<蟲の宿>
福島の秘湯の宿である。

長い経験から、秘湯の宿イコールいい温泉でいい宿とは限らない。
ここに泊るのは二度目で、前回は温泉初心者のころだからほとんど記憶が残っていない。ただ宿の佇まいだけは覚えている。


大自然に囲まれた広大な敷地だから、とにかく静かな温泉宿だ。
宿泊者が一回入れる露天風呂は開放的でかなり風情がある。

いい温泉だ。目の前に広がるのは自然だけだ。

シツコイヤブ蚊が一匹、どうやらわたしを獲物に決めたようで若干落ちつかなかったが・・・。ジツはこのヤブ蚊が予兆だったのかもしれないとあとから思う。
続いて大浴場に入る。


露天風呂と同じく数キロ離れた「いわき湯本温泉」からの引湯だから、きっとどちらも加温だけはしているに違いない。

混浴の洞窟風呂は湯の表面に浮かぶたくさんの白い泡をみて、敬遠することにした。
それに露天と大浴場のふたつ入っただけで、汗が引かない。代謝を盛んにする効能が豊かなのだろう。

久しぶりに食べたメヒカリが旨く印象的だった夕食をすませると、部屋にもどって卓の前に座りテレビを観ながらゆっくり呑みはじめた。
食事処で食べているあいだに蒲団が敷かれており、卓は窓辺に寄せられている。
(むっ、なにかが動いている・・・ぞ)
無意識で「八方目」を使ってしまうので、わたしは視野が広い。
視界の隅、白い枕カバーの上を黒いなにかが這っている。
ゴキブリか。よくみると黄金虫か小さい蛍、のような大きさの蟲である。殺生は嫌いだがティッシュで摘まみひねってゴミ箱に捨てる。
まだ、なにかが動いている。
枕カバーの上に、ミリ単位の蟲が動いていた。おいおい、まさか。蒲団をめくると、やはりシーツの上にも小さな蟲が何匹もいた。肉眼では見ずらいが小さな羽根もついているようだ。
また、ティッシュで丁寧に摘まみとっていく。
窓を確かめてみると、どうやら蒲団を敷くときに誤って網戸になっていないほうを開けてしまい、蟲たちが忍びこんだようである。
となると、天井の灯りの裏にも忍んでいて、残りの蟲がまた落ちてくるだろう。
案の定、しばらくすると枕カバーにまた黄金虫みたいなのが落ちてきて、これも始末した。いずれミリ単位の蟲が落ちてくるはずで、思わずコップを覗きこみ落ちついて呑めない。
しばらくは起きていよう。とりあえず眠っているあいだに顔に蟲が落ちてくる事態だけは避けたい。
朝、昨日入らなかった宿自慢の鉱泉の湯に入った。とにかく酔い潰れて蟲を気にせず朝を迎えられたのは幸いであった。

湯触りがすこし気にいらなかったので、大浴場で気分を変える。
(昨夜の無数の蟲にはまいった。それにしても、なんとも迂闊な宿だったな・・・)
惜しい宿だ。

朝食後にロビーでコーヒーを飲みながら思うのであった。
→「八方目」の記事はこちら
福島の秘湯の宿である。

長い経験から、秘湯の宿イコールいい温泉でいい宿とは限らない。
ここに泊るのは二度目で、前回は温泉初心者のころだからほとんど記憶が残っていない。ただ宿の佇まいだけは覚えている。


大自然に囲まれた広大な敷地だから、とにかく静かな温泉宿だ。
宿泊者が一回入れる露天風呂は開放的でかなり風情がある。

いい温泉だ。目の前に広がるのは自然だけだ。

シツコイヤブ蚊が一匹、どうやらわたしを獲物に決めたようで若干落ちつかなかったが・・・。ジツはこのヤブ蚊が予兆だったのかもしれないとあとから思う。
続いて大浴場に入る。


露天風呂と同じく数キロ離れた「いわき湯本温泉」からの引湯だから、きっとどちらも加温だけはしているに違いない。

混浴の洞窟風呂は湯の表面に浮かぶたくさんの白い泡をみて、敬遠することにした。
それに露天と大浴場のふたつ入っただけで、汗が引かない。代謝を盛んにする効能が豊かなのだろう。

久しぶりに食べたメヒカリが旨く印象的だった夕食をすませると、部屋にもどって卓の前に座りテレビを観ながらゆっくり呑みはじめた。
食事処で食べているあいだに蒲団が敷かれており、卓は窓辺に寄せられている。
(むっ、なにかが動いている・・・ぞ)
無意識で「八方目」を使ってしまうので、わたしは視野が広い。
視界の隅、白い枕カバーの上を黒いなにかが這っている。
ゴキブリか。よくみると黄金虫か小さい蛍、のような大きさの蟲である。殺生は嫌いだがティッシュで摘まみひねってゴミ箱に捨てる。
まだ、なにかが動いている。
枕カバーの上に、ミリ単位の蟲が動いていた。おいおい、まさか。蒲団をめくると、やはりシーツの上にも小さな蟲が何匹もいた。肉眼では見ずらいが小さな羽根もついているようだ。
また、ティッシュで丁寧に摘まみとっていく。
窓を確かめてみると、どうやら蒲団を敷くときに誤って網戸になっていないほうを開けてしまい、蟲たちが忍びこんだようである。
となると、天井の灯りの裏にも忍んでいて、残りの蟲がまた落ちてくるだろう。
案の定、しばらくすると枕カバーにまた黄金虫みたいなのが落ちてきて、これも始末した。いずれミリ単位の蟲が落ちてくるはずで、思わずコップを覗きこみ落ちついて呑めない。
しばらくは起きていよう。とりあえず眠っているあいだに顔に蟲が落ちてくる事態だけは避けたい。
朝、昨日入らなかった宿自慢の鉱泉の湯に入った。とにかく酔い潰れて蟲を気にせず朝を迎えられたのは幸いであった。

湯触りがすこし気にいらなかったので、大浴場で気分を変える。
(昨夜の無数の蟲にはまいった。それにしても、なんとも迂闊な宿だったな・・・)
惜しい宿だ。

朝食後にロビーでコーヒーを飲みながら思うのであった。
→「八方目」の記事はこちら
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