賤ヶ岳サービスエリア

2012年09月18日 | びわます賛歌

 


【ビワマス食品の開発販売】

農商工連携促進法に基づく国の同連携事業認定を受け、長
浜市の食品製造会社など四社と県水産試験場などが協同で
養殖ビワマスを素材にした「ビワマス棒寿司」「ビワマス
昆布巻」燻製品「ビワマススモーク」の新商品三種を開発
したという。9月1日から北陸自動車道賤ヶ岳上りのサー
ビスエリアで販売を始めている。新商品を開発したのは、
(株)三徳(大澤強社長、長浜市余呉町東野)。惣菜加工
などに力を入れていた旧スーパー「サンショップ」が前身
の企業。ビワマス養殖の本格化に伴い、自社の昆布締めす
し加工技術を応用した商品開発を企画。昨年9月に近畿経
済産業局の農商連携事業の認定を受け、県水産試験場、ビ
ワマス養殖に取り組む(株)びわ鮎センター、高島市の「
手づくりスモーク工房杣人(そまびと)」、長浜市の食品
加工業「梅花亭」と連携して三種の商品を開発。



棒寿司は北海道産昆布、淡路島産の藻塩を使い、淡白なビ
ワマスのうまみを最大限に引き出した。昆布巻きは素焼き
と直火の長時間煮込みで味を深めた逸品。燻製は香辛料を
独自の手法でなじませ、ヒッコリーとクルミの薫煙で香り
をつけている。連携認定で事業費の3分の2、最高五年間
で三千万円の補助があり、三徳では新商品で五年間約五千
万円の経済波及効果があると見込んでいるという。


 

  

【エピソード】

賤ヶ岳の戦いでは、佐久間盛政の猛攻にあい、中川清秀は
討死、岩崎山に陣取る高山右近は耐えきれず退却し、木ノ
本は羽柴秀長の陣に逃れるという、因縁浅からぬこの地は
サービスエリアで、ビワマス産品が販売されている。母親の
体調と天気がよければ立ち寄ることを計画しています。



 【脚注及びリンク】
-------------------------------------------------
1.(株)三徳 長浜市余呉町東野
2.ビワマスで3商品開発 三徳など地元企業が連

  近江毎夕新聞、2012.8.29
3.ビワマスの旨み、たっぷり凝縮、滋賀夕刊、
  2012.8.29
4.長浜でビワマスの新商品続々、中日新聞
  2012.8.31
5.ビワマス:新商品、販路拡大へPR 業者連携、県
  内初、毎日新聞
、2012.8.30
6.賤ヶ岳サービスエリア、Wikipedia
7.近江鉄道、賤ヶ岳サービスエリア
8.ヒッコリー、木材図鑑
-------------------------------------------------



ビワマス賛歌 P.12

2011年11月07日 | びわます賛歌

【食文化とビワマス】

 

琵琶湖にはサクラマスやサツキマスとも異なるサケ科の
魚が太古から生息してきた。琵琶湖を代表する魚ビワマ
スと人間の関わりは、人々が琵琶湖の周辺で生活を始め
た約2万年前の旧石器時代にまで遡るという。産卵のた
め琵琶湖から河川に遡上するビワマスは、間近に冬を迎
える人々にとって格好の獲物。特に卵をもった雌は、栄
養満点な食糧であった。内陸の食文化にとって、東北地
方以北ではサケが、西日本ではアユが重要な役割を果た
していたと指摘されている。琵琶湖周辺では春から初夏
にフナやコイが、夏にはアユが、さらに秋にはビワマス
が加わり食事を豊かなものにしたと思われる。6月頃の
梅雨の大雨に刺激されて川に上ることはあるものの、産
卵期以外の時期にビワマスが川に遡上することはまれで、
古代の人々が琵琶湖の沖合で回遊するビワマスを捕獲す
ることはほとんどできず、産卵のため川を上ってくるビ
ワマスを獲るため河川には簗(やな)が設置され、その
利権は地域の権力者と強く結びついたものであり、現在
では、その名残が神社の神事として認められる。例えば、
毎年10月1日に京都の上賀茂神社には安曇川で捕獲され
たビワマスが現在でも献上されて、10月に開催される大
津の天孫神社の大津祭は、「あめのうお祭り」とも呼ば
れている。また、平安時代の「延喜式」には、近江の産
物として醤鮒や煮塩年魚に混じって阿米魚鮨があげられ
ていることから、古代からビワマスは量的に重要な水産
物であった。ただ、この阿米魚鮨がビワマスのどのよう
な加工品であったのかわかっていないという。現代の「
ふなずし」のように、塩漬けにした魚をご飯に付け直し
て醗酵したものとは異なっている。新巻ザケのように単
に塩に漬け込んだものでもない。や煮塩年魚に混じって
回米魚鮨があげられていることから、古代からビワマス
は量的にも重要な水産物であった。


【食べ方】

現代に伝わるビワマスの伝統的な食べ方は、「あめのう
おごはん」と言われている。『聞き書 滋賀の食事』に
よれば、野洲川周辺の地域では産卵のため川を遡上して
きたアメノウヲを使って、鰹と内臓を取り除き卵は出さ
ないで研いだ米の上にのせて醤油と酒、ゴボウやネギな
どの野菜を加えて炊き込むものである。炊き上がった後、
アメノウヲの頭や皮、骨を取り除き身をほぐしてご飯と
混ぜ合わせてできあがりである。



また、姉川周辺の地域では、「ますずし」がつくられて
いる。塩をして保存しておいた産卵期のアメノウヲを洗
って薄く切り、甘酢に漬けておく。これを白いご飯に混
ぜて黒ゴマや塩ゆでしたえんどう豆、甘酢に漬けた生姜
の千切りをのせて食べる。

ビワマスの食べ方として、5月から7月の時期の刺身と
焼き物は一押しとされる。ビワマスそのものの昧を堪能
できる点でこれに勝るものはない。春から初夏には琵琶
湖に多く生息するアユが彼らの主な餌となっており、ア
ユの脂を体いっぱい蓄積している。最近、このビワマス
を一年中昧わえるようにするため、醒井養鱒場の池で人
工的に飼育して2年で1㎏以上になる品種をつくり出す
ことに成功した。さすがにアユを腹いっぱいに食べて育
った天然のビワマスにはまだ及ばないというが乗り越え
も間近と楽観している。


【エピソード】

 

あんまり美味しいものばかり食べるのは気が引けるが、
ここは滋賀の自然の賜と素直に感謝したい。これから冬
に入っていくが、子持ち寒諸子の季節。たまりませんね。

 

【脚注及びリンク】
-----------------------------------------------
1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「
滋賀県漁業協同組合連合会
15.「
川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る」藤岡康弘

16.「豊かな自然環境を次世代に引き継ぐために

----------------------------------------------- 





 

 


ビワマス賛歌 P.11

2011年11月05日 | びわます賛歌


【ビワマスの保全と琵琶湖の現状】

ビワマスがアマゴやサクラマスと異なった魚として分化
した要因は、琵琶湖という深くて広い湖が存在したこと
による。ピワマスは琵琶湖を離れては種を存続させては
いけないものかどうかゆだねるとして、その琵琶湖が人
間と関わりを持ち始めて以降の2万年という時の流れの
中で、この50年ほどの間の我々の暮らしが、琵琶湖の環
境に回復不可能な影響をあたえる可能性がある。そのこ
とを考え、最後に「食文化と琵琶湖」を考えこのシリー
ズを一旦終えたい。

溶存酸素濃度低下

まず最も心配される問題は、琵琶湖北湖の深層水中の溶
存酸素濃度が低下していることだ。魚類が生活するため
の溶存酸素濃度の臨界値は、一般的に3mg/l程度で、
琵琶湖の湖底はすでに必要な濃度よりもさらに低い状態
が時々起こっている(図)。この原因は、気候の温暖化
と水中の栄養分が増加していることにある。溶存酸素濃
度が低くなると魚類が生息できなくなるばかりでなく、
有毒な硫化水素が発生したり、湖底にたまっている重金
属が再び水に溶け出し水質が大幅に悪化することにつな
がるのだ。

水温上昇

全地球的な問題であるが、地球温暖化が琵琶湖の水温上
昇に影響を及ぼしている。深30m以深には一年を通して
水温10℃以下のサケ科魚類にとって快適な水温帯が広が
っているが、この深層水の温度が約2℃も上昇している。
琵琶湖北湖の水深80mでは、1990年頃までは2月頃に見
られる年間最低水温がおおよそ5~7℃で変動していた
が、1990年以降は7~8℃前後で変化するようになった
という。このような傾向が今後も続き琵琶湖の水温がさ
らに上昇すると、溶存酸素量の問題とあわせてビワマス
の存続が難しくなる。

また、琵琶湖は冬の寒気で表庭木が冷やされ、冷えて重
たくなった水は湖底へと沈みこむ。この作用のおかげで、
冬季には琵琶湖の水が後件され湖底に酸素の多く溶けた
水が供給される湖の循環という現象が起こっているが、
地球温暖化の影響で冬に寒気が来ないと循環が不十分と
なって湖底の溶存酸素量が極端に滅少しか状態になって
しまう。熱帯や亜熱帯に位置する湖ではこの循環が起こ
らないので、深い湖では下層の溶存酸素は常にゼロの状
態だ。

産卵期の河川水温

ビワマスは、これまで述べてきたように、秋に産まれた
河川に回帰して産卵する。ビワマスの受精卵は水温が12
℃であれば約40日で孵化し、さらに卵黄を吸収し終え泳
ぎ出し、受精から浮上までの期間に水温が13℃以上では
発生がうまくいかず、生残率が大幅に低下する。ビワマ
スの産卵時期は、早い個体は10月の中旬から始まるが、
10月に産卵されたものでは、地球温暖化により暖冬傾向
が続いている最近では、河川の水温が充分に低下してい
ない状況にある。このような状況が進めば、10月から11
月の産卵群が生き残れず消滅する
危険をはらんでいる。

さらに、ビワマスの産卵は上流域や中流域の上部で行わ
れるが、川にはダムや堰などの障害物が多く設置され本
来の産卵塔にまで達することができない状態となってい
る。卵が孵化し稚魚が浮上するまでの良好な水温環境が
保障されるにも、水温が相対的に低い上流部へ親魚が遡
上して産卵することが重要だ。

森林の役割

また、稚魚の多くは6月頃まで河川の中流域で育つが、
水質や水量、また河畔から充分な餌となる陸上の昆虫を
供給できる訃附椛などの条件がほとんどなくなっている。
本来のビワマスは、豊かな森がある河川上流域近くまで
遡上して産卵し、稚魚は初夏まで森が供給してくれる昆
虫を食べて育ち、琵琶湖へ回遊するという生活史を送る。
サケ科魚類の餌となっている動物は、陸生動物由来のも
のが実に20~50%を占めていることが明らかにされてい
る。川を覆い包む森林から落ちてくる昆虫がサケ科魚類
の成育になくてはならない役割をはたしているのである

また、森林は水を蓄えるとともに水温の上昇を防ぐこと
で川の環境を保つ重要な役割を担っているが、加えて森
に生きる昆虫たちを魚に供給していたのである。

今、琵琶湖に流入する河川を見ると、その中下流域には
河畔林はほとんどなくなっている。また、上流域に広が
る森林は、多くが植林された杉などの針葉樹林である。
広葉樹林に較べ針葉樹林は生息する昆虫が少ないと考え
られる。

湖と森をつなぐもの 

このような河川周囲の環境が魚に与える影響ばかりでな
く、逆に河川に生息する魚の存在が周辺の環境に与える
影響も問題視されてきた。河川に産卵のため遡上したサ
ケ科魚類が、クマなどの哺乳類の餌として利用されるば
かりではなく、それらの動物の糞や食べ残された死骸が
森林や河川の栄養分として植物や水生昆虫などに利用さ
れている。このようにダムも堰堤もまだなかった昔、秋
になると体を紅色に染めて河川を遡上するビワマスは、
河川上中流域にまで達して産卵し、同時に人間をはじめ
クマやキツネなどの餌としての役割を果たしていた。ま
た、森自身や昆虫たちの栄養となって利用され、森やそ
こに棲む生き物たちの賑わいを支えていたと容易に想像
がつく。ビワマスは産卵のために川を利用するというこ
とだけではなく、川を通して琵琶湖と森をつないできた
動物なのである。

【エピソード】 

   

 

【脚注及びリンク】
 -----------------------------------------------
1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「
滋賀県漁業協同組合連合会
15.「川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る」藤岡康弘
----------------------------------------------- 


ビワマス賛歌 P.10

2011年10月28日 | びわます賛歌


BiwaTrout(LakeBiwa-JP).jpg

秋になると北海道から東北地方にかけてシロサケとも
呼ばれているサケの群れが北洋から沿岸にやってくる。
河川に産卵のために遡上するサケの多くは捕獲され、
人工受精に回される。人間の手で育てられた稚魚は、
川に放流され、すぐに海へ旅立っていく。この事業は
サケの人工孵化放流と呼ばれる。1888年(明治21)に
この技術が初めて実用化する。
実はビワマスでもサケ
と同様な人工孵化放流事業が1883年(明治16)から知
内川漁業協同組合で開始されていることを知る人は少
ないという。日本における近代的な漁業制度は明治期
に始まるが、それ以前の時代であっても、さまざまな
漁業慣行があって、乱獲になるようなむやみな漁獲は
厳しく制限されていたが、明治維新の大変革によって
それまでの制度が崩れ、琵琶湖でも一時は乱獲状態に
なったと言われている。このため琵琶湖を代表する定
置網の一種である臥の数を減らす「臥逓減法」や築の
設置を隔年にする「築隔年法」などの法律が発布され、
乱獲を防ぐ措置が図られている。知内川漁業者組合で
はビワマスの増殖を目的に知内村共立養魚場を設け、
孵化放流事業を開始したのだ。この事業は、その後、
近江水産組合から滋賀県漁業協同組合連合会に引き継
がれ、現在も行われている。

この事業では、ビワマスが卵黄を吸収して浮上した稚
魚の段階で琵琶湖へ放流するビワマスの漁期はおもに
5月から9月頃で、産卵期である10~11月の2ケ月間
は禁漁
になっている。5月の連休明けくらいから漁師
さんたちは琵琶湖の沖合の水深20m付近に丈が5mも
ある長小糸網と呼んでいる刺網を仕掛ける。琵琶湖で
は夏にかけて水面の温度が上昇してくると、湖底の冷
たい水と表面の暖かい水との間に水温の傾斜ができる。



図ではビワマスの刺網漁が最も盛んな7月の水温分布
を示しているが、水深5mから30m付近で水温が急激
に低下していることがわかる。このように水温が急激
に変化する水深帯は「水温躍層」と呼ばれ、漁師さん
たちはこの層をねらって網を張るのである。水深20m
付近はビワマスが好む10℃前後の水温となっており、
また、ビワマスの好むアユなどの餌も多く分布してい
るものと考えられるという(藤岡康弘『川と湖の回遊
魚ビワマスの謎を探る』)。冬から春にかけて琵琶湖
は全体に水温が低下し、水温の制約がなくなったビワ
マスは、琵琶湖のどこでも生活できるようになる。こ
のため刺網を仕掛ける水深や場所が定まらないらしい。
初夏から秋には沖合の中層を回遊しているビワマスも
冬には時々湖岸の魞に入る。

アメノウヲ

ところで、秋には成熟したビワマスが産卵のため川に
遡上してくる。特に雨が降って川が増水すると一斉に
上ってくる。ビワマスが古来よりアメノウヲと呼ばれ
ていたのは、このためであると言われている。

 

【エピソード】 

安曇川のやな漁

Kamo-wakeikazuchi-jinja31ss4272.jpg

安曇川のやな漁の起源は千年近く前、一説には千数百
年前にまでさかのぼるという。文献には、平安時代後
半の寛治年間以降、安曇川は京都・上賀茂神社(賀茂
別雷社)の「安曇河御厨(みくりや)」となり、アメ
ノウオ(ビワマス)やアユ、コイなどを献上していた
という記録が残っている。「御厨」とは、神様へのお
供え物「神饌」を献じる重要な役割を担っていた神領
のことで、河口部の北船木周辺に住む「神人」の26戸
52人だけが漁を許されていたという。その由緒から、
現在でも毎年5月15日に上賀茂神社で執り行われる葵祭
りのときには、氷と塩でしめたアユを干した「干しア
ユ」が、10月1日の「安曇川献進祭」ではアメノウオが
奉納されている。一方、長い歴史のなかでは特権的な
漁に対して反発する者もいたため、中世、近世を通じ
て、ときには利害を巡って抗争も起きていたようだ。
明治時代の初めには政府から治水の問題があるとして
やなの廃止を命じられ、やなの歴史が始まって以来の
危機も訪れたが、形状の改善などの努力と関係者の熱
意により、安曇川のやな漁の伝統は絶えることはなか
ったという。

 【脚注及びリンク】
 -----------------------------------------------
1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「滋賀県漁業協同組合連合会

----------------------------------------------- 
  

 

  


ビワマス賛歌 P.9

2011年10月26日 | びわます賛歌





【ビワマスの誕生】

  野洲川は昭和30(1955)年頃までは、県下第一のア
  マゴの川だったが、大河原ダム(28年)ができて
 から姿を消し、今では野洲川ダムに注ぐ一部の谷
 にイワナが僅かに残存するのみ。(中略)愛知川
 -この川は大正末期の頃、原因不明でアマゴが姿
 を消した。中流の水田潅漑に取水がひどくなり、
 たまたまマス(メス)の遡上期にそれが禍いした
 のか? 田植とマスの遡上は同じ頃になる。上流
 に残ったのはオスだけで、それが絶滅の因とする
 のはこじつけか。結果的には野洲川同様の経過を
  辿ったものと考えられる。

                     山本素石『西日本の山釣』
                     (「釣りの友社」1973年) 

これによれば、野洲川と愛知川のアマゴはダムができ
てマスが遡上できなくなったために絶滅した。マスが
遡上して来ない場合には、上流にオスがいるだけであ
ったという。ここでの「マス」とはビワマスをさし。
山本素石は、野洲川や愛知川のアマゴはビワマスの子
供であることをすでに認識していたと考えられ、河川
型の個体がオスばかりであったことが書かれていると
藤岡康弘(「ビワマスの誕生」)と指摘し、滋賀県に
分布するとされている「アマゴ」の多くは、実はビワ
マスの河川型であるアメゴであった可能性が高いと考
えられる。もし、そうだとすると、次の疑問は、琵琶
湖水系になぜサツキマス(アマゴ)がほとんど分布し
ていないのかと疑問を呈する。


琵琶湖の水が大阪湾に注ぐ淀川ではサツキマスが漁獲
され、淀川の支流である木津川や桂川にはアマゴが生
息しているにもかかわらずである。そのヒントは、琵
琶湖水の唯一の出口である瀬田川にあり、琵琶湖水の
出口は、堅田累層の時代(百万~40万年前)に古瀬田
川になったとされ、その終わり頃以降に比叡山などが
隆起しはしめた、宇治川はかなりの急流となり滝もで
き下流からの魚類の進入が閉ざされていた時期があっ
た可能性が指摘する。つまりは、古琵琶湖が深くなり、
現在の琵琶湖が誕生しはしめた30数万年前以降になっ
て、ビワマスの祖先種が琵琶湖に侵入し琵琶湖で生活
を始めた後に、一定の期間、琵琶湖への新たな侵入が
閉ざされ、その間に琵琶湖の環境に適応した現在のビ
ワマスが誕生した、というように考えている。 

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【故郷は日本海】

ところで、ビワマスの祖先のサケ属の起源はどこから
きたのか? サケ科の魚類がその祖先種からどのよう
に種に分化したかの研究はずいぶんなされている。骨
格や形態などの形質から推定する方法や、現在ではD
NAを用いて盛んに実施されている。形態から推定し
た系統樹をビワマスに関連のある部分についてみると、
祖先種からまずイトウ属とイワナ属が分化し、続いて
大西洋サケ属が、最後にビワマスを含むサケ属が分か
れたと見られている。

 

最近の研究ではDNAからイトウ属からサケ属への分
岐の流れは変わっていない。サケ属ではまずアメリカ
からシベリアを中心に分布するニジマスとカットスロ
ートが分化し、その後にサクラマスやベニザケあるい
は馴染みのサケなどが続いているという。日本の近海
に多く生息するサケ属の仲間はニジマスと共通の祖先
種から分岐したということになっているが、サケ属の
魚類は日本海が起源説があり、その根拠として、ニジ
マスはサクラマスやアマゴに最も近い仲間だが、アメ
リカからシベリアを中心に広く分布しているものの、


日本周辺と日本海にはまったく分布していないという
ものだ。ニジマスが寒冷化により日本化に隔離され、
その祖先種からサクラマスやサケの祖先が分岐したの
ではないかという。先のDNAの分析結果からビワマ
スはサクラマスやアマゴよりも先に分岐し、最もニジ
マスに近い仲間ではないかと推測は、ビワマスが祖先
種から分岐したとされる約 50万年前なら、ビワマスの
祖先種はまさに日本海が湖であった時代に誕生したと
いう可能性が符合するになるという。

 

【エピソード】 

 

いつもそうなのだが、専門外(門外漢)に詳細な考察
に首を突っ込みときに感じることは、分厚い知の鋼板
に木綿針を通すようなものだという徒労感が付きまと
うが、かってそうやってきて何とか問題を解決をして
きのだからと思い直し、迷路に入り込まないように、
一旦保留し時間をとり前に進むようにしている。いよ
いよシリーズは佳境に。


                         


【脚注及びリンク】
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1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種

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