<平塚駅前、魔境のラーメン屋>
味噌ラーメンでも食べていくか・・・。

な、ななな、いったいゼンタイなんなんだこの店は・・・。一歩薄暗い店内に踏み込んだとたん、心底タマゲて声を失ってしまった。両膝からへなへなと力が、空気が一気に洩れだすように抜けて道頓堀のくいだおれ人形のようにへたりこみそうになる。
客たち誰もが、もうもうと煙をあげて焼いた肉をもりもり頬張って、チューハイがぶがぶ呑んで、煙草をスパスパ吸っている。ラーメン屋なのにひとりもラーメンも、餃子すら食べていない。魔境のようなホンキートンクなラーメン屋である。
あの「くるまやラーメン」チェーンにも「異端児」のような店舗が伊東や郡山にあるが、「どさん娘」もそうなのだろうか。
カウンターが六席ぐらい、四人掛けの卓が三つの狭い店である。そして、卓にもカウンターにも焼肉ロースターが設置してあった。歩いている途中で匂っていたのはこの店の焼肉だったのかと納得する。

貼ってあるメニューをみると、焼肉に混じってたしかに麺類も餃子もあった。それにしても焼肉の値段が格安で、「お水がわりにどうぞ」と焼酎ハイを堂々と勧めているのがなんとも空恐ろしい。

「なににしましょうか」
空いている卓に座り、メニューをひと通り見回したタイミングで女将さんに訊かれる。
「カルビ・・・と、ジンギスカン、それとウーロンハイを」
「ハイ、ご新規ジンカルとウーロンね」と厨房の大将に通した。
湧きあがる動揺をとりあえず押し隠しなんとか注文を完了し、まずはホッとする。カルビが四百円、ジンギスカンが三百円、ウーロンハイが三百五十円、締めて千と五十円也。焼肉界では激安の店だ。
(ん!)
一服しながら運ばれてきた焼酎を呑んでいると、顔あたりに視線がちくちく棘のように刺さるのを感じる。
どうやら前の卓のカップルからで、奥に座った女性が男の肩越しにちらちらみているようだ。
待てよ・・・。ひょっとして、この店の前に入った「磯丸水産」でみかけた夫婦だ。たしか豪快に生ビールの大と海鮮丼を食べきっていたはずなのに、その次が焼肉とは、スゲエのひと言。
不思議な連続する邂逅に気がついたことが、どうやら伝わったような気配がありわたしに放たれる視線がスッと和らいだ。
伊東からの帰りに、昼どきで腹も減ったことだしとめったに訪れない平塚駅で途中下車した。静岡でみかけるような広い歩道と車道の街並みの商店街をぶらぶらして「磯丸水産」をみつけて入ったのだった。食事系のメニューを点検したが、伊東で食べた極上刺身と比べると物足らない。


大好きな突出しのキビナゴの一夜干しを焼き、桜エビと玉子焼きで三杯呑んだところで店を出ると、他の手ごろな食堂を探しているうちにこの「どさん娘」を発見したのだ。



焼肉は値段を裏切る、ニンニクの効いたタレがいい具合に沁み込んだ肉で、大きさも軟らかさも丁度よくて、ぱくぱく食べられる。
ジンギスカンを追加して焼き、ウーロンハイを三杯呑んだところで五十円のスープで締めた。

「アッチぃ」
こちらも値段を裏切り、極上までいかないが、相当に旨いテールスープだった。
酒呑みの聖地(あるいは魔界)として東京は「京成立石」や「赤羽」があるが、神奈川も「新丸子」のレイの食堂だけではなかった。ついに平塚にも恐るべき魔境をみつけてしまったようだ。
またぜひ来たい。それにしてもいまのわたしはニンニクと焼肉臭が半端なく凄いだろうなあ・・・。
→「新丸子、レイの食堂」の記事はこちら
→「酒場の聖地、京成立石」の記事はこちら
→「十条・赤羽、ホンキートンク三軒(1)」の記事はこちら
→「十条・赤羽、ホンキートンク三軒(2)」の記事はこちら
味噌ラーメンでも食べていくか・・・。

な、ななな、いったいゼンタイなんなんだこの店は・・・。一歩薄暗い店内に踏み込んだとたん、心底タマゲて声を失ってしまった。両膝からへなへなと力が、空気が一気に洩れだすように抜けて道頓堀のくいだおれ人形のようにへたりこみそうになる。
客たち誰もが、もうもうと煙をあげて焼いた肉をもりもり頬張って、チューハイがぶがぶ呑んで、煙草をスパスパ吸っている。ラーメン屋なのにひとりもラーメンも、餃子すら食べていない。魔境のようなホンキートンクなラーメン屋である。
あの「くるまやラーメン」チェーンにも「異端児」のような店舗が伊東や郡山にあるが、「どさん娘」もそうなのだろうか。
カウンターが六席ぐらい、四人掛けの卓が三つの狭い店である。そして、卓にもカウンターにも焼肉ロースターが設置してあった。歩いている途中で匂っていたのはこの店の焼肉だったのかと納得する。

貼ってあるメニューをみると、焼肉に混じってたしかに麺類も餃子もあった。それにしても焼肉の値段が格安で、「お水がわりにどうぞ」と焼酎ハイを堂々と勧めているのがなんとも空恐ろしい。

「なににしましょうか」
空いている卓に座り、メニューをひと通り見回したタイミングで女将さんに訊かれる。
「カルビ・・・と、ジンギスカン、それとウーロンハイを」
「ハイ、ご新規ジンカルとウーロンね」と厨房の大将に通した。
湧きあがる動揺をとりあえず押し隠しなんとか注文を完了し、まずはホッとする。カルビが四百円、ジンギスカンが三百円、ウーロンハイが三百五十円、締めて千と五十円也。焼肉界では激安の店だ。
(ん!)
一服しながら運ばれてきた焼酎を呑んでいると、顔あたりに視線がちくちく棘のように刺さるのを感じる。
どうやら前の卓のカップルからで、奥に座った女性が男の肩越しにちらちらみているようだ。
待てよ・・・。ひょっとして、この店の前に入った「磯丸水産」でみかけた夫婦だ。たしか豪快に生ビールの大と海鮮丼を食べきっていたはずなのに、その次が焼肉とは、スゲエのひと言。
不思議な連続する邂逅に気がついたことが、どうやら伝わったような気配がありわたしに放たれる視線がスッと和らいだ。
伊東からの帰りに、昼どきで腹も減ったことだしとめったに訪れない平塚駅で途中下車した。静岡でみかけるような広い歩道と車道の街並みの商店街をぶらぶらして「磯丸水産」をみつけて入ったのだった。食事系のメニューを点検したが、伊東で食べた極上刺身と比べると物足らない。


大好きな突出しのキビナゴの一夜干しを焼き、桜エビと玉子焼きで三杯呑んだところで店を出ると、他の手ごろな食堂を探しているうちにこの「どさん娘」を発見したのだ。



焼肉は値段を裏切る、ニンニクの効いたタレがいい具合に沁み込んだ肉で、大きさも軟らかさも丁度よくて、ぱくぱく食べられる。
ジンギスカンを追加して焼き、ウーロンハイを三杯呑んだところで五十円のスープで締めた。

「アッチぃ」
こちらも値段を裏切り、極上までいかないが、相当に旨いテールスープだった。
酒呑みの聖地(あるいは魔界)として東京は「京成立石」や「赤羽」があるが、神奈川も「新丸子」のレイの食堂だけではなかった。ついに平塚にも恐るべき魔境をみつけてしまったようだ。
またぜひ来たい。それにしてもいまのわたしはニンニクと焼肉臭が半端なく凄いだろうなあ・・・。
→「新丸子、レイの食堂」の記事はこちら
→「酒場の聖地、京成立石」の記事はこちら
→「十条・赤羽、ホンキートンク三軒(1)」の記事はこちら
→「十条・赤羽、ホンキートンク三軒(2)」の記事はこちら
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