ビオトープⅨ

2010年05月09日 | ビオトープ





ビオトープ計画管理で取り扱う主題

6)小川の設計・施工と育成管理

白山比め神社の延命水「白山延命水」

谷戸の左右や片側には水田に取水する小川が
設置され、グンジボタルや、小川から水口に
行き来するドジョウやメダカなど、多種の生
物が生息する。しかし、コンタリートで護岸
や川底を回め自然河床を失った所、手入れざ
れず立木や高茎草本で、水面が閉鎖し、砂泥
や倒木などの控積で流路が崩壊した所もある。
生物の生息地を,1復させるためには、人工河
床には植生を形成させ、樹冠などで閉鎖した
小川では植生管理を再開する必要がある。



❶ 計画設計

Geothelphusa dehaani 01.jpg サワガニ

現地に形成する流路内の瀬や溜まり、砂州な
どの形状、水質、土手植生の初期施工、育成
管理について検討を行う。動植物は光に反応
するため夜間照明を設置しない。

(1)小川の育成計画モデル



自然河床を持つ小川では砂州 瀬、淵〈溜ま
り) が流下する水流の力によつて自然形成さ
れる。流速毎秒10~40cm水中の溶存酸素6~
10mg/l、Ph7~3
を示す中性から弱アルカリ性
BOD5 2~ 3mg/l 程度の小川の場合、

Nipponocypris temminckii.jpg

●淵:アブラムシやカワムツなどの点類ケン
 ジボタルやコオニヤンマ、ヘビトンボなど
 の幼虫カワニナが(ゲンジボタルの幼虫の
 観)生息する。
●砂州の水際付近:ダビドサナエオジロサ
 ナエオナガサナエなどの幼虫が生息する。
●クサヨシなどの抽水植物が生育する淵や溜
 り:
カワトンボ類(ミヤマカワトラボ、ハ
 グロトンポ、カワトンポなど)や
ドンコ
 
カワヨシノボリなどの魚類、サワガニが生
 息する。
●瀬:
トビゲラカワゲラの幼虫サワガニの
 亜成体、サワガニなどが生息する。



❷ 施工伽工準備、基盤整備のポイント

初期施工の適期は、生物活動が鈍る晩秋から
冬季。流下水は砂州や溜まり、瀬を流路に自
然形成する。勾配、流量などから各部位の形
成箇所を予測し基盤整備に活用。



(1)植生によって閉鎖した小川修復

初期施工では、立木伐採、水際に密生化した
ヨシやササ類の刈取りと除根を実施。この時、
水面に日陰を落とす立木を部分的に残存させ
る。

(2)素堀り水路小川化

流通が早い場合や夏期に瀬切れしやすい場合
には、魚類の遡上を阻害しない程度に、低い
段差を土のうなどにより形成し、水域を形成
する。

(3)自然河床が消失した小川修復

植生土のうや布団籠を組み合わせ、出水時に
流亡しない植生の定着基盤を設置し、水生生
物が生息する砂州や溜まりなどを自然形成さ
せる。


●河床への土豪設置による構造回復

コンクリート3面張りの水路では河床に土の
うなどを並べ、瀬と淵、砂州が自然形成され
るよう骨組みを入れる。

❸ 育成管理

小川の沿岸に育成する植生は、タイプ毎に現
地で竹串など土面にさして区分けする。トン
ボやホタル成虫などの採餌場、避難場を形成
するため、植生は、地上に凹型の空間構造
が形成されるよう各タイプを組み合わせ配置
する。年1~2回土手の車刈りを維続し、4~5
年に1回推積した砂泥の掃除と搬出を継続する。
積堆砂泥は、付着した水生生物を水域に戻し
てから搬出処分する。沿岸の立木については、
小川への太陽光の入射と水面上の空間確保の
ため、2~ 3年に1回枚打ちや間伐を維持する。
立木の若返りを図るとともに、周辺環境に対
する影響に配慮し、専門技術者に依頼しなく
ても伐採可能な段階で萌芽更新させ、樹高や
枝張りの拡大を抑える。伐採周期は樹種によ
っても異なるが概ね 5~10年の間隔である。

7)溜池の設計・施工と育成管理



溜池の多くは湛漑用水を得るため、谷戸の源
頭部などに設置されている。耕作放業などで
使用が停止した池では、取り巻く立木の樹冠
や杖葉が水面を覆い、暗く水温が上がらず、
上空から水面を確認できないこともある。水
底には落葉落枝や砂泥が堆積し水位低下で干
上がる池もある。ヨシやハンノキなどが定着
し、根系が池底の道水層(粘上層)を破り漏水
する池も多い。一方、イシガメやメダカなど
の生物やヒツジグサやマルバオモダカの絶減
危惧種が確認されることもある。

❶ 設計(施工準備、基盤整備の実際施工のポイン)

初年は早春~秋季の事前調査で動植物を確認
する。現地の集水量や土質、生息する生物に
よって施工の途中段階での設計変更が起こる
ため、底上、水位、エコトーンの植化、周辺
植生、導水同、排水日などに関する施工内容
は概略設計にとどめる。



❷ 施工の実際

絶減危慎種などは事前に採取して一時保管。
竣工後に適切な場所に放流や植栽する。施工
適期は晩秋から冬季。施工重機など搬入時に
は現地の表土や動植物の保全に努める。


 
エコトーン

(1)対象地の概略設計

加工現場では、現地の微地形や植生、上質、
水質、時期毎に変化する湧水量等に合わせて
概略設計図の詳細を検討し、その結果をもと
に作り込んでいく。源頭部からの湧水は床掘
り中の溜池に入ると、ぬかるみをつくリユン
ボの作業に支障をきたす。そのため、湧水は、
流入前に、下方右最上段にポンプとホースを
使って排水すると湖水にはならず、下流の沢
を汚すこともない。沿岸のエコトーン形成用
の上のうの配置、積み上げる高さは、水域の
修復が進み、平常水位における水際線が明ら
かになってから、現地で決める。

❸ 育成管理

動植物や水位などをモニタリング調査し、堆
積した落葉落技や砂泥、土手植生、存置した
立木、導水・排水口などに対する定期的な管
理が必要。土手植生の形成を図るためには、
少なくとも年2回、夏季と秋季の刈払いと刈
りくずの搬出作業を行なう。

ブラックバス

※特定外来種、要注意生物
代表的な水域の対象生物

Cleaned-Illustration Myriophyllum spicatum.jpg

●水生生物:ブラックバス、プルーギル、ウシ
 ガエル、アメリカザリガニ
●水生植物:ホテイアオイ、オオフサモ、カナ
 ダモ類、ミズヒマワリなど

Gymnocoronis spilanthoides1.jpg Water hyacinth.jpg

対象地の生態系形成を阻害し、在来種の摂食
による衰退を防ぐために、侵入を防止。侵入
した場合は徹底した駆除を継続する必要があ
る。

Wasserpest.jpg

※「自然環境シミュレータビオトープをつくろう
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【注釈】

生物多様性の実現領域としての修景の設計と
施工の基本的な知識を俯瞰してきたが、今回
の考察を持って一応のけじめとする。自然背
景の奥深さを感慨するものの、「修景」のや
り方についてある種の違和感を持ってここま
で来たが、最後まではそれは払拭出来なかっ
た。そのことに関してはまた考察してみたい。
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ビオトープ考Ⅷ

2010年05月06日 | ビオトープ





5)田んぼの設計・施工と育成管理

❸ 生きものを育む伝統的な稲作

近年、多くの稲作は、化学農業で生態系を
壊し、化学肥料で有機物の循環を断ち切っ
た水出や、大型コンバインを入れ稲株の分
げつを抑えるため、初夏の中干しで耕上を
乾かす水田、さらに圃場整備で暗渠や排水
側構が入り多くの水生生物を追い出した水
田で実施される。これに対し昭和30年代ま
で各地で行われた伝統稲作は、水田にカエ
ルやドジョウ、トンポ、ホタルなどの生物
を育んだ。現代的視点から当時の農法に学
び、安全安心な米を生産し生物の生息地を
再生する。

1)古くからの伝統的な稲作

・田の土を砕いて緑肥などを鋤き込む(田起こし)。
・圃場を整え田植えに備える(代掻き)。
・苗代(なわしろ/なえしろ)に稲の種・
 種籾をまき、発芽させる(籾撒き)。
・苗代にてある程度育った稲を本田(圃場)
 に移植する(田植え)。
・定期的な雑草取り、肥料散布等を行う。
・稲が実ったら刈り取る(稲刈り)。
・稲木で天日干しにし乾燥させる。
 
 ※稲架(馳)を使用したハセ掛け、棒杭
  を使用したホニオ掛けなど

・脱穀を行う(籾=もみにする)。
・籾摺り(もみすり)を行う(玄米にする)。
・精白(搗精)を行う(白米にする)。

2)稲苗の育成

田植えに先立ち、耕転した水日に導水して
育苗用の苗代を設置。当期の湛水はトノサ
マガエルや越冬性のホソミオツネントンボ
などの産卵に重要。

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❹ 湿地植物群落の育成管理

施工のポイントは、水田跡などですでに該
当する植物群落が定着している場所を選定
とすることにある。植生の育成管理では、
定着している水生生物の生息環境を現地で
狩続させながら植生管理を行う必要がある。
このため、現地では区画を決め、刈取り跡、
伐採跡、除草跡での植物の再生が進んでか
ら、別区画の植生を処理する。刈り屑など
は搬出処分し、堆肥やエコスタックなどに
リサイクルする。

Hannokihayasi.JPG ハンノキ

1)ハンノキ、ヤナギ林

●育成管理
10~ 15年毎に1回程度、萌芽更新で若返り
が必要。

●主な生息生物
ミドリシジミやコムラサキなどチョウ、サ
ラサヤンマ、(オオ)エゾトンボなどの生息
地育成。

2)ヨシなど高茎植物群

●育成管理

数年~年1回毎に冬季刈取りを継続。茎丈
が高く見通しがきかない場合には、ポール
などで入り日がわかるよう目印を打つ。ま
た、ぬかるんで作業の障害になる場合には、
木板を敷き、その上に乗って作業を進める。
この木板は移動用の歩行路、希少な動植物
が生息する場合には、湿地の環境構造を歩
行圧から守る上でも効果がある。

Blyxa echinosperma et al.JPG スブタ

3)オモダカ・コナギなど植物群生

クリックすると新しいウィンドウで開きます オモダカ

●育成管理
耕土を耕転してくぼみを作り、最大で10cm
深程度に湛水する。埋土種子を中心に草丈
0.8m以下の中低茎の湿地植物が群在する環
境条件を育成管理する。

Vaginalis.jpg コナギ

●主な生息生物
カエル類、ミズカマキリ類、コオイムシ類
ゲンゴロウ類、ショウジョウトンボ、シオ
カラトンボなどの生息地育成。類、アカハ
ライモリなどの生息地になる可能性もある。
水生植物のスプタやミズアオイ、ミズオオ
バコなど希少種が再生する可能性があり、
個別別に保全対策が求められる。

 ミズカマキリ

イグサのドイツ産基本変種 イグサ

4)ミツソバ・イなど植物群生

Mizosoba 06d0169csv.jpg ミゾソバ

●育成管理
1~2年毎に1回、区画を違えて除草は、除
草屑に付着した水生々物を水域に戻してか
ら処分。

卵塊を背負った雄 コオイムシ

●主な生息生物
カエル類、ミズカマキリ類、コオイムシ類、
ゲンゴロウ類、ヘイケポタルなど、水生生
物の生息地育成。サラサヤンマ、ヒメタイ
コウチなど希少種の生息地が再生する可能
性があり、個別に保全対策が求められる。

Sagisou2.jpg 鷺草

5)サギソウ、トキソウなど植物群落

Pogonia japonica.JPG 朱鷺草

●育成管理
刈払いなどで高茎草本や低木類を抑制し、
湧水地をはじめ貧栄養な湿地に自生するト
キソウやモウセンゴケなどの群落を再生す
る。

 キイトトンボ

●主な生息生物

 コサナエ
 サラサヤンマ

ヘイケポタル、キイトトンボ、コサナエ、
ハラビロトンポ、ハッチョウトンポなどの
生息地育成。希少種のサラサヤンマ、ヒメ
タイヨウチなど水生生物やモウセンゴケ類、
ミミカキグサ類なども混生する可能性があ
り、個別に保全対策が求められる。

 ハラビロトンポ
Hacchoutombo 20080811.jpg ハッチョウトンポ

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【温暖化による米作収量変動予測】



植物は、二酸化炭素と水を材料にして光合
成を行うことによって生きている。材料と
なる二酸化炭素の濃度が上昇すると光合成
が活発になるため、植物の成長量は増える
と考えられている。二酸化炭素濃度が高ま
ると、作物の成長や収量も増加するのだろ
うか?この疑問に農業環境技術研究所(大
気環境研究領域)酒井英光は興味深い実験
報告を常陽新聞連載「ふしぎを追って」で
行っている(「環境変動:大気中の二酸化
炭素濃度の上昇とイネ」)。

実験水田(写真) 農家水田での二酸化炭素濃度増加実験の様子

(1)温室や人工気象室を使ってこれまで
に行われたさまざまな作物の実験結果を平
均すると、二酸化炭素濃度が2倍になると
収量は約33%増加するが、実際の水田でど
の程度増収があるかは不明だった(2)

際の農家水田の一画に、囲いのない条件で
二酸化炭素を水田に吹き込み、二酸化炭素
濃度を周囲よりも 200 ppm 増加させてイネ
を栽培。3年間の実験の結果、イネの収量
は平均で、14%程度増加することが分った。
(3)
他の作物の増収効果と比較すると高
くない(4)イネの成長量に及ぼす二酸化
炭素濃度増加の効果は、イネが若い時期は
30%程度と大きいが、成長ともに効果が低
下(5)しかし、増加効果の低下を小さく
することができれば、二酸化炭素濃度の増
加による増収効果をさらに高められるとし
ている。

Nepa hoffmanni.jpg ヒメタイコウチ


ビオトープ考Ⅶ

2010年04月27日 | ビオトープ







❸マント・ソデ群落の設計・施工・育成管理



マント群落 ソデ群落とは、樹林の林縁部に成
立する植物群落を指す。樹林に述続するマント
群落は有刺低木やアカメガシワやヌルデなどの
先駆性植物、フジ類やクズなどのツル植物など
からなる。この外縁にススキなどの車本類を中
心とするソデ群落が成立する。村林内の気象条
件を安定させ哺乳類などの侵入、機乱を防ぐ役
割を持つ。

Rhus javanica var chinensis2.jpg ヌルデ

1)初期の設計施工

【時期】植物が新芽の展開を終える5月頃
【施工】南木層、亜高木層の間伐と搬出。疎開
     率40~50%。

W mituba2041.jpg ミツバ

●存置育成植物のテープ、ピンポール、杭など
 によるマーキング。
●育成植物以外の刈取り、搬出。
●高木類や他の競合種によって被圧を受け、通
 常、樹形が扁形している。このため、存置育
 成する低木類には整枝剪定を実施。

留意事項①:表土中の埋土種子が発芽し、新た
な種類が出現する可能性がある。
留意事項②:自生個体は低木や高茎草本に被圧
されて開花せず、小さな個体になっていること
が多い。茎葉だけの未開花個体を見分ける必要
がある。初期段階では植物に対する同定力を持
つ専門家の指導が求められる。

Fuki.jpg フキ

2)育成タイブ

●山菜・野生果樹の育成

ミツバ、フキ、ワラビ、ゼンマイ、ウド、ヤマ
ノイモ、タラノキ、サンショウ、アケビなどの
山菜、野生果樹。

●野生花木 実のなる木の育成

ツツジやガマズミ、サクラ類、ヤマボウシなど
の野生花木、クリやトチノキ、オニグルミなど
の野生果樹を選択的に刈り残し育成する。

Juglans mandshurica var. sieboldiana fruits.JPG

●野生草花の育成

キキヨウ、リンドウ、オカトラノオ、オトコエ
シ、オヤマポクチなどの野生草花を選択的に刈
り残し育成する。

ファイル:Pteridium aquilinum 2005 spring 002.jpg ワラビ

オヤマボクチ0602 Synurus pungens.JPG オヤマポクチ

3)育成管理施工

①選択的刈払い
育成植物以外の刈取りと搬出。初夏と冬季の年
2回実施。冬季には、冬枯れした草木育成種も
刈取り搬出する。種子がある場合は取り蒔きを
検討する。

②日照条件の調整
林地の高木層、亜高木層の樹冠が林縁に展開し、
日照条件が悪化した場合、各層の立木に対し枝
打ちを加え、
疎開率を40~50%にして太陽光の
入射初期の状態に戻す




(5)田んぼの設計・施工と育成管理

❶ 放棄水田の構造修復

水田は溜池や用排水の小川、石垣や上手、畦、
農道などからなる。放置水田では砂泥や落葉落
枝が推積するとヨシやセイタカアワダチソウが
密生化するほか、年数がたつと樹林に遷移する。
このような条件ではドジョウやカエルなどの水
生生物は生息できない。

 ヨシ

1)荒廃した水田跡の修復設計

初期施工では、散在した倒木などを除去し、密
生化した草木やササ類を刈取り、除根搬出する。
水位を回復するため、堆積砂泥を掘りあげ、耕
上の下にある遮水層(粘土層)をたたき直し復旧
する。



2)荒廃した水田跡の修復施工

生物の活動が停止する晩秋~冬季に作業を実施
する。現地の水生生物や希少種は、事前に採取
し一時保管し、竣工後、適した環境に放免する。
これは土手や小川、溜池などでも同じである。
密生した土手植生を刈取る。掘りあげた荒廃水
田の砂泥とは自然分解する土のう袋に詰め土手
修復などに利用。



3)水田跡の修復断面の構造

水田の断面は、水漏れを抑えるための進水層、
イネが根を張るための耕土、イネの成長に必要
な水がサンドイッチ状にあり、耕上の厚さと水
の深さは、それぞれ15~20cm程度である。畦と
水田の継ぎ目や畦からの漏水を抑制するため、
水田の遮水層を畦の上まで延長し、畦の泥塗り
を繰り返し行うことも大切である。

4)修復時における導水用小川の補強・補
 修モデル


水田に水を引く小川では、堆積した砂泥を掘り
あげ、もとあった水位に戻す。落斜面や傾斜が
急な畦は補修が容易なそだ柵や木柵で固定する。

5)修復時における導水路の補強・修復モ
 デル



沢水を直接引く水田では水を温める導水路を長
くする。水みちを掘り土のうを積んで流路を固
定できる。出水で崩壊した沢本の取水口は、木
板や土のうを組み合わせ復旧する。取水に要す
る作業には、水利権者の承諾が必要である。



6)圃場整備が済んだ水田における排水路と
 魚介類のネットワーク回復

大きな落差で魚介類が排水側溝と水田とのあい
だを行き来できない場合は、簡易には魚道の設
置で対策する。



7)荒廃した水田跡の修復における1年目の
 作業設計


春から秋は現地と周辺の事前調査を行い、これ
をもとに多くの生物が活動を停止する晩秋から
冬季に基盤修復を実施。

❷ 畦・土手の修復と育成

刈払いを長年中断した場所ではススキやササ類
が繁茂し、樹林化していることもある。キキョ
ウやスズサイコなどの野草が衰弱し混生葉や埋
上種子で残存していることも多い。初期施工と
育成管理によって野生草花が混生するチガヤや
ススキ草地を再生する。育成を要する希少種植
物や野生草花については、当初は草刈り時に刈
り残して育成することも検討する。

スズサイコ02 Vincetoxicum pycnostelma.JPG スズサイコ

1)荒廃した畦・土手の修復設計断面

土手では年2回程度の刈取りでススキ・チガヤ
草地を誘導する。残存した株や埋土種子からワ
レモコウなどの野草が再生し、革原性のチョウ
やバッタも定着する。



2)石垣を伴う土手・畦の修復設計断面

 

樹落部については、現地に残存した石をより分
け、石の面(つら)を合わせ組み上げる。表層の
石を支え畦の浸透水を排水する裏込め石、表層
の玉石や割栗石の順で組む。



【注釈】

作業を進めていくうちに、懐かしい感慨を伴い
ながら頭だけでなく、稲作と灌漑土木、土木建
設、造園、工場建設、住宅造成と個々にあった
ものが次々繋がっていくような納得を腑に落と
していく貴重な経験を得る。




ビオトープ考Ⅵ

2010年04月26日 | ビオトープ





さらっと考察してきているが、実地体験する
と一連の作業での体力は思った以上に消耗す
るので、継続は力なりを文字通りとするなら
時間をじっくりとかけ、体力の七分目程度の
ペースで作業を進めるのがコツだろう思って
いる(山仕事は大変だ)。
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(4)雑木林の設計・施工と育成管理

❶ 共通事項

1)歩行ルート決定

● どのように設置するのか?



緩傾斜地ではルートに沿って現地発生の間伐
材などの丸太を敷き歩行ルートとする。幅は、
最低1人が歩ける程度とする。急傾斜地では、
現地発生の間伐材で階段を設置する。このル
ートは、現地崎本や間伐材、刈屑などの搬出
といった修復段階だけでなく、管理、観察用
ルートにもなる。



● 丸太は効果を発揮する!

林地に加わる踏圧の力が丸太全体に分散され、
踏み固めを軽減する。丸太は、土面を被覆す
るため、雨水による歩行ルートの洗掘や泥地
化を抑え、林地保全に効果を発揮する。歩行
による斜面の損傷を避けるため、傾斜地では
間伐材による階段、沼地を渡る歩行路には間
伐材を使い木橋を作る。

(2)生態的刈払い

● なぜ生態的刈払いを行うのか?

植生の誘導や更新、希少種や対象とする野生
車花、花木を育成するために行う。また、サ
サ類や低木類の繁茂を抑制し、野生草花が混
生する土手や雑本林の林床、溜池における水
際の植生を形成するためには、年1~22回、
定期的なメu払いを継続する。

● 実施方針

希少種、育成対象植物はピンポールやビニテ
ープ
などでマーキング
する。また、選択的刈
払いでは、育成する希少在、野草、花木を誤
って刈払わないように、慣れるまでは現地で
植物を判別しながら手刈りする。移動力に乏
しい生物に配慮し、一度に多人数で対象地全
面を刈払わないこと。少人数で何回かに分け
て行う。さらに市民参加で行う際には、入門
段階では安全上の理由から、鎌や剪定ハサミ
で刈払いを行う。



● 草刈り強使用上の注意


ヘビやカエル、オサムシなど、地表性生物に
対し高速で回転する刃で損傷を加えないよう
に、事前にこれらの生物を作業に囲から追い
払い、ゆつくり作業を進める。刃の接触によ
る不意のケガを避けるため、刈払い機を運転
する参加者どうしの間に4
m以上の距離をと
り、使用方法に対する事前打ち合わせや安全
対策を充分に行う。やわらかい草本にはポリ
プロピレン製の紐状の刃、茎や幹が堅いスス
キや低木類にはノコ状の刃を刈払機に着装す
る。

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(3)刈り屑、落ち葉の搔き集め方

● 目的

雑木林構成種の種子は、多くが発芽に光が必
要。実生が根系を展開し土壌の水分や養分を
吸収するためには、粒子が上壌面に着地して
いる必要がある。落葉落枝が堆積すると、下
層にある穂子に光が当たらず発芽が進まない。
堆積した落ち葉の間に挟まった種子は、雨水
により水分が供給され発芽しても、根系が土
壌に達せず枯死してしまう。定期的な落ち葉
搔きは、林床の種子に光を当て、実生が根茎
を仲張する発芽床を育成する。

● 方法

竹製の熊手を使用する。金属製の熊手やレー
キは林床の表面や野車の実生に損傷を加えや
すい。地表性の生物や野生草花の生育場所を
避けながら、軽くかき集める。その際、埋土
種子が多く、多年生植物の根茎が仲張し土壌
生物が最も多い表層部を
かきえぐらないように
する。落ち葉掻きの適期は秋の落葉後。この時
期に行うのは、落葉が落ちてすぐなので、軽くか
き集めやすく、カタクリなどに寄生し生育を阻害
するサビ菌を除去するためである。

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(4) 枝打ち・蔓切り

●目的:太陽光を入射させ低木層や草本層に
おける育成植物の成長を促す。また、カブト
ムシやクワガタムシ、オオムラサキなどの大
型昆虫類をはじめ、エナガやヤマドリなどの
鳥類が、樹冠の隙間や林内を飛び交えるよう
にするために実施する。

クリックすると新しいウィンドウで開きます コシジロヤマドリ

●程度:樹高7~ 8mの立木では、樹冠から下
の樹幹の高さが3~ 4m前後になるまで枝打ち
を実施する。枝打ちを施しても、切り日から
新芽が形成され「ひこ生え」が発生する。こ
れらについては、切り口に樹皮が展開して新
芽が発生しなくなるまで、下刈りを行う際な
どに、適宜、切り取る。

●方法:安全を考慮し樹幹にハシゴが固定で
きる林業や造園用梯子を使用し、転落防止に
は充分に注意する。全体の樹形を考慮し、幹
と枝の接合部から切る。枝を切るためにはよ
く切れる手鋸やナタ、剪定バサミを使用する。

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●二次的効果:コナラやクスギなどの樹種で
は、枝の切り口に傷日が残ると、そこから樹
液がしみ出し、カブトムシやクワガタムシ類
などの餌場になる。傷は、大小があってもか
まわない。傷口の大きさにより樹波に集まる
昆虫類が共なり、逆に多くの種類の餌場を形
成する。

(5) 間伐

● 目的

林内に達する太陽光を増加させ、低木層の花木
や草本層の野生草花、山莱、薬草などの増殖、
昆虫類や鳥類が森林内に進入しやすくするなど、
目的に沿ったさまざまな効果がある。



● 安全対策

伐倒作業は危険である。安全靴を履き、ヘルメ
ットを着用すること。市民参加で実施する場合に
は、できるだけノコギリにより作業を行う方が安
全である。チェーンソーを使用する場合には、専
門家の指導を必ず受ける。樹高10m以上の大木
の間伐は、専門家に依頼することが望まれる。

Robinia-pseudoacacia.JPG

● 間伐樹種選定

間伐木の選定に際しては、競争に負けた被圧
木、枯木を優先する。外来種のニセアカシア
やニワウルシなどが侵入している場合には、
優先的に間伐本とする。対象木についてスプ
レーやテープなどによリマーキングを施す。

Ailanthus altissima1.jpg

● 間伐作業

伐倒方向の決定に際しては、作業者の安全を
第一に施設などの位置を目視し、幹が倒れて
も支障ない位置を選定する。伐倒に先立ち、
作業開始時に現場関係者どうしで安全確認を
行う。まず、伐倒木の構冠が育成木に寄りか
かって損傷を加え、伐倒木の樹冠の枝葉が育
成木の枝栄に絡んでFlれにくくなるのを避け
るため、枝打ちを行う。林業ハシゴを立木に
立て、下から順に枝を切り落とし、絡まった
ツルを取り除く。ハシゴ上での作業には安全
上、ノコギリの使用を勧める。


●受け口:伐倒する側にノコやナタで幹の大
きの1/3~ 1/4、角度30°~ 45°の切れ込み
をつくる。受け口がないと、伐倒方向が不安
定になり、本の重さでノコが切口に挟まって
作業ができなくなる。
 
●伐倒:ノコギリやチェーンソーで受け日の
真反対側の少し上側から切り込み伐倒。幹直
径の1/10租度切り残した段階で作業を止め、
伐倒方向にゆっくり押し倒す。押し倒す際、
切り口からの跳ね返りがあるため作業者の身
体に接触しないよう充分に注意する。


(6)萌芽更新

雑木林の若返りを図り、生物多様性を育成し、
林齢の異なる多様な環境構造を形成するため
に実施。立木伐採は区画を定め、全伐とする。
方法は間伐作業に準じる。



(7)雪起こし

●根返り:
多雪地の斜面に生育する樹高4~5
m前後までの若い雑木林では、間伐後に周囲
の支え木がなくなり、斜両上方からの積雪の
移動圧により根返りを起こし倒伏することが
ある。

●対策:雪解け直後、根系が伸張を開始し、
新芽が展開する前に雪起こし対策を実施する。
使用する縄は、葉組やシユロ縄など自然腐朽
する材料とする。縄を取り付けるときの引っ
張りの程度は、立木は自力で立つ力があるた
め、地面に対し直角になる程度で充分。

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(8)堆肥場、間伐材置き場

● なぜ堆肥場や間伐材置き場などを設けるのか

山と人や生物、植物との有機物の循環を進め
るために設置する。

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● 堆肥場や間伐材置き場などを設置する環境条件

出水の影響を受けない下刈りされた半日陰地
がよい。落ち葉の腐植化とカブトムシなど甲
虫類の産卵や幼虫の生息地、両生 爬虫類の
生息地にするためには、温湿度に変化が少な
く水はけのよい北向きの斜面下部を選定する。
この条件がない場合は、西日や直射日光の入
らない水はけの良い凹地を選ぶ。

● 堆肥場、間伐材置き場の作り方と循環利用方法

枝打ち屑、間伐材、刈屑、落葉落枝は、それ
ぞれ別々に搬出し、活用しやすいように仕分
けして、別々に世き場を決める。

ファイル:Logging oregon.jpg

間伐材:持ち運びができるよう、0.5~1m前
後に玉切りし、崩れないように積み上げる。
落業落枝、小枝を堆肥化するには、間伐材と
刈取った低木類を粗柔にして木枠をつくり、
高さ1m前後まで積み上げる。積み上げた落
葉落枝に腐熟を進める酸素を送り込むため、
カブトムンなどの幼虫へのへの損傷が少ない
繰り返す。適期は、1世代1年であるカプト
ムシの成虫が羽化し幼虫がいない7月中下旬
である。

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❷ 雑木林の設計・施工と育成管理

対象地が持つポテンシャルを最大限活用する。
初期施工と、その後の育成管理段階で必要な
設計 施工がある。大半の雑木林は密生状態
に放置されており、初期施行工に労力を要す
ることが多い。作業は人力によることが多く、
人員などの面から維続して育成管理できる面
積を充分に検討する。




ビオトープ考Ⅴ

2010年04月26日 | ビオトープ





Ⅲ 設計・施工・手入れと育成管理

(3)育成管理の方向性

❷ マント・ソデ群落


雑木林の外縁部分にある林縁の植物群落である。
光、温湿度ともに開放地と樹林下の中間的な環
境条件にある。オツツジやガマズミ、ヤマザク
ラなどの野生花木、
タラノキ、サンショウ、ワ
ラビ、ゼンマイ、ウド、クズなどの山業、ヤマ
ボウシ、ウスノキなどの野生果樹、リンドウ、
オカトラノオ、オトコエンなど野生草花を選択
的に刈り残し育成することができる。自生野生
草花や山業などの個体は、低木や高茎草本に被
圧されて開花せず小さな個体になっていること
が多い。未開花個体を見分ける必要がある。刈
屑は搬出処分。地面にある既存の落下種子が発
芽し、新たな種類が出現する可能性があるとい
う。

 ガマズミ
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植生とは、ある地域における植物体の集まりの
総称。植生を研究する学問には、植物社会学、
植物生態学などがあるが、一般的には植生学と
呼ばれる。植生の成立は、地形や気候などの環
境要因や、伐採や農耕などの人為的要因の影響
を受ける。一方、成立した植生はこれらの環境
要因を変化させる。現存する植生は、このよう
な植物と環境要因の相互作用の結果である。
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Aralia elata en fleur4081.jpg 
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マント群落とソデ群落

森林とオープンランドとの境界部分には、特有
な森林の構造が発達する。森林の端の部分では
ツル植物が繁茂し、森林内への風の吹き込みを
防いでおり、このような状態の群落を
ント群
という。
森林がマントをまとっているという
意味である
。また、まるでカーテンを掛けたよ
うであるという意味で、カーテン群落という呼
び方もある。マント群落は、側方からの光を植
物が有効に利用する結果であり、ツル植物や低
木性の樹種などで構成されていることが多く、
ノイバラなどの有刺植物が多いのもの特徴の1
つである。これらの植物により構成される植生
は、森林中の樹木が台風などで倒れた場所(ギ
ャップ)などでも形成される。マント群落は、
結果として森林の傷付いた部分をいち早く覆っ
林内への日照の到達・風の吹き込みを減少さ
せ、林内の湿度を保つ働きがある
ソデ群落
マント群落の更に外側に位置する草本を中心と
する群落である
。ソデ群落は林内から栄養分が
供給されるために栄養分的には良好な立地であ
る。
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Gennosyouko-siro.JPG 

❸ 草地・土手

Imperata cylindrica.jpg

対象地が草地の場合には、草刈りの頻度を違え
ることによって、いくつかのタイプの草地を育
成管理することができる。ススキ草地は、年1
~2回刈取りを維続することにより形成され、
ノアザミ、オミナエシ、キキョウ、オトギリソ
ウなど育成される。チガヤ・ヨモギ優占草地や
メカルガヤ ヨモギ草地は、年2~3回刈取り
を継続することにより形成される。在来タンポ
ポ、ウツボグサ、ネジバナ、キランソウなどの
野生車花、 ドクダミ、ゲンノショウヨなど和
薬を育成できる。育成対象とする自生個体は、
低木や高茎草本に被圧され、開花せず小さな個
体になっていることが多い。未開花個体を見分
ける必要がある。地面にある既存の落下粒子が
発芽し、新たな種類が出現する可能性がある。
区画を決め、刈り跡での再生が進んでから別区
画を刈取る。刈屑は搬出処分する。



❹ 湿地



里地里山にある放棄水田、湧水地には湿地が形
成されていることが多い。現地の植生や生物調
査の結果をもとに育成管理の方向性を検討する。
すでに水田放棄後年数が経過し木本類が定着し
ている場合には、 ミドリシジミやコムラサキ
などの繁殖地として、ハンノキ、ヤナギ林を育
成することができる。



樹林化する前で、ヨシなどの高撃1直物群落に
なっている場合には、これを維持し、オオヨシ
キリやカヤネズミなどの生迫、地などを育成で
きる。ミゾソバやイなどが群生化し、常時過湿
で滞水しているところでは、ビオトープネット
ワークで連続しているところでサラサヤンマや
ヒメタイコウチなどの水生生物の生息地が育成
できる。

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水田放棄後、年数が短い場合には、コナギやオ
モダカなどによる湿地性植物群落を形成するこ
とができる。カエル類、 ミズカマキリ類、ゲ
ンゴコウ類、ヘイケボタル、ギンヤンマ、ショ
ウジョウトンボなどの生息地になる。土壌が貧
栄養で、常時、湧水があるな開放地では、サギ
ソウやトキソウなどの生育地を育成、再生する
ことができる。

❺ 水田

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イネの無農薬無化学肥料栽培を行う。無肥料で
100㎡当たり10~15kg、堆肥の施用により100㎡
当たり30~ 50kgの玄米を収穫できる。現地で
形成される食物連鎖により「害虫」を抑えイネ
を栽培する。生物多様性と生物の密度を向にさ
せる効果は絶大である。肥料には主に牛糞堆肥
と刈敷使用する。イチョウウキゴケ、サンショ
ウモ、オオアカウキクサなど絶戒危惧種が発生
する可能性もある。留意事項として、休耕して
年数を経ていない水田を、農家から借り受ける
必要がある(詳細は、『田んぼピオトープ入門』
農文協刊参照)。また、農葉を使う慣行水田よ
り上方の沢水を導本する谷戸最上流部の水田が
効果的である。アカガエル類などの注卵には冬
季湛水する必要がある。イネを栽培する際は、
水苗代を作って育苗することが望まれる。この
時期の湛水と苗群がカエル類の産卵に有効であ
る。魚類の遡上を計顧iする場合は、段差少なく
小川と連続している必要がある。また、ウシガ
エルやアメリカザリガニ、スクミリンゴガイな
ど帰化生物が繁殖している場所では、徹底して
駆除する必要がある。溜池の場合も同様。

❻ 溜池



マコモやガマなど高基植物群落塊在型、ヨシや
ガマなど高室植物群落疎生型、ヒツジグサやジ
ュンサイなど浮葉植物群生型、浮葉植物 高茎
植物混在型の水域を形成する。留意事項として、
溜池と後述の小川に関与する際は、必ず水利権
を持つ団体(水利組合など)に了解を得る必要が
ある。また、生物多様性を高めるためにはエコ
トーンの延史と幅をできるだけ大きく取る。

❼ 小川



現地の植生状況によって、いくつかの選択肢が
ある。植生によって閉鎖した小川の1ケ復、素
掘り水路の小川化。流速が早い場合や夏期に瀬
切れしやすい湯合には、魚類の遡上を阻害しな
い低い段差を土壌などにより形成し、水域を形
成する。自然河床が消失した小川の修復では、
コンクリート3面成りの河床に上妻などを並べ、
瀬と淵、砂州が形成されるよう骨組みを入れる。

 カワニナ

ゲンジボタルが生息する小川を修復することも
可能である。すでに発生している場合は、水面
に太陽光線を入れ、ホタル幼虫の餌であるカワ
ニナの餌、藻類の発生を促進させる。流速が早
い場合や夏期に瀬切れしやすい場合は、上記に
同じ。他の河川からカワニナを移植する場合は、
移植もとのゲンジボタルなどに影響が出るので
最小限に抑える。新たにゲンジボタルを発生さ
せるには、水質や周辺の環境を充分に調査し、
事前に年数をかけて餌のカワニナを増殖する。


カワセミ

(4)雑木林の設計・施工と育成管理

斜面での作業では、踏圧による表土の硬化と野
草類の損傷を防止し、搬出の手間を軽減する必
要がある。作業は、谷部に対し最も先に手を付
け、斜面上下間の歩行による表土の損傷、体力
の消耗を避けるため、付面の下部から上部に向
け順に実施する。ヘルメット、安全靴、軍手着
用を持用する。

❶ 共通事項

(1)歩行ルート決定


● なぜ歩行ルートが必要か?

土壌の表層には、 ミミズなどの土壊生物のほ
か、植物の根系があり、発芽を控えた埋土種子
存在する。オサムシやアリ類などの見虫、アカ
ガエルや小型サンシヨウウオなど両生 爬虫類
の歩行面でもある。対象地を歩き回ると直接損
傷を加え、表土を踏み固め生物が歩行に使う土
の湿度や落葉落枝の被複など、詳細な環境構造
が失われる。

ここまでの考察で反問などは生じなかったが、
この続きは次回に。