ふん、だ。わたしを思っていてくれる人はいない。心細い。
広い天地なのに、誰も居ないように思う。思われていないわたしはいてもいなくてもよくなっている。
誰かに思っていてほしい? それはなぜ? どうして?
どうしてなんだろうね。
思っていてくれる人が、じゃ、現れたらどうなる? 100才若返る? そんなこともあるまいに。
思いはエネルギーである。パワーを持っている。電気を帯びている。高電流が流れている。
「思う」ことができるのが人間なのであるが、それが途切れてしまうと、人は干涸らびてしまう。無活発になってしまう。思いを受けて思いを返すことがなくなってしまうと、アスファルト道路上で焼け付いた蚯蚓になってしまう。
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夕暮れのハグロトンボの羽根透けて天地の透けてわたしが消える
薬王華蔵