地域循環共生概論 59

2022年09月16日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.9.15|更新日:


□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅴ
8月5日、欧州最大の出力を誇るウクライナ中南部ザポリ
ージャ原発
が攻撃を受けると事変が発生(ブログ『極東極
楽』2022.8.9
参照)。つづく、16日には、今年8月7日に
米議会上院、そして12日に下院は米国で過去最大規模の気
候変動対策を盛り込んだ「インフレ抑制法案 ( Inflation
Reduction Act: IRA
)」------ 2022年のインフレ削減法は、
クリーン エネルギーを促進しながら、 赤字の削減、処方
薬の価格の引き下げ、国内のエネルギー生産への投資によ
り、インフレを抑制することを目的とした米国の法律 ---
が可決され、16日、バイデン大統領が署名し成立。「米史
上最大の気候変動対策」と呼ばれるこの法律は、2030年ま
でに温室効果ガスの排出量を2005年に比べて40%削減を目
指し、今後10年間で、再生可能エネルギーのインフラ改善、
クリーンエネルギー設備、電気自動車の導入を促進するた
めに約3600億ドルもの予算が割り当てられる。さらに、今


Credit:AP

9月9日、東京都は新築住宅などに太陽光発電パネルの設置
を義務付ける新たな制度について2025年4月の施行を 目指
すことを公表しており、加えて、米国・中国・欧州が電気
自動車普及を目指す『EV元年』がスタートており、「環
境リスク」の調査・研究(➲非営利の『環境工学研究所
WEEF』的なウェブ事務所)の負担が倍増し、やっと本シ
リーズの掲載再開にこぎつける。

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第7章 コンクリートの除染の基礎と汚染廃棄物の
       最終処分へのセメント・コンクリート技術の活用
7-4 Csの不溶化と飛灰のセメント固型化
7-4-1 はじめに
 前節で述べたように、飛灰に含まれる放射性Csの多くは
水溶性なので、吸湿や結露、あるいは外部からの水の流入
により飛灰に水が浸入すると、これが周囲に漏出し、放射
能汚染を引き起こす可能性がある。これを防ぐにはCsに対
して選択係数の高いイオン交換体を飛灰に加え、Csをこれ
に吸着させることが効果的である。Csはイオン半径が大き
く、従って水中ではイオン半径が実質的に最小のイオンと
なるため、イオン交換体に対する選択係数が非常に大きく、
吸着が容易なイオンです。しかし飛灰中には水和イオン半
径の比較的小さいカリウムが多量に含まれるため、これが
Csイオンの吸着を阻害する。カリウムイオンが吸着阻害し
ないイオン交換体としてはプルシアンブルーがよく知られ
ているが、飛灰には塩化水素の中和のために加えた水酸化
カルシウムが多量に含まれているので、これがプルシアン
ブルーを分解してしまう。このため飛灰中の放射性Cs不溶
化法としては、飛灰の洗浄液を中和処理し、その後プルシ
アンブルーに通して吸着させる手法がとられた。高アルカ
リ性溶液中で安定、かつ高濃度のカリウムイオン共存下で
選択的にCsイオンを吸着できる、安価かつ少量で有効なイ
オン交換体があれば、飛灰に直接イオン交換体の懸濁液を
加えるだけで、放射性Csの不溶化が達成できる。また不溶
化処理した飛灰をセメント固型化し、地中に埋没すること
も可能となるという。


7-7-2 固定化材の探索 
まず、適切な固定化剤を探索すべく、いくつかの材料につ
いて、飛灰漏出液を模した化 学組成を有する溶液中での固
定化剤のCs固定化能を調べる。飛灰の一例として、可溶性
塩類として10-4 mol/kg以下のCsClと、各々2mol/kg、1mol
/kg、1mol/kg程度のCaCl2、NaC、KCl、および難溶性の Ca
(OH)2 が含まれていた。よって模擬溶液は、上記組成比の
塩類と過剰量のCa(OH)2に適当量の水を加えて作製した。
CaCl2共存下での溶液のpHは、溶解度積の関係より、pH =
11.9 -0.5log[Ca2+] となる。なお、実際の放射能汚染飛
灰では、これに極微量のCs-134とCs-137が加わることにな
るが、その量は元来含まれている非放射性Csの量に比べ無
視できる。模擬溶液に固定化剤あるいは固定化剤の懸濁液
を加えて撹拌混合後、1昼夜静置し、0.2μmフィルターを
通し上澄み液を吸引濾過し てCsの定量分析用試料とした。
Csの定量は、非放射性Csの場合はICP分析で、放射性  Cs
を用いる場合には NaIシンチレータによるγ線測定により
行った。一部は、実際の放射能汚染飛灰を用いて効果を確
かめた。



Csをイオン吸着する固定化剤としては、石炭フライアッシ
ュなど様々な材料が知られている
。これらの固定化剤の焼
却飛灰に対する有効性を知るため、飛灰模擬溶液に各種固
定化剤を添加し、24時間振盪後、溶液を吸引濾過し、溶液
組成をICP(誘導結合プラズマ発 光)分析しました(表7.4.1)。
石炭フライアッシュはCsを強く吸着することが報告されて
いるが、フライアッシュセメントペーストに固定化能は見
いだせていない。これは石炭フラ イアッシュがCsを特異
吸着しないため、共存するKイオンなどで吸着サイトが占
有されしまったことによる。


同様の現象は高炉セメントペーストや炭酸化セメントペー
ストにも見られた。ベントナイト(モンモリロナイト)やゼ
オライトの一種であるモルデナイトはCs の 固定化に有効
ですが、飛灰と同量程度添加しないとCsの漏出を阻止でき
ない。プルシアンブルーは多量のKイオン存在下でも選択
的にCsイオンを吸着することが知られている。しかしアル
カリ性の飛灰漏出液中では分解し、その固定化能は完全に
失われる

7-4-3 固型化の効果
8k~100kBq/kg の溶出性の高い放射性 Cs を含有する焼却
飛灰等について、管理型相当 の処分場で処分するには、
セメント固型化が求められている。Cs固定以外に、セメン
ト 固型化には、放射性 Cs と水との接触を低減させる効
果があり、8kBq/kg 超の高濃度に汚染 されたキレート処
理溶融飛灰をセメント固型化し、種々の溶出試験により溶
出抑制効果を検証した。固型化に用いたキレート処理溶融
飛灰(以下、キレート処理灰。64,000Bq/kg)を用いて、砕
石骨材有り無しの2種類の固型化体を作製しました。まず
骨材無しの作製では、キレー ト処理物と高炉セメント B
を1:1で混合、金型(φ115×300mm)に水を噴霧しながら
数回に分けて層状に充填し、プレス機(加圧能力:25t)を
用いて圧縮し、膨張を防ぐ蓋をした (圧密成型)。最終的
に水セメント比は 0.19。次に砕石有りの作製では、砕石
無しと同様にキレート処理物とセメントを混ぜ、金型に数
回に分けて充填する際に、つなぎ目に 20mm程度の砕石を
置いて圧密成型した。水セメント比は0.23。以降、砕石無
しの固型化体を C1、砕石有りの固型化体を C2とする。圧
密成型後、金型は室温で保管し、C1では 7日後、C2では
19 日後に脱型し、その後 C1 は 2 週間、C2 は 7 日間気
中養生した。溶出試験は、キレート処理灰と固化体(C1,C2
)を JISK0058-1 に準じて、液固比;10、撹 拌時間;6 時
間の条件で、溶媒を蒸留水または人工海水を用いて行った
(有姿撹拌試験)。 結果を図 7.4.1 と図 7.4.2 に示す。
キレート処理灰の 134Cs と 137Cs の溶出率は 90% 程度
であり、溶出性が高い結果である。放射性 Cs と安定 Cs、
その他の無機イオン類は同程の溶出率であり、溶媒の違い
による溶出率の差は見られませんでした。一方、固型化体
からの放射性 Cs 溶出率は、C1 で 4%、C2 で 1%未満であ
り、セメント固型化による溶出率の低減が確認された。タ
ンクリーチング試験は供試体を有姿のまま溶媒中に静置す
る溶出試験である。浸漬日数を変え、溶媒として蒸留水と
人工海水を用いて調べた。試験結果を図 7.4.3 に示す。
放射性 Cs や無機イオンの溶出率は浸漬日数が伸びるほど
大きくなり同じ挙動を示した。最終的に 32日間の浸漬に
よる放射性 Cs の溶出率は 9~17%程度で、有姿撹拌試験
の結果よりも大きくなったが、固形化により溶出速度を低
減させることができることが示された。

7-4-4 より効果的なCs固定化材
各種の材料の使用やセメント固型化により、放射性Csの溶
出は一定程度抑制できることが分かったが、より効率的な
抑制方法が望まれる。フェロシアン化鉄が高pHを除いて高
効率でCs固定することに着目しさらに検討した。フェロシ
アン 化カリウムと様々な遷移金 属塩を混合すると、プル
シ アンブルー類似の不溶性イオン交換体が生じるが、これ
らもまた、特異的にCs イオンを吸着しす。よってアルカリ
雰囲気下で安定 なプルシアンブルー類似化合物があれば、
飛灰中の放射性Csを不溶化できることとなる。マンガンか
ら亜鉛にわたる遷移金属のプルシアンブルー類似化合物の
懸濁液をCsの133 倍等量加えた際のCs固定化能を表7.4.2
に示す。Csを含む溶液がアルカリ性(pH=12.7、 Ca(OH)2
飽和状態)であっても懸濁液が中性の場合は、Mn、Coは良
好なCs固定化能を示すが、懸濁液がアルカリ性になると固
定化能が低下しする。これに対してNiでは、懸濁液がアル
カリ性になってもCs固定化能は低下しません。よってフェ
ロシアン化ニッケル (NiFeCN)は飛灰からの放射性Csの溶
出阻止に有効であると推論されます。実際、放射能汚染飛
灰に1kg当たり0.01molを加えたところ、無添加の場合61%
であった放射性Csの溶出率が0%に低下した。よって以後
NiFeCNについて、そのCsイオン吸着特性を詳細に述べる。
 Csイオンに加えて飽和濃度のCa(OH)2とNaCI、KCI、およ
びCaC12を含む溶液に、フエロシアン化カジウムとこれの
1.5倍のモル比の塩化ニッケルを加えて作ったNiFeCN懸濁波
を添加した際のCs除去率とNiFeCNの濃度との関係を図7.4.4
に示す。溶液全量に対してのNiFeCNの濃度が2mM以下にな
るとCsの除去が不完全になるように見えるがこれはNiFeCN
の量が不足するためではなく、Csを吸着したNiFeCNの沈降
が遅くなるため、0.2μmのフィルターを通して放射線測定溶
液中に放射性Csが混入することによる。このためCsイオン
濃度と除去率の間に相関は見られない。
 NiFeCNの量を一定とし、Csイオン濃度を増加した際のCs
イオン濃度と除去率との関係を図7.4.5に示す。Csに対する
NiFeCNのモル比が1以上あれば、KイオンやNaイオン、Caイ
オンが多量にあってもNiFeCNはCsをほぼ100%吸着する。
NiFeCN懸濁液作製の際のFe(CN)62'とNi2゛のモル比を1:Iか
ら1:1.5にしてもCs除去率に変化は見られないことから、
NiFeCNの作製に要するフエロシアンイオンとニッケルイオ
ンのモル比は1:1でよいことが分かるす。飛灰には多くて
10ppm程度のcsが含まれているので、放射性セシウム溶出防
止に必要なNiFeCNは、飛灰1トン当たりNiFe(CN)診重量換
算で20g以ト.あればよいということになる。
 NiFeCNのアルカリ耐性を表7.4.3に示す.NiFeCNはpH=14
に近づくと分解することが知られているが、中性のNiFeCN
懸濁液をpH>14の強アルカリ溶液に添加しても、cs固定化能
に変化はない。また懸濁液をpHニ14にしてもかなりのcs固定
化能を示します。これはNiFeCNのアルカリ耐性がCsを吸着
することによって著しく増加したためと考えられる。



7-4-5 まとめ
 放射性Csの処分の難しい点は、安定Csも含めて、焼却飛
灰からの溶出率が悪い。溶出しないのであれば、遮蔽をき
ちんと行うだけで安全に処分できる。Csの溶出を抑制する
方法として、固定化とセメント固型化を検討した。その結
果、フェロシアン化ニッケルを1トンあたり20gという少量
用いることで、セメントが生成する商いアルカリ環境でも
安定してCsの溶出を防止できることを示した。セメント固
型化は他の重金属などの溶出防止にも効果的であるので、
フェロシアン化ニッケルを飛灰に混合し、さらにセメント
旧型化することで安全な可溶性Csを含有する汚染廃棄物の
最終処分が出来ると期待できる。


【関連技術情報】
・放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分 国立環

  境研究所 2014.4.14 
    https://www.slideshare.net/3tarou/ss-33956703                   
                    この項つづく
【エピソード】







図 気候変動リスクの認識 日本の水利の現状と気象変動
 リスクの認識
□ 地球温暖化と琵琶湖
 
琵琶湖の水不足27年前にも「大渇水
昨年11月。滋賀県の三日月知事が懸念を示した、琵琶湖の
水の量を示す「水位」。16日時点でマイナス63センチと14
年ぶりの低い水準となる。過去には、1994年に水位がマイ
ナス123センチに達し、関西各地へ送られる水の量を2割減
らす取水制限が行われている。
琵琶湖の水不足 27年前にも「大渇水」【関西テレビ神
崎デスクの「これホンマ言いたかってん」】2021/11/16 -
YouTube
  
今月5日、TBSテレビは「"水位は史上最低を更新"アメリカ
で加速する「大規模干ばつ」 地下水の利用急増も」を報
じている。
via https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/143499?display=1
干ばつの頻度と期間は、2000年以降、世界全体で29%増加。
* 2
050年までに干ばつが世界人口の75%以上に影響を与える
可能性があることや、その他の気候変動が原因で2億1,500
万人以上が家を追われる可能性があることが指摘されてい
る。via グリーンピース・ジャパン 2022.8.19
国連砂漠化防止条約(UNCCD)の新しい報告書によると、人
類は干ばつの影響により「岐路に立っている。早急に、あ
らゆる手段を用いて緩和を加速する必要がある」と発表。
因みに、米国の43%以上が7月末に干ばつに陥っていたこと
が、*米国政府の全米統合干ばつ情報システムによって明ら
かになった。2022年8月時点で1億3,000万人以上の人々が干
ばつの影響を受けており、2億2,900万エーカー分(北海道14
個分以上の面積)の作物に被害が生じているという。国連に
よると、米国経済は、干ばつと関連する作物の不作により、
推定 2億4,900万ポンド(406億3,300万円)を失っている。*
そこでは、さまざまな要因のなかでもっとも大きな原因の
一つが、人間活動による温室効果ガスの排出が影響し「地
球温暖化」で地球の平均気温が上であると指摘されている。




図2 今津沖中央(水深90m)の観測定点における湖底直
上1㍍の用損酸素濃度の推移


[PDF] 7. 琵琶湖における将来予測・影響評価 - 環境省
                    この項つづく
❏ 報告事項
昨夜、佐々木さんにハザードマップ(洪水/浸水)の対策の
ことで連絡を入れる(改築か
vs.転居か)。コロナの弱毒
化。ピーク・アウト(パンデミックの終息視野に コロナ
死者、初期以来の低水準 WHO,2022.9.13)にあわせ新年会
を企画してみてはとの打診。準備することを回答する。昨
年亡くなられた谷口さんの弔いのことや、今井さんが亡く
なったことなどを報告する。
                     幹事敬白




【脚注及びリンク】
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