最新とポスト新型コロナウイルス情報 ①

2023年09月28日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2023.9.28|更新日:
新型コロナの「第8波」はようやくピークアウトしたように
見える。感染状況は今後どうなるのか、状況を左右しそうな
のが変異ウイルス、「XBB.1.5」。アメリカでは6割を超えて
いて、免疫が効きにくく広がりやすいおそれがあるとされて
いる。「XBB.1.5」によって「第8波」が長引くことはあるの
か。これまでのワクチンは効くのか。「第9波」は?



厚生労働省は、今後の感染者数の推移を過去のデータと比較
できるようにするため、2022年10月から2023年5月7日までの
「第8波」を含む感染状況のデータを、「定点把握」で集計
し直し、参考値として発表(青色の棒グラフ)。以下のグラ
フでは、この過去の参考値(青色の棒グラフ)と、2023年5
月8日以降の最新の「定点把握」の数値(黄色い棒グラフ)
を、便宜的に同じ画面内に連続して表示している。
 
滋賀県の感染者数の推移(NHKまとめ)
2022年9月27日更新終了 


世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年9月27日)
新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、各地で独自の
変異を繰り返した結果、世界中から様々な変異株が報告され
た。現在新型コロナウイルスの遺伝子情報は主にGISAID Init-
iative
に登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に
利用することが可能となっている。 この表は2023年8月20日
から9月20日の間における各国のゲノム登録数の多い順になっ
ています。流行中の亜型について最も多いものから順にそれ
ぞれ主系統、第2系統、第3系統として掲載。 各国の新型コロ
ナウイルスの流行状況を比較する事はできれいないが、各国
で流行している変異株の動向の、より精度の高い情報提供を
行いたい(covSPECTRUMのデータにより作成)。



【今後の見通し及び対策】
1.過去の状況等を踏まえると、この夏の新規患者数の増加
が継続する可能性があり、医療提供体制への負荷を増大させ
る場合も考えられる。
2.自然感染やワクチン接種による免疫の減衰や、より免疫
逃避が起こる可能性のある株の割合の増加、また、夏休み等
による 今後の接触機会の増加等が感染状況に与える影響に
ついても注意が必要。
3.引き続き、感染動向等を重層的に把握するとともに、全
国の医療提供体制を注視していく。
4.地方自治体や医療関係者などと連携して、高齢者や基礎
疾患を有する方など重症化リスクの高い方等について、ワク
チン接種を行うとともに、感染拡大が生じても必要な医療が
提供されるよう、幅広い医療機関で新型コロナ患者に対応す
る医療体制への移行を引き続き進めていく。 5.特に換気に
は配慮し、マスクの効果的な場面での着用、手洗いなど、基
本的な感染対策に関する広報を引き続き強化していく。
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経験を生かし次なる「新型コロナウイルス」を防ぐ
国立環境研究所が行っている感染症の生態学的研究について
五箇公一同研究所評価・対策研究室室長の説明を要約掲載す
る(出所:環境ビジネス 2023年秋季号)。



新興感染症・再興感染症から人間社会を守る上で、重要な概
念としてワンヘルス・アプローチ(➲人間、動物、及び環
境という3つの健全性が保全、初めて人間社会の安心・安全
な公衆衛生が維持されるという理論)に基づく研究や施策を
ワンヘルス・アプローチといい、新型コロナウイルスをはじ
め、多くの感染症病原体は、本来、野生動物が保有している
病原体が起源とされ、それらの野生の病原体が、人為的な環
境撹
に伴って、人間社会に浸出(スピル・オーバー)する
ことが、パンデミックの要因であると考え、国立環境研究所
では、生物多槍既保全研究プログラムの一環として、野生動
物由来の感染症に関する研究を推進する(図1参照)。


鳥インフルエンザの野生鳥類サーベイ
国立環境研究所では、2008年からは野鳥の鳥インフルエンザウ
イルス保有状況調査を行っている。本調査のたの遺伝子検査
を行い、その変異を分析するとともに、侵入リスクの高いエ
リアを特定し、監視を続けている(図2)。鳥インフルエンザ
は、現時点では鳥類の感染症で、人間の感染症ではないが、
現在、人間社会で流行しているインフルエンザウイルスも、
鳥インフルエンザが起源であったとされ、現在の高病原性鳥
インフルエンザが、いずれヒト型に進化して、新型インフル
エンザとなることが懸念されている.



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※ 高病原性鳥インフルエンザ(Highly pathogenic avian influenza:
HPAI
)は、A型インフルエンザウイルスの感染による家きん(
鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥及び七面
鳥)の病気のひとつ。HPAIは、高い致死性と強い伝播性から、
ひとたびまん延すれば、鶏肉・鶏卵の安定的な生産と供給を
脅かし、国際的にも日本からの鶏肉・鶏卵の輸入を禁止する
措置がとられるなど、個々の農家の経営のみならず、養鶏産
業全体に甚大な影響を及ぼす。そのため、家畜伝染病予防法
において家畜伝染病(法定伝染病)に指定され、公的に防疫措
置をとることが定められている。
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実際に、今年の春、東南アジアや中国で、鳥インフルエンザ
感染者の死亡事例が報告されており、ヒト型への進化リスク
が高まっていることが指摘されている。

ダニ媒介|生感染症SFTSのリスク管理に関する研究
マダニが媒介する新興感染症「重症熱性血小板減少症候群(SF
TS)」は、2012年に山口県において国内初の感染発症事例が確
認されて以降、西南日本を中心に感染者数が増加しており、
今後、さらにその発生が全国に広がることが懸念されている。
国立環境研究所では、森林総合研究所および国立感染症研究
所と共同でSFTSのリスク評価および管理手法の研究を推進し
ている。これまでにウイルスを媒介するマダニ類を全国から
採集して、各種のDNA情報を収集し、マダニの分子同定技
術を確立するとともに、国内外におけるマダニの分布動態、
特に人為移送の実態について分析を進めている(図3)。


一方,住宅街の公園や通学路の草むらなど、身近な緑地でマダ
ニが発生する事案が増えていることから、国立環境研究所は
民間企業と共同で、マダニ集回を即効的に駆除する緊急防除
手法として、薬剤防除技術の開発を行っている。

新型コロナウイルスの野生動物サーベイ
新型コロナ感染症ウイルスSARS-COV-2は、人間のみならず、
野生動物および家畜動物にも感染が広がっていることが海外
の研究で報告されており、今後、動物体内で進化を繰り返し、
新たな変異型ウイルスが人間に感染するスピルバックが頻発
することが懸念されています。
実際に、2022年、カナダで野生のシカから、従来の変異型とは
全く異なる遺伝子型を持つ新型コロナウイルスが検出され、
それが近隣住民にも感染していることが確認されている。人
からシカに感染して、進化したウイルスが、再び人に感染
たと考えられている(図4)。



我が国においても、近年、シカ、イノシシ、クマなどの野生
哺乳類が人間社会に侵食していることが問題とされており、
人からこれら野生動物類へのウイルス感染が生じている可能
性がある。国立環境研究所では、北海道大学と共同で、野生
島獣類における新型コロナウイルスの感染状況に問する調査
を進めている。

両生戻虫類感染症に関する研究
1990年代以降、両生類の皮膚に特異的に寄生する病原菌カエ
ルツボカビ菌
が世界中に拡散して、主に中南米やオセアニア
を中心として希少両生類が絶滅の危機に陥っていることが問
題とされている。
2006年、日本国内でも、ペットとして飼育されていた南米産
のカエルからこの病原菌が確認され、当初は、菌の侵入によ
って日本の両生類が絶滅するのではないかと危惧された。そ
の後、国立環境研究所を中核とする研究チームが日本全国お
よび海外の菌のDNAサンプルを収集し、分析した結果から、
本菌の起源は日本を含むアジアにあり、日本国内の両生類は
本菌との長きに渡る共進化によって本菌に対する抵抗性を獲
得していると結論した



一方、カエルツボカビと同属のイモリツボカビが、2010年に発
見され、ヨーロッパ固有のサンショウウオの地域集回がイモ
リツボカビによって絶滅していることが報告されているヨ-ロ
ッパの研究チームと国立環境研究所の共同研究から、日本の
アカ
ハライモリからイモリツボカビの祖先的系統が発見され
たことで、本菌もアジア由来の可能性が高いことが示されて
いる。
現在、国立環境研究所では、琉球大学や山形大学などと共同
で、これら両生類感染症の日本列島内における起源の探索、
および両病原菌間の相互作用に関する研究を進めている。
また、近年、祀虫類においてもヘビ真菌症という新興感染症
が問題
になっている。本菌は、1986年にアメリカ束北部で飼育
下のヘビから最初の感染が報告されて以来、北米大陸、ヨー
ロッパの野生のヘビ類においても発見され、世界的な流行が
懸念されている。
2021年に、日本国内でも外国産ヘビの飼育個体から初めて本
菌が発見された。現在、国立環境研究所では、岡山理科大学
および国立科学博物館の研究チームと共同で、ヘビ真菌症の
DNA検査技術の開発および遺伝的変異の解析を進めている。

昆虫類の感染症に関する研究
近年、家畜ミツバチや野生ハナバチ類の世界的な減少が生物
多楡既保全上の大きな問題とされているが、その原因の一つ
として感染症の拡大も指摘されている。さらに、感染症拡大
を加速させる要因として、農薬の暴露による昆虫類の免疫低
下も挙げられている。
国立環境研究所では、全国の養蜂家に協力を仰ぎ、2020年よ
りニホンミツバチおよそ1,500群を対象に、蜂群の設置場所
と生死について調査を実施している。これらの群から、虫体・
蜂蜜・巣板からサンプリングを行い、病原体の感染および農
薬暴露状況を調査している(はっしょうするどのような環境
条件で農薬暴露リスクが高く、また病気を発症するか、そし
てそれらがどのように蜂群の生死に影響を及ぼすかが明らか
になりつつあり、世界的にも他に例を見ない大規模な調査と
なっている(病原体および農薬暴露がミツバチの健康に与え
る影響評価プロジェクト:https://www.nies・go.jP/biology
/PPaP.htmD
.


ワンヘルス・アプローチの普及啓発 
国立環境研究所では、ワンヘルス・アプローチ推進のための
普及啓発も展開している。これまでにNHK BS1スペシ
ャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」(2020年3
月放映)や、「国際共同制作次のパンデミックを防げ!ウイル
スハンターたちの闘い」(2022年12月放映)などの感染症関連
番組に取材協力・出演を行い、またYouTube動画「新型コロナ
ウイルス発生の裏にある“自然からの警告"」(https://www・you
tube.com/watch?V=1g
3Y36z772Q)を配信するなど、さまざま
なメディアを通じて、情報発信を行っている。
さらに、これらの発信を通じて、政策決定者への情報提供に
結びつけ、2020年夏に小泉環境大臣(当時)主催の「コロナ後の
目本の未来と希望を考える会(別名:五箇勉強会)」(環境省
https://www.env・go・jp/press/108141.htmDの運営も行っている。
本勉強会を通じて、環境省の自然共生政策における感染症対
策の重要性をアピールした(環境省:https://www.biodic・go・jp/
biodiversity/activity/policy/
gokaben/fdes/message.pdf).

今後の展望
ワンヘルス・アプローチを実行するためには、環境省、厚生
労働省および農林水産省など関連行政機関の連携が不可欠で
す(図6)。
境環境国立環境研究所においても、今後さまざま
な省庁の研究機関や大学、民間組織と密接な共同・連携体制
を構築し、感染症の生態学的研究の強化計画を進めていく方
針。
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謝辞:本稿で紹介した国立環境研究所における感染症関連研
究の一部は、以下の助成を受けて実施されている。 環境省環
境研究総合推進費4-0801、1101、1401(代表:五箇公一)、4-2005
(代表:岡部貴美子)、SII-1-2(分担:大沼)、SH本3(代表:
大沼学)、JSPS科学研究費基盤研究(A)20H00425、基盤研究(B)
26290074(代表:坂本佳子)。



【エピソード】



ご家族皆様方のご健勝のことと存じ上げます。
さて、琵琶湖の水位はマイナス30センチメートルと渇水状
態ですが、この暑さを皆様方には、如何にお過ごしでしょう
か。ここ2ヶ月、小生は調査作業や諸事情に翻弄され、この
掲載は御無沙汰状態で申し訳ございませんでした。



ヤマハのバイオマス燃料トラックタ(出所:東京都)

【脚注及びリンク】
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