傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

経産省の古賀茂明氏の出張報告の所感・・・共感!

2010-11-30 07:04:33 | 民主党(菅政権)

政府の公務員改革を実名で批判した経済産業省の古賀茂明氏の出張報告の「所感」内容は共感しますね。
出張報告については、朝日新聞が記事『経産省、内部批判部分を削除 国会提出の官僚出張報告書』で、「所感」の部分が未開示と報道あり、その「所感」全文を河野太郎議員がブログ『経産省が隠蔽した文書の全文』と書いています。

本ブログで、古賀茂明氏の公務員改革の提起を支持と書きましたが、この度の疑惑の出張報告の所感内容は共感できますね。
一般的に「出張報告」は事実の報告とそれに対する報告者の「所感」が求められ、経済産業省が「所感」を開示しないのは解せないです。

河野太郎議員が公開した古賀茂明氏の「出張報告」の「所感」を転載すると、

”「別紙5

所感

・今回は急な出張だったため、経産局と打ち合わせる時間が殆どなく、調査対象の選定についても具体的な基準はなかった。

・出張命令を受けた地域は、北海道、東北、九州、四国というだけだったが、これらの地域に限定した理由が不明である。中国、近畿、中部、関東、沖縄等は対象に入っていない。また、対象となった4ブロックのうちでも実際に訪れたのは、時間の関係で北海道、岩手、宮城、福岡、佐賀、愛媛だけなので、4ブロックの調査とも言えない。

・従って、今回の出張報告は、あくまでたまたま訪れた企業で聞いたエピソードを集めたという性格が強い。

・そうした限界を十分に踏まえた上で、調査者として意味があると感じた点を列記すれば以下のとおりである。

・なお、これらの所感の多くは調査対象企業の意見そのものであるが、当初からそうした意見が表明された場合もあれば、当初は表明されていなかったが、調査者との議論の結果表明された意見の双方が含まれている。後者の意見は今回の出張の一つの成果だと言える。

1.経済産業局調査では、製造業のウェイトが高すぎるきらいがある。円高等の影響が強く出過ぎる。ウェイトづけの根拠を聞いたが、はっきりした根拠を持っているところはなかった。統計的に意味のない調査をしてそれを政策のベースとすることは科学的ではない。

2.定型的な質問をするだけでは本質的な問題まで行きつかないことが多いのではないか。局の話では素晴らしい企業と言われていても、実は倒産寸前ではないかとみられるところもあった。

3.製造業などでは海外展開を国内事業と一体的にとらえて戦略を考えているが(当たり前のこと)、局には海外事業に関するノウハウや土地勘が殆どなく、戦略的なアドバイスができない状況にある。円高対応等では、経営者に対して円高でもやっていくためにどうしたらよいか問題を掘り下げて議論していく過程で、新たな挑戦の軸につながるような展開もあった。こうしたノウハウを培うためには、局も少なくとも県の国際部門並の国際感覚を持った人材を持つ必要があるが、非現実的。四国では今年も昨年も海外出張がゼロとのこと。徳島ではジェトロ上海事務所にずっと職員を派遣しており、帰国してから企業の相談に乗っている。高知県も上海事務所がある。本当の相談は県に行ってしまうとのこと。局の存在意義はあまりなくなっている。

4.優良企業の発掘も県に頼る場面が多いとのこと。やはり、国の機関が中小企業政策を担うことの限界ではないか。中小企業政策は予算と権限ごと県に移管することが効率的だと思われる。

5.どこでも農業政策に対する不満の声が大きかった。特に北海道では、ホクレンや農業委員会等が農業に進出する新規参入者や意欲ある農家の発展を阻害しているとの指摘が多かった。農業政策が自立できない農業温存政策になっている疑いが極めて強い。もっと競争原理を取り入れた、伸びる生産者「だけ」を後押しする政策に転換するべき。農業だから保護というのはおかしいという声が圧倒的に強かった。

6.中小企業政策には儲かっていると補助金が出ないというおかしな仕組みが多い。儲かっていないということは仕事がないということ、そんなところを補助しても意味ない。仕事があって伸びるところに出すべき。また、受注生産のところでは売り上げが落ちたら受注残はゼロというような場合もあり、タイムラグに対応する政策を今まで全く考えていなかったとすれば怠慢と言われても仕方ない。

7.弱者保護の補助を止めて強いところに雇用を集中すべき。「補助金がなければやっていけないのは事業ではない。ゾンビみたいに生き残って強いところにダンピングで足を引っ張る。これでは政策の意味は全くない。」という声が意外に強かった。日本の産業政策の根本問題で、中小企業でさえこの点を良く認識している。弱者保護の対策は直ちに止めて労働異動の円滑化対策だけに絞るべき。

8.高齢者の経験に頼るような経営はもう限界である。若手経営者の方がはるかに環境変化への対応力があるとみられる例が多い。経営支援する場合、経営者の能力を厳しく査定して能力が低い経営者の企業には助成しないようにした方が良い。

9.自動車メーカー等の下請けに甘んじていたところで2極化の動きがある。技術が高いというだけに安住していた企業には将来がない。経営力が最大の問題。既に多くの企業がそれに気づいており、円高でも価格交渉をできる交渉力を持ち始めている。円高だから助けようという姿勢は誤ったメッセージを与えている可能性がある。自分達は被害者だという意識を持つと先がなくなる。

10.大手メーカーのこだわりとそれに応える擦り合わせ力を美化することが過剰になっていたきらいがある。各メーカーごとに異なる仕様にしてそれに応えるために無用な努力が払われその結果親企業の価格競争力が失われてコスト削減要請を受けるという悪循環に陥っている。

11.擦り合わせを美化する風潮が過剰な残業を生んだり、利益率の低下の遠因となっている。早晩適正化が図られると思われるが、少なくとも政策的にコスト評価をしないまま擦り合わせ文化を美化し、促進するような政策はとるべきではない。

12.FTA交渉の遅れに対する不満も極めて強い。それとの関係で上述した農業保護政策への批判が極めて強かった。農業のために日本の強い産業が負担を強いられることは、日本経済を弱体化することになるので極めて問題。ばら撒きは止めて、兼業農家からは土地を大規模経営体に移す政策を採るべき。あとは生活保護なり失業対策の問題として解決すればよい。工場労働者はハローワークに行くしかないのだから、農家だけ特別に保護する必要はない。そもそもずっと赤字の農家なら所得補償は必要ないのではないか。

13.EUや中国の規制について意見が出ていた。EUとのFTA交渉等で細かい規制項目についてSMEの意見を聞いてアジェンダに載せる努力をしてはどうか。

14.補助金政策については、使い勝手が悪いという批判とともに、そもそもそんなものは当てにするべきではないという意見も多かった。これだけ財政状況が悪いのだから、思い切ってモデル事業的なものは全廃して、ベンチャー支援の税制とミドルリスクミドルリターンの企業金融だけに絞ることにしてはどうか。あとはセーフティネットで雇用対策、とりわけ職業訓練の強化などで対応した方が効率的ではないか。また、淘汰を促進するという明確な意思を持った政策に転換して行くことが必要。」


と、経済産業局は現状から乖離していると述べています。

古賀茂明氏は、公務員改革で政府から要注意人物と見られているが、この度の「所感」は自分の所属する経済産業省の内部批判というより建設的な意見ですね。
当方が古賀茂明氏の「所感」に共感するのは、現状を是とせずに、問題提起する姿勢です。
組織はマンネリ化すれば「ワンパターン」「時代遅れ」となり、無用・不要の存在になるのは世の常であり、定期的に組織変更・人事異動させ、活性化させるのです。

古賀茂明氏は、「所感」の冒頭に、地元企業が内外状況変化に対処しているのに、経済産業局は国際状況に疎く、地元企業から相手にされておらず、経済産業局の存在価値になくなったと問題提起していますね。
当方は、現役時代に、酒の席で、松下電器(現パナソニック)の人間から、松下幸之助氏の経営逸話として「組織責任者の責任とは」を聞いたことがあります。
松下幸之助氏は、課(グループ)なりの組織の長には3つの責任があるとし、
① 権限委譲し、結果責任をとること
② 新たな仕事の創造を、権限委譲すれば時間に余裕できるので
③ 部下育成
と聞いたことがあります、担当の仕事を熟知し、部下に権限委譲することで、権限委譲すれば時間に余裕ができ、新しい取り組み、新たな仕事を創造する責任があるということで、もう一つは預かった部下を自分以上の力量のある人間に育成することです。

世の中、組織責任者より組織管理者が多く、権限委譲せず責任移譲し結果責任をとらず、部下を自分のライバル視する人間が多く、現場は不条理が鬱積するのが常ですね。
パナソニックが韓国サムソンの後塵を拝しているのは、松下幸之助氏の言う組織責任者の資質に問題があるのでしょうね。
松下電器も大企業病に陥り、過去に何回かリストラし、事業再編し、パナソニックに変身したが、現場(市場)を熟知している人間が手薄になり、市場変化を知らない人間は市場の洞察力がなく、如何に権限委譲し、新たな取り組みし、部下育成しても、表層部の取り組みになりますね。
マアー、パナソニックが再生するには、市場でもまれた部下が組織責任者になるまで時間を要しますね。

古賀茂明氏は、現行の弱者保護の補助金政策、農業政策に苦言を発し、個別仕様競争の無駄を提起しており、同感ですね。
当方も、公的機関の補助金・助成金制度に何回か申請した経験があり、関わるコンサルの助言をうけ、書類を形式的に美的整備することが肝要で、補助金政策には、現場の土着性・革新性が活かれておらず、無駄の温床という思いがあります。

当方は、何事も新陳代謝が進化に不可欠という考えで、硬直化した日本社会は「破壊と創造」が不可避という思いで、再三、本ブログらで、国家の計を

”「国民が安心・安全で暮らせる社会は、まずは、第一次産業が国の基幹と思っております。温暖化で環境破壊が進行しても、石油が枯渇するエネルギー問題が深刻化しても、食糧危機が最悪の事態になろうとも、自給自足で最低の生活ができることことが第一で、第二は、社会保障制度の充実での安心さで、その上での自由競争社会という国造りが必要で、人材育成が肝要と思っております。」”

と書き、自給自足UPし、社会保障制度の充実の上での自由競争という考えです。

当方は、古賀茂明氏の農業保護政策の批判は同感であるが、農業の画一的な産業論には反対であり、産業論部分と国土保全・文化論的部分があるという思いですね。
農業であろうと、中小企業であろうと、「破壊と創造」論には賛成であり、新たな創造には、本ブログで取り上げたベーシックインカム制度の導入を検討すべきと思っていますね。

「付記」

①  高橋洋一氏の「現代ビジネス」に寄稿『菅政権が隠蔽した仙谷「メリ・デメ表」と古賀レポート 隠されたのは尖閣ビデオだけではない』で、古賀茂明氏の「所感」の”「国の出先機関が中小企業政策を担うことに限界があることを指摘するなど、なかなかおもしろい。」”と論評。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。