放射性セシウム汚染焼却灰の除染

2012年11月15日 | 防災と琵琶湖

 

 


2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第
一原子力発電所の放射性物質漏えい事故以来、福島県
を中心とした除染の推進が国家的課題として進められ
ているが、除染により生じた放射性物質を含んだ廃棄
物を貯蔵・保管する施設については、現時点ではその
設置場所の決定には至っておらず、貯蔵や保管に十分
な規模の施設を確保できるかどうか不透明だ。除染に
より生じる廃棄物を減容する技術の確立が喫緊の課題
となってた。



植物系放射性セシウム汚染廃棄物を焼却した場合、放
射性セシウムを高濃度に含む灰が排出される。特に焼
却炉に残るろ過集じん装置のバグフィルターで捕捉さ
れる飛灰は、特に放射性セシウム濃度が高く、加えて、
水との接触により放射性セシウムが溶出する。



高効率・高選択性を示すセシウム吸着材として、PBナ
ノ粒子の開発を進めてきた産総研は、セシウムと似た
性質のナトリウムやカリウムのイオンが高濃度に存在
する水から、セシウムイオンを選択的に高効率で吸着
することができるため、焼却灰から放射性セシウムを
水に抽出した後に、その抽出水にPBナノ粒子を添加し
て放射性セシウムを回収し、放射性セシウム汚染物を
減容させる方法を提案していた。



添加したPBナノ粒子を凝集沈殿法により固液分離する
方法は、2011年度除染技術実証事業で、郡山チップ工
業株式会社と共同で、プロセス条件、実施コストなど
突き止めていた。また
、東電環境と産総研は、植物系
放射性セシウム汚染物の焼却を郡山チップ工業株式会
社主導の下、同上実証試験事業の林業で排出される放
射性セシウム汚染た樹皮を焼却時のバグフィルターで
検出限界以下濃度まで除去(濃度は焼却前の汚染樹皮
の50倍程度となる)できていた。

以上のことを踏まえ、焼却、灰の除染(放射性セシウ
ムの回収)までを一貫して実施することを目的として
実証試験プラントの設計・開発を行った。この実証プ
ラントを用いた実証試験では、植物系放射性セシウム
汚染物を試験的に焼却し、エネルギーとして利用する
際の課題をより精密に抽出することも目指すものだ。

 

 

【エピソード】

わたし(たち)は、汚染当初から、高圧による水・ガ
スの
ドリブンなどによる二次汚染が心配される放射性
物質の回
収に依存しないドライ回収方式を念頭に置い
ていて、郡山
チップ工業株式会社の実証試験に注目し
ている。問題は回
収された放射性物質の再拡散防止の
ためにプルシアンブ
ルー化合物で捕捉固定しようとす
る実証試験が行われよう
としているわけだ。

なので、濃縮捕捉ということであれば、あくまでもド
ライで「再燃焼(マイクロ波照射加熱)分解→分離→
鉛硝子溶融」で減容・固定化できるようにも思えるが、
これもひとつの選択肢として考えている。

※あくまでも、木質バイオマス燃料発電の普及促進の主テ
  ーマが背景としてある。 

【脚注及びリンク】
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1.植物系放射性セシウム汚染物を除染・減容するた
  めの実証試験プラント
、産総研、2012.11.12
2.ナノ粒子化したプルシアンブルーでセシウム吸着
  能が向上、産総研、2012.2.8
3.放射能汚染された木材・樹皮の水洗及び焼却によ
  る除染・廃棄物減容化技術の実証
、郡山チップ工
  業株式会社

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犬上川のタブノキ林

2012年11月13日 | 日誌

 

 

犬上川河川敷(彦根市八坂町)で滋賀県が行った改修工事で
内陸部では珍しいタブノキ林の一部が伐採されたという
(2012.11.11 読売新聞)。それによると、一帯の植生にく
わしい県立大の野間直彦准教授(植物生態学)の指摘で発覚
した。県は伐採を打ち切り、嘉田由紀子知事は9日、「貴重
な自然財産を喪失させたことを心からおわびする」との談話
を発表。


 
タブノキは、クスノキ科の照葉樹で、海辺に自生することが
多い。犬上川の両岸には林が形成され、2000年、旧環境庁が
固有の特徴を持ち保全を要するとした「特定植物群落」の調
査対象に挙げられた。県によると、改修計画は1994~96年に
策定。貴重なタブノキ林をできるだけ多く残す方針で翌年か
ら工事に着手し、左岸の工事は2003年に完成。今回の工事は
古い堤防の撤去のためで、先月30日から、右岸沿い約320メ
ートルにわたって実施。野間准教授によると、枝を広げて林
を形成し犬上川河川敷で滋賀県が行った改修工事で、内陸部
では珍しいタブノキ林の一部が伐採された。

 

 
県によると、現場は竹やぶなどが鬱蒼と茂っており、担当者
が現場で、保存すべき場所を図面と照合せずに切り倒してし
まった伐採を確認した野間准教授の要請で、工事は7日から
中断された。野間准教授は「極めて残念な事態」として同日
彦根市で記者会見を開催。獅山向洋市長も9日、嘉田知事に
対し、「調整もなく伐採が先行したのはなぜか」などとする
質問状を送付した。


 
県は今回の問題を受け、今後は〈1〉伐採前に工事現場を図
面で確認する〈2〉残す場所がわからない場合、事前に地元
の有識者らに確認する〈3〉貴重な植生を保存する計画を立
てた場合、その時点で現場に表示などをする――などの再発
防止策を図るとした。嘉田知事は「貴重な樹木が伐採され、
身を切られる思い。今後は伐採跡の現地調査で確認された希
少種を出来る限り移植するなどし、保全・復元に努めたい」
としている。


 
被害の程度は4本。県湖東土木事務所が伐採した。中には樹
齢150年以上、幹回り123センチで、同川では最大級の
古木もあった。県によると現場は竹やぶなどが鬱蒼と茂って
いる場所だという。

 【エピソード】


近所の竹ヶ鼻町には、見上げんばかりのケヤキの大木が保護
指定されて残っている。その周辺は駐車場として活用してい
るが、大量の枯れ葉が舞い落ちるので借り手は付かない状態
だ。このようにココロ和ませる河川岸の植物群落の美しい景
観だが、落ち葉が樋(とい・とゆ)を詰まらせてしまうなど
の日常的なリスクもある。保護と利便性、これは高度消費社
会の大きなテーマであり、かつまた「両立・共生」というの
政策は優れて現在的な公共事業でもある。

 

 【脚注及びリンク】
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1.特定植物群落、Eネット環境用語集
2.タブノキ(椨 Machilus thunbergii
3.淀川水系湖東圏域河川整備計画(原案)、滋賀県
4.彦根市の植物調査結果の概要、彦根市


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