マラウイ湖

2011年11月29日 | 世界の湖沼百選

 

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マラウイ湖 (Malawi)、タンザニアとモザンビークでは
ニアサ湖 (Nyasa、Nyassa、Niassa) はアフリカ東南部
にある湖。
アフリカ東部を縦断する大地溝帯(グレート
・リフト・バレー)の南端部に位置する。面積はアフリ
カで3番目、世界で9番目の広さである。深さはアフリカ
で2番目に深い。

 

湖は長さ560km、幅は最大で75kmに達し、面積は鹿児島
県と沖縄県を除いた九州に匹敵する29,600 km2。モザン
ビーク、マラウイ、タンザニアの国境をなす。湖からは
シーレ川(Shire)が流れザンベジ川に注いでいる。湖
に注ぐ川のうち最大のものはルフフ川(Ruhuhu)である。
マラウイという名は、マラウイの公用語・チェワ語で
「光、炎」などを意味する言葉で、マラウイの独立後に
国名として採用された。タンザニアとモザンビークでは
ニアサ湖と呼ばれ、ニアサとはヤオ人の言葉で「湖」を
意味する。後述する湖の領有権とからんで湖の呼称をめ
ぐる論争もある。湖の表面積の0.3%にあたる南端部がマ
ラウイ湖国立公園に指定されており、この部分はユネス
コの世界遺産にも登録されている。

コマ島とチズムル島の二つがマラウイ湖の有人島である。
島はマラウイ領だが、モザンビーク側の湖岸からの方が
近い。リコマ島には20世紀初頭に宣教師が建てた英国国
教会の石造りの大聖堂がそびえている。どちらの島も、
バオバブの木の多さが特徴である。島には数千人の住民
がいるが、キャッサバ、バナナ、マンゴーの栽培や湖で
の漁で生計を立てている。

マラウイ湖は魚が豊富で、伝統的にマラウイの国民の食
料源となってきた。チャンボ(Chambo)は
シクリッド(
カワスズメ)科の4種類の魚の総称である。またカパン
ゴ(Kampango)という大型のナマズも有名。特にシク
リッド科に属する魚が豊富で、多くの固有種を含む800
種以上のシクリッドが生息している。これは同じ大地溝
帯にあるタンガニーカ湖やヴィクトリア湖のそれを上る
種数である。マラウイ湖のシクリッドは大きく二つのグ
ループに分かれる。



マラウイ湖の水は、PH 7.7~8.6 のアルカリ性で、炭酸
塩硬度は107~142 mg L-1、また210-285 μS cm-1の伝
導度水である。湖水は一般的に暖かく、表層の水温は24
~29℃、深い部分では22℃になる。

【エピソード】

 

話は飛ぶが、三井物産は28日、アフリカ南東部・モザン
ビーク沖合で米石油ガス大手などと探鉱している鉱区で、
世界最大級の30兆立方フィート超の埋蔵量の天然ガスを
確認したことを明らかにした。三井物産は20%の権益を
保有。液化天然ガス(LNG)化が検討されており、日
本の年間使用量(約7千万トン)の1割弱に相当する量
が日本向けとなる計画だという。

【脚注及びリンク】
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1.「
World Lakes Database entry for Lake Malawi
2.「The Cichlid Fishes of Lake Malawi, Africa
3.「対岸の飛び地
4.「モザンビーク共和国
5.「Lake Malawi National Park
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ビワマス賛歌 P.12

2011年11月07日 | びわます賛歌

【食文化とビワマス】

 

琵琶湖にはサクラマスやサツキマスとも異なるサケ科の
魚が太古から生息してきた。琵琶湖を代表する魚ビワマ
スと人間の関わりは、人々が琵琶湖の周辺で生活を始め
た約2万年前の旧石器時代にまで遡るという。産卵のた
め琵琶湖から河川に遡上するビワマスは、間近に冬を迎
える人々にとって格好の獲物。特に卵をもった雌は、栄
養満点な食糧であった。内陸の食文化にとって、東北地
方以北ではサケが、西日本ではアユが重要な役割を果た
していたと指摘されている。琵琶湖周辺では春から初夏
にフナやコイが、夏にはアユが、さらに秋にはビワマス
が加わり食事を豊かなものにしたと思われる。6月頃の
梅雨の大雨に刺激されて川に上ることはあるものの、産
卵期以外の時期にビワマスが川に遡上することはまれで、
古代の人々が琵琶湖の沖合で回遊するビワマスを捕獲す
ることはほとんどできず、産卵のため川を上ってくるビ
ワマスを獲るため河川には簗(やな)が設置され、その
利権は地域の権力者と強く結びついたものであり、現在
では、その名残が神社の神事として認められる。例えば、
毎年10月1日に京都の上賀茂神社には安曇川で捕獲され
たビワマスが現在でも献上されて、10月に開催される大
津の天孫神社の大津祭は、「あめのうお祭り」とも呼ば
れている。また、平安時代の「延喜式」には、近江の産
物として醤鮒や煮塩年魚に混じって阿米魚鮨があげられ
ていることから、古代からビワマスは量的に重要な水産
物であった。ただ、この阿米魚鮨がビワマスのどのよう
な加工品であったのかわかっていないという。現代の「
ふなずし」のように、塩漬けにした魚をご飯に付け直し
て醗酵したものとは異なっている。新巻ザケのように単
に塩に漬け込んだものでもない。や煮塩年魚に混じって
回米魚鮨があげられていることから、古代からビワマス
は量的にも重要な水産物であった。


【食べ方】

現代に伝わるビワマスの伝統的な食べ方は、「あめのう
おごはん」と言われている。『聞き書 滋賀の食事』に
よれば、野洲川周辺の地域では産卵のため川を遡上して
きたアメノウヲを使って、鰹と内臓を取り除き卵は出さ
ないで研いだ米の上にのせて醤油と酒、ゴボウやネギな
どの野菜を加えて炊き込むものである。炊き上がった後、
アメノウヲの頭や皮、骨を取り除き身をほぐしてご飯と
混ぜ合わせてできあがりである。



また、姉川周辺の地域では、「ますずし」がつくられて
いる。塩をして保存しておいた産卵期のアメノウヲを洗
って薄く切り、甘酢に漬けておく。これを白いご飯に混
ぜて黒ゴマや塩ゆでしたえんどう豆、甘酢に漬けた生姜
の千切りをのせて食べる。

ビワマスの食べ方として、5月から7月の時期の刺身と
焼き物は一押しとされる。ビワマスそのものの昧を堪能
できる点でこれに勝るものはない。春から初夏には琵琶
湖に多く生息するアユが彼らの主な餌となっており、ア
ユの脂を体いっぱい蓄積している。最近、このビワマス
を一年中昧わえるようにするため、醒井養鱒場の池で人
工的に飼育して2年で1㎏以上になる品種をつくり出す
ことに成功した。さすがにアユを腹いっぱいに食べて育
った天然のビワマスにはまだ及ばないというが乗り越え
も間近と楽観している。


【エピソード】

 

あんまり美味しいものばかり食べるのは気が引けるが、
ここは滋賀の自然の賜と素直に感謝したい。これから冬
に入っていくが、子持ち寒諸子の季節。たまりませんね。

 

【脚注及びリンク】
-----------------------------------------------
1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「
滋賀県漁業協同組合連合会
15.「
川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る」藤岡康弘

16.「豊かな自然環境を次世代に引き継ぐために

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ビワマス賛歌 P.11

2011年11月05日 | びわます賛歌


【ビワマスの保全と琵琶湖の現状】

ビワマスがアマゴやサクラマスと異なった魚として分化
した要因は、琵琶湖という深くて広い湖が存在したこと
による。ピワマスは琵琶湖を離れては種を存続させては
いけないものかどうかゆだねるとして、その琵琶湖が人
間と関わりを持ち始めて以降の2万年という時の流れの
中で、この50年ほどの間の我々の暮らしが、琵琶湖の環
境に回復不可能な影響をあたえる可能性がある。そのこ
とを考え、最後に「食文化と琵琶湖」を考えこのシリー
ズを一旦終えたい。

溶存酸素濃度低下

まず最も心配される問題は、琵琶湖北湖の深層水中の溶
存酸素濃度が低下していることだ。魚類が生活するため
の溶存酸素濃度の臨界値は、一般的に3mg/l程度で、
琵琶湖の湖底はすでに必要な濃度よりもさらに低い状態
が時々起こっている(図)。この原因は、気候の温暖化
と水中の栄養分が増加していることにある。溶存酸素濃
度が低くなると魚類が生息できなくなるばかりでなく、
有毒な硫化水素が発生したり、湖底にたまっている重金
属が再び水に溶け出し水質が大幅に悪化することにつな
がるのだ。

水温上昇

全地球的な問題であるが、地球温暖化が琵琶湖の水温上
昇に影響を及ぼしている。深30m以深には一年を通して
水温10℃以下のサケ科魚類にとって快適な水温帯が広が
っているが、この深層水の温度が約2℃も上昇している。
琵琶湖北湖の水深80mでは、1990年頃までは2月頃に見
られる年間最低水温がおおよそ5~7℃で変動していた
が、1990年以降は7~8℃前後で変化するようになった
という。このような傾向が今後も続き琵琶湖の水温がさ
らに上昇すると、溶存酸素量の問題とあわせてビワマス
の存続が難しくなる。

また、琵琶湖は冬の寒気で表庭木が冷やされ、冷えて重
たくなった水は湖底へと沈みこむ。この作用のおかげで、
冬季には琵琶湖の水が後件され湖底に酸素の多く溶けた
水が供給される湖の循環という現象が起こっているが、
地球温暖化の影響で冬に寒気が来ないと循環が不十分と
なって湖底の溶存酸素量が極端に滅少しか状態になって
しまう。熱帯や亜熱帯に位置する湖ではこの循環が起こ
らないので、深い湖では下層の溶存酸素は常にゼロの状
態だ。

産卵期の河川水温

ビワマスは、これまで述べてきたように、秋に産まれた
河川に回帰して産卵する。ビワマスの受精卵は水温が12
℃であれば約40日で孵化し、さらに卵黄を吸収し終え泳
ぎ出し、受精から浮上までの期間に水温が13℃以上では
発生がうまくいかず、生残率が大幅に低下する。ビワマ
スの産卵時期は、早い個体は10月の中旬から始まるが、
10月に産卵されたものでは、地球温暖化により暖冬傾向
が続いている最近では、河川の水温が充分に低下してい
ない状況にある。このような状況が進めば、10月から11
月の産卵群が生き残れず消滅する
危険をはらんでいる。

さらに、ビワマスの産卵は上流域や中流域の上部で行わ
れるが、川にはダムや堰などの障害物が多く設置され本
来の産卵塔にまで達することができない状態となってい
る。卵が孵化し稚魚が浮上するまでの良好な水温環境が
保障されるにも、水温が相対的に低い上流部へ親魚が遡
上して産卵することが重要だ。

森林の役割

また、稚魚の多くは6月頃まで河川の中流域で育つが、
水質や水量、また河畔から充分な餌となる陸上の昆虫を
供給できる訃附椛などの条件がほとんどなくなっている。
本来のビワマスは、豊かな森がある河川上流域近くまで
遡上して産卵し、稚魚は初夏まで森が供給してくれる昆
虫を食べて育ち、琵琶湖へ回遊するという生活史を送る。
サケ科魚類の餌となっている動物は、陸生動物由来のも
のが実に20~50%を占めていることが明らかにされてい
る。川を覆い包む森林から落ちてくる昆虫がサケ科魚類
の成育になくてはならない役割をはたしているのである

また、森林は水を蓄えるとともに水温の上昇を防ぐこと
で川の環境を保つ重要な役割を担っているが、加えて森
に生きる昆虫たちを魚に供給していたのである。

今、琵琶湖に流入する河川を見ると、その中下流域には
河畔林はほとんどなくなっている。また、上流域に広が
る森林は、多くが植林された杉などの針葉樹林である。
広葉樹林に較べ針葉樹林は生息する昆虫が少ないと考え
られる。

湖と森をつなぐもの 

このような河川周囲の環境が魚に与える影響ばかりでな
く、逆に河川に生息する魚の存在が周辺の環境に与える
影響も問題視されてきた。河川に産卵のため遡上したサ
ケ科魚類が、クマなどの哺乳類の餌として利用されるば
かりではなく、それらの動物の糞や食べ残された死骸が
森林や河川の栄養分として植物や水生昆虫などに利用さ
れている。このようにダムも堰堤もまだなかった昔、秋
になると体を紅色に染めて河川を遡上するビワマスは、
河川上中流域にまで達して産卵し、同時に人間をはじめ
クマやキツネなどの餌としての役割を果たしていた。ま
た、森自身や昆虫たちの栄養となって利用され、森やそ
こに棲む生き物たちの賑わいを支えていたと容易に想像
がつく。ビワマスは産卵のために川を利用するというこ
とだけではなく、川を通して琵琶湖と森をつないできた
動物なのである。

【エピソード】 

   

 

【脚注及びリンク】
 -----------------------------------------------
1.「
淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科
3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成
長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「
田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日
8.「
醒ヶ井養鱒場
9.「
ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「
ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「
ビワマス」国立環境研究所
12.「
北湖深底部における底生動物の変化
13.「
琵琶湖の固有種
14.「
滋賀県漁業協同組合連合会
15.「川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る」藤岡康弘
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