「わたしだけのために」
青く澄み切った美しい冬空を わたしだけのためにそっと
天上いっぱいに広げて見せてくださるので
これはこのわたしにだけの依怙贔屓のように思われて
わたしは羞恥しています
わたしの身心を病ませ 泥にして苦悩の底に沈め
寒くて暗い呻吟の日々を体験せしめられたその後の
これは特上のギフトです
今日やっとわたしの両眼が頑迷の薄目を見開いて
温かな冬空を仰いでいます
曲がりくねっていてもこの道を歩めば
美しい青空に至る事をずっと知らないでいたのです
知らないまま塞ぎ込むわたしが
長い時間を経てようやくここへ漂着し
安堵の息をしています
もうすぐ一年が暮れます
あまつさえ藪の奥の静寂にはこの小さき者の為に
藪柑子が可愛い赤い実をつけています
藪柑子の赤い実や天上いっぱいに広がる冬空が
わたしにだけ捧げられていることはありません
わたしはわたしのこの熱湯のような増上と不遜を
吹いてくる山颪を全身に受けながら
冷やしています
***
これは2013年の11月に書いたものです。
ある新聞に投稿しましたが落選でした。
***
「春の野原」
ほとけさまが
春の野原に来て
お話をなさっています
相手は?
ほとけさまのお話がわかるのは
ほとけさまです
そこへ
兎がやってきました
野鳩がやってきました
ほとけさまは
兎と野鳩にもお話になりました
***
これは即興でいま作りました。
次のも即興です。
*
「正客」
ほとけさまが
こちらを向いてお話になるので
兎も野鳩も
ほとけさまの正客は
わたしたちなのだと思いました
春の野原にはたんぽぽがありました
兎も野鳩の正客も
たんぽぽの正客も
ほとけさまなのでありました
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