ビオトープ

2010年03月16日 | ビオトープ





 養父志乃夫

【環境保護と環境創造】



ビオトープ(独:Biotop)、バイオトープ(英
biotopeは、生物群集の生息空間を示す言葉であ
る。訳す場合は生物空間、生物生息空間とされ
る。語源はギリシア語からの造語(bio(命)+
topos(場所))。ドイツ連邦自然保護局ではビ
オトープを「有機的に結びついた生物群。すな
わち生物社会(一定の組み合わせの種によって
構成される生物群集)の生息空間」と位置づけ
ている。別の表現をするならば「周辺地域から
明確に区分できる性質を持った生息環境の地理
的最小単位」であり、生態系とはこの点で区別
される。つまり、ビオトープ(環境)とその中
で生息する生物群集(中身)によって、生態系
は構成されていると言うこともできる。日本に
おいても自治体が行う事業に「ビオトープ」と
いう語を用いる場合にはこういった発想が一般
に援用されている。生物学における用法では、
例えばヘイケボタルが生息する典型的な環境を
ヘイケボタルのビオトープと呼ぶ。



そこには、気象条件、地勢や水系の特性、他の
生物の生息状況などが含まれる。ただし、この
言葉は特に生態系(Ecosystem)との違いが明確で
はなく、どちらでも使える場合もあり、現在で
は生態学の用語として使われる場面は多くない。
生態学の分野で使われる場合にも、以下の用法
で使われている例が多い。これに対して、この
用語を積極的に用いるようになったのは、自然
の開発の仕方の反省にたった所から始まる。



特にヨーロッパにおいて人工的に形作られた河
川などの形態をより自然に近い形に戻し、それ
によって多様な自然の生物を復活させるととも
に、本来の自然が持っていた浄化作用を利用す
る、といった観点から、多自然型河川護岸であ
るとか、親水工法といった言葉が使われるよう
になった。つまり、これまでは機械的に形作ら
れてきた河川護岸を、生物の生息場所であると
意識し、それを積極的に利用する方法が始めら
れたのである。このような、人為的に多様な生
物的環境を創造する試みのことを、エコアップ
などと称する場合もある。



【解説】

修景、借景という言葉を今風にいうとビオトー
プとなる。人工造景、人工造園は都市化や産業
による周辺景観の紊乱や自然破壊に対抗する是
正、修正の歴史的意味合いが込めらてもいる。
琵琶湖という修景の足下は、ゴミの不法投棄や
心ない住民マナーの欠落というミクロな積み重
ねや農林業政策や廃村といった社会構造のマク
ロな変容の影響に曝されており、どの様な切り
口から、どこから手をつけて行くのかという問
題を抱えているが、周辺河川や湖岸のゴミ拾い
や美化運動から手をつけていくのが自然な気が
する。

 

【外部リンク】

  • 日本ビオトープ協会
  • (財)日本生態系協会
  • 土屋環境教育振興財団





  • 環境工学と中西準子

    2010年03月14日 | 日誌






    中西準子(旧姓:近藤準子)教授とは、全国
    の流域下水道計画反対運動の理論的指導者で
    あり市民の会(彦根市民の飲み水を守る会の
    略称)が主催した講演会の講師として会場ま
    で来ていただいた経験がある(同時講演とし
    て故鈴木紀夫滋賀大学教授にも講演していた
    だいた)。現在は交流は途
    絶えているが、彼
    女の協力がなければこの運動体(組織)の存
    続はなかったと考えている。

    【経歴:Wikipedia からの抜粋】

    中西準子は(独)産業技術総合研究所・安全
    科学研究部門長、専門は環境工学(環境リス
    ク学)。工学博士。1938年中国大連市生まれ
    (父は当時満鉄調査部の中西功)。神奈川県
    立湘南高等学校卒業。61年、横浜国立大学工
    学部工業化学科卒業。67年、東京大学大学院
    工学系研究科合成化学専攻博士課程修了。東
    京大学工学部都市工学科(衛生工学コース)
    助手となり汚水処理、下水道計画を研究。国
    の当時の下水道行政の誤りを厳しく指摘し、
    その後の行政にも影響を与えたが、都市工学
    科内では疎外され助手の地位にとどめられる
    (同じ時期、宇井純も都市工学科の万年助手
    であった)。90年、都市工学科を去り、東京
    大学環境安全センター助教授となる。93年、
    東京大学環境安全研究センター教授となった
    が、東京大学工学系で女性が教授になるのは
    開学以来初めてのことであった。95年、横浜
    国立大学環境情報研究院教授となり、環境リ
    スク管理、リスク評価につき研究。2001年、
    産業技術総合研究所・化学物質リスク管理研
    究センターの発足に際しセンター長となった。
    2003.4.29、紫綬褒章受章。 2004年、横浜国
    立大学を退任したが、その際の記念講演等を
    まとめた『環境リスク学-不安の海の羅針盤』
    (日本評論社 2004年)は毎日出版文化賞を受
    賞した。2008.4.1より組織変更により、化学
    物質管理研究センター・ライフサイクルアセ
    スメント研究センター・爆発安全コアの3セ
    ンター・コアの合併により新しくできた安全
    科学研究部門の研究部門長となった。環境リ
    スクについては、いたずらに危険性を騒ぎ立
    てるのではなく、リスクの程度を可能な限り
    定量的に評価・比較し、それをもとに合理的
    な対策をとるべきであると主張。そのための
    リスク評価手法の確立に尽力している。



    【著書】



    ・『都市の再生と下水道』(日本評論社 1979年)
    ・『
    下水道-水再生の哲学』(朝日新聞 1983年)
    ・『飲み水があぶない』(岩波書店
    1989年)
    ・『いのちの水』(読売新聞社
    1990年)
    ・『東海道
    水の旅』(岩波書店 1991年)
    ・『水の環境戦略』(岩波書店 1994年)
    ・『
    環境リスク論』(岩波書店 1995年)
    ・『環境リスクマネジメントハンドブック (共編著) 』
     (朝倉書店
    2003年)
    ・『環境リスク学-不安の海の羅針盤』(日本評論
     社 2004年) (第5回日経BP・BizTech図書賞、第
     59回毎日出版文化賞受賞)
    ・ 『食のリスク学-氾濫する「安全・安心」をよみと
     く視点』(日本評論社 2010年)


    赤潮とアオコ

    2010年03月13日 | 日誌


    【赤潮】



    ・平成20年度は、ウログレナ・アメリカーナによ
     る淡水赤潮の発生は確認されず。
    ・なお、赤潮が初めて確認された昭和52年度以来、
     赤潮の発生が確認されなかったのは、昭和61年
     度、平成9年度、平成10年度、平成13年度、平成
     14年度、平成16年度、平成18年度、平成19年度、
     平成20年度です。

    【アオコ(水の華)】



    ・平成20年度は、これまでで最も早い7月23日に大
     津市浜大津で発生が確認されて以降9月1日まで
     に、18日間7水域(延べ45水域)で確認。

    解説1

    赤潮は、プランクトン異常増殖により、琵琶湖な
    どが変色する現象。水が赤く染まることが多いた
    め「赤潮」と呼ばれるが、水の色は原因となるプ
    ランクトンの色素によって異なり、オレンジ色、
    赤色、赤褐色、茶褐色等を呈する。赤潮を引き起
    こす生物は、色素として
    クロロフィの他に種々
    カロテノイドを持つ場合が多く、細胞がオレン
    ジ色や赤色を呈するためにこう見える。


    図 北湖の赤潮

    解説2



    アオコ(青粉)とは、富栄養化が進んだ湖沼等に
    おいて微細藻類(主に浮遊性藍藻)が大発生し水
    面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻
    類を指す。粒子状の藻体がただよって水面に青緑
    色の粉をまいたように見えることから「青粉」と
    呼ばれるようになったと考えられ、水の華(みず
    のはな、英: algal bloom)は、微小な藻類が高密度
    に発生し水面付近が変色する現象。日本では淡水
    域における浮遊性藍藻や緑藻、ユーグレナ藻の大
    発生を指すことが多い。欧米では海水域において
    珪藻や渦鞭毛藻などが大発生して水面が褐色にな
    る現象も water-bloom と呼ばれるが、日本語では
    こうした褐色や赤系統の変色は赤潮と呼んで区別
    する傾向が強い。温帯では冬季に水塊中の躍層が
    消滅して水面近くの有光層に栄養塩が供給され、
    春季に気温の上昇とともに水の華が生じる現象が
    見られ、これをspring bloomと呼ぶ。



    図 南湖のアオコ


    琵琶湖の水質推移

    2010年03月11日 | 日誌



    【水質推移:化学的及び生物化学的酸素要求量】



    図1 化学的酸素要求量の平面分布



    表1 化学的酸素要求量推移

    ・北湖、南湖とも過年度と比較すると少し高い値。
    ・経年変動をみると、北湖、南湖とも昭和59年度
     以降上昇傾向にあり、平成10年度以降は横ばい
     の傾向にある。


    表2 生物化学学的酸素要求量

    ・北湖のBODは報告下限値(0.5mg/l)付近で推移。
    ・南湖のBODは前年度に引き続き、過年度に比べて
     少し高い値。平成元年以降、横ばい傾向にあり。

    【解説】

    ・化学的酸素要求量(COD, Chemical Oxygen Demand
     とは、水中の被酸化性物質量を酸化するために
     必要とする酸素量で示したものである。代表的
     な水質の指標の一つであり、酸素消費量とも呼
     ばれる。

    ・生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand
     は、生物化学的酸素消費量とも呼ばれる最も一
     般的な水質指標のひとつであり、主に略称のBOD
     
    が使われている。水中の有機物などの量を、そ
      の酸化分解のために微生物が必要とする酸素の
     量で表したもので、特定の物質を示すものでは
     ない。単位は O mg/L または mg-O2/L だが、
     通常 mg/L と略される。一般に、BODの値が大
     きいほどその水質は悪いと言える。

    ・化学的酸素要求量だけが改善傾向を示さないと
     ころが気になる。溶解性化学物質などの影響が
     あるとすればTOC(全有機的炭素などの指標
     がいる。

    ※データベースリンク

    琵琶湖・瀬田川の水質概況速報(平成21年度
                        第3四半期分)
    (10/01/27)」


    琵琶湖の富栄養化

    2010年03月02日 | 日誌





    【水質の推移:窒素及び燐濃度】





     

    ・北湖、南湖とも過年度に比べて少し低い値。
    ・また、経年変動を見るとここ近年減少傾向。





    ・北湖、南湖とも過年度並に比べて少し低い値。
    ・ また、経年変動を見ると減少傾向。

    【注釈】

    概ね、横ばいから現象傾向にある。瀬田川は全窒
    素濃度が高値安定にあり半分程度の濃度に引き下
    げる対策が必要。





    富栄養化問題



    富栄養化とは?

    「富栄養化」とは、湖沼や湾などの水域で窒素や
    リンなどの「栄養塩類」が多くなること(有機物
    によって水が汚れる「有機汚濁」とは異なる)。
    もともと「富栄養化」というのは、生まれたばか
    りの湖に、だんだんに栄養塩類が増えていき、植
    物が繁殖し、湖が沼となってやがて消滅していく、
    という自然現象が、近年問題になっている「富栄
    養化」は、その原因が生活廃水や工業排水、農業
    廃水などの人為的なものであり、かつ急速に進ん
    でいる点が問題とされている。
    ここで「栄養」と
    いうのは、植物性プランクトンの成長のための栄
    養分を指している。



    1977年5月に大発生した琵琶湖の赤潮は、琵琶湖が
    衝撃を与えた。滋賀県は、調査団に委託して科学
    的な赤潮発生の原因とメカニズムを解明するとと
    もに、水質審議会に諮っていた富栄養化防止のた
    めの具体策づくりを急ぎ、一方、県民は富栄養化
    の主因のひとつであるリンを含んだ合成洗剤から
    天然油脂を主原料にした粉石けんの使用に切り替
    える運動を展開しながら、国や県に対して実効性
    のある対策を強く求めた(運動体として、映画「
    襤褸の旗」自主上映運動、「琵琶湖を県民の手に
    取り戻す会」の県下展開、「環境生協」設立、「
    琵琶湖・淀川汚染総合調査団」の発足など大日本ス
    クリーン労働組合や湖東北部生活協同組合を拠点
    に彦根から展開)。



    合成洗剤の無リン化

    かつて、洗濯用合成洗剤には、助剤として燐酸塩
    が配合されていが、1977年以後、琵琶湖で赤潮が
    発生して、富栄養化が深刻な問題となり、富栄養
    化の原因物質である窒素・燐の排出を減らすため、
    1979年に滋賀県で「琵琶湖富栄養化防止条例」が
    制定され、工場排水中の窒素・燐の排出規制と合
    わせて、燐を含む合成洗剤を、滋賀県内で使用・
    販売・贈与することが禁止された。このことは、
    滋賀県だけでなく全国的に大きな波紋を投げかけ、
    洗剤メーカーはすぐに無リン洗剤を発売し、現在
    の日本では、家庭用洗剤はほとんど全て、燐酸塩
    を含まない無燐洗剤になった(ただし、業務用洗
    剤には燐酸塩を含むものが今でも使用)。



    合成洗剤業界の猛烈な抵抗(燐系添加→節燐系洗
    剤→非燐系代替)。「琵琶湖条例」(滋賀県琵琶
    湖の富栄養化の防止に関する条例)が、1979年に
    制定。「琵琶湖条例」は、県民と行政の双方から
    の琵琶湖浄化への願いとして制定。1980年7月1日
    に施行され、琵琶湖条例は、今年で30周年を迎え
    た。

    最近の合成洗剤と富栄養化

    助剤として使われていたリン酸塩は使われなくな
    ったが、最近の合成洗剤の中には、界面活性剤の
    中に窒素やリンなどを含むものが増えている。例
    えば、ボディソープやシャンプーの中には、燐を
    含むアルキルリン酸塩や、窒素を含むアミノ酸系、
    ベタイン系の界面活性剤を主成分にしているもの
    があり、台所用洗剤には、窒素を含むアルキルア
    ミンオキシドや脂肪酸アルカノールアミド、脂肪
    酸メチルグルカミドなどが使われているものが増
    えてきている。



    窒素や燐は、現在の下水処理では十分に取り除く
    ことができず放流されている。台所洗剤やシャン
    プーに含まれる窒素やリンは、かつての洗濯用洗
    剤に含まれていた燐と比べると、量的には少なく、
    ただちに富栄養化を起こすとは言えませんが、低
    濃度の窒素や燐を含む洗剤の増える傾向が指摘さ
    れている。



    ※ 関連運動体リンク

    ・「環境監視研究所
    ・「環境生活協同組合
    ・「石鹸百科
    ・「琵琶湖市民大学