OSQZSS

オープンソース準天頂衛星(QZSS)受信機

衛星測位と時刻系

2012-01-08 11:46:19 | みちびき
IERSから今年の6月30日の深夜にうるう秒が挿入されることがアナウンスされました.
つまり,2012年6月30日には,23時59分60秒が存在することになります.

時刻系については,いつも混乱するので,備忘録を兼ねてメモ.

私たちが普段使う「時刻」とは,太陽の動き,つまり地球の回転に基づいています.
子午線を太陽が通過する間隔が1日=24時間となります.この時刻系はUT1
(または単にUT)と呼ばれます.(厳密には極運動を考慮していないのでUT0です.)

ところが,地球の回転は常に一定ではありません.自転エネルギーが徐々に失われ,
回転は遅くなってゆきます.つまり,太陽を基準とした1日は,年々長くなります.

これに対して,GPSの時刻系などに使われる原子時計は,地球の自転に関係なく,
ある原子が放射(または吸収)する周波数で時間を刻みます.国際的には,
セシウム原子時計によって定義される国際原子時(TAI)が使われます.

つまり,UT1の1秒とTAIの1秒は,次第にずれてゆくことになります.
これらの差が0.9秒以内に収まるように定義された時刻系がUTCです.
UTCとTAIの1秒は同じ長さのため,何年かに一度,うるう秒を挿入して
UT1との差を調整しなければなりません.

話は少し変わりますが,GPSは原子時計に基づいた独自の時刻系を
使用しています.そのため,GPSの測位では,うるう秒の影響はありません.
測位結果は,あるGPS時刻における位置として求められます.
(その後,このGPS時刻をUTCに変換する際にうるう秒の情報は必要です.)

一方,GLONASSはモスクワ標準時(UTC+3時間)を時刻系として使用
しています.そのため,UTCにうるう秒が挿入されると,GLONASS時刻系も
1秒長くなることになります.

このとき,GLONASSの測位はどうなるのだろうと調べてみたら,どうやら
衛星時計をリセットするようです.その間,当然測位は出来なくなります.
1997年のうるう秒の挿入時には,20時間もサービスが停止したそうです.

6月のうるう秒挿入では,市場に出始めたGPS+GLONASS受信機モジュールが
どのように振舞うのか,ちょっと楽しみです.

参考文献:
D. Finkleman, et al.: The Debate over UTC and Leap Seconds
Dennis D. McCarthy: The Definition of UTC
コメント (1)
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