
突然のことでありました。
今ぬえはひと月のうち1週間程度を東京を離れて茨城県の鹿嶋市にある別荘で過ごし、ここでも教室やデモンストレーションなどの活動を展開しているのですが、昨日ここで受けた知らない携帯電話の番号からのお電話。
流暢な日本語ではありますが明らかにアジア系の外国人からのお電話だとわかりました。聞けば能楽のWorkshopをして欲しい、とのこと。ああ、たまにそういう依頼はあるけれとも、外国人からの依頼はないなあ。まして ぬえは東京を離れていて、こちらには面も装束も持ってきていないのです。。
その旨をお伝えしたのですが、是非ともお願いしたい、と仰る。そうしてお相手は旅行中の少人数のグループで、演劇をやっているから滞在中に能を学びたい、それもあさってには帰国するから明日お願いできないか?とのこと。ああ、演劇家なら面や装束なしでも能の世界の中でも独特の方法論を話せますし、それはかなり興味を持って頂けると思う。やはり滞在は東京とのことなので、鹿嶋市まで遥々来て頂くんだから、それでは無料でWorkshopをやってあげますよ、と答えました。
さあ大変。さすがにこの別荘では手狭なので会場を借りたり、ほんの2時間くらいしか時間が割けないから資料を揃えたり、体験して頂く簡略版の仕舞のプリントを探し出したり。
こうして今日、わざわざ茨城県まで来て頂いて初めてお会いしたのですが、なんと!
中国の世界文化遺産、昆劇の役者さんでした!
ぬえも中国では北京と香港では能楽の公演に出演したこともあり、北京では京劇も拝見しました。また、じつは先週は鎌倉能舞台さまのお誘いで韓国公演に参加させて頂き、このときも文化交流で中国の南方の同じ感じの芸能団体とも交流があったのです。ぬえは勉強不足で京劇と昆劇、また韓国で拝見した劇との違いがまだよくわかっていないのですが、昆劇が世界文化遺産だということは知っていました。今回は大学の招聘を受けて来日され、滞在中に日本の伝統芸能を学びたかった模様。
短い時間ではありましたが、羽衣のキリのダイジェスト版を体験頂き、ビジュアルとして能の上演の様子を見て頂くために能の動画をお見せすることにしたのですが、こういう人たちなら理解が得られるだろう、と思って、あえて「隅田川」の動画をお見せしました。
韓国公演でも思ったのですが、アジアの伝統芸能はアクロバティックな物が多いです。そんな中で静謐を尊ぶ能はアジアではかなり異質と思うのです。動画を見せながら、シテが笠をいつまでも脱がない「隅田川」は、最後に悲劇で終わるこの曲にあって、観客に不安感を抱かせる演出なのだ、とか、ワキやワキツレとともに舟に乗る場面では舟は舞台に出さない、観客のイマジネーションに訴えいるんです、とか、その舟は客席側に向かって進んでいるはずなのに、舞台の奥にはシテの息子である子どもが埋められている墓が見えていて、観客は対岸に向かう一行の表情と、彼らが向かう目的地の両方が見える仕掛けなのだとか、女性の役なのに声色を使わず男たる役者の声で演じるのは役者が女性を演じているのではなくて、彼女の「悲しみ」や慟哭を表現するのに主眼を置いていて、声色ではなく男の役者の生の声だからこそ深刻さをリアルに表現できるのだとか。こんなことを説明しましたが、かなりインパクトはあった模様。
終わってからとても意義深かった、と感謝されました。
一方、京劇や昆劇では長い袖の衣装を着て、その袖を床まで垂らしたり、またヒラヒラ、と上手にまくり上げたりしますよね。そのことをこちらから聞いたら、なんと彼らは衣装を持参してきて、ぬえにその演技を見せてくれました。いや伸ばした袖を優雅に巻き上げるもんだ。聞けば、ただまくり上げるのではなくて、ほんの指先だけが見えるようにするのだそうです。それは高難度!
こちらも運ビ。。すり足を体験して頂き、頭の上に扇を乗せてもスラスラ動けるように体幹がブレないようにします、と言ったら、なんと若い美形の役者さんが私たちも同じことをします、と言ってたまたまあった板?を頭に乗せて優雅に、そして速く動いて見せてくれました。それが出来るのならば?と足元をよく見ると、ああ、やはりすり足に近い動きです。先方も ぬえも、なんか似ているところがありますねえ!とお互いに驚きました。
終わってからまた東京までのバスターミナルまで送迎しましたが、本当に喜んでくれて、扇をプレゼントして頂きました。


なんとも面白い体験でした。北京に来たらぜひまたお会いしたい、と言われましたが、さてそれは何時になることか。。
今ぬえはひと月のうち1週間程度を東京を離れて茨城県の鹿嶋市にある別荘で過ごし、ここでも教室やデモンストレーションなどの活動を展開しているのですが、昨日ここで受けた知らない携帯電話の番号からのお電話。
流暢な日本語ではありますが明らかにアジア系の外国人からのお電話だとわかりました。聞けば能楽のWorkshopをして欲しい、とのこと。ああ、たまにそういう依頼はあるけれとも、外国人からの依頼はないなあ。まして ぬえは東京を離れていて、こちらには面も装束も持ってきていないのです。。
その旨をお伝えしたのですが、是非ともお願いしたい、と仰る。そうしてお相手は旅行中の少人数のグループで、演劇をやっているから滞在中に能を学びたい、それもあさってには帰国するから明日お願いできないか?とのこと。ああ、演劇家なら面や装束なしでも能の世界の中でも独特の方法論を話せますし、それはかなり興味を持って頂けると思う。やはり滞在は東京とのことなので、鹿嶋市まで遥々来て頂くんだから、それでは無料でWorkshopをやってあげますよ、と答えました。
さあ大変。さすがにこの別荘では手狭なので会場を借りたり、ほんの2時間くらいしか時間が割けないから資料を揃えたり、体験して頂く簡略版の仕舞のプリントを探し出したり。
こうして今日、わざわざ茨城県まで来て頂いて初めてお会いしたのですが、なんと!
中国の世界文化遺産、昆劇の役者さんでした!
ぬえも中国では北京と香港では能楽の公演に出演したこともあり、北京では京劇も拝見しました。また、じつは先週は鎌倉能舞台さまのお誘いで韓国公演に参加させて頂き、このときも文化交流で中国の南方の同じ感じの芸能団体とも交流があったのです。ぬえは勉強不足で京劇と昆劇、また韓国で拝見した劇との違いがまだよくわかっていないのですが、昆劇が世界文化遺産だということは知っていました。今回は大学の招聘を受けて来日され、滞在中に日本の伝統芸能を学びたかった模様。
短い時間ではありましたが、羽衣のキリのダイジェスト版を体験頂き、ビジュアルとして能の上演の様子を見て頂くために能の動画をお見せすることにしたのですが、こういう人たちなら理解が得られるだろう、と思って、あえて「隅田川」の動画をお見せしました。
韓国公演でも思ったのですが、アジアの伝統芸能はアクロバティックな物が多いです。そんな中で静謐を尊ぶ能はアジアではかなり異質と思うのです。動画を見せながら、シテが笠をいつまでも脱がない「隅田川」は、最後に悲劇で終わるこの曲にあって、観客に不安感を抱かせる演出なのだ、とか、ワキやワキツレとともに舟に乗る場面では舟は舞台に出さない、観客のイマジネーションに訴えいるんです、とか、その舟は客席側に向かって進んでいるはずなのに、舞台の奥にはシテの息子である子どもが埋められている墓が見えていて、観客は対岸に向かう一行の表情と、彼らが向かう目的地の両方が見える仕掛けなのだとか、女性の役なのに声色を使わず男たる役者の声で演じるのは役者が女性を演じているのではなくて、彼女の「悲しみ」や慟哭を表現するのに主眼を置いていて、声色ではなく男の役者の生の声だからこそ深刻さをリアルに表現できるのだとか。こんなことを説明しましたが、かなりインパクトはあった模様。
終わってからとても意義深かった、と感謝されました。
一方、京劇や昆劇では長い袖の衣装を着て、その袖を床まで垂らしたり、またヒラヒラ、と上手にまくり上げたりしますよね。そのことをこちらから聞いたら、なんと彼らは衣装を持参してきて、ぬえにその演技を見せてくれました。いや伸ばした袖を優雅に巻き上げるもんだ。聞けば、ただまくり上げるのではなくて、ほんの指先だけが見えるようにするのだそうです。それは高難度!
こちらも運ビ。。すり足を体験して頂き、頭の上に扇を乗せてもスラスラ動けるように体幹がブレないようにします、と言ったら、なんと若い美形の役者さんが私たちも同じことをします、と言ってたまたまあった板?を頭に乗せて優雅に、そして速く動いて見せてくれました。それが出来るのならば?と足元をよく見ると、ああ、やはりすり足に近い動きです。先方も ぬえも、なんか似ているところがありますねえ!とお互いに驚きました。
終わってからまた東京までのバスターミナルまで送迎しましたが、本当に喜んでくれて、扇をプレゼントして頂きました。


なんとも面白い体験でした。北京に来たらぜひまたお会いしたい、と言われましたが、さてそれは何時になることか。。
そんな話でしたら、ビデオをもってすっ飛んで行きたかったです。
あ、そう言われてみると、ここに武道の要素を入れて比較してみたらもっと面白いものになったかも。
ぬえは小学~中学生時代に剣道をやっていたけど、いま能に大変役にたっています。
ああ、同じ日本の伝統文化だからか、やっぱり能と武道はルーツには同じものが流れているんだなあ、と感じます。