温泉クンの旅日記

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高山本線、雪景色(2)

2021-03-14 | 食べある記
  <高山本線、雪景色(2)>

 駅の脇、外に設置してある雪だらけの喫煙所で煙草に火を点け、時計をみるとまだ10時半ちょい前だった。
 今回の高山は、陣屋を見学してみたらしだんごを一串か二串パクついて、「まさご」で高山らーめんの昼食をしたためてから“たまりせんべい”を買い、高山祭屋台会館を再訪して見物しようと思っていた。
 これで五、六度めくらいか、いつ来ても高山は寒いのだが、雪景色の今日はことのほか冷える。猪谷駅あたりの不穏な雪景色が頭にこびりついて離れない。だんごとらーめんに限定して、高山発<特急ひだ>名古屋行き12時33分のヤツに飛び乗ってとっととオサラバしたほうが良さそうだ。そうしよう。
 わたしの旅は出たとこ勝負だ。臨機応変、融通無碍、変幻自在なのである。

 

 高山駅からひとつ目の高山北の信号から、国分寺通りを宮川方向に、滑らないように慎重に歩いていく。
 雪が音を吸って静かな街には、タイヤチェーンが車道を咬む音だけが響いていた。

 

(おォー、営業してるようだぞ!)
 交差点で立ちどまり、鍛冶橋西詰に佇む、昭和二十二年(1947年)創業の老舗「二四三屋(ふじみや)」の屋台が開店しているのをみて、思わずほくそ笑む。よしっ!

 
 
「いらっしゃい。おだんごね、何本?」
「んーと、・・・二本、ください」
 ちょっと待ってね。保温ジャーのようなところからだんごを二本取り出し、焼き台に載せた。
 三本でも良かったかな。鮨屋で供される熱くて濃いお茶でもだしてくれるなら、五、六本くらい頼みたいところだが、店先を占拠して営業妨害になってもまずいので控えめにした。

 餅系の食べ物に目がないほうだ。「餅」とか「ちくわぶ」の好きな女子は世の中に少ないようだが、正月くらいしか餅が手に入らなかったせいもあって、昭和世代の男に餅好きはけっこう多いのではないだろうか。
 京都の今宮神社「あぶり餅」、鹿児島の磯庭園「両棒餅」、福岡の大宰府天満宮「梅が枝餅」、岐阜の飛騨高山「だんご」など。もちろん食べて「これは何度喰っても旨い!」と思ったものだけだが。

 

 焼きあがって皿にのせられた串をつかみ、ぱくりと食べる。
 焦げた醤油の風味がたまらなく美味しい。まったくもって、いつ食べてもこやつはウマイ。二本目にとりかかっていると、屋台の屋根から雪の塊が滑り落ちてきてわたしの頭に直撃し、店主が慌てて謝ったが、帽子を被っているので被害なしだ。

 鍛冶橋からは桔梗屋が近いのだが、一本北にある弥生橋に歩くことにした。昭和二十三年(1948年)創業の「やよいそば」はその橋の名前に由来する。

 

 

 高山はらーめんも、だんごもせんべいもとても旨い。秘かにだが、高山の醤油は日本で一番美味しいと思っている。ただ、高山という、美味しい水や澄んだ空気も含めた風土のなかで食べたときだけなのだが。高山らーめんが、首都圏であらかた淘汰されたせいもそこらへんにあるのではと睨んでいる。

 

 開店直後のようで、先客は誰もいなかった。店内はまだキンキンに冷え切っている。
 とりあえずカウンター席に座る。一人客の礼儀というより、なにより興味ある厨房を見渡せて具合がいい。

 

 

 高山では、中華そばを注文すると、あっという間に出来上がって運ばれてくる。まるで手品か魔法のような早さで。
 具はチャーシュー、ネギ、メンマとシンプルである。

 

 寸胴で、出汁に醤油を入れてしまう高山ラーメン独特の仕込方法でつくられるスープは、見た目は濃い。火が通ることで醤油の角も丸くなって、ただ高山醤油の風味はしっかり残して実にまろやかあっさりである。

 

 縮れた麺が、その旨い極上の醤油スープを適量絡め取りながら口中に次つぎと飛び込んでくる。郷愁を感じるくらいの懐かしさと安らぎを与えてくれる旨さだ。美味しさの表現としてはおかしいが。とにもかくにも、「らーめんって美味しいじゃんか」と生まれて初めて思った、あの遠い日を思い出させてくれる。

 苦手なチャーシューをひと噛みいってみる。
「えっ!」
 なんて旨いんだ! 煮豚なのに極上の焼豚みたいな、衝撃的な味わいだ。丁寧な行程と、醤油のつけだれ漬けに秘伝があるのだろう。いつもはスープの底に沈めてしまうのだが、もう一枚くらい食べたくなる旨さだった。
 絶品チャーシュー、次にきたときにぜひ再確認したい。



   →「高山本線、雪景色(1)」の記事はこちら
   →「紅葉とあぶり餅(2)」の記事はこちら
   →「両棒餅」の記事はこちら
   →「梅ヶ枝餅」の記事はこちら
   →「続・高山ラーメン」の記事はこちら

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