尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

亀山博士

2006年10月25日 00時02分45秒 | アバンギャルド集
亀山博士は
ラーメンの汁をすすり終え
干上がったハチの底を見やりながら
おっしゃったのだ
 君、想像したまえ
 人間はすでにいないんだ
 地球もね
 神様だけだ
 …そんな宇宙は奇妙に歪んでいて
 寂しいだろう?

神様は風邪をひくでしょう
僕の答えに
博士はハチの縁を
箸でパチンと叩いた
次の客に押されるようにして
僕たちは屋台を出た

博士と別れてから
古ぼけた煙草屋のある角で
ちょっと酔って
まるで彼女にでも電話するみたいに
絶対に話し中の
携帯電話の番号を押した
月もないのに
群雲が光っていた
話し中である
自分のしていることが
あの神様のように寂しかった

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