映画への初めての出演です。といっても時代劇の中で演じられる能のワンシーンで、ぬえは地謡だったのですけれども。
『必死剣 鳥刺し』という映画だそうで、最初この題名を聞いた ぬえは時代劇とは気がつきませんでした。。藤沢周平さんの短編連作小説だったのね。すんません。。アニメかと思った(←ぢゃなんで能楽師が出演するんだよ)。。 2004年に公開された『隠し剣 鬼の爪』の続編。。正確には続々編で、今秋に続編が公開され、ぬえらが携わった(出演した、なんてオコガマシイですんで。。)こちらの映画は来春頃に公開されるのだそうです。
能楽師は、少なくとも東京在住のそれは、大河ドラマなどでの能楽の上演シーンへ出演する機会もあって、一度はそういう経験をしたことのある能楽師も多いのですが、ぬえは今回が初めての経験でした。
今回は野外ロケだったもので、まずは先日 師匠家で囃子と地謡だけを先に録音しまして、その日は鬘合わせも行われました。ああ!これが ちょんまげヅラなのね~。カツラにもサイズがあって、役者の頭の大きさに合わせて事前に選んでおくのか~。ふ~ん。そんで、カツラの下には「羽二重」と呼ばれるゴム状の薄い膜を頭頂部にかぶせて髪を隠して月代とします。。この説明じゃわかりませんね。以下のサイトを参照~
丸羽二重
。。さらにわかりにくいか。。
「羽二重」といえば紋付の素材になる最高級の布のことですから、これを常用する ぬえたちにとっては意外で違和感のある名称ですね~。ともあれカツラはこんなの↓
ぬえの役は武士のカツラ
そうして一昨日の月曜日、師家で行われた稽古能が終わってから一路バスで撮影現場に行きました。と言っても、その日に撮影があるわけではなくて、現場のセットの下見をして、すぐにホテルに移動しました。というのも、翌日の撮影開始が午前5時30分ホテル出発という(!)強行スケジュールだったのです。あまりにも早いその集合時刻も、撮影が始まってみれば納得なのでしたが。。
翌日時刻通りに集合して撮影セットへ。そこで見た光景がトップ画像です。ふむ。殿様がおわする母屋があって、それに対面するように庭に建てられた能舞台。ああ、いいね~、風が通り抜ける舞台というのは。東本願寺や厳島神社、そして彦根城の舞台などで同じような舞台は見たことがありますが、今回はそこに立てるのです。ここはどうやら観光のために(?)建てられた、戦国時代の武将の館を再現した施設のようです。映画の時代背景としては江戸中期あたりかと思いますが、東北地方の小藩の城であればこの程度が妥当かも、と思わせる豪華さと質素さがうまくマッチした感じの建物。大勢のスタッフが朝から忙しそうに立ち働いておられます。
が。。謂われを聞いて ぬえは衝撃を受けました。
なんと!母屋は最初からこの施設に建設されてあったのですが、能舞台はというと、これは今回の映画の撮影のために わざわざ新築されたものだとのこと!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ええっ!! そんなことがあり得るのかしら?? 床の、柱の色合いも母屋と同時代の趣をしっかり持っていますのに。。でも、そういえば戦国時代の館にそれほど完備された能舞台があるはずもない。。そうして、この舞台の屋根は上部を欠いています。雨漏りしちゃう。半壊状態なのかと思っていたのですが。。裏に廻ってみたら。。こうでした。

驚いた。。本当に今回のために作り上げたんだ。。表側から見る舞台の風合いは着色して作られたものなんだ。。スゴ過ぎる。。(しかもこのシーンの設定が春なもので、桜の木まで用意されてます。ぬえらも紋付は夏の絽ではなく単衣を着るように言われていました)