温泉クンの旅日記

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別府・鉄輪温泉連泊③

2007-07-22 | 温泉エッセイ
  <別府・鉄輪温泉連泊③>

 ③隣人

 カーテンを開けっ放しで寝たため空が明るんできて目が覚めた。おそらくツバメ
の声だと思うが騒がしい。時計をみるとまだ早朝の四時前である。

 パソコンに向かい、昨日の旅のメモを入力する。
 五時ごろ、風呂をみにいったがまだ湯が張られていなかった。膝ぐらいまでしか
湯がない。貼紙どおりの六時からなのだろう。


    (通常は男湯、時間で女湯)

 六時すこし前、そろそろ湯を張り始めるかなと思い部屋をでた瞬間、隣の9号室
の女性(わたしより十歳ほど上とみた)と鉢合わせしてしまった。朝の挨拶を交わ
して、ワンピース姿の女性が浴室のほうへ降りていく。

(あれ、もうお湯がいっぱいなのかな・・・)
 あわてて部屋に戻り、タオルを持ち浴室に急いだ。

 暖簾をあげて足を踏み入れると、目の前にさきほどの女性が全裸でどこも隠さず
立ちつくしていた。口があんぐり開いている。手を伸ばせば届くほどの近さであ
る。
 カシャ。
 わたしの頭のどこかに装備している魚眼レンズ付高感度カメラが素早くシャッタ
ーを切ったのだ。

「たいへん失礼をいたしました。間違えました、申し訳ありません」
 キャーと悲鳴を出される前に、と慌てて暖簾の後ろに後ずさりながらぺこぺこ
謝ってしまう。なんでオレっていつもこうなってしまうのだろう。いつか痴漢で
捕まるかもしれないなあ。


     (通常は女湯)

 時間により、男風呂と女風呂が入れ替わって、間違えてしまうことがよくあるの
である。ブログに書いたのですぐに思い出すのは中伊豆(『健康志向の宿』の記事
参照)
か。あと小洒落れたレストランとかホテルで、トイレの表示にトランプとか
百人一首とかで男女を表示しているところでよく間違えるのだ。

 わたしはどちらかというとカメラのような視覚であるので、さきほどの一瞬でも
画像として脳裏に焼きついてしまった。歳はわたしより十歳ほど上だが、衣服の下
は十歳ほど下だ(と思う)。


   (これは名画であるので・・・念のため)

 いかん、いかん。振り払うように階段を駆け上がった。
 言い訳めくが浴室の時間割がわかりにくいのだ。

(もういいや。宿の湯はあきらめよう)
 別府のたいていの外湯は六時半くらいからあく。すぐ出かけることに変更して、
宿を飛び出した。

 腹が減ったがまだどこもやっていない。車ですぐ近くのコンビニに乗り付ける
と、珍しく焼きたてのパンを売っていた。コンビニのなかで焼いているのだ。



 UFOパンとかいう甘いパンを買ったが焼きたてで香ばしくおいしかった。

「ようやくお逢いできましたね」

 夕刻ちかくに宿に戻ってきて、きれいな女将に声を掛けられ、ドキリとした。
「昨日、宿帳をと、八時ごろ伺ったら電気が消えていて」
「ああ、早めに寝たものですから」
 朝の一件かと思ったら宿帳か。ほっと安心する。あれから宿で大騒ぎになって、
女将が被害者の納得するように痴漢男を善処をする、とかなってたのかと思った。

「今晩は、どうされます」
「ええ、もう一泊ということでお願いします。あと、明日も朝十時ごろに扉に南京
錠が掛かってたら、さらにもう一泊ということでいいですか」
「ええ、かまいませんよ」

 なんというか、懐の広い宿である。宿帳を記入している途中で、宿賃を精算する
客がいて、三日のつもりが一週間逗留したと言っていたのも頷ける。

  - この項続く -

  →別府・鉄輪温泉連泊①はこちら  →別府・鉄輪温泉連泊②はこちら

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