ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

雑記帳 地震と映画館の因果関係について、ふと考える

2015-02-18 01:00:23 | 自然、読書、仕事、そして生きている
先週末、昼賄いを食べ始めたところに突然の来訪者。
仙台支店花の同期三人組の一人。
東京在住だが、今は系列会社の役員、営業担当で全国を回っている。
こちらに来たついでに寄ってくれたのだろう。
懐かしい話に花が咲く。
関西出身の彼は商売の家系で根っからの営業マン。
誰からも好感を持たれ、しかし通すところは通す。
オレは一生営業マンさと言い残して慌ただしく去る。

日曜日、娘連行三週目で、決算打ち込み終了。
中身はどうあれ、とりあえず肩の荷がおりる。
本日、税理士に渡す。
苦労して払った消費税は還付されるのだろうか。

そういう本日は、ランチの営業を休む。
ワタシの何回目かの自動車免許書換えと、従業員の検診の日をあわせて今日にしたのだ。

朝、マッサンを見終わったら出かけようと準備万端の事務所に大きな揺れ。
久々にデカイ。
事務所と倉庫を隔てる書庫やスチール棚が今にも倒れそうで、慌ててドアを開け出口だけは確保した。
税理士との打ち合わせ資料やPCも今日は車に乗せる予定だったので、さらに大きく揺れたら重要物と一緒に車で逃げ出す算段をした。

結局、揺れは納まり、マッサンは途中で地震情報に切り替わった。
マグニチュード6.9は久々のでかさだ。
おまけに事務所のある東黒石野のこのビルは一級設計士が自宅兼用として立てたらしいのだが、あまりにも揺れる。
決算も一息ついたところだから、延ばし延ばしにしていた事務所兼倉庫の整理を早急に取りかからないと。
3月後半からはまた催事がはじまる。
昨日、とうとう広告代理店の若い営業マンに押し切られ、でかい催事にチャレンジすることにした。
あっという間に時間は経つのだろう。
幸い、本来は一番寒いはずの2月中旬だが、今週は気温は高めの予報。
朝の一二時間をうまく使い、少しずつ、かつ計画的に進めようと(いつものことだが)軽い決心をする。

免許更新は確定申告と同会場の「アイーナ」の混雑もなく、平穏に終わった。

いったん店に鞄を置き、予定の行動Aコース(忙中閑あり、いや、閑中閑ありすぎ、こんなことしている場合じゃないけど開き直れコース)をとる事とした。
あがいてもしょうがない。
なにかを見つけに行こうという、明るい気分、あるいは糸の切れた凧の気分である。

先ずは気になっていたカワトクの「沖縄展」。
例年楽しみにしてかけつけ、シークワーサーとかシーサーとか島なんとかとかを買ってくる。
しかし今の環境では「目の毒」と思い、この手の催事は避けていたが、先述の大きなイベントにトライするための参考にもなろうと無理に理由づけて行った。

成果はあった。

最終日でどのコーナーも値引き品があり、ワタシは一周してオリオンビール「生」半額に戻った。
一杯400円が200円である。
気を静めて一杯だけ、立ち飲みでさっと干し、満足して会場を去る。

次の予定に少し時間があったので、朝の地震でありつけなかった朝食がわりに地下のパン屋でカレーパンを一個だけ買う。

所感を述べると、レベルの高い地元盛岡のパン屋さん達のコストパフォーマンスをあらためて認識する次第となった。
財布と時間を考えなければ本町や本宮のパン屋もいいのだが、最近は通勤途中に上田交差点をまがってすぐの「ベーカリー麦」を愛用している。
通勤途中に車を停めれる立地、小さい身構え、しかしながら品数の多さ、できたてが次々に出てくる出会いの楽しさ、もちろん味、ボリューム、そして財布に優しい街のパン屋さんなのだ。

などと、カワトクの向かいのビルの3階、ドアが開くまであと数分という映画館の通路で、オサレなチーズカレーパンを頬張りながら想った。

さて、そのカワトクの向かいの映画館、「ルミエール」。
十分ほどで若い女性の係員(昔はもぎりと言った)が来て、1800円なりを払う。
あと何日かすれば「生きていてよかった」割引の歳になるのだが(感慨!)、1800円。
上品でオサレなチーズカレーパンとあわせてほぼ2000円。

やはり考えてしまう。
2000円あれば、ワタシなど一週間暮らせる。
芸術なのか娯楽なのかと、生活、暮らしの釣り合いを、店からここへ向かう道中、じっくり考える境遇に陥っているのだ。
受け止めてはいるものの、何か寂しい。

寂しさに立ち向かうために、その窓口の若い係員に声をかけた。

「実は、あの3・11に、僕はこの映画館にいたんだよ」って。

忘れもしない、あの日。
映画館の中で、これで人生も終わりかと、しばし動きもせず椅子に深く腰掛けて少し感慨にふけた観客二名のあの日。
もぎりのおばちゃんは、すいません、お客様を誘導できずと、床にへたり込んで言った。
あの地震ではしょうがなかろう。
大丈夫と手を握って、上から駆けつけた若いあんちゃんの係員に後は任せて、階段を駆け降りた。
3階の映画館のロビーから見下ろすカワトク前の菜園通りの車道は、車ではなくビルから避難した多くの人が狼狽していた。

あのおばちゃんはとその若い係員に聞くと、もうお辞めになったようだ。

あれから三年がたつ。

その日も「軽め」の邦画だった。
そして今日も、ミーハーな「深夜食堂」。

最近は本も「軽め」を好む。

「深夜食堂」は駅中にある「さわや書店」をぶら読みしていたときに見つけた。
何の前情報も持っていなかったが、ぱらぱらめくって思わず手にしたシリーズ第一巻。
ワタシは若いときに松本零士にはまった以外は、そう漫画本を買うたちではない。
その時に何か感じたのだ。

自分に通じるもの?
否。
自分にないが、理想とする老後の姿の一つ。
そんなもの。
そして、そんな酒場、そんな客、空間、つまみ、場所。

映画館は定員の150名にははるか及ばないが、例の3・11の時のワタシと居眠りおっさんの二名よりは多く、平日というのに十名ちょいはいたのだろうか。
人気あるなと素直に感じた。

前から四列目の中央、もう自分より前には誰もいない席に陣取る。
そういう席が好きなのだ。
スクリーンの端から端まで見るためには、両目があっちこっちで少し疲れるのだが。
臨場感というか、独り占め感がいいのだ。
そして、スピーカ。
アルテック。
Voice of the Theatre
あの乾いた大音量の中に、我が身を浮かべるシアワセ。

映画って本当にいいですね。
 (相方に言わせれば、テレビと何が違うのよとケチつけるかもしれないが。いや、ケチなワタシ自身もこの手の劇場版って奴には疑問を持ちながら見ていたのだが.)

で、映画も半ばに入ったとき、
揺れた。

ずずんと一発。
ゆらゆらとゆったりと長く大きく。

場所が松園事務所と地盤のかたい城の近くの映画館の違いはあったが、朝に匹敵する揺れ。
しかし、あの3・11ほどではない。

ほどではないが、少し長すぎて、収まるのかという疑問がわいた。

しかし、映画が途切れるほどでもなく、観客の悲鳴があるわけでもなく、間もなく揺れは止まった。
思わず、口から出たのは「またか」だった。

同じ映画館で、大きな地震に二度も。

映画が終わって出るとき、若い女性の係員がこちらをちら見したように感じた。
この人が地震を持ってきたのって。

いやいや、自分自身、ちょっと映画を見るのは当分やめるかと、あの3・11以来の気分にもう一度戻ろうとしている。
いずれにせよ、ここはワタシにとって鬼門なのか。

映画館と地震か。

まぁ、地震と便座よりはいいか!?
  (物の本によれば家の中で地震のときにかけこむなら、構造上、便所が一番安全なそうだ)

そんな、少しいつもの仕事から気分を替えた(変えられた)一日。