平山郁夫の手になる「祇園精舎」の作品が忘れられない。安来市足立美術館新館で見た。忘れられない。お釈迦様が衆生に説法をされている。後ろに十大弟子が控えている。お釈迦様も十大弟子も聞き入る衆生もシルエットのように、墨絵のように暗く静かでおごそかである。まわりは菩提樹の青々とした明るさ。お釈迦様はここ祇園精舎で浄土の教えである阿弥陀経を説かれた。
わたしも50才の時にここ祇園精舎を訪ねたことがあった。土台をなした赤レンガのみが残っていた。広大であった。平家物語の冒頭にはこの祇園精舎が登場してくる。「祇園精舎の鐘の色」とあるが。鐘はなかったらしい。
忘れられないのは何故か。今現在にもお釈迦様は説かれているからである。過去の一点の時だけではなく、今現在説法をされているからである。だから、そこにはわたしもいるからである。わたしもそこにいて説法を聞いているからである。