COP26と琵琶湖

2021年12月22日 | 防災と琵琶湖


作成日:2021.12.22|更新日:
地域循環共生圏概論㉞

COP26合意の成果は
今年10月31日~11月13日にかけ、英国スコットランド・
グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回
締約国会議 (COP26)は、コロナ禍の開催ということも
あり、従来とは異なる様式で気候変動に関する議論が
行われ、合意を得るための交渉が難航、会期を1日延
長して決着。コロナ禍が収束しきらない中での開催に
もかかわらず、国連の発表では参加登録者数が4万人
を超え、過去最大の参加人数であった。日本も岸田総
理大臣が滞在わずか半日足らずの強行日程で参加し、
途上国の削減対策への資金支援を表明している。



 「交渉内」の成果
「グラスゴー気候合意」と題された決定の中で特に注目
すべきポイントは3つ。
1.産業革命前に比べて平均気温の上昇を1.5℃に抑
 え
る努力を追求することを決意する
➲6年前に採択された気候変動対策の国際的な枠組
 み「パリ協定」では、主な目標は「2℃未満」とされ、
 「1.5℃」は努力目標にすぎなかった。
2.グラスゴー気候合意は、各国に対し、それぞれの
 2030年目標をもう一度来年末までに「見直し、強化
 す
こと」を要請している。
3.石炭火力発電の段階的削減(phasedown)及び化石
 燃料への補助金階的廃止(phase-out)が呼びかけら
 れている。



以上のごとく、現場の雰囲気を肌で感じたWWFジャ
パン気候エネルギー・海洋水産室長の山岸尚之氏に
COP26の振り返りと今後の方向性などについての寄稿
(季刊環境ビジネス 2022 WIN)によると、通常、COP
の決定では、各国の主権尊重のため、エネルギー源の
選択のような内政に踏み込んだ内容は避けられるのが
常であったが、①この合意では、石炭火発について、但
し書きが付きつつも「減らしていくこと」の方向性が明
確に謳われたこと、②「交渉内」のもう一つ重要な成果
として、「パリ協定のルールブック」と呼ばれる、パリ
協定の実施細則のうち、積み残されていた部分につい
ての合意が完成したこと。③中でも注目の、パリ協定6
条にかかわる、「市場メカニズム」ルールの合意----京
都議定書の際のクリーン開発メカニズム(CDM)のように、
他国で行った削減事業からの削減量をクレジットとし
て得た国が、それを自国での削減計上できる仕組みで
は、CDMからの古いクレジット利用にどの程度制限をか
けるかという問題、削減事業実施した国と、クレジッ
トを使用した国との問で二重に削減量が使われてしま
うことを避けるための「相当調整」と呼ばれる仕組みな
ど----重要な仕組みの交渉が難航したものの合意が成
立している。
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山岸尚之氏 
概歴:1997年に立命館大学国際関係学部入学。2001年
マサチューセッツ州、ボストン大学大学院にて、国際
関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月
に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担
当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に
携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動など
を担当。2011年より気候変動・エネルギーグループリ
ーダー。また、内閣府・実践キャリア・アップ戦略・
カーボンマネージャーワーキング・グループ委員。
2012年よりカーボン・オフセット制度登録認証委員。

 ボランタリークレジットとは

 交渉外の成果
「交渉外」でも、様々な動きの成果を挙げると、
1.新規で「ネットゼロ」目標を発表した国があった。
 COP26では、序盤の11月1日・2日の2日間、世界の
 120カ国の首脳のワールドリーダーズ・サミットが開
 催され、一番話題となったのはインド・モディ首相
 で、2070年までにネットゼロを目指すると宣言。この
 他にも、ベトナムが2050年までに、タイが2065年ま
 でに、ネパールが2045年までにそれぞれネットゼロ
 を目指す宣言をした。研究機関等によれば、これら
 の新規のネットゼロ目標の宣言を含めると、世界の
 140カ国が、何らかの形でネットゼロ目標を掲げる。
 尚、岸田首相がスピーチをした日に、国際環境NOG
  から日本が「化石賞」を受賞する「反動性」が皮肉に
 も評価された。
2.議長国イギリスの呼びかけによる2つの石炭・化
 石燃料に関する宣言、PPCA(脱石炭連盟)のメンバー
 数の増加、BOGA(石油・ガスからの脱却連盟)などの
 発表。石炭だけでなく、石油・ガスからの脱却の方
 向を目指すことなどを宣言。これらの一連の動きが
 示しているのは、石炭火発の廃止方向性は国際的な既
 定路線であり、今後はそれら以外の分野にどのよう
 に朝鮮するかのフェーズに入ってきているが。日本
 はいずれにも不参加。
3.GFANZ(ネットゼロに向けたグラスゴー金融連盟)と
 いう名のイニシアティブの発足である。GFANZは、銀
 行、機関投資家、資産運用機関、保険会社などの種
 類ごとにあるネットゼロに向けたイニシアティブを
 集めた連合体、450以上の金融機関がいずれかのイニ
 シアティブを通じて参加。COP26が正式なお披露目
 の機会になった。日本の大手金融機関も多数参加し
 ており、実際にCOP26の現場にも日本の金融機関の姿
 があった。

4.この他にも、普通自動車やバンなどの2040年まで
 のゼロエミッション化を目指す宣言や、2030年までに
 森林破壊をゼロにする宣言、国際航空からの排出量
 を2050年までのネットゼロを目指す宣言など、実に
 様々な宣言が発表された。

 COP後の脱炭素化潮流
グラスゴー気候合意の成立は、充分とは言えないまで
も、1.5℃目標への国際的な「決意」を示し、それに合わ
せて各国の2030年目標の継続的な見直し・強化を打ち
出したという意味で大きな一歩。問題は、それらに向
け現実の各国の取組みがまだまだ追いついていない、
他方で、交渉外で示されたネットゼロヘ向けた様々な
宣言は、単なる宣言を超え、政府以外の大手企業や機
関による行動が開始。日本の衆院選において気候変動
がさして大きな争点にならなかった。果たしてこの潮
流を見誤ることなく、先進性を発揮していけるかが問
われていると山岸尚之氏と報告する。
via 季刊環境ビジネス2022年WI
                  この項つづく
【エピソード】




お知らせ2件:
オムロン株の第六波が心配されております。従いま
して、本年度と同様に新年会(総会・宴会)は勝手な
がら中止させていただきます。

【訃報】
今年5月20日、彦根市民の飲み水を守る会の谷口三
平氏が永眠されました。享年九十。
11月13日、佐
々木浩氏の電話により知らされ、20日(土)9時30
分過ぎ、ご自宅へ彼女と二人で弔問。18年前(2003年)
検査で腎臓機能低下と診断され、十年ごろ前から透
析医療を受けられておられましたが、透析医療を拒絶
し、20日に眠るように尾末町のご自宅で他界された
との美智子奥様お話でした。何事も前向きで明るく振
る舞われ、巨星落つもなお暖かい数多くの追憶に包ま
れております。              合掌

 
谷口宅の在りし日の思い出

 【脚注及びリンク】
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