地域循環共生圏概論Ⅲ

2019年12月23日 | 日誌


作成日:2019.12.23|更新日:2019.12.24
地域循環共生圏概論Ⅲ
『三方よし』の精神を生かし、ESG地域金融を推進す
る滋賀銀行の事例を俯瞰しました。そこでは銀行----金
融仲介・信用創造・決済機能の3つを機能を主要業務の
預金・融資・為替・信用により実現と信用金庫----営利
を目的としない協同組織の地域金融機関との業界の "ボ
ーダレス化”が起きているようにみえます。
さて今回は、「地域循環共生圏とビジネスチャンス」か
らの側面から俯瞰してみましょう。重複しますが、地域
循環共生圏とは、18年に閣議決定した第五次環境基本
計画で提唱された考え方をさします。持続可能な地域づ
くりを通して、環境で地方を活気づけていくとともに、
人材も育成していくこととしている。とりわけ地域資源
の活用をテーマとしており、これまで未活用だった再エ
ネ資源を使ったエネルギーの自給自足や、地域共生圈ど
うしの連携による新たな産業の創出など、環境を切り口
に地域の活力を最大限発揮させるという野心的な戦略で
す。地域に受け入れられている太陽光発電などを取り上
げ循環型社会におけるビジネスチャンスを探っていきま
す。(出典:「地域縦貫共生圏とビジネスチャンス」、
環境ビジネス, 2019年秋季号)

地域循環共生圈とビジネスチャンス
世界の原生林の3分の1を占める“地球の肺"、アマゾン
で広がる火災が国際的な問題となっている。国連は15
SDGsを採択。世界は脱炭素へ大きく舵を切り、持続
可能な世界への変革を目指す。そうした中、環境省では
地方版
SDGsとも言える〈地域循環共生圏〉を打ち出しま
した----地方が変われば世界が変わると。


環境・経済・社会の統合的な取り組みを
“地球の限界" あるいぱ惑星の限界"  とも呼ばれる『
プラネタリー・バウンダリー』。気候変動、海洋の酸性
化、オゾン層の破壊など9つの項目のうち、く窒素の循
環〉、〈生物多様性〉、〈気候変動〉などの領域につい
ては、既に境界値を越え、“取り返しのつかない環境変
化が生じる可能性がある" 状態となっています。地球は
限界を越え、持続可能な世界ではなくなりつつあります。
地球が限界に来ているので、“社会・経済・環境、全て
の在り方を変える" というのが、SDGsの目的です (
環境
省・環境計画課岡野隆宏氏)。環境・社会・経済を一体的
に捉えながら、持続可能な社会にトランスフォーミング
させます。SDGsの目的は、あくまで“世界を変えること"
で、結果的に17の目標を達成で気候変動も要因と思わ
れる大規模自然災害が頻発。同時に少子高齢化や地域経
済の疲弊と、経済・社会も大きな課題を抱えています。
これまでの環境政策は、経済・社会が右肩上がりの中で
発生してきた環境問題に対して、尻ぬぐい的な対応が中
心。ところが現在は、経済と社会も課題を抱える状況で、
全ての課題を統合的に見た上での環境政策が求められて
います。
パリ協定を達成するためには、いわゆる、地下資源を使
った大量生産、大量消費、大量廃棄という、これまでの
モデルは使えません。環境問題が起こらないような社会・
経済の構築、環境で新きるカタチとなっています。
象徴的なのはパリ協定。世界共通の長期目標として平均
気温上昇を2℃より十分低く抑え、さらに1.5℃に抑え
る努力を継続することになったのです。今世紀後半に温
室効果ガスの人為的な排出と吸収を均衡することも掲げ
られています。達成するには、根本的な世界の在り方を
変えることが必要とされます。
日本の状況を見てみると、ここ数年、気候変動も要因と
思われる大規模自然災害が頻発。同時に少子高齢化や地
域経済の疲弊と、経済・社会も大きな課題を抱えていま
す。これまでの環境政策は、経済・社会が右肩上がりの
中で発生してきた環境問題に対して、尻ぬぐい的な対応
が中心でした。ところが現在は、経済と社会も課題を抱
える状況で、全ての課題を統合的に見た上での環境政策
が求められています。
パリ協定を達成するためには、いわゆる、地下資源を使
った大量生産、大量消費、大量廃棄という、これまでの
モデルは使えません。環境問題が起こらないような社会・
経済の構築、環境で新たな経済を作っていくことが必要
となります。SDGsで言われている、環境・経済・社会の
統合的向上を、日本でも本当に取り組んでいかなければ
いけない状況になっています」(岡野氏)。
こうした状況を背景に、環境省は、18年4月に閣議決
定された『第五次環境基本計画』の中で、今後の社会の
在り方として〈地域循環共生圈〉という考え方を打ち出
しました。

3つのキーワード
〈地域循環共生圈〉のベースとなるのは、身の回りにあ
る森、里、川、海とい
った自然資源、地域にいる人や資
産をす効に使っていくという考え方であり、地域にある
様々な資源の可能性を掘り起こすことが、脱炭素にも
SDGsの達成にも繋がるという視点です。
山に雨が降り、川になって里の畑の農作物を育み、下流
に流れて都市の人の暮らしを潤して、海に流れて魚を育
む。この大きな循環の中でバランスをとりながら人間も
生きていく。自然は上手に付き合えば様々な恵みを私た
ちに与えてくれる。さらに、新しい技術によって太陽や
風からエネルギーを創り出す。
こうした自然の循環に立脚して自然と共生した社会を作
り直す。循環と共生、これを理念にすることで地域も活性
化していこうというのが、く地域循環共生圏〉です。
〈地域循環共生圈〉のキーワードは、"自立・分散`、
"相互連携" 、"循環・共生`。この3つを組み合わせる
ことで、結果的に脱炭素やSDGsの達成にも繋げていく。
地域にある資源を使い、エネルギーも食糧も素材も自給
自足していく自立・分散型を目指すのが基本。一方で、
森、里、川、海からの自然の恵みを都市へ供給する。そ
の対価で農村、漁村を活性化していく。
上流の森が健全であれば水が守られ、災害も起こりにく
くなる。その恩恵に対し、都市部からは観光や体験、テ
レワークやワーケーションといったカタチで交流する。
万が一、都市部で災害が起こった時には地方へ避難でき
る。そうした関係性を作っていくのがく地域循環共生圈〉
の考え方だ。「これまでが〈物質・経済文明社会〉だとす
るなら、これからは持続可能な循環共生型の社会。〈環
境・生命文明社会〉を作っていこうというのが、目指す
べき姿です。環境問題については、これまでも国際的な
議論が交わされてきましたが、“地球の温度が2℃上が
ること" と地域の暮らしには距離がありすぎたと思いま
す。地域に焦点をあて、身近なことを変えていくことが、
世界を変えていくことに繋がるという考え方は、新しい
切り口かと思います(岡本氏)。


燃料代を海外から地方にシフト

〈地域循環共生圏〉でどんなビジネスが生まれるかを考
えた場合、再生可能
エネルギーが最も大きい。環境省で
は、
日本全体で、エネルギー需要の1.7倍の再エネポテ
ンシャルが存在すると試算
している。
現在、どの地方でも、電気をつければ電気代が電力会社
に行く。電力会社
の電力は地下資源の比率が高く、燃料
代は海外に流れ、その額は年間20兆円に上り、50年
までに二酸化炭素を80%削減する
目標を日本が達成す
るためには、再エ
ネポテンシャルは高いがエネルギー需
要密度の低い地方と、エネルギー需要密度の高い都市と
の連携が不可欠。こ
の連携により、資金の流れはく都市
→海
外〉から、〈都市→地方〉にシフトします。
地域から流れ出すエネルギー代を、いかに取り戻すか。
まずは、それを考え
ることが重要です。地方の再エネ事
は、電力を大規模に創って都市に連ぶカタチが多い。
それも必要ですが、地方
からすると、単なる資源の搾取
となる場
合もあります。自立・分散型のエネルギーで地
産地消を進めることも大切だと
思います(岡野氏)。再エ
ネによる地域活性については、各地で取り組みが進んで
います。
北海道・下川町では、エネルギー代約9億円が地域外に
流出していた。地域の豊富な森林バイオマスを活用する
ことで、町全体の熱エネルギー需要の約半分を自給。節
約した燃料代を子育て支援などに活用し、地域内の経済
循環を拡大している。そして、森林資源は有効に活用さ
れ、森を守り育てることに繋がっている。
また、19年2月、横浜市と岩手、青森、福島3県の計
12市町村が再エネの活用に関する連携協定を結んでい
ます。横浜市は "ゼロカーボンヨコハマ”を掲げており、
12市町村の風力などで創られた電力を横浜市内へ供給
する仕組みづくりを進めます。横浜市としては、現在も
出しています。エネルギー代の行先が変わるだけです。
一方で、RE100を目指す企業の誘致はしやすくなります。
地方にとっては、エネルギーを売ったお金を地域活性に
あてることができます。例えば、得た利益を農産物や水
産物などのブランディングなどに活用し、さらに横浜市
に購入してもらえれば、パイプはより太くなるでしょう。
エネルギーから始まる交流と地域づくりが生まれるので
はないかと、期待していますとはなしています。

環境で経済も社会も良くする
18年4月に打ち出したく地域循環共生圈〉だが、そう
した観点での取り組
みの芽は既に各地で進んでいます。
興味深い取り組みの1つとして、北海道・鹿追町の『地
産地消水素社会』の取り組みがある。
鹿追町は、酪農と畑作を主体に農業が営まれている地域
で、大量に発生する家畜ふん尿の処理が課題となってい
ました。そこで、従来は農家が個別に処理していたふん
尿を、集中型のバイオガスプラントで処理する取り組み
を開始。メタンガスをエネルギーとして活用するだけで
なく、発生する消化液を農場に還元。ふん尿の個別処理
をなくすことで、畜産農家の負担も軽減した。畜産農家
の手間は減り、その分経営が拡大し、臭いがなくなった
ことで地域の生活環境も良くなる。まさにSDGs、1つの
改革が、地域の色んなことに繋がっていく、環境政策だ
けでなく、地域の暮らしや経済も良くしていくことを考
えるのがく地域域循環共生圈〉です。

環境で地域の社会も経済も良くしていくためには、新し
い技術を投入していくことも重要だ。鹿追町では現在、
バイオガスから水素を製造し、燃料電池によって電気・
熱を供給したり、燃料電池自動車、燃料電池フォークリ
フトなどを利用する低炭素水素サプライチェーンモデル
の構築実証を行っており、地域資源の循環による脱炭素
に向けた取り組みが進められている。

各地が多様な顔を持つ〈葡萄型社会〉
環境省では内部に環境金融推進室を設置し、ESG地域
金融にも力を入れている。地域の金融機関にとって、地
域が良くなることは、ビジネスを継続していく上で欠か
せない条件となります。エネルギーや環境に取り組む企
業に投資することで、地域の産業を元気にしていけば、
お互いにいいスパイラルとなります。
地域の環境・経済・社会を統合的に向上させてい〈〈地域
循環共生圈〉の政策は、環境省だけの枠を越えている。
環境省では現在、各省や企業ともディスカッションしな
がら、政策を進めています。
ふり返れば、江戸時代には各地の藩がエネルギーや食糧
を自給自足しながら、地元の特産物を江戸や大坂に売っ
て外貨を稼いでいた。地域それぞれに多様な風土があり、
魅力的な地域が全国に散らばっていた。それがいま、東
京一極集中で忘れられています。いま、インターネット、
AIやIoT の進展で、東京と地域の情報格差はほとん
どなくなっている。今後5Gの時代が来れば、医療や教
育にも差はなくなってくるだろう。
新たな技術が導入され、人の生きがいや価値観が多様化
する時代に森里川海の資源に恵まれた地方には可能性し
かないと思っています。 東京一極集中ではなく、様々な
地域がそれぞれの特長を活かした多様な顔を持つ〈葡萄
型社会〉ができれば、人々の生き方も多様になり、地域
の産業も元気になり、地域から流出するお金も減ってい
く。結果として二酸化炭素が減り森里川海が健全になり
ます。そんな未来像を示したのがく地域循環共生圏〉な
のですと、環境ビジネスの記者のインタビューでこう話
しています。
                                     この項つづく

【エピソード】 

我が家の檸檬が豊作です。会員で欲しい方がおられまし
たならご連絡下さい(携帯電話の方に)。
昨日、午後4時、柳本さんのご自宅にお邪魔し檸檬を届
け、2月の総会懇親会について希望する日取り等をお伝
えしました(水曜日の平日でできればランチ時間帯)。
ご自宅近くに会食が取れそうな場所があるとのこと。当
日、奥様も同伴希望があり、調整してみようということ
でした。


【脚注及びリンク】
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  1. ESG地域金融』で地域を元気にする 環境ビジネ
    ス 2020年冬季
  2. 賀県に根づく『三方よし』の経営を実現, 環境
    ビジネス,2020年冬季
    号  
  3. 米国 風力発電2019年水力を抜いて一躍トップに:
    ラストワンマイル23、ごくとうごくらく 2019.02.
    24
  4. 2070年平均気温が4℃上昇した世界 ごくとう
    ごくらく 2019.12.09
  5. 「よくもそんなことを」グレタ・トゥーンベリが
    気候サミットに登壇 スピーチ全訳, BuzzFeed,
    2019.09.24
  6. 気候変動が生む、新たな「アパルトヘイト」,GNV,
    2019.12.15
  7. ほぼ日刊イトイ新聞 - 親鸞 Shinran、2007.10.12
  8. NHKスペシャル 被曝の森2018 見えてきた
    “汚
    染循環” 赤かぶ 2018.02.25 
  9. 天正地震 Wikipedia
  10. 滋賀県出身の人物一覧 Wikipedia       

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