傍観者の独り言

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靖国神社の「A級戦犯を合祀」の正統・正当性?・・・今上天皇は「親の心子知らず」と苦悩?(雑感)

2014-01-27 23:07:50 | 政治

安倍首相の靖国参拝問題については、国内外で燻ぶっていることは、根が深いということですね。
浅学の当方には、靖国神社問題を深追いすると戦争責任、天皇制の問題になり、日本人のナショナリズムの問題になり短絡的な結論はないが、渡邉 斉己氏が「アゴラ」に寄稿『靖国神社は歴史認識問題とは切り離せ』(2014年01月25日)、ブログ「社会科学者の随想」様のエントリー『靖国神社がゆるい神社?』(2014年01月27日)に接して、問題の契機となった「A級戦犯を合祀」の歴史的事実を知りました。

靖国神社問題は、神社として正統性の問題が敗戦後顕在化し、関係者の組織保全の動き、特に、東京裁判でのA級戦犯を合祀し、時の首相、閣僚が参拝し正当化の主張を戦後の世界秩序の否定と受け取られていることですね。

この「A級戦犯を合祀」について、渡邉 斉己氏は『靖国神社は歴史認識問題とは切り離せ』で、

”「これに対して、松平宮司は、靖国神社にA級戦犯を合祀することによって、「東京裁判を否定」しようとしました(『靖国神社の祭神たち』p199)。
よく知られていることですが、昭和天皇は、靖国神社へのA級戦犯合祀が、将来、日本批判の国際宣伝に使われる危険性を察知していましたので、合祀を思いとどまるよう働きかけました。しかし、松平宮司はこれを無視しました。その結果、昭和天皇は御親拝をしなくなりました
。」”

と、松平宮司が昭和天皇の意向を無視し、A級戦犯を合祀し、それ以降、天皇の御親拝は無くなくなっと。

また、安倍首相が靖国参拝の際に、靖国神社の鎮霊社をも参拝したと報道があったが、渡邉 斉己氏は、鎮霊社について、

”「これに対して松平宮司は、晩年、共同通信記者に「合祀は(天皇の)ご意向はわかっていたが、さからってやった」といったそうです(前掲書p201)。前任者の筑波宮司は、昭和天皇のご意向を知り、また本人も同様の考えを持っていたのでしょう、靖国神社の本宮南に鎮霊社という小社を1966年に建て、靖国神社本宮に祀られていない1853年以降の戦没者を外国人も含めて無差別に祀りました。秦郁彦氏が靖国神社に確かめたところによると、1966年から78年10月の靖国神社合祀まで、A級戦犯はここに祀られていたと認めたそうです(『現代史の対決』p270)。

この鎮霊社については、松平宮司以降その存在が隠されてきたらしく、今日では、鎮霊社にA級戦犯が祀られていたことを靖国神社は否定しているようですが、こうした靖国神社の松平宮司以降の考え方は、大きな問題と言わざるを得ません。
なにより、戦没者の慰霊という主義・主張を超えるはずの問題を、「東京裁判の否定」という主義・主張を貫く手段として利用していること。
そのためには、例え天皇のご意向であろうと、あえて無視するという、かっての昭和の軍人を彷彿とさせる言動・・・。

秦郁彦氏によれば、松平永芳宮司は、尊皇思想家平泉澄と師弟関係にあり、「終戦を第11根拠地隊参謀(サイゴン)の海軍少佐で迎え、46年に復員」。53年に三等保安正として陸上自衛隊に入る」が、「リベラルな学風に傾倒していた学生たちには敬遠され」、その後「資材統制隊副隊長のポストを最後に」定年退官した。その後郷土福井の歴史博物館長を10年務めた後、靖国神社宮司に引き出された。平泉門下生らしく、皇室のあり方について自らの職掌を顧みることなく直言や諫言を繰り返していたそうです。こんな人物がなぜ宮司として選ばれたのか・・・
。」”

と、1966年から78年10月の靖国神社合祀まで、A級戦犯はここ鎮霊社に祀られていたが、現在は靖国神社は否定しているようで、東京裁判否定に利用されていると考察しています。

「社会科学者の随想」様のブログ『靖国神社がゆるい神社?』では、

”「2) A級戦犯を合祀した元A級戦犯
 しかも,靖国神社において当時,総代であった賀屋興宣--極東国際軍事裁判〔東京裁判の正式名称)で終身刑となり,約10年間巣鴨プリズンに服役--などがいて,A級戦犯の合祀を強くしたのである。
そして,そのころ靖国神社の宮司であった宮司松平永芳が,A級戦犯の合祀を決めて実行した。靖国神社は敗戦後,民間の宗教法人に衣替えせざるをえなくなっていたから,戦前・戦中の時期にように,同社の具体的な運営について天皇の意思は反映されない事態が発生したことになる。

 昭和天皇がA級戦犯の合祀をしったとき,この松平永芳の父松平慶民が,戦前から戦後にかけて宮内大臣・宮内府長官を務め,天皇によく使えたのに比べて,その息子の永芳が,天皇裕仁にとっては,まことにトンデモない「A級戦犯の靖国合祀」という〈蛮行〉を犯した。
昭和天皇はこの事態をとらえて,「親の心,子しらず」だと嘆いた。この点を明かにした史料が『富田メモ』であった。この富田メモの発見と解説が,『日本経済新聞』2006年7月20日朝刊の冒頭記事として報道されていた。そのメモを一部分(うしから3分の2ほど)を紹介しておく。

  私は或る時に,A級が合祀され
   その上 松岡,白取までもが
  筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが
   松平の子の今の宮司がどう考えたのか
    易々と
  松平は平和に強い考えがあったと思うのに
   親の心子知らずと思っている
  だから 私あれ以来参拝していない
   それが私の心だ


この文句のうち,日独伊三国同盟の成立に走ったドイツ駐在大使の松岡洋右,イタリア駐在大使の白鳥敏夫「までも」という発言がなされていたが(この2人を天皇は嫌っていた),問題の核心はあくまで「A級戦犯の合祀」そのものであった。
つまり,ポツダム宣言を受諾後,この敗戦を経て,東京裁判が開廷された。本来,昭和天皇が大日本帝国の最高責任者:統帥者として裁判を受けるはずの人物であったところを,アメリカ側の都合で免罪され,その代わりにA級戦犯という〈犠牲:生贄〉がその法廷に捧げられていた。

 さらに付言しておくと,上の富田メモに出てくる「筑波」藤麿とは,1946〔昭和21〕年1月25日から死去するまで,靖国神社第5代宮司であり,松平永芳の前任者であった。筑波はA級戦犯の問題のむずかしさを理解しており,合祀しない方向性を維持していた。1978〔昭和53』年7月1日から宮司になった松平永芳は,赴任後1年も立たないうちにA級戦犯を合祀した
。」”

と、靖国神社は敗戦後,民間の宗教法人に衣替えせざるをえなくなっていた(存亡の危機)から,戦前・戦中の時期にように,同神社の具体的な運営について天皇の意思は反映されない松平永芳・宮司による「A級戦犯の合祀」の事態が発生した。

安倍首相は、靖国神社参拝後、”「日本のため尊い命を犠牲にされた英霊に対し、尊崇の念を表し、平和をお祈りした。二度と戦争の惨禍に苦しむことのないよう不戦の誓いをした」”の表明は歴史認識不足による詭弁に思えますね。

神社の1(イチ)宮司が天皇の意向を無視して「A級戦犯の合祀」を断行(蛮行)したことで、天皇陛下も靖国参拝できない事態は異常であり、国の最高責任者がこの異状事態を「不戦の誓い」と靖国参拝を正当化するのは詭弁としか思えないですね。

靖国神社は、敗戦後体制の変革で、神社存亡の危機に直面し、一方で、「靖国で会おう」とお国の為に犠牲を強いた事実もあり、この両者の合作が「A急戦犯の合祀」で、他方、靖国に祀られた戦死者の身内縁者も多数いることも事実で、日本人には靖国神社は特異な存在心情があり、安倍首相の言う、”「日本のため尊い命を犠牲にされた英霊に対し、尊崇の念を表し、平和をお祈りした。二度と戦争の惨禍に苦しむことのないよう不戦の誓いをした」”は表層的には容認できる側面もあり、安倍首相の靖国参拝を支持する世論が半数(備考*1)いることも現実ですね。
やはり、靖国神社問題は、国の最高責任者が昭和天皇陛下の意に反した参拝程度で「不戦の誓い」はご都合の詭弁ですね。

また、本ブログ『安倍首相の靖国神社参拝の雑感・・・今上天皇が苦悩・熟慮』(2014-01-16)で、安倍首相の靖国参拝で一番苦悩しているのは、今上天皇と書いたが、靖国神社に祀られている英霊の身内親族に多くの国民がおり、安倍首相の靖国参拝を支持する国民心情もあり、国民の象徴の今上天皇にとっては、昭和天皇が「A級戦犯を合祀」したこと「親の心,子しらず」と嘆いた事実もあり、安倍首相の靖国参拝を、「親の心,子しらず」と苦悩していると思われますね。


「備考」

(*1) 安倍首相の靖国参拝の世論調査

朝日新聞の全国世論調査(25日、26日)

Q 安倍首相は昨年12月、靖国神社に参拝しましたが、首相が参拝したことはよかったと思いますか。参拝するべきではなかったと思いますか。
  参拝したことはよかった・・・・・・・・・・・41%
  参拝するべきではなかった・・・・・・・・・46%

Q 安倍首相の靖国神社参拝を、中国、韓国、アメリカ、ロシアなどが批判しました。安倍首相はこれらの批判を重く受け止めるべきだと思いますか。それほどのことではないと思いますか。
  重く受け止めるべきだ・・・・・・・・・・・・51%
  それほどのことではない・・・・・・・・・・40%

Q 靖国神社とは別に、過去の戦争で亡くなった人々を追悼するために、宗教と関わりのない施設を国が新たにつくるという考えに、賛成ですか。反対ですか。
  賛成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50%
  反対・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29%



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