭子によるロングインタビューの踏み込みがもの凄い!
人気定番、貴方の知らないソレア・ポル・ブレリアの世界。
話題のクリスティーナ・ヘーレン学校の実用レポート!
プロの自主練は関西のエース松本真理子!
恐怖の冷や汗エッセイは鈴木眞澄!
ギター尾藤大介の新連載エッセイ『日々ギタリスト』!
以上、9/20発売号のちょい見せフライング情報ですた。
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2018年8月28日(火)その3329◆手遅れながら
異性にも同性にも媚びない、
人の普遍に向き合う逞しいフラメンコが好きなのだと、
この夏の新人公演で、
自分の憧憬ポイントがようやく分かった。
恥ずかしながら手遅れながら、これは大きい。
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2018年8月27日(月)その3328◆お天気さま
相手は46億年もお天気やってるのに、
私たち人類はたかだか数百万年のキャリアしかないわけで、
お天気さまに文句云ってもはじまらないけど、
何にしても暑いわ~
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2018年8月26日(日)その3327◆ベンチウォーマー
新人公演最終日。
ここ27年、高揚する気分はなぜか夏の甲子園決勝。
もし野球を続けてたなら、
地区予選初戦敗退のベンチウォーマーくらいは行けてたかもという感慨。
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2018年8月25日(土)その3326◆お祭り二日目
新人公演二日目。
本日はギター部門5名とバイレ部門30名。
これからご近所で指圧と、パセオ11月号の追い込み。
ブース品切れ分をかついで15時会場入り。
終演後は12月号わたし的奨励賞(ギター部門)執筆。
おつかれ会は23時スタートの見込み。
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2018年8月24日(金)その3325◆売り切れ
新人公演初日は無事終了。
ブースは鳴神効果(しゃちょ対談)でパセオ最新号がまさかの売り切れ、
明日は担げるだけ担いで行かねば。
まぐろとたこ刺し、枝豆、マカロニ。よゐ子で留守番ジェーと、
選考でぐったり気味の連れ合いと遅めの晩酌。
ジブリ観ながら、続く土日のために体力温存。
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2018年8月23日(火)その3324◆ドラマは踊る
「バカヤロー、早く開けろー」
慣れない設営でリハが押しまくり、開場時間が遅れる。
屋根なし炎天下で開場を待つ人たちの苛立ちが爆発する。
フラメンコ協会新人公演の黎明期、
会場は麹町の都市センターホールだったか。
フロントと広報担当、三十代の私は罵声のシャワーを浴びながら、
長蛇の列に大声で詫びつつペコペコ汗だくで走る。
数分押しで開場すると今度は、
スペインの通信社のアポ無しテレビクルーが
出演者の控室を取材させろと激しく迫ってくる。
楽屋は慣れない新人たちが本番前の緊張でパニック状態だから、
代わりに客席最後方から本番を撮ってくれないかと、
通訳を通し丁重に頼むが納得してくれない。
あんたらの相手ばかりしてるヒマはないので、ネクタイを外しながら、
おいテメーらいい加減にしろよ、
テレビがそんなに偉えのか、
だから出演者が第一だって云ってんだろがと、
プーロな江戸弁でやさしくお願いするとやや引き気味に了解してくれた。
そして終演後、週明けからパセオで正社員として働く予定の
若いバイレ練習生が両眼をウルウルさせながらこう云う。
「社長すみません、新人公演を観てわかったんです、
わたし就職やめてプロをめざします」
昔も今も、ベタなエピソードには事欠かない毎年の新人公演。
明日から丸三日間、さて今年はどんなドラマが展開するんだろ。
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2018年8月23日(火)その3323◆フラメンコロイド
「自分が輝けるシーンを探し続けています」
当日未明に北海道ツアーから戻った、
きのうのフラメンコロイドのパセオライヴ。
いつもはオンマイクで聴く松村哲志の生音ギターに痺れた。
ギターを弾く人にとっての憧れ、そのひとつの理想形だろう。
己の資質を知り、その可能性を探り、探り当てた特性をトコトン磨き鍛える。
半端なくそういう旅路に没入できるギタリストだ。
自分が輝くことと周囲を輝かせることがいつでもセットになっている。
そういう骨太で繊細なバランス感覚。
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2018年8月22日(火)その3322◆おまじない
パソコンのトップ画面を変えたらガラリ気分が変わった。
自宅パソコンのトップ画面は「あしたのジェー」、
会社パソコンには「ムヒカ大統領」。
宗教や主義やお金にも無縁なバカちんにも、
それぞれ、それなりに魔除けの御札のような効用はあるようで。
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2018年8月21日(月)その3321◆作家・鳴神響一
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2018年8月20日(月)その3320◆黄金の塔
大和田いずみ『Torre del Oro』
『2018サロン・ドートンヌ展入選の大和田いずみ』
(月刊パセオフラメンコ2018年9月号より)
艶やかな色彩感覚と心つかむ独創性。
この六月、2018サロン・ドートンヌ展(1903年フランスで創設された美術展覧会)
に入選された大和田いずみ画伯。
日本フラメンコ協会の新人公演やMARUWAコンクール・ファイナルなどに
出演した彼女をバイラオーラと認識されてる方も多いことだろう。
絵画にもまったくド素人の私だが、具象にしても抽象にしても、
あるいはデッサン画、水彩スケッチ、油彩画にしても、
彼女の作品たちには一瞬にして心を奪われてしまう。
共鳴する理由のひとつは、フラメンコという通低する
インスピレーションであるような気もする。
彼女の描くフラメンコの世界やスペインの風景を、
ぜひとも毎月のパセオフラメンコに載せたいと願った。
ちなみに今月号しゃちょ対談に登場する小説家・鳴神響一さんの
『天の女王』の表紙絵(どこかカンタオーラ川島桂子に似ている)は
大和田さんの作品であり、お二人は旧知であるという。
鳴神さんのフラメンコ小説のパセオ連載(2020年4月号スタート)の
タイトル画はすでに彼女に依頼済みだ。
だがとても連載開始までは待てないので、
来春4月号から毎月の絵画連載を画伯にお願いしたのだが、
「こんな感じでよいでしょうか」とお送りいただいたのが、
この油彩画(Torre del Oro~黄金の塔)である。
この秋スペインを取材旅行する大和田さんには、
パセオ来年2月号の表紙画もお願いした。
そのモティーフはもちろんFLAMENCOである。(小山雄二)
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2018年8月19日(日)その3319◆帰巣本能
この夏、最初で最後の完全休暇。
電車とバスを乗り継ぐトータル四時間の旅は、
車窓を彩る景色に没入したり(こどもかっ)、
ほんの小一時間、故郷・墨東の懐かしいこの庭で
ぼんやり過ごすだけで疲れも屈託もおもしろいように抜けてゆく(あんまかっ)。
まったく帰巣本能の効用とはあきれるほどにしぶといものだ(祟りかっ)。
中野・高円寺界隈にこもりがちな昨今だが(寝たきりかっ)、
思い立ったら迷わず出掛けることに決めたとです(ヒロシかっ)。
通い始めて半世紀強、明治の文豪さんたちも絶賛する、
ただひたすら愛しい向島百花園。
ちなみにおやつは三百円まで。
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2018年8月19日(日)その3318◆73億の変態性
人の数だけフラメンコがある。
パセオ創刊からおよそ二十年ほどでそれを知った。
あれからさらに十五年、
人の数だけ人生があることを知りつつある。
人と会うのが生業だが〝平均的な人間〟など見たことがない。
人はそれぞれに特有な変態性を日々育んでいる。
どなたでも自分という人を考えればそれは明白であり、
自分以外の73億人についてもそれは同様。
類型化・差別化の虚しさはそこにあるよね。
なあジェーよ、犬もそーなのか?
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2018年8月18日(土)その3317◆印象派の犬
おや、おれはこんな絵を描きたかったのか。
たまたま見つけた意外な潜在意識の願望。
十年くらい前の代々木公園、
ジェーと私の秘密基地近く。
淡い幻影の木橋の上をしみじみと、
枯葉を踏みしめながら彼は往く。
そんなたまたまのへぼショットを、
拡大してボカしたら好みの印象派になった。
モネの気分で、あれこれタイトルを模索、
「幻影を歩む犬」とか「あしたのジェー」とか。
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2018年8月17日(金)その3316◆今晩『となりのトトロ』
となりの芝生は青く見えるが、
となりのトロロが青く見える場合
そりゃ青海苔のかけすぎである。
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2018年8月17日(金)その3315◆夏の新人公演!
静かに深くマグマのような熱情がフラメンコ界をメリメリと沸騰させる。
いよいよ来週金曜より三日間、フラメンコ界の最強イベント、夏の新人公演!
パセオ11/20発売号では総力取材でこれを特集。
表紙は大森有起氏に新人公演の魔物を撮ってもらう。
そして、同氏による受賞者全員の本番ステージ写真。
新人公演全体の俯瞰記事は石井拓人が執筆。
受賞者(1名)のインタビューは関範子が執筆。
本誌ライターによる「わたし的奨励賞」は、バイレソロ部門を白井盛雄、
群舞を井口由美子、カンテをさとうみちこ、ギターは私がそれぞれ担当。
このほか公演忘備録(12/20発売号)を白井盛雄、石井拓人が執筆。
ロビー右手には恒例のパセオブースを歌って踊る吉野理子が仕切る。
今年はパセオ定期購読の受付(割引!)もするし、
呼び込みのおっさんは太めのトムクルーズだ。
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2018年8月16日(木)その3314◆9月はカニサレス!
いよいよ来月、待望のカニサレス来日公演。
http://plankton.co.jp/canizares/
9/29目黒パーシモンにパセオ取材陣は殺到。
写真は2015年来日時のマエストロ夫妻歓迎焼肉大会。
当夜の太っ腹スポンサー(一番左)ミスター林がひときわ大きく見えたのは、
実際彼が巨漢だからだろう。
一番うしろの役立たずタダ喰い呑んだくれ金髪野郎がおれ。
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2018年8月14日(火)その3312◆命の使い道
あと28年ばかり早く生まれていたら戦死は必然だったが、
生まれ時の運で、フラメンコに命を使うことができた。
さてこの先、ラッキーな運命の余命をどう使うか。
決めるのは自分であり、その自由を支えるのは平和だ。
そんなことを考えたい終戦記念日。
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2018年8月14日(火)その3312◆トップ画面
すっかり話題に上らなくなったが、
人類の未来軸はこの人の言動に在ると想う。
日々忘れたくないのでPCトップ画面に貼った。
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2018年8月13日(月)その3311◆教訓
数人の仲間と必死にチャリを漕ぐ。
制服からして俺らはサツで、ホシを追いかけている。
登っても登っても急な登り坂が続く。
だが何度も同じ景色に出喰わすのはどうしたわけか?
同じ道をグルグル周回しながら登り続けてるんじゃないか?
「エッシャーだよ、エッシャーーーー!」
先頭を走るエツコが大声で叫ぶ。
ああ、エッシャーかと合点し皆してUターン、
何でここでエッシャーなのか?とは誰も突っ込まず、
今度は猛スピードで下り坂をまっしぐらだ。
だが左手はガードレールのない断崖絶壁で、
ブレーキの効かぬ下りジェットコースター状態。
あまりの恐怖にガバッと目覚める。
寝てる間にエッシャー島でチャリを漕いではいけない。
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2018年8月11日(土)その3310◆ハスの切り方
蓮根(ハス)のシャキッとした食感がたまらない。
いい素材なら煮物がいいし、そうでないのは炒めて食う。
枝豆とかブロッコリなど緑菜と炒めるのが、見た目も相性もいい。
ガーリック風味で仕上げに片栗でトロ味をつけるのがマイブーム。
ちなみに蓮根はハスに構えて切るのがいい。
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2018年8月11日(土)その3309◆家伝
ミスの許されぬ仕事があるので
やむを得ず秘伝の呪文を唱える。
「暑いの暑いの飛んでけっ!」
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2018年8月10日(金)その3308◆効用
スリリングに荒れた生活だったから、
癒しの緑でバランスをとりたかったのだろう。
若い頃に大枚はたいて買ったコローの複製画。
割れた茶碗をご飯つぶでくっつけるくらいの効果はあったな。
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2018年8月9日(木)その3307◆台風の中
台風の中、ひと仕事終えたスナイパーの風情
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2018年8月9日(木)その3306◆井上圭子ソロライヴ
一年ぶりに観る華麗なるドドコ。
例によって本日演目のフライング情報。
パセオフラメンコライヴ Vol.097
井上圭子 ソロライヴ
2018年8月9日(木)20時開演
於:高円寺エスペランサ【電話予約 】☎03-3383-0246
主催:月刊パセオフラメンコ&エスペランサ
【プログラム】
⑴ Siguiriya
⑵ Músicos Bulerías
⑶ Guajira
⑷ Músicos Milonga
⑸ Farruca
⑹ Solo de cante
⑺ Alegrías
【出演】
井上 圭子(バイレ)
川島 桂子(カンテ)
鈴木 淳弘(ギター)
三木 重人(ヴァイオリン)
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2018年8月8日(水)その3305◆一枚の絵
近ごろちょっと情報過多かなと、
音楽もなく、一枚の絵をのんびり眺める。
案外と豊かな時にも想える。
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2018年8月7日(火)その3304◆国際情勢
この秋イスラエルの黄金時代がやって来る。
いよいよ緊迫する国際情勢!・・・なのか?
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2018年8月6日(月)その3303◆みよちゃん
「秋よ来い!」
この猛暑を一身腐乱に
歩きはじめる爺ちゃんは
ひたすらそう念じる
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2018年8月5日(日)その3302◆傷だらけのプーロ派
ようやく制作インフラが追いついた。
八ヶ月ぶりで仕事はひと段落。
生産性ゼロでのんびり暮らす日曜日。
湯上がりのハイボールでレコードに没入。
崖っぷち状態ではバッハオンリーだが、
ほんの少しでも余裕ができると聴きたくなる。
いやまったくプロコフィエフは凄えな。
身構える隙も与えず、聴き手の本性にズバリ斬り込んで来る。
ニ長調のこのヴァイオリンソナタなどはその典型だろう。
フラメンコで云うならドゥケンデ『サマルコ』か。
創刊時のパセオ編集長・架光時紀もそういうタイプだった。
彼のシャープな感性は、無私無欲に拠っていた。
周囲350度程度を敵にまわす傷だらけのプーロ派だった。
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2018年8月4日(土)その3301◆一発逆転屋
早起きして10月号の時報を書いてると、
いつの間にやら足元にしゃがみ込んでたジェーが、
おしっこ連れてけとせがむ。
この夏を乗り切るのは難しいと覚悟してるが、
この一発逆転屋にあきらめの兆しはない。
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2018年8月3日(金)その3300◆修学旅行
中三の修学旅行のメインは1970大阪万博だった。
ヨシオとタケオと私のお笑いトリオ、
そしてヨシアキとミノルとジョージの極道トリオを
組み合わせた6名1班のグループを、
担任のワタナベ先生が追跡するパターンで博覧会場をまわった。
お笑いトリオと極道トリオはふだんから相性がいいので、
これらの中和によって問題発生を予防するというのが
戦略家ナベさんの魂胆だったのだろう。
ワタナベ先生の作戦は効を奏したようだが、途中から、
後方をうろついてるはずの先生の姿が見えない。
「あーあ、ナベのヤローおでん喰いに行きゃがった」と、
先生の性向を鋭く分析するミノル。
やや拍子抜けしながらも、おれらはモノレールを駆使して各国のパビリオンを回る。
性欲満載の思春期だから、話題の月の石などにはまるで興味を持てず、
みな心を合わせ、各館の入口で愛想をふりまく万国の
チョー美人コンパニオンさんたちに熱狂するのみである。
宿舎の就寝時間を合図に枕投げの伝統儀式をすませ、
どこそこの姐さんがよかったかの人気投票が始まる。
私はインド代表をモーレツに支持したが、
投票結果はアメリカ代表だったと記憶する。
異国の異性に対する認識を広め、また民主主義を実践した点において、
修学旅行の意義は甚大であった。
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2018年8月2日(木)その3299◆不変の普遍
天災と人災のオンパレード。
どれも強烈なボディブロウだが、遠い昔のボクサー志望者として、
また現役フラメンカーとして此度のボクシング団体の
理不尽ワールドには拳がわなわな震えた。
それでもどーやら未来永劫人類全体が
そこそこうまくやってゆくための共有ルール。
その源泉たる英知を仮に普遍性と呼ぶなら、
スポーツもアートもまさしく普遍(フラメンコはその中道右派)の
最前線プロジェクトだ。
天の意向がどうあれ、混迷する政治・経済・宗教・メディア・
日常のコミュニケーションなどに、
そうした普遍の通奏低音(ベース)が少しずつ積み上げられるなら、
人類の暮らしはきっと少しずつ善くなる。
既得権死守の朱子学では未来は視えず、
先輩に奢られたら後輩に奢り返すのが人類存続のコンパスだ。
「千に三つの普遍性」
惜しくもこれが私の現状なので、文句を云う前にまずはおれ自身、
仕事に暮らしにコツコツと改善を進めてゆこう。
足元のグラつきほど普遍に反するコンパスはないからな。
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2018年8月1日(水)その3298◆ご降臨
中野北口のアーケードを歩いている。
ヨシオとタケオと、いつもの中3トリオだ。
何かおごるとヨシオが云う。
そうか、オレらは明大中野に入試願書を出すヨシオの付き添いだった。
するってえと、こりゃ昭和45年あたりか。
食いしん坊のタケオが上等そうな二階のパーラーを見つけ、
あれにするかと皆してエレベーターに乗り込む。
だが奇妙なことに、着いた二階にめざすパーラーはなく、
さっき歩いてきたような商店街が右に左に広がっている。
アーケードはアジアン系の活気にあふれ、ひとりとして日本人は見当たらない。
じゃあカレーを食おうと切り替えの早いタケオが提案し、
それらしき店に入ると、いつの間にやらターバンを巻いたヨシオが
現地語でぺらぺら注文している。
すでにドン引き中のオレは一番辛いのをと英語で頼むのが精一杯。
となりのテーブルで堂々パイプを燻らすのは
小松川二中3年8組担任ワタナベ先生で、
ここのカレーは旨えぞケケケと笑う。
知性派の爆笑大王ワタナベ先生ご降臨にガバッと目覚める、
そのまま途切れてしまうのが余りにも惜しい水曜朝の懐夢。
ご健在ならば八十前後、おでんと笑いをこよなく愛す親愛なるワタナベ先生への
心からの敬意を、先週食った冷製おでんが呼び覚ましたのかもしれない。