福満遺跡 5世紀の古墳

2015年10月30日 | 日誌

 

福満遺跡 5世紀の古墳

彦根市教委文化財課は、小泉町で発掘調査中の福満遺跡
の一部から市内で初めて5世紀代の古墳が確認されたと発
表。同遺跡は小泉町や西今町に及ぶ縄文時代から、弥生、
古墳時代、古代・中世までの遺構で構成された複合遺跡。
これまでに古墳の埋葬施設とみられる遺構や周濠(しゅうご
う)とされる溝の跡などが確認。また近くの西今、須川、竹ケ
鼻廃寺などの各遺跡からは埴輪片が見つかっている。 

今回は福満遺跡のうち、ひこね燦ぱれす北側の約120
0平方㍍内の約400平方㍍で今年7月16日~11月6日
の予定で発掘調査を実施。弥生時代末期~古墳時代初期
(3世紀後半)の方形周溝墓1基や、古墳時代中期の終
わり~末期(5世紀後半)の古墳(円墳)2基=1基の
周濠内の長さ約25㍍=が東西に発見。そのうち東側の古
墳は全周濠の4分の1を確認し、周濠の土からは円筒埴
輪片、有蓋高坏(ゆうがいたかつき)・堤瓶(ていへい)
など須恵器、土師器も見つかった。埴輪と須恵器は墳丘
に置かれていた可能性が高いという。西側の古墳は長さ
20㍍弱の大きさ(滋賀彦根新聞 2015.10.28)。

市教委は、同遺跡の近隣地で過去にも古墳の埋葬施設ら
しき
遺構や、周濠と考えられる溝なども確認しているこ
とで、在地
有力者の古墳群がこの一帯で形成されていた
可能性もあると
推測している。

また、犬上川流域ではこれまで、左岸の葛籠(つづら)
北(きた)遺跡(同市葛籠町)で6世紀前半の円墳が出
土している。

 

【エピソード】

    

● 子持勾玉物語

 

彦根市西今町・福満移籍から、発掘調査により出土し
た子持ち勾玉(上写真)。古墳時代後期(6世紀前

)の玉玩(地面に掘った穴)の中から、当時の土器な
どとともに出土。
子持ち勾玉は、大型の勾玉形を母
体として、その腹背および両側辺などに小型の勾玉形
を作り出した
もの。

使用の正確な用途は明らかになっていない。福濁遺跡
出土の子持ち勾玉には、腹部に1箇、
背部に3画、両側
に2箇すつの合計8箇の小型勾玉形が削り出されてい
て、全長81cm、幅46cm、
厚さ2、9cm、重量
116gす。石の材質は深緑色の滑石製。表面を詳細
に観察では、幅0.2
~0.5cm程度の細かい削り駈
を確認。削り痕はその痕跡をほとんど残さ
ない入念な
研磨仕上げ。平滑となった表面に新たに円圏文が施さ
れて
いる。円圏文はドーナツ状の幅のある圏線とし、
中央には貫通しない孔を穿つ。円圏文の径
は0.7cm
~1.1cm。

滋賀県内では福満遺跡を含めて14点の子持ち勾玉が
出土し、その多くが採集品や包含層
から出土したもの
であり、福満遺跡のように明確な遺構から出土したも
のは3点しかない。また、
表面に円圏文が施されてい
る現存例は福満遺跡が唯一だとされる。
県外に視野を
広げると、子持ち勾玉の類例が6世紀を中心に、山陰・
北陸・東北などで出土し、
さらに、日本からもたらさ
れたと考えられる子持ち勾玉が朝鮮半島でも出土する
など、日本海沿岸
から朝鮮半島に至る地域間の交流を
示す特異な形状の資料として注目されている。
彦根市
では、出土状況や埋納時期が明らかで、円圏文を有し
た入念な作りの子持ち勾玉として全
国的に数少ない優
品であることから、2009年に彦根市指定文化財に
指定される。



● 福満神社物語

福満神社は彦根市西今町に鎮座し、山の神・酒造りの神
の須佐之男尊の孫にあたる大山昨神(おおやまのくひの
みこと) を祭神とする神社がある。その由来は、鎌倉時
代、野瀬付近一帯に青蓮院門跡を本所とする比叡山延暦
寺の荘園「福満荘」があったということから、その守
護神にあたる坂本日吉(ひえ)大社のご分霊を勧請して
西今・野瀬両村民の「産土神」としました。それが当神
社の始まりと云われている。創建年代は定かでないが、
江戸時代初期と推定され、現在の本殿は、寛政3年(
1791)に再建されたもの。鎮座以来明治の初めまで、
山王権現あるいは山王社と呼んでいたが、明治9年(
1876)、荘園時代の福満荘に因んで、現在の福満神社
と改められる。
 

地名の福満は、中世の荘園時代の福満荘から、荘園崩壊
後の福満の名称は、明治22年の市町村制が施行時まで使
われず、明治22年から昭和12年の彦根市が誕生するまで
の約50年間は福満村として犬上郡に属す。
なお、福満の
名称の起こりは、昔、小泉町八王子神社付近に、天王塚
があり、この塚の天王より由来すると伝えられる。

【脚注及びリンク】
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  1. 彦根初の5世紀の古墳 滋賀彦根新聞 2015.10.28
  2. 彦根初 5世紀後半円墳 読売新聞 2015.10.21 
  3. 彦根に5世紀の円墳 初確認、空白期埋める 京
    都新聞 2015.10.22
  4. 彦福満遺跡:彦根市内初の5世紀円墳 25日に
    現地説明会 毎日新聞 2015.10.22
  5. 解説シート「子持こもち勾玉まがたま」(福満
    遺跡出土)彦根市
  6. 福満(ふくみつ)遺跡 滋賀県
  7. 福満遺跡、良文化財研究所
  8. 5世紀末の円墳2基を確 朝日新聞 2015.10.22
  9. 福満遺跡とトンボ (現地公開見て歩き137)
  10. 福満遺跡: 10・11, 第 10 巻 彦根市教育委員会
    文化財課, 2008-48ページ
  11. 福満遺跡: 第7次調查, 第 7 巻
  12. 福満遺跡発掘調查槪要報告書彦根市育委員会
    1982
  13. 遺跡公園をイメージして整備された福満公園
    2009.05.18
  14. 埋蔵文化財 遺跡一覧 全体図
  15. 大山昨命を祀る「福満神社」2009.05.20

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