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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

映画の撮影に。。(続)

2009-09-08 11:09:05 | 能楽

もうずう~~っと忙しい日が続いておりましてブログの更新もままなりません。。ゴメンなさい
この映画の撮影も、もう1週間前のことになるのねえ。。

さて朝5時30分にホテルを発って現場に到着すると、すでに俳優さんやエキストラの人たち、そしてスタッフが大勢集まっておられまして、もう、そこここはチョンマゲだらけ。ぬえらもすぐにメイクとカツラの着用を指示されました。これに要した時間が能楽師全員で30分。。こりゃ時間がかかる1日となりそうです。

で、地謡や囃子方の用意ができるとシテ、ワキは装束を着けまして、さっそくリハーサルとなります。今日の撮影は、まず能の場面を撮影して、ついでそれを見物するお殿様とか役人の姿も入れて全体像を撮影する、という順番のようです。

今回の上演曲は『殺生石・白頭』のキリの場面ですが、これを ほんの1~2分程度にあちこちの型を分割して、こま切れに撮ってゆきます。シテが角から廻る動きを少し離れたところから全身を撮ったり、前へ出てくる足だけを撮ったり、はたまた面を切る型だけをアップで撮ったり。そのたびにカメラの位置設定を変え、カメラを載せる台車(?)やそれを走らせるレールを敷き直したり。

能の場面では基本的に監督さんから演技指導は出されずに、こちらが普段演じている通りでよろしかったようです。それでカメラアングルを決めるのに最も時間が掛かって、それから1~2回のリハーサルを行いますが、これもむしろカメラの動作を決定するために行われた印象でしたですね。そして本番。これは必ず1回だけでOKが出されました。



それにしても撮影機材とスタッフの人数の大がかりなこと! この画像はクレーン・カメラって言うんですか? これでの撮影の様子。あ~んな高いところから撮影がスタートして、そのときは能を演じている舞台を角柱の方向の上から捉えているわけです。季節は春の設定なのでスタッフが横から桜の枝を高く掲げて、枝だけが写り込むようにしています。そしてなんと!! このクレーンに乗ったカメラが能を演じている最中にグイ~~ン! と!舞台の中に入ってくるのです(!)。そうしてシテの背後に回り込んで、その背中越しに御殿で能を見るお殿様たちを写し込むという。。凝ってますね~~

能の場面は合計7~8カットも撮ったでしょうか。さらに地謡や囃子方もそれぞれ謡い、囃しているところを撮影されましたから、ぬえもちょっとは映画に映るかも。能の撮影もようやく午後になったあたりでお殿様や役人の武士のみなさんも御殿に居並んで、見物している風情も写り込むような感じで撮影が進みます。こうして、能の舞台面がすべて撮影が終わったのが午後4時くらいだったでしょうか。少なくとも8時間以上 能の撮影に費やされたことになります(映画では能の場面は3~4分程度らしいですが)。みなさんお疲れさまでした。シテはとくに大変だったと思いますけれども。。

そうして、ぬえらは着替えて帰宅しました。この間にも 今度は御殿だけの場面の撮影が続いていましたが、お殿様や武士役のみなさんは能だけの撮影が終わってこの場面の撮影になるまで6時間ほど待機状態だったのですね。。休憩時間に「お待たせしてすみません」と俳優の方に言ったのですが、「いえいえ、能のみなさんの方が大変ですよ~」とねぎらって下さいました。

助監督さんとも休憩の時に、今日はどれほどの人数が撮影に集まっているのか伺ってみると。。なんと出演者・スタッフ総勢で150名とのこと! うわ~、大変だ~。もちろん映画の中で最も大がかりなシーンなのだそうです。

それにしても。。最初は異様に感じたチョンマゲのヅラでありますが。1日中周囲にチョンマゲがあふれていると、段々と慣れてきてしまいます。能楽師の中で、一人だけ楽屋働きの者がおりまして、彼は一応紋付は着たけれど、画面には写らないのでカツラは着けませんでした。そうしたら。。時間が経つにつれて彼の現代人の髪型の方がおかしく見えてくるんですよねえ。不思議~。そんで、お囃子方の中で太鼓のSくんが。。これが異様にカツラ・紋付姿が似合っているのに驚愕! 彼は生まれてくる時代を間違えたに違いない。。

これら能楽師の画像や、御殿に居並んだ殿様や武士のみなさんの壮観な様子をお見せしたいのは山々ではありますが、著作権や肖像権に配慮し、また映画のネタばれにもなるので自粛しました。

んで、最後に ぬえのチョンマゲ姿~



似合ってない。。(×_×;)