犬上川

2010年05月31日 | 滋賀百川




【犬上川と漂着するごみ】

犬上川 2003年7月撮影


  川波の うづの底ひに 身を沈め
  祈りはとは(永遠)の やすらけき村

              井伊文子
 

鈴鹿山脈を源流とする北谷川(きたやがわ)
と南谷川が、多賀町川相(かわない)で合流
し、犬上川となる。名神高速道路と交差する
付近で湖東平野に現れ北西流、中流域に扇状
地を形成する。彦根市南郊をかすめて琵琶湖
へ注ぐ。河口近くに滋賀県立大学がある。源
の谷は愛知川水系との分水嶺・角井峠から来
る。淵瀬連続する谷川で、一枚岩を削る滝も
見られる。源流域の山は植林杉のほか、谷筋
には潅木が生い茂る。百済寺甲地区は川沿い
の区画で細長い。県道188号百済寺甲上岸線が
沿う。


inukami_4

犬上ダムは昭和9年に着工し、戦争による中
断を経て昭和21年に完成した日本初の農業用
水専用コンクリートダム。警察の治安出動も
見た激しい水争いを契機に作られた。野鳥好
きにはヤマセミ観察ポイントとして知られる。
左写真は左岸に通じる道の「川」。谷を刻む
ほどではない流れはこのように導かれる。こ
の種の道は冠水凹凸道路という。ダムを出て
大杉川を入れたあと川は西に転じ、しばらく
すると北谷が合わさる。北谷に対し本流のほ
うを南谷と呼ぶこともある。



犬上川は谷口に扇状地を開く。伏流が激しく、
彦根に入ってすぐの地点でも涸れ川なことが
多い。中山道に架かる高宮橋。「無賃橋」の
名は天保年間に架けられた橋が課金されなか
ったことによる。


この頃になると6月下旬頃まで小鮎釣りで楽
しめる。家の近くにあるため早朝か夕暮れ時
に出かけ釣るが、ヤブ蚊よけに蚊取り線香は
必須アイテム。



河川は土砂が堆積し、カワヤナギやコゴメヤ
ナギ、タチヤナギが自生する。先日(29日)
は県立大学の春期公開講座、倉茂好匡(環境
科学部教授)の「琵琶湖とその周辺に散らば
るゴミの話」を受講。大変面白い話を聴かせ
ていただいた。特に、による気
象変動による集中豪雨(ゲリラ雨)による出
水が多くなると予測されるだけに犬上川沿岸
部より流入してくる大量ゴミの除去清掃は問
題となるだろう。ゴミが漂着する湖岸や水辺
は必ず景観劣化を促進させる。逆に、ゴミ1
つない景観は自律的に美化が進むというのが
これまでの経験だ。

 倉茂好匡(くらしげ よしまさ)





カワヤナギ

【犬上川と生態系】



湖岸から山まで川沿いに林が続いていて、そ
の林は生物達にとって山と平野をつなぐ緑の
回廊。大学の近くの林は特定植物群落のタブ
林で、その中にはキツネやタヌキが生息。ま
た、川には危急種のハリヨや希少種のビワマ
スををはじめとしたいろいろな魚が見られる。
特に春~夏にかけては、東は愛知、西は大阪
からも多くのアユ釣りの人が訪れる。



犬上川と洪水

Hannokihayasi.JPG

犬上川は河口付近の川幅が上流に比べて狭く、
下流に行くほど流下能力が小さくなっている。
全体計画区間を河口から東海道新幹線までの
6.3kmとし、平成2年の台風19号による洪水
経験(河口の犬上川橋が流失)から洪水防御
できるよう、100年に1回程度の頻度で発
生する洪水を安全に流下させることを目標と
して現在、特に流下能力の小さい開出今橋よ
り下流の整備が進めている。工事の実施にあ
たっては、自然環境を極力保全するため、犬
上川の特徴である河畔林(タブ林)を可能な
限り残す計画という。
タチヤナギ

 

クマノミズキ

ファイル:Fuwanoseki2.JPG

【犬上川と壬申の乱


 時、近江命山部王・蘇賀臣果安・巨勢臣
 比等、率數萬衆、將襲不破、而軍于犬上
 川濱。山部王爲蘇賀臣果安・巨勢臣比等
 見殺。由是亂、以軍不進。乃蘇賀臣果安、
 自犬上返、刺頚而死

             『日本書紀』             

古代史最大の内乱、壬申の乱が
勃発する。672
年7月、近江朝廷大友皇子側は、数万の大軍と
共に犬上川(滋賀;甲良~彦根~琵琶湖に流
れる川)のほとりに陣取る山部王。精鋭の将
軍達と大海人の軍を迎え撃つ。このとき、大
友軍の精鋭部隊が不破の北西側を奇襲するが、
大海人軍の出雲臣狛(いずものおみこま)部
隊の抵抗で撃退される。初めての戦いだった
という。その地は玉倉部村(たまくらべむら)
、滋賀の醒ヶ井か関が原ではと推測されてい
る。朝廷内では内紛が発生し、犬上川に陣取
る山部王が惨殺される。内紛に嫌気がさし、
大海人軍に投降者が相次ぎ、湖西側から大津
に向かって進撃した、高島軍辺りの山城(三
尾城)で朝廷軍と遭遇し撃破される。

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【出典】



(1)伏見碩二「
環境生態学科のひとつの歩み
  -犬上川からの視点で-」
(2)「
犬上川の人柱『お丸』」


宇曽川

2010年05月22日 | 滋賀百川


 曽根沼
 
宇曽川渓流

【宇曽川】



この季節になれば、職場仲間と恒例の宇曽
で小鮎を釣り、近くの薩摩の湖岸緑地で
バーベキューを楽しんでいるが、ことしは
諸用で忙しく断念する。その宇曽川は鈴鹿
山脈の前衛部(※高取山のふれあいの里)
に発し、東近江市と愛荘町との境界を成し
ながら北西に流れる。宇曽川ダムを経て湖
東平野を潤し、東海道新幹線・近江鉄道本
線がよぎる直前で岩倉川を合わせる。その
後やや北向きとなり、荒神山や曽根沼を西
に見ると程なく琵琶湖へ注ぐ。河口には宇
曽川漁港がある。



一級河川の起点は東近江市下一色町(旧湖
東町地区)
の押立山・内奥山、愛荘町松尾寺

(旧秦荘町地区)の秦川。全長約21km。河口
付近の荒神山周辺は自然が豊富で四季折々
の美しい姿を私たちに見せてくれる。

荒神山、曽根沼付近の植物分布は、約1万2
千年前の植生 花粉分析の結果から 曽根
沼の底には厚さ9mの泥炭層(ピート)が堆
積していて、この泥炭層には植物の花粉が
多数含まれ、この花粉を調べることにより、
約1万2千年前から現在にいたるこの付近の
植生の移り変わりを知ることができ、花粉
分析の結果から、亜高山性の針葉樹林(ウ
ラジロモミ・コメツガ・トウヒ・シラビソ
など現在は標高2,000mくらいの山地に分布)
が優占し、気候的に寒冷な時期(氷河期)
であったと推定されている
。 

Abies homolepis cones.jpg 裏白樅

 
それ以降は次第に気候が温暖になり、温帯
林(ミズナラ・ブナ)→暖帯林(アカガシ・
シイ)や河畔林(エノキ・ムクノキ)、ア
カマツ林へと植生が移り変わった。以前、
荒神山のやせ尾根にアカモノという植物が
生えていました。しかし現在は木が生い茂
ったために生育は確認されていません。
アカモノは亜高山帯に多く見られるツツジ
科の低木で、荒神山のアカモノはやせ尾根
という環境条件のきびしいところに生き残
った氷河期の遺存種だったと考えられてい
る。


荒神山岩相分布図




大橋利左衛門の偉業


明治時代の植林家(1853‐1888)。嘉永5年12
月25日生まれ。明治11年生地滋賀県日夏村
(彦根市)の戸長となり、はげ山となってい
た荒神山に植林をおこなう。20年日夏街道
を開通させる。県会議員をつとめた。明治
21年1月2日死去。37歳

【曽根沼周辺の動植物】

曽根沼のほとりにはヨシ、オギを主体とす
る草原が広い面積で広がっています。オギ
はヨシに比べて乾燥した環境を好むため、
土地のやや盛り上がったところに多く生育
しています。一方、水湿地にはヨシのほか
にマコモやウキヤガラなども生育している。
また、樹木は水辺にヤナギ類(アカメヤナ
ギなど)、それよりも後方の荒神山山麓の
湿地(水田跡)にはハンノキが見られる。



湿地でないところにはナラガシワやコナラ
などの落葉樹が多く見られる。内湖の干拓、
湖畔の埋め立て、河川改修、道路建設など
水辺の開発が進んだことによって、姿を消
しつつある水辺の植物が増え、ノウルシ・
ハンゲショウ・オギノツメ・コアゼガヤツ
リ・コバノカモメヅル・ミズオトギリ・シ
ョウブなどはこのような意味で、貴重な植
物になってきている。 



荒神山およびその周辺は、今は残り少なく
なった内湖の曽根沼・野田沼、荒神山山麓
を流れる宇曽川、田畑をとりまく用水路や
琵琶湖にも接し、彦根市産のトンボ類の多
くを観察できる。この地域には他の昆虫も
数多く見られる。


【小鮎釣り】



この季節になれば、琵琶湖ではどこでも小
鮎がつれ、休日ともなればポイントにはた
くさんの釣り人が集まる。素揚げ、天ぷら
で頂くがこれが美味い。飴炊きにして、熱
いうちに冷や酒で頂くのが格別で、意外と
知られていない。


  

【今後の記載予定

宇曽川 安食川 江面川 犬上川 野瀬川 
平田川 芹川 矢倉川 磯川 入江川 今
江川 天野川 びわだ川 土川 深町川 
五井戸川 長浜新川 薬師堂川 十一川 
米川 大井川 相撲川 川道川 姉川 田
川 中川 モロコ川 丁野木川 余呉川

※薄赤い文字の河川は終了。


江面川

2010年05月11日 | 滋賀百川




20091015琵琶湖.jpg

自宅が犬上川の下流に当たる宇尾町にあるため
毎年4月になると営農者が中心となり自治会で、
橋向かいの江面川の清掃を行っている(『
眼仁
奈と445号ホームラン
』)。この河川は、滋
賀県彦根市を流れ、琵琶湖に注ぎ彦根市街地西
郊の、宇曽川と犬上川の間の田園地帯に通じる
クリーク。野田沼と水路でつながる。農地の圃
場整理に伴い三面張り近代的な川である。





尚、野田沼は、曽根沼と同様かつては低湿地で
排水が不良であったため、1951年か
ら1968年に
かけて野田沼排水改良事業が実施されました。
戦前には、現在の大藪町から野田沼まで舟で行
けたということです。面積は約15ha。田園の用
排水として利用される内湖で、緑地を残しなが
ら周囲が整備されて、人々が気持ちよく集うこ
とができる場所。


彦根市甘呂町 東望  遠景の建物は滋賀県立大

【周辺の生態系】

野鳥類として、カンムリカイツブリ、ミサゴ、チョウヒ、
オオタカ、ハヤブサ、コハクチョウ、チュウサギ、トモ
エガモの希少種、危急種をはじめとして多くの野鳥
類や昆虫、植物、魚類が生息する豊かな田園都市
を形成しいる。





【滋賀県立大学】

  


江面川の周辺でひときわ目立つのが県立大学だ。
キャンパスは琵琶湖のほとりに立地し、JR南彦
根駅からはおよそ3kmの距離である。通学者は
たいていJR南彦根駅で下車し、バスか自転車で
通う。建築家の内井昭三によるマスター・アー
キテクト方式を取り入れて建築された学舎は「
環濠集落」をイメージしている。環濠には琵琶
湖の水が流れ込み、八幡瓦、穴太積みの石垣を
取り入れるなど学内で近江の歴史的な景観を見
いだすことができる。環濠にはアヒルや鴨が住
みつき大学のマスコット的存在となっている。
シンボルである時計塔は、その形から「えんぴ
つ塔」と親しみを込めて呼ばれている。全国の
大学で唯一の公共建築百選に選定されている。

平成22年度滋賀県立大学春期公開講座のお知らせ


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【リンク集】

※「滋賀県の川
※「
滋賀県の川(画像)」
※「
琵琶湖河川事務所
※「
AGUA
※「街並み情報@彦根市教育委員会
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 L'amour est bleu


ビオトープⅨ

2010年05月09日 | ビオトープ





ビオトープ計画管理で取り扱う主題

6)小川の設計・施工と育成管理

白山比め神社の延命水「白山延命水」

谷戸の左右や片側には水田に取水する小川が
設置され、グンジボタルや、小川から水口に
行き来するドジョウやメダカなど、多種の生
物が生息する。しかし、コンタリートで護岸
や川底を回め自然河床を失った所、手入れざ
れず立木や高茎草本で、水面が閉鎖し、砂泥
や倒木などの控積で流路が崩壊した所もある。
生物の生息地を,1復させるためには、人工河
床には植生を形成させ、樹冠などで閉鎖した
小川では植生管理を再開する必要がある。



❶ 計画設計

Geothelphusa dehaani 01.jpg サワガニ

現地に形成する流路内の瀬や溜まり、砂州な
どの形状、水質、土手植生の初期施工、育成
管理について検討を行う。動植物は光に反応
するため夜間照明を設置しない。

(1)小川の育成計画モデル



自然河床を持つ小川では砂州 瀬、淵〈溜ま
り) が流下する水流の力によつて自然形成さ
れる。流速毎秒10~40cm水中の溶存酸素6~
10mg/l、Ph7~3
を示す中性から弱アルカリ性
BOD5 2~ 3mg/l 程度の小川の場合、

Nipponocypris temminckii.jpg

●淵:アブラムシやカワムツなどの点類ケン
 ジボタルやコオニヤンマ、ヘビトンボなど
 の幼虫カワニナが(ゲンジボタルの幼虫の
 観)生息する。
●砂州の水際付近:ダビドサナエオジロサ
 ナエオナガサナエなどの幼虫が生息する。
●クサヨシなどの抽水植物が生育する淵や溜
 り:
カワトンボ類(ミヤマカワトラボ、ハ
 グロトンポ、カワトンポなど)や
ドンコ
 
カワヨシノボリなどの魚類、サワガニが生
 息する。
●瀬:
トビゲラカワゲラの幼虫サワガニの
 亜成体、サワガニなどが生息する。



❷ 施工伽工準備、基盤整備のポイント

初期施工の適期は、生物活動が鈍る晩秋から
冬季。流下水は砂州や溜まり、瀬を流路に自
然形成する。勾配、流量などから各部位の形
成箇所を予測し基盤整備に活用。



(1)植生によって閉鎖した小川修復

初期施工では、立木伐採、水際に密生化した
ヨシやササ類の刈取りと除根を実施。この時、
水面に日陰を落とす立木を部分的に残存させ
る。

(2)素堀り水路小川化

流通が早い場合や夏期に瀬切れしやすい場合
には、魚類の遡上を阻害しない程度に、低い
段差を土のうなどにより形成し、水域を形成
する。

(3)自然河床が消失した小川修復

植生土のうや布団籠を組み合わせ、出水時に
流亡しない植生の定着基盤を設置し、水生生
物が生息する砂州や溜まりなどを自然形成さ
せる。


●河床への土豪設置による構造回復

コンクリート3面張りの水路では河床に土の
うなどを並べ、瀬と淵、砂州が自然形成され
るよう骨組みを入れる。

❸ 育成管理

小川の沿岸に育成する植生は、タイプ毎に現
地で竹串など土面にさして区分けする。トン
ボやホタル成虫などの採餌場、避難場を形成
するため、植生は、地上に凹型の空間構造
が形成されるよう各タイプを組み合わせ配置
する。年1~2回土手の車刈りを維続し、4~5
年に1回推積した砂泥の掃除と搬出を継続する。
積堆砂泥は、付着した水生生物を水域に戻し
てから搬出処分する。沿岸の立木については、
小川への太陽光の入射と水面上の空間確保の
ため、2~ 3年に1回枚打ちや間伐を維持する。
立木の若返りを図るとともに、周辺環境に対
する影響に配慮し、専門技術者に依頼しなく
ても伐採可能な段階で萌芽更新させ、樹高や
枝張りの拡大を抑える。伐採周期は樹種によ
っても異なるが概ね 5~10年の間隔である。

7)溜池の設計・施工と育成管理



溜池の多くは湛漑用水を得るため、谷戸の源
頭部などに設置されている。耕作放業などで
使用が停止した池では、取り巻く立木の樹冠
や杖葉が水面を覆い、暗く水温が上がらず、
上空から水面を確認できないこともある。水
底には落葉落枝や砂泥が堆積し水位低下で干
上がる池もある。ヨシやハンノキなどが定着
し、根系が池底の道水層(粘上層)を破り漏水
する池も多い。一方、イシガメやメダカなど
の生物やヒツジグサやマルバオモダカの絶減
危惧種が確認されることもある。

❶ 設計(施工準備、基盤整備の実際施工のポイン)

初年は早春~秋季の事前調査で動植物を確認
する。現地の集水量や土質、生息する生物に
よって施工の途中段階での設計変更が起こる
ため、底上、水位、エコトーンの植化、周辺
植生、導水同、排水日などに関する施工内容
は概略設計にとどめる。



❷ 施工の実際

絶減危慎種などは事前に採取して一時保管。
竣工後に適切な場所に放流や植栽する。施工
適期は晩秋から冬季。施工重機など搬入時に
は現地の表土や動植物の保全に努める。


 
エコトーン

(1)対象地の概略設計

加工現場では、現地の微地形や植生、上質、
水質、時期毎に変化する湧水量等に合わせて
概略設計図の詳細を検討し、その結果をもと
に作り込んでいく。源頭部からの湧水は床掘
り中の溜池に入ると、ぬかるみをつくリユン
ボの作業に支障をきたす。そのため、湧水は、
流入前に、下方右最上段にポンプとホースを
使って排水すると湖水にはならず、下流の沢
を汚すこともない。沿岸のエコトーン形成用
の上のうの配置、積み上げる高さは、水域の
修復が進み、平常水位における水際線が明ら
かになってから、現地で決める。

❸ 育成管理

動植物や水位などをモニタリング調査し、堆
積した落葉落技や砂泥、土手植生、存置した
立木、導水・排水口などに対する定期的な管
理が必要。土手植生の形成を図るためには、
少なくとも年2回、夏季と秋季の刈払いと刈
りくずの搬出作業を行なう。

ブラックバス

※特定外来種、要注意生物
代表的な水域の対象生物

Cleaned-Illustration Myriophyllum spicatum.jpg

●水生生物:ブラックバス、プルーギル、ウシ
 ガエル、アメリカザリガニ
●水生植物:ホテイアオイ、オオフサモ、カナ
 ダモ類、ミズヒマワリなど

Gymnocoronis spilanthoides1.jpg Water hyacinth.jpg

対象地の生態系形成を阻害し、在来種の摂食
による衰退を防ぐために、侵入を防止。侵入
した場合は徹底した駆除を継続する必要があ
る。

Wasserpest.jpg

※「自然環境シミュレータビオトープをつくろう
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【注釈】

生物多様性の実現領域としての修景の設計と
施工の基本的な知識を俯瞰してきたが、今回
の考察を持って一応のけじめとする。自然背
景の奥深さを感慨するものの、「修景」のや
り方についてある種の違和感を持ってここま
で来たが、最後まではそれは払拭出来なかっ
た。そのことに関してはまた考察してみたい。
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ビオトープ考Ⅷ

2010年05月06日 | ビオトープ





5)田んぼの設計・施工と育成管理

❸ 生きものを育む伝統的な稲作

近年、多くの稲作は、化学農業で生態系を
壊し、化学肥料で有機物の循環を断ち切っ
た水出や、大型コンバインを入れ稲株の分
げつを抑えるため、初夏の中干しで耕上を
乾かす水田、さらに圃場整備で暗渠や排水
側構が入り多くの水生生物を追い出した水
田で実施される。これに対し昭和30年代ま
で各地で行われた伝統稲作は、水田にカエ
ルやドジョウ、トンポ、ホタルなどの生物
を育んだ。現代的視点から当時の農法に学
び、安全安心な米を生産し生物の生息地を
再生する。

1)古くからの伝統的な稲作

・田の土を砕いて緑肥などを鋤き込む(田起こし)。
・圃場を整え田植えに備える(代掻き)。
・苗代(なわしろ/なえしろ)に稲の種・
 種籾をまき、発芽させる(籾撒き)。
・苗代にてある程度育った稲を本田(圃場)
 に移植する(田植え)。
・定期的な雑草取り、肥料散布等を行う。
・稲が実ったら刈り取る(稲刈り)。
・稲木で天日干しにし乾燥させる。
 
 ※稲架(馳)を使用したハセ掛け、棒杭
  を使用したホニオ掛けなど

・脱穀を行う(籾=もみにする)。
・籾摺り(もみすり)を行う(玄米にする)。
・精白(搗精)を行う(白米にする)。

2)稲苗の育成

田植えに先立ち、耕転した水日に導水して
育苗用の苗代を設置。当期の湛水はトノサ
マガエルや越冬性のホソミオツネントンボ
などの産卵に重要。

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❹ 湿地植物群落の育成管理

施工のポイントは、水田跡などですでに該
当する植物群落が定着している場所を選定
とすることにある。植生の育成管理では、
定着している水生生物の生息環境を現地で
狩続させながら植生管理を行う必要がある。
このため、現地では区画を決め、刈取り跡、
伐採跡、除草跡での植物の再生が進んでか
ら、別区画の植生を処理する。刈り屑など
は搬出処分し、堆肥やエコスタックなどに
リサイクルする。

Hannokihayasi.JPG ハンノキ

1)ハンノキ、ヤナギ林

●育成管理
10~ 15年毎に1回程度、萌芽更新で若返り
が必要。

●主な生息生物
ミドリシジミやコムラサキなどチョウ、サ
ラサヤンマ、(オオ)エゾトンボなどの生息
地育成。

2)ヨシなど高茎植物群

●育成管理

数年~年1回毎に冬季刈取りを継続。茎丈
が高く見通しがきかない場合には、ポール
などで入り日がわかるよう目印を打つ。ま
た、ぬかるんで作業の障害になる場合には、
木板を敷き、その上に乗って作業を進める。
この木板は移動用の歩行路、希少な動植物
が生息する場合には、湿地の環境構造を歩
行圧から守る上でも効果がある。

Blyxa echinosperma et al.JPG スブタ

3)オモダカ・コナギなど植物群生

クリックすると新しいウィンドウで開きます オモダカ

●育成管理
耕土を耕転してくぼみを作り、最大で10cm
深程度に湛水する。埋土種子を中心に草丈
0.8m以下の中低茎の湿地植物が群在する環
境条件を育成管理する。

Vaginalis.jpg コナギ

●主な生息生物
カエル類、ミズカマキリ類、コオイムシ類
ゲンゴロウ類、ショウジョウトンボ、シオ
カラトンボなどの生息地育成。類、アカハ
ライモリなどの生息地になる可能性もある。
水生植物のスプタやミズアオイ、ミズオオ
バコなど希少種が再生する可能性があり、
個別別に保全対策が求められる。

 ミズカマキリ

イグサのドイツ産基本変種 イグサ

4)ミツソバ・イなど植物群生

Mizosoba 06d0169csv.jpg ミゾソバ

●育成管理
1~2年毎に1回、区画を違えて除草は、除
草屑に付着した水生々物を水域に戻してか
ら処分。

卵塊を背負った雄 コオイムシ

●主な生息生物
カエル類、ミズカマキリ類、コオイムシ類、
ゲンゴロウ類、ヘイケポタルなど、水生生
物の生息地育成。サラサヤンマ、ヒメタイ
コウチなど希少種の生息地が再生する可能
性があり、個別に保全対策が求められる。

Sagisou2.jpg 鷺草

5)サギソウ、トキソウなど植物群落

Pogonia japonica.JPG 朱鷺草

●育成管理
刈払いなどで高茎草本や低木類を抑制し、
湧水地をはじめ貧栄養な湿地に自生するト
キソウやモウセンゴケなどの群落を再生す
る。

 キイトトンボ

●主な生息生物

 コサナエ
 サラサヤンマ

ヘイケポタル、キイトトンボ、コサナエ、
ハラビロトンポ、ハッチョウトンポなどの
生息地育成。希少種のサラサヤンマ、ヒメ
タイヨウチなど水生生物やモウセンゴケ類、
ミミカキグサ類なども混生する可能性があ
り、個別に保全対策が求められる。

 ハラビロトンポ
Hacchoutombo 20080811.jpg ハッチョウトンポ

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【温暖化による米作収量変動予測】



植物は、二酸化炭素と水を材料にして光合
成を行うことによって生きている。材料と
なる二酸化炭素の濃度が上昇すると光合成
が活発になるため、植物の成長量は増える
と考えられている。二酸化炭素濃度が高ま
ると、作物の成長や収量も増加するのだろ
うか?この疑問に農業環境技術研究所(大
気環境研究領域)酒井英光は興味深い実験
報告を常陽新聞連載「ふしぎを追って」で
行っている(「環境変動:大気中の二酸化
炭素濃度の上昇とイネ」)。

実験水田(写真) 農家水田での二酸化炭素濃度増加実験の様子

(1)温室や人工気象室を使ってこれまで
に行われたさまざまな作物の実験結果を平
均すると、二酸化炭素濃度が2倍になると
収量は約33%増加するが、実際の水田でど
の程度増収があるかは不明だった(2)

際の農家水田の一画に、囲いのない条件で
二酸化炭素を水田に吹き込み、二酸化炭素
濃度を周囲よりも 200 ppm 増加させてイネ
を栽培。3年間の実験の結果、イネの収量
は平均で、14%程度増加することが分った。
(3)
他の作物の増収効果と比較すると高
くない(4)イネの成長量に及ぼす二酸化
炭素濃度増加の効果は、イネが若い時期は
30%程度と大きいが、成長ともに効果が低
下(5)しかし、増加効果の低下を小さく
することができれば、二酸化炭素濃度の増
加による増収効果をさらに高められるとし
ている。

Nepa hoffmanni.jpg ヒメタイコウチ