ビオトープ考Ⅶ

2010年04月27日 | ビオトープ







❸マント・ソデ群落の設計・施工・育成管理



マント群落 ソデ群落とは、樹林の林縁部に成
立する植物群落を指す。樹林に述続するマント
群落は有刺低木やアカメガシワやヌルデなどの
先駆性植物、フジ類やクズなどのツル植物など
からなる。この外縁にススキなどの車本類を中
心とするソデ群落が成立する。村林内の気象条
件を安定させ哺乳類などの侵入、機乱を防ぐ役
割を持つ。

Rhus javanica var chinensis2.jpg ヌルデ

1)初期の設計施工

【時期】植物が新芽の展開を終える5月頃
【施工】南木層、亜高木層の間伐と搬出。疎開
     率40~50%。

W mituba2041.jpg ミツバ

●存置育成植物のテープ、ピンポール、杭など
 によるマーキング。
●育成植物以外の刈取り、搬出。
●高木類や他の競合種によって被圧を受け、通
 常、樹形が扁形している。このため、存置育
 成する低木類には整枝剪定を実施。

留意事項①:表土中の埋土種子が発芽し、新た
な種類が出現する可能性がある。
留意事項②:自生個体は低木や高茎草本に被圧
されて開花せず、小さな個体になっていること
が多い。茎葉だけの未開花個体を見分ける必要
がある。初期段階では植物に対する同定力を持
つ専門家の指導が求められる。

Fuki.jpg フキ

2)育成タイブ

●山菜・野生果樹の育成

ミツバ、フキ、ワラビ、ゼンマイ、ウド、ヤマ
ノイモ、タラノキ、サンショウ、アケビなどの
山菜、野生果樹。

●野生花木 実のなる木の育成

ツツジやガマズミ、サクラ類、ヤマボウシなど
の野生花木、クリやトチノキ、オニグルミなど
の野生果樹を選択的に刈り残し育成する。

Juglans mandshurica var. sieboldiana fruits.JPG

●野生草花の育成

キキヨウ、リンドウ、オカトラノオ、オトコエ
シ、オヤマポクチなどの野生草花を選択的に刈
り残し育成する。

ファイル:Pteridium aquilinum 2005 spring 002.jpg ワラビ

オヤマボクチ0602 Synurus pungens.JPG オヤマポクチ

3)育成管理施工

①選択的刈払い
育成植物以外の刈取りと搬出。初夏と冬季の年
2回実施。冬季には、冬枯れした草木育成種も
刈取り搬出する。種子がある場合は取り蒔きを
検討する。

②日照条件の調整
林地の高木層、亜高木層の樹冠が林縁に展開し、
日照条件が悪化した場合、各層の立木に対し枝
打ちを加え、
疎開率を40~50%にして太陽光の
入射初期の状態に戻す




(5)田んぼの設計・施工と育成管理

❶ 放棄水田の構造修復

水田は溜池や用排水の小川、石垣や上手、畦、
農道などからなる。放置水田では砂泥や落葉落
枝が推積するとヨシやセイタカアワダチソウが
密生化するほか、年数がたつと樹林に遷移する。
このような条件ではドジョウやカエルなどの水
生生物は生息できない。

 ヨシ

1)荒廃した水田跡の修復設計

初期施工では、散在した倒木などを除去し、密
生化した草木やササ類を刈取り、除根搬出する。
水位を回復するため、堆積砂泥を掘りあげ、耕
上の下にある遮水層(粘土層)をたたき直し復旧
する。



2)荒廃した水田跡の修復施工

生物の活動が停止する晩秋~冬季に作業を実施
する。現地の水生生物や希少種は、事前に採取
し一時保管し、竣工後、適した環境に放免する。
これは土手や小川、溜池などでも同じである。
密生した土手植生を刈取る。掘りあげた荒廃水
田の砂泥とは自然分解する土のう袋に詰め土手
修復などに利用。



3)水田跡の修復断面の構造

水田の断面は、水漏れを抑えるための進水層、
イネが根を張るための耕土、イネの成長に必要
な水がサンドイッチ状にあり、耕上の厚さと水
の深さは、それぞれ15~20cm程度である。畦と
水田の継ぎ目や畦からの漏水を抑制するため、
水田の遮水層を畦の上まで延長し、畦の泥塗り
を繰り返し行うことも大切である。

4)修復時における導水用小川の補強・補
 修モデル


水田に水を引く小川では、堆積した砂泥を掘り
あげ、もとあった水位に戻す。落斜面や傾斜が
急な畦は補修が容易なそだ柵や木柵で固定する。

5)修復時における導水路の補強・修復モ
 デル



沢水を直接引く水田では水を温める導水路を長
くする。水みちを掘り土のうを積んで流路を固
定できる。出水で崩壊した沢本の取水口は、木
板や土のうを組み合わせ復旧する。取水に要す
る作業には、水利権者の承諾が必要である。



6)圃場整備が済んだ水田における排水路と
 魚介類のネットワーク回復

大きな落差で魚介類が排水側溝と水田とのあい
だを行き来できない場合は、簡易には魚道の設
置で対策する。



7)荒廃した水田跡の修復における1年目の
 作業設計


春から秋は現地と周辺の事前調査を行い、これ
をもとに多くの生物が活動を停止する晩秋から
冬季に基盤修復を実施。

❷ 畦・土手の修復と育成

刈払いを長年中断した場所ではススキやササ類
が繁茂し、樹林化していることもある。キキョ
ウやスズサイコなどの野草が衰弱し混生葉や埋
上種子で残存していることも多い。初期施工と
育成管理によって野生草花が混生するチガヤや
ススキ草地を再生する。育成を要する希少種植
物や野生草花については、当初は草刈り時に刈
り残して育成することも検討する。

スズサイコ02 Vincetoxicum pycnostelma.JPG スズサイコ

1)荒廃した畦・土手の修復設計断面

土手では年2回程度の刈取りでススキ・チガヤ
草地を誘導する。残存した株や埋土種子からワ
レモコウなどの野草が再生し、革原性のチョウ
やバッタも定着する。



2)石垣を伴う土手・畦の修復設計断面

 

樹落部については、現地に残存した石をより分
け、石の面(つら)を合わせ組み上げる。表層の
石を支え畦の浸透水を排水する裏込め石、表層
の玉石や割栗石の順で組む。



【注釈】

作業を進めていくうちに、懐かしい感慨を伴い
ながら頭だけでなく、稲作と灌漑土木、土木建
設、造園、工場建設、住宅造成と個々にあった
ものが次々繋がっていくような納得を腑に落と
していく貴重な経験を得る。




ビオトープ考Ⅵ

2010年04月26日 | ビオトープ





さらっと考察してきているが、実地体験する
と一連の作業での体力は思った以上に消耗す
るので、継続は力なりを文字通りとするなら
時間をじっくりとかけ、体力の七分目程度の
ペースで作業を進めるのがコツだろう思って
いる(山仕事は大変だ)。
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(4)雑木林の設計・施工と育成管理

❶ 共通事項

1)歩行ルート決定

● どのように設置するのか?



緩傾斜地ではルートに沿って現地発生の間伐
材などの丸太を敷き歩行ルートとする。幅は、
最低1人が歩ける程度とする。急傾斜地では、
現地発生の間伐材で階段を設置する。このル
ートは、現地崎本や間伐材、刈屑などの搬出
といった修復段階だけでなく、管理、観察用
ルートにもなる。



● 丸太は効果を発揮する!

林地に加わる踏圧の力が丸太全体に分散され、
踏み固めを軽減する。丸太は、土面を被覆す
るため、雨水による歩行ルートの洗掘や泥地
化を抑え、林地保全に効果を発揮する。歩行
による斜面の損傷を避けるため、傾斜地では
間伐材による階段、沼地を渡る歩行路には間
伐材を使い木橋を作る。

(2)生態的刈払い

● なぜ生態的刈払いを行うのか?

植生の誘導や更新、希少種や対象とする野生
車花、花木を育成するために行う。また、サ
サ類や低木類の繁茂を抑制し、野生草花が混
生する土手や雑本林の林床、溜池における水
際の植生を形成するためには、年1~22回、
定期的なメu払いを継続する。

● 実施方針

希少種、育成対象植物はピンポールやビニテ
ープ
などでマーキング
する。また、選択的刈
払いでは、育成する希少在、野草、花木を誤
って刈払わないように、慣れるまでは現地で
植物を判別しながら手刈りする。移動力に乏
しい生物に配慮し、一度に多人数で対象地全
面を刈払わないこと。少人数で何回かに分け
て行う。さらに市民参加で行う際には、入門
段階では安全上の理由から、鎌や剪定ハサミ
で刈払いを行う。



● 草刈り強使用上の注意


ヘビやカエル、オサムシなど、地表性生物に
対し高速で回転する刃で損傷を加えないよう
に、事前にこれらの生物を作業に囲から追い
払い、ゆつくり作業を進める。刃の接触によ
る不意のケガを避けるため、刈払い機を運転
する参加者どうしの間に4
m以上の距離をと
り、使用方法に対する事前打ち合わせや安全
対策を充分に行う。やわらかい草本にはポリ
プロピレン製の紐状の刃、茎や幹が堅いスス
キや低木類にはノコ状の刃を刈払機に着装す
る。

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(3)刈り屑、落ち葉の搔き集め方

● 目的

雑木林構成種の種子は、多くが発芽に光が必
要。実生が根系を展開し土壌の水分や養分を
吸収するためには、粒子が上壌面に着地して
いる必要がある。落葉落枝が堆積すると、下
層にある穂子に光が当たらず発芽が進まない。
堆積した落ち葉の間に挟まった種子は、雨水
により水分が供給され発芽しても、根系が土
壌に達せず枯死してしまう。定期的な落ち葉
搔きは、林床の種子に光を当て、実生が根茎
を仲張する発芽床を育成する。

● 方法

竹製の熊手を使用する。金属製の熊手やレー
キは林床の表面や野車の実生に損傷を加えや
すい。地表性の生物や野生草花の生育場所を
避けながら、軽くかき集める。その際、埋土
種子が多く、多年生植物の根茎が仲張し土壌
生物が最も多い表層部を
かきえぐらないように
する。落ち葉掻きの適期は秋の落葉後。この時
期に行うのは、落葉が落ちてすぐなので、軽くか
き集めやすく、カタクリなどに寄生し生育を阻害
するサビ菌を除去するためである。

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(4) 枝打ち・蔓切り

●目的:太陽光を入射させ低木層や草本層に
おける育成植物の成長を促す。また、カブト
ムシやクワガタムシ、オオムラサキなどの大
型昆虫類をはじめ、エナガやヤマドリなどの
鳥類が、樹冠の隙間や林内を飛び交えるよう
にするために実施する。

クリックすると新しいウィンドウで開きます コシジロヤマドリ

●程度:樹高7~ 8mの立木では、樹冠から下
の樹幹の高さが3~ 4m前後になるまで枝打ち
を実施する。枝打ちを施しても、切り日から
新芽が形成され「ひこ生え」が発生する。こ
れらについては、切り口に樹皮が展開して新
芽が発生しなくなるまで、下刈りを行う際な
どに、適宜、切り取る。

●方法:安全を考慮し樹幹にハシゴが固定で
きる林業や造園用梯子を使用し、転落防止に
は充分に注意する。全体の樹形を考慮し、幹
と枝の接合部から切る。枝を切るためにはよ
く切れる手鋸やナタ、剪定バサミを使用する。

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●二次的効果:コナラやクスギなどの樹種で
は、枝の切り口に傷日が残ると、そこから樹
液がしみ出し、カブトムシやクワガタムシ類
などの餌場になる。傷は、大小があってもか
まわない。傷口の大きさにより樹波に集まる
昆虫類が共なり、逆に多くの種類の餌場を形
成する。

(5) 間伐

● 目的

林内に達する太陽光を増加させ、低木層の花木
や草本層の野生草花、山莱、薬草などの増殖、
昆虫類や鳥類が森林内に進入しやすくするなど、
目的に沿ったさまざまな効果がある。



● 安全対策

伐倒作業は危険である。安全靴を履き、ヘルメ
ットを着用すること。市民参加で実施する場合に
は、できるだけノコギリにより作業を行う方が安
全である。チェーンソーを使用する場合には、専
門家の指導を必ず受ける。樹高10m以上の大木
の間伐は、専門家に依頼することが望まれる。

Robinia-pseudoacacia.JPG

● 間伐樹種選定

間伐木の選定に際しては、競争に負けた被圧
木、枯木を優先する。外来種のニセアカシア
やニワウルシなどが侵入している場合には、
優先的に間伐本とする。対象木についてスプ
レーやテープなどによリマーキングを施す。

Ailanthus altissima1.jpg

● 間伐作業

伐倒方向の決定に際しては、作業者の安全を
第一に施設などの位置を目視し、幹が倒れて
も支障ない位置を選定する。伐倒に先立ち、
作業開始時に現場関係者どうしで安全確認を
行う。まず、伐倒木の構冠が育成木に寄りか
かって損傷を加え、伐倒木の樹冠の枝葉が育
成木の枝栄に絡んでFlれにくくなるのを避け
るため、枝打ちを行う。林業ハシゴを立木に
立て、下から順に枝を切り落とし、絡まった
ツルを取り除く。ハシゴ上での作業には安全
上、ノコギリの使用を勧める。


●受け口:伐倒する側にノコやナタで幹の大
きの1/3~ 1/4、角度30°~ 45°の切れ込み
をつくる。受け口がないと、伐倒方向が不安
定になり、本の重さでノコが切口に挟まって
作業ができなくなる。
 
●伐倒:ノコギリやチェーンソーで受け日の
真反対側の少し上側から切り込み伐倒。幹直
径の1/10租度切り残した段階で作業を止め、
伐倒方向にゆっくり押し倒す。押し倒す際、
切り口からの跳ね返りがあるため作業者の身
体に接触しないよう充分に注意する。


(6)萌芽更新

雑木林の若返りを図り、生物多様性を育成し、
林齢の異なる多様な環境構造を形成するため
に実施。立木伐採は区画を定め、全伐とする。
方法は間伐作業に準じる。



(7)雪起こし

●根返り:
多雪地の斜面に生育する樹高4~5
m前後までの若い雑木林では、間伐後に周囲
の支え木がなくなり、斜両上方からの積雪の
移動圧により根返りを起こし倒伏することが
ある。

●対策:雪解け直後、根系が伸張を開始し、
新芽が展開する前に雪起こし対策を実施する。
使用する縄は、葉組やシユロ縄など自然腐朽
する材料とする。縄を取り付けるときの引っ
張りの程度は、立木は自力で立つ力があるた
め、地面に対し直角になる程度で充分。

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(8)堆肥場、間伐材置き場

● なぜ堆肥場や間伐材置き場などを設けるのか

山と人や生物、植物との有機物の循環を進め
るために設置する。

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● 堆肥場や間伐材置き場などを設置する環境条件

出水の影響を受けない下刈りされた半日陰地
がよい。落ち葉の腐植化とカブトムシなど甲
虫類の産卵や幼虫の生息地、両生 爬虫類の
生息地にするためには、温湿度に変化が少な
く水はけのよい北向きの斜面下部を選定する。
この条件がない場合は、西日や直射日光の入
らない水はけの良い凹地を選ぶ。

● 堆肥場、間伐材置き場の作り方と循環利用方法

枝打ち屑、間伐材、刈屑、落葉落枝は、それ
ぞれ別々に搬出し、活用しやすいように仕分
けして、別々に世き場を決める。

ファイル:Logging oregon.jpg

間伐材:持ち運びができるよう、0.5~1m前
後に玉切りし、崩れないように積み上げる。
落業落枝、小枝を堆肥化するには、間伐材と
刈取った低木類を粗柔にして木枠をつくり、
高さ1m前後まで積み上げる。積み上げた落
葉落枝に腐熟を進める酸素を送り込むため、
カブトムンなどの幼虫へのへの損傷が少ない
繰り返す。適期は、1世代1年であるカプト
ムシの成虫が羽化し幼虫がいない7月中下旬
である。

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❷ 雑木林の設計・施工と育成管理

対象地が持つポテンシャルを最大限活用する。
初期施工と、その後の育成管理段階で必要な
設計 施工がある。大半の雑木林は密生状態
に放置されており、初期施行工に労力を要す
ることが多い。作業は人力によることが多く、
人員などの面から維続して育成管理できる面
積を充分に検討する。




ビオトープ考Ⅴ

2010年04月26日 | ビオトープ





Ⅲ 設計・施工・手入れと育成管理

(3)育成管理の方向性

❷ マント・ソデ群落


雑木林の外縁部分にある林縁の植物群落である。
光、温湿度ともに開放地と樹林下の中間的な環
境条件にある。オツツジやガマズミ、ヤマザク
ラなどの野生花木、
タラノキ、サンショウ、ワ
ラビ、ゼンマイ、ウド、クズなどの山業、ヤマ
ボウシ、ウスノキなどの野生果樹、リンドウ、
オカトラノオ、オトコエンなど野生草花を選択
的に刈り残し育成することができる。自生野生
草花や山業などの個体は、低木や高茎草本に被
圧されて開花せず小さな個体になっていること
が多い。未開花個体を見分ける必要がある。刈
屑は搬出処分。地面にある既存の落下種子が発
芽し、新たな種類が出現する可能性があるとい
う。

 ガマズミ
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植生とは、ある地域における植物体の集まりの
総称。植生を研究する学問には、植物社会学、
植物生態学などがあるが、一般的には植生学と
呼ばれる。植生の成立は、地形や気候などの環
境要因や、伐採や農耕などの人為的要因の影響
を受ける。一方、成立した植生はこれらの環境
要因を変化させる。現存する植生は、このよう
な植物と環境要因の相互作用の結果である。
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Aralia elata en fleur4081.jpg 
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マント群落とソデ群落

森林とオープンランドとの境界部分には、特有
な森林の構造が発達する。森林の端の部分では
ツル植物が繁茂し、森林内への風の吹き込みを
防いでおり、このような状態の群落を
ント群
という。
森林がマントをまとっているという
意味である
。また、まるでカーテンを掛けたよ
うであるという意味で、カーテン群落という呼
び方もある。マント群落は、側方からの光を植
物が有効に利用する結果であり、ツル植物や低
木性の樹種などで構成されていることが多く、
ノイバラなどの有刺植物が多いのもの特徴の1
つである。これらの植物により構成される植生
は、森林中の樹木が台風などで倒れた場所(ギ
ャップ)などでも形成される。マント群落は、
結果として森林の傷付いた部分をいち早く覆っ
林内への日照の到達・風の吹き込みを減少さ
せ、林内の湿度を保つ働きがある
ソデ群落
マント群落の更に外側に位置する草本を中心と
する群落である
。ソデ群落は林内から栄養分が
供給されるために栄養分的には良好な立地であ
る。
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Gennosyouko-siro.JPG 

❸ 草地・土手

Imperata cylindrica.jpg

対象地が草地の場合には、草刈りの頻度を違え
ることによって、いくつかのタイプの草地を育
成管理することができる。ススキ草地は、年1
~2回刈取りを維続することにより形成され、
ノアザミ、オミナエシ、キキョウ、オトギリソ
ウなど育成される。チガヤ・ヨモギ優占草地や
メカルガヤ ヨモギ草地は、年2~3回刈取り
を継続することにより形成される。在来タンポ
ポ、ウツボグサ、ネジバナ、キランソウなどの
野生車花、 ドクダミ、ゲンノショウヨなど和
薬を育成できる。育成対象とする自生個体は、
低木や高茎草本に被圧され、開花せず小さな個
体になっていることが多い。未開花個体を見分
ける必要がある。地面にある既存の落下粒子が
発芽し、新たな種類が出現する可能性がある。
区画を決め、刈り跡での再生が進んでから別区
画を刈取る。刈屑は搬出処分する。



❹ 湿地



里地里山にある放棄水田、湧水地には湿地が形
成されていることが多い。現地の植生や生物調
査の結果をもとに育成管理の方向性を検討する。
すでに水田放棄後年数が経過し木本類が定着し
ている場合には、 ミドリシジミやコムラサキ
などの繁殖地として、ハンノキ、ヤナギ林を育
成することができる。



樹林化する前で、ヨシなどの高撃1直物群落に
なっている場合には、これを維持し、オオヨシ
キリやカヤネズミなどの生迫、地などを育成で
きる。ミゾソバやイなどが群生化し、常時過湿
で滞水しているところでは、ビオトープネット
ワークで連続しているところでサラサヤンマや
ヒメタイコウチなどの水生生物の生息地が育成
できる。

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水田放棄後、年数が短い場合には、コナギやオ
モダカなどによる湿地性植物群落を形成するこ
とができる。カエル類、 ミズカマキリ類、ゲ
ンゴコウ類、ヘイケボタル、ギンヤンマ、ショ
ウジョウトンボなどの生息地になる。土壌が貧
栄養で、常時、湧水があるな開放地では、サギ
ソウやトキソウなどの生育地を育成、再生する
ことができる。

❺ 水田

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イネの無農薬無化学肥料栽培を行う。無肥料で
100㎡当たり10~15kg、堆肥の施用により100㎡
当たり30~ 50kgの玄米を収穫できる。現地で
形成される食物連鎖により「害虫」を抑えイネ
を栽培する。生物多様性と生物の密度を向にさ
せる効果は絶大である。肥料には主に牛糞堆肥
と刈敷使用する。イチョウウキゴケ、サンショ
ウモ、オオアカウキクサなど絶戒危惧種が発生
する可能性もある。留意事項として、休耕して
年数を経ていない水田を、農家から借り受ける
必要がある(詳細は、『田んぼピオトープ入門』
農文協刊参照)。また、農葉を使う慣行水田よ
り上方の沢水を導本する谷戸最上流部の水田が
効果的である。アカガエル類などの注卵には冬
季湛水する必要がある。イネを栽培する際は、
水苗代を作って育苗することが望まれる。この
時期の湛水と苗群がカエル類の産卵に有効であ
る。魚類の遡上を計顧iする場合は、段差少なく
小川と連続している必要がある。また、ウシガ
エルやアメリカザリガニ、スクミリンゴガイな
ど帰化生物が繁殖している場所では、徹底して
駆除する必要がある。溜池の場合も同様。

❻ 溜池



マコモやガマなど高基植物群落塊在型、ヨシや
ガマなど高室植物群落疎生型、ヒツジグサやジ
ュンサイなど浮葉植物群生型、浮葉植物 高茎
植物混在型の水域を形成する。留意事項として、
溜池と後述の小川に関与する際は、必ず水利権
を持つ団体(水利組合など)に了解を得る必要が
ある。また、生物多様性を高めるためにはエコ
トーンの延史と幅をできるだけ大きく取る。

❼ 小川



現地の植生状況によって、いくつかの選択肢が
ある。植生によって閉鎖した小川の1ケ復、素
掘り水路の小川化。流速が早い場合や夏期に瀬
切れしやすい湯合には、魚類の遡上を阻害しな
い低い段差を土壌などにより形成し、水域を形
成する。自然河床が消失した小川の修復では、
コンクリート3面成りの河床に上妻などを並べ、
瀬と淵、砂州が形成されるよう骨組みを入れる。

 カワニナ

ゲンジボタルが生息する小川を修復することも
可能である。すでに発生している場合は、水面
に太陽光線を入れ、ホタル幼虫の餌であるカワ
ニナの餌、藻類の発生を促進させる。流速が早
い場合や夏期に瀬切れしやすい場合は、上記に
同じ。他の河川からカワニナを移植する場合は、
移植もとのゲンジボタルなどに影響が出るので
最小限に抑える。新たにゲンジボタルを発生さ
せるには、水質や周辺の環境を充分に調査し、
事前に年数をかけて餌のカワニナを増殖する。


カワセミ

(4)雑木林の設計・施工と育成管理

斜面での作業では、踏圧による表土の硬化と野
草類の損傷を防止し、搬出の手間を軽減する必
要がある。作業は、谷部に対し最も先に手を付
け、斜面上下間の歩行による表土の損傷、体力
の消耗を避けるため、付面の下部から上部に向
け順に実施する。ヘルメット、安全靴、軍手着
用を持用する。

❶ 共通事項

(1)歩行ルート決定


● なぜ歩行ルートが必要か?

土壌の表層には、 ミミズなどの土壊生物のほ
か、植物の根系があり、発芽を控えた埋土種子
存在する。オサムシやアリ類などの見虫、アカ
ガエルや小型サンシヨウウオなど両生 爬虫類
の歩行面でもある。対象地を歩き回ると直接損
傷を加え、表土を踏み固め生物が歩行に使う土
の湿度や落葉落枝の被複など、詳細な環境構造
が失われる。

ここまでの考察で反問などは生じなかったが、
この続きは次回に。



ビオトープ考Ⅳ

2010年04月13日 | ビオトープ





ランドスケープ(Landscape

「Ⅳ 里地里山のビオトープ」の項目では、
「(1)自然環境の把握方法」を俯瞰してき
たが、今回は調査方法等の実践の考察に移る。

❺ 調査方法

事前に図銘などで生態を把握し、生物の種毎
に調査方法を決め、異なる出現時期に合わせ
年間の調査スケジュールを設定。雨天には飛
翔しない、鳴き出さないほか、隠れ処に滞み、
また、早春や晩春には急な気温低下で活動を
抑制される生物が多いので、調査日の天候を
考慮する(野鳥、両生 爬虫類、昆虫、植物な
ど:目視確認や、捕獲後の同定)。


(2)現状評価

❶ 現状評価の視点

同じ雑木林でも、斜面の上下や方位などの立
地条件に加え、現状の樹齢、優占種、低木層
の茂り具合や構成種により育成管理の方向や
ポテンシャルが異なる。里地里山の自然環境
は、すべてに人手が継統的に加わる状態で維
持される二次植生である。雑木林は萌芽更新
せず放置すると、西南日本での低山地では照
葉樹林へ遷移する。湿地のヨシ群落はヤナギ
やハンノキ林などに遷移する。

  
ハンノキ(榛の木 学名:Alnus japonica)

植生選移とは植生が極相林に向かって置き代
っていく過程をいう。溶岩や火山灰層の上な
ど基質にまったく生物を含まない場所から始
まるものを一次連移森林を技採した跡地など
最初から基質に若干の生物たとえば土壌中の
種子、地下茎、土壌動物などを含む場所から
はじまる(再生する)ものを二次遷移という。
乾燥した裸地に植物が生え森林へと移ろいで
いく「乾生選移」と湖沼が埋まり温地草原森
林へと移ろいでいく「湿性選移Jがある。茅
場や里山は草原から陽村林に向う遷移段階を
人間が切っては戻し、また切ってを繰り返す
ことで維持してきた二次遷移の途上にある二
次的自然である。

 
ギフチョウ(岐阜蝶・学名 Luehdorfia japonica)

現地で調査した植生区分図が基礎図になり、
この区分ごとの動植物など調査結果をもとに
対象地が有するポテンシャルを確認、育成の
方向性を検討、整理する。たとえば、林床に
野生草花が豊富な雑木林では、その群生地を
育成することが可能であり、絶減危惧種のギ
フチョウが確認された場合には、林分構造を
改良して、食草のカンアオイを育成し、ゲン
ジボタルやタゴガエルが確認された小川で周
囲の植生管理により個体群を保全することが
できる。

Heterotropa nipponica.jpg カンアオイ(寒葵、学名:Asarum nipponicum
 タゴカエル

❷ 地形条件に対するとらえ方

同じ雑木林でも、斜面の上下や方位などの立
地条件に加え、現状の樹齢、優占種、低木層
の茂り具合や構成種により育成管理の方向や
ポテンシャルが異なる。

 
ゲンジボタル(源氏蛍・学名Luciola cruciata

❸ 水質に対するとらえ方

水質を示す指標の一つとして BOD (化物学的
酸素要求量) がある。水中の微生物が有機物
を分解する際、呼吸により駿素を消費する。
BODはこの酸素量を有機物量の目安として取
り扱うものであり、1㍑当たりの水に含まれ
る有機物を分解するのに必要な酸素量を指す。

カタクリ.JPG 


(3)育成管理の方向性

❶ 雑木林

現地の雑木林を観察してどのような特徴があ
るのか? これによっていくちかの育成管理の
方向性が検討される。クヌギやコナラなど、
幹直径10~15cmまでの樹林では、区画を定め、
株元から伐採し萌芽更新で若返りを図ること
も可能である。対象地全体には樹齢の異なる
様相が形成され、立木間、樹林間に様々な光
や温湿度環境が形成され、全体としては植物
だけではなく、チョウや甲虫など見虫類など
動物相の多様性が向上する。

※直系20cmを上回る立木、樹常15mを超えるよ
うな立木を伐採する場合は、大きな危険が伴
うため専門業者に依頼することが望まれる。

   

クヌギ(Quercus acutissima)

萌芽更新は、クヌギやコナラなどの中ほ木林
が対象。構高15~20mに達する老齢化した雑木
林では伐採後の萌芽力が弱く更新しない可能
性がある。また、伐採に危険を伴い専門の技
術者に依頼する必要がある。また、アカマツ
林は萌芽更新させることができない。またな
枯れの進行により林分維持に不確定要素を伴
う。絶減危惧種など希歩種が確認された場合
は、その動植物に求められる保全対策を取る。
低木層にヤマツツジやミツバツツジ、ガマズ
ツクパネウツギなどの野生花木が多い場
合には、これらを育成し開花景観を形成する
ことが可能である。さらに林床にカタクリや
チゴユリなどの春植物、ササユリ、ヤマユリ、

 
アカマツ(Pinus densiflora、赤松)


 
アキノキリンソウ(Solidago virgaurea var. asiatica

アキノキリンソウなどの初夏から秋に成長、
開花する植物が多い場合には、これらの野草
を増殖することも可能である。このほかにも、
谷戸の水田に連続した雑木林では、林床の植
生に対する手入れやエコスタックの設置によ
り、陸化したヤマアカガエルやトウキョウサ
ンショウウオなどの生息地として、機能を高
めることができる。また、直径10~15cmまで
の、特に樹幹から樹波を出す若い雑木林では、
クワガタムシやオオムラサキなど、樹波食性
見虫頚の餌場や繁殖地として、機能を高める
ことができる。

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 クリックすると新しいウィンドウで開きます
 エコスタック


ビオトープ考Ⅲ

2010年04月08日 | ビオトープ




【ビオトープⅠでの疑問】


「考察の途上だけれど、緑信仰というものがあ
るかどうかしらないが、緑に囲まれていれば安
心とか、趣味や造園業の延長でビオトープがあ
るわけではない。つまりは、対象環境領域での
物質収支(material balance sheet)とかエネルギー
収支(energy balance sheet)の科学的裏付け、数
値化されていなければ「ビオトープ」運動とし
ての意味は薄れる。それこそ事業仕分けの対象
になるのではと危惧する」として注釈したが、
具体例の一部になるデータがあったので掲載す
る。
 
 伊藤園 大規模茶園化構想

株式会社伊藤園(社長:本庄八郎 本社:東京都
渋谷区)は、茶の木(茶樹)の植物としての二
酸化炭素(CO2)の吸収・固定に着目し、その吸
収・固定量の測定を行ったという報告(2008年
11月26日(水)に鹿児島県市町村自治会館で開
催、茶業技術研究発表会)。

それによると、2001年より、飲料用原料に適し
た緑茶(荒茶)を生産する茶産地育成事業を九
州地方中心に展開(契約栽培茶園を含めて約540
ヘクタール)。茶の木(茶樹)が吸収・固定す
CO2の量を実際に数値化した事例がないので、
実際の茶樹を用いて茶樹に吸収および固定され
CO2量を測定し数値化した。その結果、茶樹
の成木と幼木それぞれの地上部と地下部の乾物
重量を測定、各部の炭素率から炭素含有量を計
算し、成木と幼木の炭素含有量の差から茶樹の
CO2吸収・固定量を算出。茶樹1株あたりのCO2
吸収・固定量は約5キログラム(換算値)。
般的に10アールあたり約1,850株の茶樹が植えら
れることから、1ヘクタール当たり約92トン
CO2を吸収・固定するとされる。



今回の研究では、茶樹のCO2吸収・固定量だけ
だが、摘採した茶葉には炭素として固定た茶葉
以外の放置茶葉のCO2が吸収・固定。茶園の土
壌の有機物の施用や整枝、剪枝による炭素が固
定、茶園の造成から摘採、荒茶の生産に至る過
程での、CO2の吸収・固定だけでなく排出につ
いても明確化していくという。

 グリーンパネル

Ⅱ ビオトープの基本

❹ 外来種の取り扱い

2004年「特定外来生物による生態系などに係る
被害の防止に関する法律」に係わる事項。罰則
規定があるので要注意。

❺ 生きものとつきあう準備と心構え

アシナガバチ

道具類、服装、危険な生物に対する対策(毒蛇、
スズメバチ、アシナガバチ、毛虫)等。

❻ 活動に際しての注意事項

活動計画、安全対策、トイレ等。



Ⅲ 設計・施工・手入れと育成管理

(1)対象地の現状把握と育成の方向性

❶ ビオトープネットワーク
❷ 育成管理の方向性

(2)設計・施工・手入れと育成管理

❶ 垣根・軒先
❷ アプローチ・パーキング
❸ ビオトープ池
❹ 野鳥・蝶・甲虫類の集積林
❺ 蝶や蜂が飛び交う在来種の集積花壇 
❻ 食物連鎖で生態系を形成する菜樹
❼ 草地植生の育成管理
❽ 壁面ビオトープと草屋根
❾ 学校生活全体のビオトープ

尚、「ビオトープ池」については別途考察して
みたい。



Ⅳ 里地里山のビオトープ

(1)自然環境の把握



準備するものは、1/2500~1/5000の地形図と筆
記用具。密生化した低木の技葉が展開してから
では、里道や活動対象地、植生や棚田跡、流れ、
溺水地の位置が判別しづらくなるため、低木類
が枝葉を展開するまでに行う。年記には雨水や
朝露で溶ける水性ぺンを避け、鉛筆や油性ボー
ルペンなどを使う。

  群落組成調査

❶ 里道の確認

Pueraria lobata ja02.jpg クズ
 
里山に入る道として、かつてのユ山の道「里道」
を探す。低木やササ、クズの繁茂、落葉落枝の
堆積などで消失しかけていることが多い。この
ような場合、帯状にササや低本の茂り方が弱い
ところを歩いていくと里道が見えてくる。

❷ 位置の確認


地図上での活動対象地の位置を確認する上で目
印になるのは、送電線や鉄塔、民家、渓流など
である。これらを現地で確認し、その位置を地
形図から読み取り印を付ける。この印を基点に
歩測(※)や巻き尺を使って現地までの距離を概
測し、対象地の位置を地形図に印す。最近では
インターネットの検索サイトから空中写真が公
開されているので参考にする。

コナラ.JPG コナラ

❸ 植生区分

現地の地図をもとにコナラ林、クスギ林、アカ
マツ林、竹林、スギ、ヒノキ林、ススキ草地、
ヨシ群落などに区分けする。つぎに、群落毎に
高木層から草木層までを階層区分し、それぞれ
の階層毎に優占種とその樹高と植被率がわかる
植生断面図を作成する。これが基本図となる。
ススキ草地は草本層だけの一層または分けると
すれば、高茎のススキからなる第一草本層と低
茎のクサボケやミツバツチグリなどからなる第
二草木層からなる。雑木林は、高木層、亜高木
層、低木層、草木層まで4つの階層と、ソデや
マント群生により植物社会を構成している。植
物社会の模式図と主な構成種は、ブログトップ
最上部に図示した通りである。

ミツバツチグリ Potentilla freyniana.JPG 
ミツバツチグリ
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【関連サイト】

「環境教育ライブラリー」

環境教育に関する教材、書籍の情報を提供。書
籍類に関しては閲覧限定。