鳩よ鳩よをかしからずや囚人の「387」が涙ながせる 北原白秋
25才の白秋は下宿先の隣家の人妻俊子と恋に落ちた。俊子の夫に姦通罪で訴えられ捕らえられ監獄に繋がれた。彼は監視から囚人番号387号で呼ばれることになった。人間としての名は抹消されている。もちろん文学界からも抹消されている。収監の獄屋にこの男はめそめそ泣いて涙を流している。引き裂かれた俊子にも会いたい。涙は頬を流れる。野鳩が窓に来てぐるるぐるると鳴いて回る。ふっと彼はそういう387号の我を客観視する。野鳩と387号とを一枚の風景画にして眺めてみる。そして可笑しくなってゲラゲラ笑った。笑ったら少しだけ明るくなった。白秋はこういうことがあって、彼の文学、詩や短歌や童謡は、充実期を迎えていくことになる。
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